aklib_story_火山と雲と夢色の旅路_SL-8_愛してる_戦闘前

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火山と雲と夢色の旅路_SL-8_愛してる_戦闘前

火山のデータが異常を示す。エイヤフィヤトラの主張を前に、ケラーはついに過去からの逃避をやめ、ナウマン夫妻の死後初めて火山に登り、フィールドワークを行うのだった。パーティーは終了を余儀なくされ、皆が避難を開始する。カーンはようやく当時の証拠を見つけ、ナウマン夫妻の死の真相についてケラーを問い詰めるのだった。


[マグナ] アデル……とても素敵な名前ね、そのまま呼んでもいいかしら?

[マグナ] 初めて火山に登ったら誰もがすることを聞いたことある?

写真を撮るとか?

[マグナ] いえ、マグマで羽獣の卵を焼くのよ。

[マグナ] でも二十七の火山を登ったことのある私が保証するわ。羽獣の卵を焼くことに関しては、マグマも源石コンロも味に違いがないわ。

[カティア] お前はいつも黒焦げにするからな。

[マグナ] ちょっと! いつも美味しそうに食べてるくせに!

火山とはそういうものだったのか……本の中とは、異なるようだ。

[カティア] 心配しなくていい、アデル。お前は私の後ろを歩くんだ。私が踏んだ地面ならしっかりしているから。

[マグナ] 緊張するなら、私の手を握る?

いや……大丈夫……

[マグナ] アデル、前に私たちがなぜ火山を愛しているのかと聞いたわよね?

[マグナ] 自分の目で火山の噴火を一度見たら、永遠に忘れられないと保証するわ。

[マグナ] 私は山頂で静かに座って考えるのが好きなの。大地も私たち自身も謎に満ちており、一生をかけてもその万分の一の答えも出せないかもしれない。けど謎解きの過程を十分楽しんでいるわ。

[カティア] 人間は移動都市を発明するも、今に至るまで天災が形成される原因は解明されていない。人間は源石を利用し多くの道具を生み出したが、その石の我々への反動になす術がない。

[カティア] こうした自然の偉大な力に向き合った時に、人間は自らのちっぽけさを認識すべきだ。そうすれば膨大な時間と労力を無意味な身内での殺し合いに費やさなくなるだろう。

[マグナ] アデル、カティアの悲観的な意見は気にしなくていいわ。この大地の全ての場所がシエスタのように純粋なわけではないもの。

[マグナ] 貴族たちの争いに巻き込まれる学者として、カティアが不満をこぼすのも当然よ。でもこれらの問題について、私は彼と異なる見解をずっと持っているの。

[マグナ] 人はもちろんちっぽけよ。けどちっぽけだからこそ、私たちはこの大地に居場所があるの。

......

その通りだ、マグナ。

命はちっぽけだが、人はそのちっぽけな命でもって果てしない大地に答えを求める。ならば大地に飲み込まれるのも予想され、受け入れることのできる運命だろう。

準備はできているはずだった……

しかしあなたたちが亡くなった後、私はその深淵にどう向き合えばいい?

[職員] ケラー教授、こちらは一号観測ステーションからの信号が途切れる前の二時間以内のデータです。

[職員] こんな異常は見たことがありません、教授の判断を仰ぐしか……

[ケラー] 地表のガス濃度は変化していないな。なぜ温度が突然これほどまで上昇した?

[ケラー] もしこの数値が本当だとすると、シエスタ火山に蓄積されているエネルギーが突如十倍に増加したことになる……いや、どう考えてもありえない。

[ケラー] ……異常なデータとして無視していいだろう。

[ケラー] 変化をシティホールに知らせ、市民たちに備えさせよう。私たちにはそれしかできない。

[アデル] ケラー先生、これは恐らく通常のデータ異常ではありません。

[アデル] たしか、両親の研究ノートにも、似たような状況が何度か記載されていました……火山周囲の温度が他の数値と整合性が取れないほど異常に高まったというような。

[アデル] 結局のところ原因は解明されていませんが、これが偶然だととても思えません。

[アデル] ケラー先生、現地へ確認に行く必要はありませんか?

[ケラー] 一号観測ステーションは火山の中腹にある。今が最も危険な時だ。

[ケラー] このようなデータは機器の故障によるものではあり得ないし、これ以上危険を冒して現場へ調査に行く必要はない。最後の観測結果のデータは他の観測ステーションのデータに基づいて修正可能だ。

[アデル] ケラー先生、わかりません……

[アデル] 今回の観測はとても重要で、多くの学者が待ち望んでいたチャンスだと先生はずっと言ってました。この都市の何十万人の生活に影響を及ぼすので、可能な限り厳密であるべきではないんですか?

[アデル] もし今逃げたら……私の両親の犠牲が全くの無意味であったと認めたも同然ではないんですか?

少女の声はとても大きいとは言えず、体も微かに震えていた。こうして真剣に自分の考えを伝えるだけでも、かなりの力を消耗するようである。

ケラーは少し当惑した。

[ケラー] そうだ……

あのような犠牲にどうして意味があるなどと言えるのか?

[アデル] 先生のことは説得できないみたいです……

[アデル] もし先生が行きたくないなら、私一人で行ってもいいですか……

[ケラー] 冗談はよすんだ、現在火山がどんな状況かは不明だ。そんな危険な場所に君一人で行かせられるわけがない――

[アデル] ケラー先生……お母さんのあの防護服、返していただけますか?

[市民A] 食べる以外にやることないのか? このまま食べ続けたら腹が破裂しちまう……

[市民B] ギターでも聞くのはどうだ?

[市民A] うーん……もっと面白いことくらいあるはずだろ……

[市民B] 今さら黒曜石祭より面白いことなんてねぇだろうよ? あんなに人や観光客がいて、通りや店も終わりが見えなくて、いつまでも音楽が流れ続けてさ。どんだけ楽しかったことか!

[アイス屋店主] このパーティーを見ておると、第一回黒曜石祭を思い出すのう。

[市民B] 第一回黒曜石祭? そりゃ何年も前の話だろ?

[アイス屋店主] もう覚えておる者はほとんどおらんじゃろうな。第一回の黒曜石祭はのう。実は坑道の中で、採掘場の労働者たちが開催したんじゃ。

[アイス屋店主] うむ、参加者も少なく、まともなミュージシャンもおらんかった。みなが気の向くままに曲を弾いたり、自分で作った歌を歌ったり、そうやって始まったんじゃ……

[アイス屋店主] あの時はまさかこんなに大きくて、たくさんの人を魅了するイベントになるなんて思っとらんかった。

[市民A] ならこのパーティーはまた次もあるのか?

[アイス屋店主] ハハハ、それは誰にもわからんわい!

[市民B] けど街の中心部に引っ越したら、あんたたちの店はどこも営業しなくなるんだろ?

[楽器屋男性店主] 多分な、別の生き方をしないとだな。ずっと変わらない生活なんてないだろ。

[楽器屋男性店主] けど、今後も時間がある時はここに来て、屋台を出したりギターを弾いたりして、人が来たらごちそうして、誰も来なけりゃ海と向こうの旧シエスタを眺めるだろうさ。

[楽器屋男性店主] そういえば、前のビーチの砂を入れた缶も持ってきてるんだぜ!

[楽器屋女性店主] ……もしも、火山が噴火したら、前の場所は全部火山灰だらけになるでしょうね。

[楽器屋女性店主] 私たちが歩いた道も、行った店も、遊んだビーチも、全部火山灰に埋もれちゃうのよ。

[楽器屋男性店主] けどお前だって今日ここで開いたパーティーは忘れないだろ?

[楽器屋女性店主] ……もちろんよ、これも新たな思い出よ。

持っていたギターを店主が弾く中、遠くからは他の者たちのはしゃぐ声が聞こえてきた。

[アイス屋店主] おーい、お前さんたち踊らんか?

[アイス屋店主] こんな時は踊らんとな、若者たち! 食って飲んでおしゃべりしとるだけじゃ、パーティーとは言えんぞ!

[楽器屋男性店主] よし、じゃあ曲を変えよう!

[楽器屋男性店主] そっちのお姉さんも一緒に弾くかい?

[バード] もちろん。

バードは弦を弾くと、ゆったりとしたメロディーがこの区画を取り囲んだ。人々は芝生に寝そべり、夜空や蛍、星々を眺めている。

ジジジ、不調和なノイズが響いた。

[放送の声] 火山活動の観測データに基づき、シエスタ火山は数時間以内に噴火する恐れがあります。

[放送の声] 移動都市はすでに火山の噴火によって被害を受ける範囲から離れているため、慌てる必要はありません。

[放送の声] しかし噴火の震動により津波が発生する恐れがあります。市民の皆さんは速やかに海辺を離れてください。繰り返します、市民の皆さんは速やかに海辺を離れてください。

[市民A] 噴火するのか? 今日? 今? なんつータイミングの悪さだ。

[市民B] むしろ良いタイミングかもな。

[市民A] 早く海辺を離れろってどういうことだ? ここが水没するのか? この道具は持って行くか? ここに置いといたら流されるだろ?

[市民B] そんなのはいい、まずは避難が先だ!

店主は演奏する手を止めて妻の方を見やった。バーベキューの煙はまだ消えておらず、彼女の顔もいまだ喜びによる赤みが引いていない。

彼女は残念そうに持っていた鉄串を置いた。

[楽器屋女性店主] はぁ、私たちが去った後に波が今日の足跡を飲み込んじゃうでしょうね……私のバーベキューコンロも、あなたのギターも一緒に。

[楽器屋男性店主] 火山と海が、過去とのお別れを手伝ってくれるみたいだな。

[楽器屋男性店主] 高い所へ登ろう。上なら海水に浸ることはないし、俺たちにはまた新たな生活ができるんだ。

[楽器屋女性店主] ダウンタウンの方? 狭すぎないか心配なのよね。あなたの楽器や私のバーベキューコンロの置き場所がないんじゃないかって。

[楽器屋男性店主] だけど俺とお前の居場所はあるだろ。

店主は妻の目を見る。彼の瞳はきらきらと輝いていた。

彼女は突然笑顔になった。

[楽器屋女性店主] ……それもそうね! 実はそれで十分なのよね!

[楽器屋男性店主] そうさ、実はそれで十分なのさ。

[楽器屋男性店主] 行こうぜ! トム爺さんも呼びに行かないとな。自慢のアイスを手放せないって動かない可能性があるし。

[楽器屋女性店主] おーい――トム爺さん――! 行くわよ! でないと津波が来て、アイスクリームと一緒に流されちゃうわよ!

[アイス屋店主] おっと……何てこった……

[アイス屋店主] アイスを運ぶの手伝ってくれたあの嬢ちゃんは? 置いてくことはできんぞ……

[カーン] (見つけた……)

[カーン] (欠けてたノートの二ページ、カティア教授の筆跡に間違いない。それと軍の封蝋……)

[カーン] (ケラー、一体何を隠してるんだ……)

[職員] カーン博士?

[カーン] ……

[カーン] 君か……ケラー教授は?

[職員] 二時間前に火山観測ステーションからの信号が途絶え、最後に送られたデータが非常におかしなものだったんです。

[カーン] あの人はどうしてほかの人に知らせてないんだ?

[職員] ケラー教授が、緊急事態のため、彼女自ら確認に行くと言っていました。

[カーン] 彼女一人で行ったのか?

[職員] いいえ、あのリターニアからの実習生も一緒のようです。

[カーン] ……

[不安げな市民] もう安全な場所まで避難できたんだよね……

[緊張する市民] ここは火山から百キロ離れてる、きっと大丈夫だ……

[緊張する市民] シティホールはそう言ってる……

[不安げな市民] けど……地面の揺れを感じない?

[ヘイリー] エニス! リーフを見なかったかい!

[エニス] 家にいたんじゃなかったのか……

[ヘイリー] さっき帰ってきたらいなくなってたんだよ、あんたのとこには来てないのかい?

[エニス] まずいな……

[女の子] あれ? 誰もいない……みんなほかの場所に遊びに行ったのかな?

[女の子] ここにいるのはあなただけだね……お友達とはぐれちゃったの?

[明るい生物] ……

車両は山の麓に止まった。見慣れた山並みはすでにその様相を変えていた。

山の植物はすでに枯れ、険しくそびえ立つ岩は、より高く大きく見えた。

夕闇が迫り、二人の心に影が落ちる。

[アデル] これが……シエスタ火山。

[ケラー] アデル、気を付けるんだ……

[ケラー] 車はここまでだ。あとの道は徒歩で行くしかない。

[ケラー] 一号観測ステーションは山の中腹にあるので、ここからまだしばらくある。

[アデル] 大丈夫です、ついていく体力はまだありますから。

[ケラー] ああ……

学者は下を向き、心が刺すように痛んだ。

……恐れているのは一体誰か?

火山は目の前にある。しかし自分は一歩も前に進めない。

[アデル] ケラー先生、大丈夫ですか?

[アデル] ……私の手を握りますか?

[ケラー] ……

赤黒いマグマがまるで血管のごとく岩を這って広がりつつあった。巨大なシエスタ火山が今まさに荒々しく呼吸している。

大地の中心からこの崖まで、マグマは熱く、静かに、長い長い歳月をかけてたどり着いたのだ。

この道はアデルが想像したほど遠くはないようで、彼女の今の体力であれば、一人で中腹まで登ることができる。

それと同時に、想像したよりもずっと長いようで、心の中で数え切れないほど記憶を巡らせるのに十分だった。

[ケラー] 例の観測ステーションはここだ。

[ケラー] この機器……誰かがここに来たのか?

[アデル] ですがほかの人の足跡はありません……

[ケラー] 源石エネルギー反応に変化はない。しかし温度測定装置は確かに高温反応を記録している……

周囲を見渡しても、影の中にある漆黒の岩と、溶けた石しかない。

[ケラー] 変だな……

[ケラー] 何も異常はないはずだ。設備を再調整した後、戻るとしよう。

[ケラー] カーン、どうして君まで来たんだ?

[カーン] はぁ……はぁ……

[カーン] 二人が……火山に登ったって……聞いたんで……

[カーン] なぜです……

[ケラー] 観測ステーションのデータに変動があってな。アデルが放っておけないと言うので、確認しに来たんだ。

[ケラー] 恐らく、何かしらのトラブルによるものだろう。今から安全な観測ステーションまで撤退するところだ。

[カーン] ……

[アデル] この火山は確かに活発になってきていますね。噴火時間がさらに早まるかもしれません……

[ケラー] そうだな、まずは戻るとしよう。

[カーン] ケラー教授、待ってください……

[アデル] カーン先輩?

息を切らした男が体を震わせながら、懐から何かのファイルを取り出した。そしてそのファイルの表紙を見た瞬間、ケラーの表情は即座に色を失った。

[カーン] 1095年9月、ウナ火山、あなたはどうして突然フィールドワークチームから離脱したんですか……

[カーン] 同年11月、あなたはナウマン夫妻の葬儀に参列せず、ウィリアム大学と軍の座談会にてあなたを目撃した者がいる。

[カーン] それと、カティア教授の源石と天災に関する研究資料は、アデルすら見たことないのに、なぜあなたとリターニア軍の手紙の中に現れたんだ!

[カーン] ケラー……私の質問に答えろ!

[アデル] ケラー先生……

[ケラー] ……

[ケラー] アデル、前にも言ったが、今回の観測を終えたら、君にすべてを話す……

[ケラー] カーン、ここは危険だ、早く――

[カーン] ケラー……私たちは今ここに立っている。マグナ教授たちも来たことのある火山に立ってるんだ。

[カーン] この景色を前にして、まだ嘘つくのかよ!?

[ドリー] うーん、人間のことに介入したくはないんだけど。

[ドリー] でもここは喧嘩するには適した場所じゃないよ……

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