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火山と雲と夢色の旅路_SL-2_リトル・ボーイ・ブルー_戦闘後
エイヤフィヤトラは手紙の出所をはっきりさせようとするも、エニスとぶつかって気を失ってしまう。目覚めた後に両親に返事を書こうとするのだった。エニスは鉱石病が進行し続けた後の深刻さを知り、精神が崩壊する。ついに生きることの重圧に押しつぶされてしまった。
[男の子] 今日はどこで遊ぶ? 温泉のお店で泳ぐのは禁止されちゃったし……何人か呼んでコンテナ区画でかくれんぼするのはどうだ?
[女の子] けど、エニスはビーチに行っちゃダメって言ってたじゃん。あたしはまたヴォルケーノミュージアムに行きたいな、この前はパパが見つからなかったから。
[男の子] もういいよ、どうせ見つからないって……そうだ、エニスは今日どこでバイトしてるんだろう?
[女の子] 今日は水曜日で、今が午後三時だから、多分トム爺ちゃんのお店で店番をやってるよ。
[男の子&女の子] つまり、アイス屋さんだ!
[男の子] 僕はチョコレート。
[女の子] あたしイチゴ味で。
[エニス] へいへい。
[男の子] 待った。トム爺ちゃん、今日は新しいフレーバー作ったの? ケーキ味のアイスってどんな味? もう一個食べてもいい?
[エニス] おいおい、トム爺ちゃんが言ってたろ。アイスはガキンチョ一人一個までって。
[男の子] でもエニスはいつもアイス食べないじゃんか。エニスの分も僕たちにちょうだいよ。
[女の子] ちょっとやめなよ。エニスだって大変なんだから……
[エニス] いやいや、俺はガキンチョじゃないし。
[女の子] でも今日は暑いから、アイスは食べてるうちに溶けちゃうでしょ。一個もらっても、一個分は食べれてないよ。こんなの不公平だよ。
[エニス] そうだな、じゃあどうする?
[エニス] 今日はあちーしな、ケーキ味のアイスも美味しそうだよな?
[男の子&女の子] (目をキラキラさせる)
[エニス] うーん……もし夜ご飯の前に家に帰って、ヘイリーの代わりに食器をちゃんと並べるって約束すんなら、トム爺ちゃんに内緒でもう一個おまけしてやろうかな、どうだ?
[男の子&女の子] 分かった――
[エニス] お前ら、いつも返事だけはいっちょ前だよな。晩飯の時はせいぜい上手く隠してくれよ……
コーンに乗ったアイスクリームがふわふわ浮かびながら、女の子の目の前を通り過ぎていった。少女は呆気にとられ、その間にスプーンの上のすくったばっかりのアイスは、溶けてしまった。
イチゴ味のアイスクリームが地面にぽたぽたと落ち、水たまりができる。目に見えない生き物がそれを踏むと、ピンク色の足跡がはっきりとできたのだった。
[女の子] ……え?
[女の子] 今アイスが逃げていったような。
[男の子] アイスが逃げたって?
[女の子] 逃げたのもイチゴ味みたいだったよ。
[男の子] じゃあ、もしそれを捕まえたら、もう一個食べれるかな?
[バード] 私もアイスを一つもらえるかしら?
[エニス] 3金券です。
[バード] あら、タダでもらえないの? 残念ね。
[エニス] 綺麗なお姉さん、冗談よしてくださいよ。こっちだって商売なんすから。
[バード] じゃあコーヒー味をお願い。
[エニス] まいどあり。
[エニス] この時期に外国人観光客がシエスタに来るなんて、珍しいっすね。
[バード] 単にあなたがここの魅力を過小評価してるだけかもよ。
[バード] 坊やはどうして夏を楽しまないの? 私の故郷では、あなたくらいの歳の子はみんな街中を駆け回ってたわ。
[バード] みんなに好かれる良いお兄さんをやるのは大変でしょう。
[エニス] 生きてくためにはしょうがないっす。
[バード] 何か楽器は弾けるかしら?
[エニス] 楽器っすか? 歌の授業も受けたことないっすね……
[エニス] カリンバは……楽器って言えるでしょうか?
[バード] うーん……あなたのその雰囲気だと、サックスが似合うんじゃないかしら。
[エニス] ハハ、俺の懐事情じゃ買えそうにない楽器っすね。
[バード] 今日は新しい仕事が見つかって、気分が良いのよ。一杯ごちそうしたら、もう少しお話に付き合ってくれる?
[エニス] すいません、もう時間なんで。次の仕事に行かないと。
[エニス] もしまた俺と話したければ、うちの家の店に来てくださいよ。
[アロマショップ店主] つまり、物流センターが代わりに商品を国外に売ってくれるってことなの?
[バイソン] それだけではありません。今後の買い物も便利になりますよ。たとえば、アロマを作りたいなら、原産地から直接新鮮な原材料を購入することができるようになります。
[アロマショップ店主] うーん……話を聞く限りは悪くなさそうね。
[バイソン] では引っ越しを受け入れてくれますか? それと、今後の世論調査では是非フェンツ運輸に投票していただきたいのですがお願いできるでしょうか?
[アロマショップ店主] いいわよ。
[バイソン] ほ、本当ですか!?
[アロマショップ店主] どうせ元々ダウンタウンの方に引っ越すつもりだったし、今後ヴィクトリアのファッションが手に入りやすくなるなら、なかなか魅力的だもの。
[バイソン] ご協力ありがとうございます! それでは、ぼくはこれで失礼しますね。
[アロマショップ店主] ちょっとちょっと、そんなに急がなくてもいいじゃない。うちのアロマを見ていかない?
[アロマショップ店主] あたしが良いやつを見繕ってあげる。あなたみたいな可愛い男の子にアロマはぴったりよ!
[バイソン] わ、分かりました……
[エンペラー] おい、小僧。
[バイソン] エンペラーさん!? バカンスに来ていたんですか?
[エンペラー] バカンスっつーのは一種の心理状態のことだ。俺は毎日バカンスを過ごしてんだよ。だがな、こんなハッピーな夏に、いつもと同じ場所でじっとしてられる奴がいると思うか?
[エンペラー] ま、それは別に重要じゃねぇ。俺はこの場所に自分のものを取り返しに来たんだ!
[エンペラー] 身の程知らずの羊のガキどもが俺の大事なアルバムを盗みやがったんだよ! 俺が初めて黒曜石祭に出演してグランプリを取ったアルバムだ! ナンバー000001だぞ!
[エンペラー] ドリーの奴が、俺から見ても音楽について分かってて語り合える数少ない存在だってのは認めるがよ。分身を世界中にばらまいたことは、絶対に許せねぇ!
[エンペラー] まさか、あいつはあの羊のガキどもが俺の音楽と同じようにソウルをぶち上げることができると思ってやがるのか?
[バイソン] エンペラーさん、一体何の話ですか。ドリーというのは……?
[エンペラー] はぁ、まあいい、重要じゃねぇ。こいつはお前らじゃ理解の及ばないくらいレベルの高ぇ衝突だからな――話を戻すぞ。お前はここで何してんだ?
[エンペラー] お前、随分と匂うがどうしたんだ? サルゴンのジャングルの泥水に三度漬けられた後でカクテルパーティーのシャンパンタワーの中に倒れ込んだみてぇな匂いだな。
[バイソン] そんなにひどいですか……
[バイソン] フェンツ運輸はこの商店街の再建プロジェクトを請け負いたいと考えているんですが、いくつか競合相手がいましてね。
[エンペラー] ほーん、これがお前らの縄張り争いごっこってわけか。
[エンペラー] ピーターズは? あのジジイ、仕事を全部お前にぶん投げて自分はバカンスを楽しんでるなんてこたぁねぇよな。
[バイソン] そういう言い方は……
[エンペラー] まあどっちだっていい、幸運を祈ってるぜ、小僧。あいつがうかうかしてるうちに、持ってる株を全部奪って、夏のサプライズにしてやりな!
[エンペラー] そうすりゃあ、次のパーティーで俺はあいつと少しは話の合う話題ができるさ。
[エンペラー] おっと、おしゃべりは終わりだ! 見つけたぜ――おい! そこの焦点の合ってねぇ羊のガキ、俺のアルバムを返せ!
[バイソン] ひつじが……何だって?
[アデル] (さっきのちびめーちゃんは、まだこの辺にいるかな?)
[アデル] (あんなにゆっくり歩いてたし、遠くまでは行ってないはず……)
[アデル] あれ? あっちの標識も……
[アデル] ……封筒の住所をかじったのは、きっとあなただよね?
もこもこの生き物は通り沿いを進みながら、標識を一つ一つ食べていく。
[アデル] ちびめーちゃん……待って……!
[アデル] 博物館に届いた写真入りの封筒を食べちゃったの?
[アデル] ちびめーちゃん――!
通行人がみんな振り返り、走りながら何もない場所に向かって声を上げている女の子をいぶかし気に見た。
だが当の少女の足取りはよろよろとしていて、周りの目を気にしているどころではなかった。
[アデル] ちびめーちゃん――待って!
[エニス] ようやく配達終わった……やっぱ適当に代わりの人に頼むのはダメだな。誤配がいっぱいあったうえ、代わってもらった分の金もたくさん払うことになったし……はぁ、次の場所は……
[エニス] ん? どれも封筒の住所欄がない……誰かが破ったのか?
[エニス] 何の音だ?
[エニス] あれ、住所は? さっきまであったよな、ちょっと出てった隙に全部消えてる!?
[エニス] 端末に記録が残っててよかった、けど……めんどすぎるだろ!
[エニス] まったくツイてねぇ……!
[エニス] ……
[エニス] まあいいや……とにかく全部取り出して、一個一個確認するしかない……次のバイトまでもうすぐだ、急がないと……
[エニス] 走れ……エニス、走れよ! 頑張れ、お前は金を稼がないといけないんだ、じゃなきゃ……
[エニス] ふぅ……じゃなきゃチビたちの面倒を見れないだろ……!
[エニス] ……!
[エニス] うわ、そこのお嬢さん! ちょ、よけてくれ! 荷物が重くて、止まれない――!
[エニス] おい!
[エニス] ああ――!
[アデル] うっ――
[エニス] ゴホゴホッ……ッ……足が……!
[エニス] お嬢さん! 大丈夫っすか?
[エニス] ……
[エニス] 大丈夫っすか? お嬢さん、もしもし、起きて、起きてください!
[エニス] ……い、医者……
[エニス] お医者さんはいませんか!?
[真面目な声] エニスさん、先に決めていただけますかしら。貴方は一体いつ専門家の治療をお受けになるの?
[沈んだ声] それは……この忙しい時期が終わったら、アンタと一緒に、そのロドスってとこに行きますよ。でも今うちは俺がいなきゃダメなんすよ……
[真面目な声] 患者が病を隠すのを手伝うことは、医師の使命に背くことです。貴方の大変さは理解できますが、自らの命に責任を持つことこそ、ご家族に対して責任を持つことですのよ。お分かりになって?
[沈んだ声] どうすればいいかは大体理解してますって……
[沈んだ声] セイロン先生……鉱石病患者は、最終的にみんな死んじまうんですよね……?
[真面目な声] ……ええ。期間の長い短いを考えなければ、わたくしたちの命にはいずれも終点がありますわ。ですが、鉱石病患者にはその終点が、よりはっきりと見えますのよ。
[沈んだ声] じゃあ……鉱石病にかかった人は最終的にどうなるんすか?
[真面目な声] 病巣の位置によって、鉱石病の末期に現れる合併症も異なってきますわ。
[真面目な声] たとえば貴方が運んできたこちらの少女は、鉱石病による聴力の低下を引き起こしています……補聴器がなければ、彼女は音をほとんど認識することができないでしょう。
[真面目な声] このようなことを言いたくはありませんけれど、貴方の源石結晶の位置は心臓のすぐ近くにありますから、もし適切にコントロールできなければ、直接命に危険が及びますわ。
[沈んだ声] ……ハハ、つまり、少なくとも俺は体がどこも悪くならずにぽっくり死ねるってことか。
[真面目な声] これ以上、そのようなことをおっしゃるつもりでしたら、今すぐロドスまで無理やり連れて行きますわよ。
[沈んだ声] 冗談冗談……ありがとうございます、セイロン先生。
[沈んだ声] ……これは、俺の薬代とこの子の医療費っす、それじゃ……俺は失礼しますよ。
[沈んだ声] 後はよろしくお願いします、先生。
日差しが窓を抜け、ベッドに降り注ぐ。耳元ではぼんやりと会話が聞こえ、アデルがゆっくりと目を開けた。
[セイロン] ……お目覚めですかしら? 気分はいかが? 気持ち悪いところはありませんこと?
[セイロン] 貴方は街で通行人とぶつかって、気を失っていましたのよ。その方が急いで貴方を運び込んで、持っていたお金を全部出して貴方の医療費にしてくれと言って聞きませんでしたの。
[アデル] ……
[セイロン] エイヤフィヤトラさん、お身体にはよくよく気を付けなくてはなりませんわ。
[セイロン] 先ほど検査を行ったところ、今回の原因はただの低血糖でしたが、鉱石病関連の数値については、貴方自身もよく理解していらっしゃるでしょう……
[アデル] ご忠告ありがとうございます、セイロン先生。私はもう問題ありません、行ってもいいですか?
[セイロン] いいえ、ダメですわ。
[セイロン] 今日の午後はここで安静にしていてくださいな。どこへも行ってはなりません。
[セイロン] わたくしはまだ何名か患者の訪問診療をしなければなりませんが、おとなしくここにいらして。もし戻ってきて貴方がいなければ、本艦に報告を入れますわよ。
[アデル] 結局、見失っちゃった……
[アデル] ちびめーちゃんは、私に何を伝えたかったんだろう……
アデルがなんとかしてベッドから体を起こす。ポケットからは写真が落ちた。
「元気かい? こちらは元気にやっているよ。」
「もう随分と顔を見ていないから、すごく君に会いたい。」
......
[アデル] 私は元気だよ……
[アデル] 二人は……元気?
[アデル] お父さんお母さん、あと何年かしたら、私は二人が私を産んだ歳になるよ……
[アデル] その頃の二人は、どんな生活を送っていたの?
[アデル] 私は……
[アデル] ……私は……
[アデル] 感謝してるよ。二人が私を……
ぽたり、ぽたり。
涙が手紙の上に落ちる。
アデルは手を止めて、書いた内容を線で消した。
[アデル] ……
[催促する声] エニス、もうすぐ仕事の時間だぞ、どこにいるんだ? 運ぶものが多いんだ、サボるなよ。
[エニス] 分かってるよ、今向かってますって、すぐに着きますよ!
[礼儀正しい声] エニスさん、以前ご相談をいただいたあの温泉旅館の店舗についてですが、現在購入可能となっております。
[礼儀正しい声] もしまだご興味があれば、月末までに頭金を払っていただく必要がございます……
[エニス] ……月末まで? あっ、了解っす、また連絡しますね……!
[心配する声] エニス、チビたちはあんたと一緒かい?
[エニス] チビたち?
[心配する声] もうすぐで夜飯の時間なのにまだ帰ってきてないんだよ。早く戻るように言っておいてくれ。
[エニス] いや、俺は……わかった!
[エニス] *クルビアスラング*!
[エニス] この車、なんでだよ――
[エニス] *クルビアスラング*! *クルビアスラング*!!
[スワイヤー] えーっと……大丈夫かしら?
[エニス] ハァ――ハァ――
[エニス] どうしてアンタがここに?
[スワイヤー] 散歩中よ。
[スワイヤー] 旅行パンフレットのおすすめ観光ルートに沿ってここを一周してたのよ。でも、おすすめされてたお店は龍門のお店と大して変わらなかったから、帰ろうと思ってたところ。
[スワイヤー] それでアンタは……トラック相手に喧嘩してたの?
[エニス] ……
[エニス] エンジンが古すぎて、すぐかからなくなるんすよ。
[スワイヤー] 見てあげるわ。
[スワイヤー] 排気口が紙くずで塞がれてたわよ。誰よこんなくだらないことして……ところでこの紙は、チラシ?
[エニス] えーっと……多分どっかのいたずらっ子がやった悪ふざけっすね……
[エニス] ありがとうございます! そんじゃ何もないなら、俺は先に行きますね!
[スワイヤー] 待ちなさい。
[スワイヤー] 助手席に置いてある箱とそのチラシのロゴ、ロドス製薬のよね?
[エニス] ――!
[エニス] えーっと……
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