aklib_story_登臨意_WB-7_屛風衛_戦闘前

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登臨意_WB-7_「屛風衛」_戦闘前

ドゥ・ヤオイェとリン・ユーシャは天災データを死守し、幸いにもワイフーやチューバイたちの助けを得た。危険な敵を前に、江湖の若者たちが力を合わせて立ち向かった。


一人、二人、三人。

ハンマーが唸りを上げる。

七千余りの昼夜の間、彼はこのようにハンマーを振ってきた。

地金ではなく、仇の刃に、その頭にハンマーを打つことを、彼はどれほど願ったことか。

まさしく、今この時のように!

[山海衆首領] 下がれ。

[山海衆首領] ……お前の槌は重いが、さして速くない。

[モン・ティエイー] 重けりゃ十分なんだよ! お前の刀を、お前の頭をかち割ってやれるからな!

[山海衆首領] ……

[モン・ティエイー] いや、違ぇわ。本当はお前らのためにもっといい死に方を用意してたんだ。この倉庫に大量の爆薬を埋めて、天災が来た時に、お前ら山海衆を血祭りにして玉門に景気を付けるつもりだった!

[モン・ティエイー] もちろん、俺ごとな!

[山海衆首領] それが真の計画か?

[モン・ティエイー] でなきゃ、なんで俺からお前らに協力を求めたと思ってやがる!?

[山海衆首領] 我々の間に、そこまで大きな恨みはないはずだが。

[モン・ティエイー] お前らがどうやって玉門に忍び込んだか忘れたか? どうやって江湖の兄弟たちを装って守備軍を騙くらかし、騒ぎを起こしたか、玉門がなんで今の姿になり下がったか、覚えちゃいねぇのか!

[モン・ティエイー] お前らの頭は、ザルか!?

[山海衆首領] ……

[モン・ティエイー] お前らんとこの下っ端が、再びこの都市に現れたその日には、気付いてた。

[モン・ティエイー] 俺は、二十年も待っていたんだ!

[モン・ティエイー] 全くもって残念だよ。ちょっとした予想外の出来事で、計画がパーになっちまった……

[モン・ティエイー] でもまあ、俺にはまだこのハンマーがある!

倉庫の中は薄暗く、リン・ユーシャが持つガラスの剣はますます不可視に近付いた。

山海衆は彼女のアーツに恐れをなしているのか、一気に攻め入ることはなく、互いに協力し合ってじりじりと包囲を縮めるだけだ。

[ユーシャ] (こいつら、玉門でこれだけ長い間動き回ってるのに見つからないなんて……)

[ユーシャ] (民間の武術の流派じゃないし、どこかの国の軍の格闘術でもない。でも残忍な手口で、役割も分担され、連携が取れてる……一体何者なの?)

[ユーシャ] (チェンの剣だったら、こういうのを相手するのに向いてたんでしょうね……)

[ユーシャ] (何考えてるの……今、私が考えるべきはここを抜け出して、本物のデータを持ち出す方法よ。)

[ドゥ] ねぇ、助けに来てあげたわよ!

[ユーシャ] ……

[ユーシャ] さっさとここを離れなさい。

[ドゥ] ダーチーとシャオチーを送り出したら、こっちから戦闘の音が聞こえてきたのよ――やっぱりこいつらだったのね。

[ユーシャ] あなたの仲間は……

[ドゥ] 二人は無事よ。

[ドゥ] 部隊の信使と守備軍も大丈夫――モン・ティエイーが彼らを軟禁してたけど、傷つけてはなかったわ。

[ユーシャ] ……

[ドゥ] そんな目で見ないで、あんたを許したなんて、あたし一言も言ってないからね。こいつらを片付けたら、きっちり落とし前はつけてもらうわよ。

[ユーシャ] そ。なら、まずは何とかして生き延びないとね。こいつらは手強いわよ。

[ドゥ] はっ、そんなの言われるまでもないわ。

[モン・ティエイー] ヤオイェか?

[ドゥ] 気安く呼ばないで!

[モン・ティエイー] ……

[モン・ティエイー] どうやら知られちまったみたいだな。

[山海衆首領] 脇見とは余裕だな。

[モン・ティエイー] 黙れ。

[ドゥ] 黙るわけないでしょ!

[モン・ティエイー] お前には言ってねぇって……

[モン・ティエイー] とにかく、お前が無事でよかった。

[モン・ティエイー] 諸々の詫びはちょっと待っててくれよ。こいつを始末してから、ちゃんと説明するから。

[山海衆首領] ふっ。

[ドゥ] ……

[ドゥ] あんたさ。なに肩の荷が降りた感じで話してるの?

[ドゥ] 誰も死なせてないから? それとも、まだ自分が盤面を支配してるから?

[ドゥ] 初めから信使を殺したように見せかけるつもりだったんなら、どうしてダーチーとシャオチーをチームに加えることに同意したのよ。

[ドゥ] 自分の目的のために、人の命を使って策を弄するなんてクズのやることよ。あんたを慕って尊敬してる玉門の兄弟たちも報われないわね!

[モン・ティエイー] 正直なとこ、お前の件は俺だって迷ったさ……

[モン・ティエイー] だがお前は意気揚々とうちの門を叩いて、玉門初の現代的な物流会社を開きたいと言った。俺の前で堂々と展望を語り、自分の親父の面子を立てるために忖度しなくていいって大見得を切ったよな……

[モン・ティエイー] それが眩しくていけなかったんだ! まるで、昔の自分を見てるようだった。

相対している女の繰り出す刀は一閃ごとに重くなる。背後の少女から投げかけられる罵りも、ますます激しくなる。

心の底にあった本音をさらけ出したあと、モン・ティエイーはもう何も言葉を発しなかった。ただ歯を食いしばってハンマーを振り続けている。

[ドゥ] あんた言ってたわよね、自分も昔は玉門じゃ名の知れた人物だったって。

[ドゥ] 若い頃は宗師と共に武の道に邁進して、勧善懲悪の大立ち回りをしてたんでしょ。強盗に遭った一般人のために、砂漠の中を百里以上追いかけて、盗賊の根城を落としたんでしょ?

[ドゥ] 玉門にどれだけの通りがあって、どれだけの店があって、どれだけの天幕があって、軍に加わった兄弟たちが炎国のどこから来たのかも、あんたは全部知ってたんでしょ?

[ドゥ] じゃあ今は!? 今はどうなのよ! 今の玉門を、本気で気にかけたことがあるの!?

[ドゥ] あんたはね、鏢局の古い掟と心中するのも本望って顔してるうちの頑固親父より、もっと古臭くて、もっと馬鹿だわ!

[ドゥ] あんたたちに教えてあげる。時代はね、変わるものなのよ!

[ドゥ] 鏢局が物流会社になるのも、鋳剣坊が鍛冶屋になるのも止められないの。止めるべきでもないわ。

[ドゥ] あんたがどれだけ恨んで、憎んでるんだとしてもよ。今の玉門が昔とは違うからっていう理由で、天災をぶつけていい道理はないのよ! それで何かをはかろうなんて!

[ドゥ] 自分が何様だと思ってんの!?

[ドゥ] 玉門に胸を張って自分の所業を言える!?

[ドゥ] あんたの胸に聞いてみなさいよ。モン・ティエイー、これは自分自身に誇れる生き方なの!?

[モン・ティエイー] ……

[ユーシャ] ドゥ・ヤオイェ、危ない――!

[モン・ティエイー] ん?

ドゥたちが現れてからも、モンの視線はずっと目の前の戦いに集中していた。

達人同士の対決においては、僅かでも気を散らすことは許されない。ましてや相手がこの計り知れない女であれば。

ドゥ・ヤオイェという名の若者が叫んでる内容も、実のところはっきり聞いているのかいないのか曖昧なくらいだった。ただ大きな声で、多くの感情がこもっていると感じただけだった。

そうであったのに、どうしてかこの時のリン・ユーシャの警告だけはくっきりとした輪郭を持って彼の耳に届いた。彼は無意識に振り返った。

モン・ティエイーは、躊躇うことなく手中のハンマーを投げ、ドゥ・ヤオイェの背後に近づく敵を吹き飛ばした。

同時に――長く細い切っ先が彼の背中を切り裂く。

[ドゥ] モンおじさん――!

[モン・ティエイー] 行裕物流を開くってのは良い考えだった……

[モン・ティエイー] 将来有望な若芽を、みすみす目の前で潰されるなんてのは……

[ドゥ] ……

こう考えたことあるか? 江湖とは……己の腕一本を頼りに身一つで世をさすらう連中の生きる社会は、実のところ今もまだ消えていないと。ただその姿を変えただけだと。

[山海衆首領] 次はお前たちの番だ。

女は、地に横たわる死体をまたいだ。

鮮血が刀を伝って滴り落ちる。

[ユーシャ] 来るわ。

[ドゥ] 見えてるわよ。

[ユーシャ] 信使の護衛が偽の任務だったなら、行裕物流はまだ正式に開業してないってことよね。

[ドゥ] ……

[ユーシャ] ねえ、届け物を頼んだら、ドゥさんは引き受けてくれるかしら?

[ドゥ] こんな時に?

[ユーシャ] この箱の中に、本物の天災データが入っているわ。必ず平祟侯に渡して。私の令牌を持って行けば、彼は信じてくれるから。

[ドゥ] 届けた後は?

[ユーシャ] 届けた後は、まだ間に合うことを祈ってて。

[ドゥ] その手は食わないわよ。あたしを逃がして、自分は残って英雄を気取るつもり?

[ユーシャ] 知ってると思うけど、私はそこまで出来た人間じゃないわ。

[ユーシャ] でも誰かがデータを届けに行かないといけない。

[ユーシャ] 加えて、この女の実力は未知数よ。モン・ティエイーですらあっけなく死んだわ。

[ドゥ] ……

[ユーシャ] だけど私のアーツなら足止めして、何秒か猶予を作れるかもしれないわ。

[ドゥ] 作った後あんたはどうするのよ。

[ユーシャ] さあ?

[ドゥ] スカしてる場合!?

[ユーシャ] もしあなたにこいつらを足止めする方法があるなら、代わってあげてもいいけど。

[ドゥ] ……

[ユーシャ] 仲間のことを出しに使って、騙してごめんなさい。

[ドゥ] あたしを騙したのはあんただけじゃないし、さっきモン・ティエイーを罵倒した時、ついでにあんたのことも罵っといたわ。

[ユーシャ] それともう一つ。言い忘れたけど、実は私、故郷から遠く離れた場所で、自分の力だけで一旗上げようっていう行動力と志を、とても素晴らしいと思ってるの。

[ドゥ] こんな時に急にそういう話始めないで――

[ユーシャ] 覚えておきなさい。もしあなたがデータを届けられなければ、玉門は天災に見舞われる。

[ドゥ] 悪くない大仕事ね。行裕物流が確かに承ったわ。

[ユーシャ] 目を閉じて。

リン・ユーシャが手を揺らすと、ガラスの破片は地面に落ちた瞬間に溶けるように砂と化した。

風が起きる。いや、風ではない。倉庫のいたる所から細かな砂粒が、吸い寄せられるように空を切って集まっているのだ。

[山海衆首領] まだ足掻くというのか――

砂塵がいよいよ目視できるほどになる。

玉門の命運を詰めた狭い倉庫の中で、砂嵐が巻き起こった。

[巡防営守備軍] あっちで何かが燃えてないか?

[巡防営守備軍] 放火か? 見に行くぞ。

[巡防営守備軍] 排砂溝の監視はどうするんだ?

[巡防営守備軍] 馬鹿正直に突っ立ってても、ここに来る奴なんていないだろ?

[巡防営守備軍] それもそうか。

城壁の上から時を告げる軍笛が鳴った。日は既に沈み、雲間からは満月の輪郭が覗いていた。

年老いた刀匠が事を終えて、鋳剣坊に戻った時に自分がいないことに気付けば、彼は排砂溝へ探しに来るだろう。

移動都市の底部は大地に牙を向けていた。高速で稼働するタービンは大きな障害物を嚙み砕き、耳を劈くような音をさせながら、何トンもの砂利と共に吐き出している。

年老いた刀匠の言った通り、兵士の監視は疎かだった。こんなところから都市を出ようとする者はいないからだ。

[ジエユン] (あと少しで約束の時間だ……)

[見た目の恐ろしい生物] (獰猛な雄たけび)

[山海衆頭目] こちとら、お前を捕まえようとするたびに逃げられてるってのに。当のお前は自分から死地に飛び込むのかよ? 手間かけさせやがって。

[ジエユン] あなたたちのことは知らない。

[山海衆頭目] お前が背負っているその剣、本当のとこ俺たちの計画とは関係ないんだがな。歳獣の十二分の一の意識を宿したもんについて、興味を持ってる人がいるんだ。

[ジエユン] 歳獣? 何言ってるの……?

[山海衆頭目] どうやら何も知らないようだな。なおさらその剣を持つに相応しくない。

[山海衆頭目] 剣を渡せ。

[山海衆頭目] その頭の後ろの黒い光輪……お前はアナサか?

[ジエユン] だったら何……

[山海衆頭目] アナサが、炎国移動都市の奴らとつるんでるとはな。笑える話だ。

[山海衆頭目] 自分の生まれを忘れたか? 部族がどんな目に遭ったか忘れたか? お前たちが少しでも腹を満たすために、暖かな寝床を確保するために荒野をさまよっていた時、炎国は少しでも助けてくれたか?

[山海衆メンバー] アナサ、お前は山海衆に加わるべきだ。

[ジエユン] 私が知ってるのは、あなたたちが都市の至る所で悪事を働いていることだけだ。

[山海衆頭目] ……話の通じないバカが。

[ユーシャ] (砂嵐はあと少ししかもたない。)

[ユーシャ] (ウェイ長官とお父さんが協力しても勝てなかった敵だから、私が相手になるはずない。)

[ユーシャ] (でもなんとかして、あと少しドゥの逃げる時間を稼がないと……)

[山海衆首領] 我に恐怖を覚えてなお、他者のために血路を開くか。

[山海衆首領] どれほど時が経とうと、お前たちは不変であるかのようだ。勇敢な死を一種の栄誉と見なす。

[ユーシャ] 生憎とそこまで出来た人間じゃないし、このままあなたの手にかかるつもりもないわ。

一際大きな乾いた音が響く。音の余韻が消える前に、黄砂はすでに女の目の前で、再びガラスの刃になっていた。

[山海衆首領] 速攻か?

[山海衆首領] お前たちは、そうした小細工を余程好むようだ。

彼我の力量に差がありすぎるとき、速攻に意味はない。死期を早めるだけだ。それでも捨て身で向かった。

今回あれだけ様々な「手段」を用いた。その結果としてモン・ティエイーの企みを暴き、本当の天災データを得た。

私のしたことは……正義だと言えるだろうか?

たぶん、言っていい。

敵の刀が玻璃の刃を切り崩す。こちらの切っ先が届く気配はなく、敵の勢いは止まらない。始めから終わりが見えている絶望の中――ついに、女の長刀がリン・ユーシャの眉間に迫った。

――赤霄、大気を震わせ!

研ぎ澄まされた赤の剣気が、砂塵を引き裂いた。

刀と剣が斬り合うと、摩擦で空気が鋭く鳴いた。リン・ユーシャの剣は砂と玻璃の間を行き来していて、無数に浮かぶ澄んだ欠片が、とある人物の姿を映し出していた。

――ユーシャの目の前に立つ姿は、胡楊のように真っすぐ堂々としていた。

[ユーシャ] ……

[チェン] 何故私が来ると知っていた?

[ユーシャ] 何を言ってるの。

[チェン] かなり離れているのに、遠くからでもお前のアーツが見えたからな。てっきり、私に助けを求めているのだと思ったが。

[ユーシャ] うぬぼれないでくれる? あなたが玉門にいるなんて知るわけないでしょ――

[ユーシャ] どうして来たの?

[チェン] たまたま通りかかった。

[ユーシャ] まさかドッソレスの時みたいに、私の後をつけてるの?

[チェン] あの時は、お前が私の後をつけてたんだろうが!?

[ユーシャ] ……ウェイ長官が暗殺に遭ったことを聞いたとか?

[チェン] ……

[チェン] 無駄口を叩いてる暇があったら、まずはこれがどういう状況か説明したらどうだ?

砂塵がようやく晴れると、倉庫内にはもう誰もいなかった。

[ユーシャ] 説明してる暇はないの。城門へ行くわよ!

玉門に来てからしばらく経つが、ドゥ・ヤオイェが通りをここまで長く感じたのは初めてだった。

たった数百メートルの、しかも舗装された平坦な道が、尋日峰(じんじつほう)の山道よりも険しく思えた。胸に抱く小さな箱は、山の担夫が担ぐ石よりも重く感じた。

[モン・ティエイー] 鏢局にしろ、物流にしろ、根っこは同じだ。誰かの命のために、自分の命を懸けて仕事をこなす。もしこの業界で名を上げてぇなら、肩にのしかかる重さを承知しなきゃな。

父が以前、繰り返し語ってきたかつての仕事の話。実はすべて覚えている。

様々な物語があったが、どれも下敷きになっている道理は同じだ。でも、そういう重要なことに限って、自分自身が経験してみないと、本当の意味で理解できないものなのだ。

[ドゥ] (早く、早く……)

[ドゥ] (城門が見えた!)

[ドゥ] もう追いつかれたの!?

風音で敵の来る方向や使っている武器を判別するという技を、ドゥ・ヤオイェは学んだことがある。余計なことに気を取られなければ、彼女はその矢を確実に避けていた。

矢は彼女の右肩を貫き、箱が懐から飛び出した。彼女は慌てて左手を伸ばして受け止めようとしたが、バランスを崩してそのまま箱と共に地面に倒れた。

[恐ろしい山海衆メンバー] 殺せ。箱を奪え。

[ワイフー] ドゥさん!

[ドゥ] あんた……

[ワイフー] 別の悪党を追っていたら、ここにたどり着きました。

[ワイフー] 昨夜、私が鋳剣坊に駆け付けた時に、ちょうどあなたが兵士に連れて行かれるのを見ましたが……今のこの状況は……?

[ドゥ] それは終わったことよ……

[ドゥ] ちょうどいいところに来てくれたわ。こいつらを片づけるのを手伝って。

[ワイフー] いいでしょう。

[恐ろしい山海衆メンバー] 矢を放て。

[???] 図に乗るな。

白絹。雪。あるいは剣閃。

几帳面なほど真二つに断たれた矢が辺り一面に落ちた。

[ドゥ] あんた……昨日の夜、ズオ・ラウを助けた人ね……

[ドゥ] 力を貸して。とても重要なものを平祟侯に渡さないといけないの。

[チュー・バイ] ……

[チュー・バイ] 平祟侯は玉門外周の城楼を守っています。あなたは随分と重そうな矢傷を負っていますが、まだ走れるのですか?

[ドゥ] 荷は命よりも重い。

[チュー・バイ] そうですか、ではこの場は私たちが引き受けましょう。

[ドゥ] そうだ、あんたたちの知り合いのリン特使が、一人で例の性悪女の相手をしてるの……

[ドゥ] 倉庫よ。助けに行ってあげて。

[ワイフー] ユーシャ姉が!

[チュー・バイ] わかりました。もう行ってください。

[恐ろしい山海衆メンバー] ……

[チュー・バイ] 往来での犯行は何度目ですか? 山海衆とやら、あまりに傍若無人ですね。

[山海衆首領] ……

[恐ろしい山海衆メンバー] 先生。

[山海衆首領] 例の娘は?

[恐ろしい山海衆メンバー] もう少しのところで、この二人が邪魔に入って……

[山海衆首領] 駄物が。

[山海衆首領] 追え。データを奪い返せ。

[チュー・バイ] ここは通しません。

[山海衆首領] 我の道を阻むと? ならば此度は我が刀を躱せぬだろう。

[ワイフー] この人がドゥさんが言っていた性悪女ですか?

[ワイフー] この人が追って来たってことは、ユーシャ姉は……

[???] 無事よ。

[ユーシャ] なんとか追いついたわね。

[ワイフー] ユーシャ姉……と、もしかして、チェン警司!?

[チェン] ……

[ユーシャ] 大丈夫、見間違いじゃないわ。ドゥ・ヤオイェは?

[ワイフー] もう行きました。

[ユーシャ] そう。なら、残りの仕事は一つだけね。

[ユーシャ] ――こいつを、止めるわよ。

[山海衆首領] ……

[山海衆首領] 実以て、無意義なことだ。

[山海衆首領] どれほど時が過ぎようと、お前たちは元のままであるようだ。力への畏敬を知らぬ。

[山海衆首領] 虫けらが群となったとて、虫には相違ない。

風が雲を払う。月光が、がらんとした大通りを照らす。

通りはいささか作り物めいて整っていた。数枚の枯れ葉が、煉瓦の上でくるくると回っている。

それは、賑わいが抜け落ちたあとの、空の器だ。

寥寥たる秋の夜とはよく言ったもの。

[山海衆首領] ここまでだな。

秋の夜……?

[ワイフー] 近頃玉門で騒動が絶えないのは、全部この人の仕業ですか?

[チュー・バイ] 随分と景気よく暴れてくれましたし、そろそろ終わりにすべきでしょう。

[チュー・バイ] 各位、用心してください。彼女のアーツは異質です。

[ユーシャ] 父さんとウェイ長官が二人がかりでも止められなかった女よ。どれほどの異常な手を隠し持ってるか分かったもんじゃないわ。

[チェン] つまり、この戯言ばかり喚いてる女が、ウェイを暗殺しようとした張本人か?

[ユーシャ] 怖いの?

[チェン] バカを言うな。

[チェン] ウェイを笑ってやるいい機会だ。こいつを始末するぞ。

[ユーシャ] ええ。

[ユーシャ] ここで、終わらせましょう。

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