aklib_story_理想都市-エンドレスカーニバル-_IC-9_ドームの上_戦闘後

ページ名:aklib_story_理想都市-エンドレスカーニバル-_IC-9_ドームの上_戦闘後

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理想都市-エンドレスカーニバル-_IC-9_ドームの上_戦闘後

ついにスディチは自分の心と向き合った。ゼルウェルツァの市民たちも地上へと向かい、新たな生活を始める覚悟を決めたのだった。


[クロッケ] うん、それを聞いて私も思い出したよ。

[クロッケ] 数年前、彼とキャッチのドームに関するコンペに、私も何回か参加したことがある。

[クロッケ] あの時はまだ、ヴィンチ先生がいなくなって間もない頃で、頭角を現し始めたばかりの若きデザイナーたちは、ドームの改修案で自分の才能を証明しようとしていた。

[クロッケ] キャッチはいつもすらすらとプレゼンを展開して、自分のデザインの優れている点について説明していた。

[クロッケ] 対してスディチは、自分の描いた美しい図面を机に広げると、そのまま後ろへ下がっていた。彼は説明にエネルギーを割くつもりはなく、私たちに自発的な理解を望んでいるみたいだった。

[クロッケ] キャッチの綿密なアイディアを好む人もいれば、スディチの作品に対する自信、あるいは矜持を認める人もいた。彼らはどちらも間違いなく貴石と呼ばれるにふさわしかったよ。

[クロッケ] その争いは数年間続いたけど、どちらのデザインも大多数の賛同を得られず、採用されることはなかった。

[クロッケ] そしてある日を境に、スディチが姿を現わさなくなった。

[エッジ] ヴィンチがまだ都市にいた時、弟子の将来がとても心配だと言っていたよ。

[エッジ] お前が今言ったようなことを他人がどれだけ言おうと意味がない。あいつ自身が悟り、その傲慢さを捨てなければ、他人の意見に耳を傾けることはできない。

[エッジ] そうでなければ、キャッチはおろか、ガヴィルのような強引な者でさえ、あいつを動かすことはできないだろうな。

[クロッケ] たとえガヴィルが、心から彼を助けたいと思っても?

[エッジ] それでどうにかなるようなら、ヴィンチの奴がとっくに試していただろう。

[エッジ] しかし、どうだろうな……キャッチとガヴィルは正反対の性格だ。あの二人が一緒にスディチを説得すれば、あるいは本当に奇跡が起こるかもしれない。

[ガヴィル] はぁ、こいつらはズゥママの友達だからな、適当に殴れないのが面倒だ。

[ガヴィル] ん? そうだ、お前らズゥママを知ってんだろ? アタシはあいつのダチなんだ。

[奇怪なロボット] ズゥママ……プロフィール確認、ズゥママノダチ、ガヴィル。

[奇怪なロボット] ズゥママ言ッテタ、ガヴィル妨害、ダメ。

[奇怪なロボット] 当機タチ、ガヴィル妨害、シナイ。

[スディチ] なに!?

[ガヴィル] ハハッ、前にあいつがお前らと楽しそうに遊んでるのを見たけど、まさか本当にあいつの名前が役に立つとはな。

[スディチ] クソッ!

[ガヴィル] スディチの奴を取り囲んでくれねぇか?

[奇怪なロボット] 当機タチ、ゼルウェルツァ市民、攻撃不可。

[ガヴィル] 安心しろ、ただ行くべきところにこいつを連れて行くだけだ。

[奇怪なロボット] 理解。ガヴィル信ジル。ガヴィル手伝ウ。

[スディチ] 邪魔すんな!

[ガヴィル] スディチ・ブランクキャンバス、お前に一つ訊きたい。

[スディチ] ……アンタに話すことはもう何もない!

[ガヴィル] ベラベラとくっちゃべってたけどよ、結局お前はゼルウェルツァの住民が嫌いなのか?

[スディチ] ……

[ガヴィル] いや、答えなくていいや。

[ガヴィル] もしここの住民を嫌ってるんなら、地上に来た後、あそこに残っていりゃあよかったわけだし、部族の危機を伝えなくたってよかったんだもんな。

[ガヴィル] だが、最終的にお前はアタシたちを連れて戻ってきた。

[ガヴィル] ドームを修理したくなくても、お前はこの都市を見捨てることができなかったんだ。だからトミミやイナムを地下に連れてきた。

[スディチ] だったら何なんだよ?

[ガヴィル] 気になるんだよ、アタシは。

[ガヴィル] 今までお前のデザインを否定した奴らに、なんで気に入らねぇか訊いたことはあんのか?

[スディチ] ……ない。

[ガヴィル] だろうな。さっきの話だって、どうせ周りの誰にも言ってねぇんだろうしな。

[ガヴィル] 本当のとこ、お前はまだ本心をアタシに話しちゃいない。

[ガヴィル] それもわかるよ。口にしにくいこともあるだろうさ。

[ガヴィル] アタシの患者の中にも、意地でも話さないって奴はたくさんいる。

[ガヴィル] 人に迷惑をかけたくないだとか、自分を理解してくれる人はいないだとか、ただの強情っぱりで言わねぇ奴とか、色々だ。

[ガヴィル] だがな。どんな理由があれ、お前が思ってることは、自分から言わなけりゃ、死んだって誰も知らねぇままなんだぞ。

[ガヴィル] スディチ、お前が間違ってるとは言わねぇよ。

[ガヴィル] だがお前には今までと違うことをしてもらう。

[スディチ] 本心なんて、今じゃオレでさえわからないんだよ!

[ガヴィル] だったらせめて――

[???] 待って!

[ガヴィル] ん?

[キャッチ] ガヴィルさん、待ってくれ。

[スディチ] キャッチ? どうしてここにいるんだ?

広場は静まり返っていた。

ドゥリン全員が、アヴドーチャの話に集中して耳を傾けている。

初めは心温まる内容だったが、それは次第に殺伐な空気を帯びた。

危機一髪の場面では誰もが思わず息を止めたが、次の瞬間、彼女が幸いにも生き残ったことに、安堵のため息が広がった。

だが、これら全ては序の口にすぎなかった。なぜなら生き延びたことこそが苦しみと旅の始まりで、彼女はその道の途中でさらに多くを経験したからだ。

[アヴドーチヤ] ……洞窟の果てにたどり着いた時、わらわは一瞬、夢を見ているのではないかと思いましたわ。

[アヴドーチヤ] もし目に入ったのは金属光沢のある昇降機でなければ、わらわを迎えに来た、死の国へと通ずる階段だと思ったでしょう。

[アヴドーチヤ] 洞窟を進んでいる間、わらわの心は喜びに満ちていましたわ。追手の気配がやっと消えて、わらわの苦しみもついに終わると思ったからです。

[アヴドーチヤ] 人が誰もいない洞窟の中で、わらわは死の懐に潜り、ようやく一休みできると。

[アヴドーチヤ] しかし、あの昇降機は新たな人生へと続く扉でした。

[アヴドーチヤ] 以上が、わらわが地下に来る前に経験した出来事ですわ。

[アヴドーチヤ] これこそ、わらわが皆様にお伝えできる、地上での生活ですの。

[アヴドーチヤ] これは決して美しいと呼べるものではありませんわ。

[アヴドーチヤ] ですが、今になって振り返ってみると、わらわが思い込んでいたほどひどくはないかもしれません。

[アヴドーチヤ] 会議の前に、わらわがこの話を皆様にした理由は、きっと勘のいい方ならもうお気付きでしょう。

[アヴドーチヤ] そういうことですわ。

[アヴドーチヤ] 討論の結果、わらわたちが導き出した三つの避難計画――

[アヴドーチヤ] 一つ目、トンネルを通って避難する。

[アヴドーチヤ] 計算によれば、どれだけ迅速に避難を始めても、爆発までに住民の七割程度しか、トンネルの向こうの姉妹都市に避難できませんわ。

[アヴドーチヤ] この案を採用した場合、今すぐに行動を始めなければなりません。いかなる遅れも許されませんわ。

[アヴドーチヤ] 二つ目、トンネルの反対側にシェルターを構築して避難する。この案の場合、今すぐ全てのリソースを投入し、トンネルの反対側にある空洞を掘り進めてシェルターを作ることになります。

[アヴドーチヤ] 現時点において、この案における生存率は、先ほどの案よりも高くなる計算ですわ。シェルターが都市の全住民を収容できるかどうかに関わらず。

[アヴドーチヤ] たとえすべての人を収容できたとしても、災害は都市のほとんどの設備を破壊します。他の都市との唯一の交通手段であるトンネルも崩壊するでしょう。

[アヴドーチヤ] 災害が去った後、その状況で我々がどうやって生き延びるかが問題となりますわ。

[アヴドーチヤ] 三つ目……地上へ向かう。

[アヴドーチヤ] 工業代表の試算だと、工業昇降機を拡張すれば、爆発前に都市の全住民を上方の洞窟に移動させることが可能ですわ。拡張は短時間の作業で間に合います。

[アヴドーチヤ] しばらく前にここへ来た客人たちは、まさにゼルウェルツァの真上からやってまいりましたわ。

[アヴドーチヤ] そこには、アカフラと呼ばれる密林がありますの。彼女たちは密林の管理者として、ゼルウェルツァの住民たちに居住スペース、および各種支援物資を喜んで提供してくれるそうですわ。

[アヴドーチヤ] 災害が去って、一段落した後で、我々はここに戻るか、あるいは別の生きる道を探すかを選択することができます。

[アヴドーチヤ] 現状、この三つ目の案が最もリスクが低く、なおかつ住民全員が生き延びられる可能性が最も高い方法ですわ。

[アヴドーチヤ] ただここで、我々はドゥリンにとって、恐らく前代未聞となる決断をしなければなりません――

[アヴドーチヤ] そう、地上へ向かうという決断を。

[アヴドーチヤ] わらわの先程の話は、わらわ自身の経験であると同時に、この選択肢の検討材料として述べたものでもあります。

[アヴドーチヤ] 皆様は選択をしなくてはなりません。しかしわらわの主観で述べる地上の話が、皆様の選択を左右してほしくはありません。

[アヴドーチヤ] ですから、わらわは地上の話ではなく自らの経験を話し、皆様自身で判断していただくことにいたしました。

[アヴドーチヤ] では慣例のとおり、十分後に三つの計画についての多数決を行いますわ。

[キャッチ] スディチに話したいことがあるんだ。

[ガヴィル] わかった。

[キャッチ] スディチ、僕は……

[スディチ] ドームのことだけど、アンタに任せた方がいいんじゃないの?

[スディチ] アンタは現任の設計代表で、みんなアンタのこと好きなんだろ。新しいドームをデザインすればきっと受け入れてもらえるはずだよ。

[スディチ] 今まで続けてきた競い合いは、アンタの勝ちだよ。

[キャッチ] いや、僕が言いたいのはそんなことじゃないよ。

[キャッチ] 僕は君に別れを告げに来たんだ。

[スディチ] ……何だって?

[キャッチ] 聞いてくれ。ヴィンチ先生がいなくなってから、設計代表の職は僕が代理でずっと務めてきた。

[キャッチ] そしてこの重責を引き受けてから徐々に、僕の能力ではこの責任を担いきれないかもしれないと思うようになったんだ。

[キャッチ] 実は、僕はずっとヴィンチ先生を探しに行きたいと思ってた。この都市の本当の設計代表は彼しかいないよ。

[スディチ] ……

[キャッチ] 僕が都市を離れたら、このポジションを引き継ぐのに一番ふさわしいのは、当然ヴィンチ先生の弟子である君だ。

[キャッチ] たった今、設計部に戻って引き継ぎ業務を終わらせてきた。すぐに荷物をまとめて出発するつもりなんだ。

[スディチ] どうして今なんだよ!?

[キャッチ] 地上へ行く話は聞いた。さっき広場を通った時、アヴドーチャさんのスピーチが聞こえてきたんだ。

[キャッチ] あの提案は最終的に可決されると思う。

[キャッチ] でもヴィンチ先生はきっとどこかのドゥリンの都市にいるはずだ。僕はまだトンネルを通れる今のうちに、急いで隣の都市へ行ってそれから計画を立てようと思う。

[キャッチ] だから残念だけど、ドームの改修には関われないんだ。

[スディチ] そんなっ……そんなことして、オレが感謝するとでも思っているのかよ!

[キャッチ] 僕がこうするって決めたのは、君に感謝されたいからじゃないよ、スディチ。

[キャッチ] 君ならできると本気で思ってるんだ。

[キャッチ] 君に足りないのは、他の人に君を知ってもらう機会だけなんだよ、本当に。

[スディチ] アンタな――!

怒ったスディチは、キャッチを殴ろうと拳を振り上げた。

しかし、その拳は途中で力なく下ろされた。

[スディチ] 師匠が突然いなくなったのは、オレを独り立ちさせたいからだっていうのはわかってる。

[スディチ] アンタがそうするのも、オレに頑張ってほしいからだっていうのはわかってる。

[スディチ] ガヴィルもだ。アンタたちが親切でやってるのはわかってる。

[スディチ] っ。そんなの、わかってるに決まってるだろ!

[スディチ] だけど、師匠も、アンタも、ガヴィルも、どうしてそこまでオレに構おうとするんだよ!

[スディチ] どうして放っといてくれないんだよ!

[スディチ] どうして引っ張り出そうとするんだよ!

[スディチ] どうしてオレにそんなに優しくするんだよ!

[スディチ] どうして!

キャッチはしばらく黙っていたが、足元にあったくしゃくしゃの設計図を拾い上げると、丁寧に広げてシワを伸ばし、スディチに渡した。

[キャッチ] だって、君はこんなにも努力してるじゃないか。

[キャッチ] 君ならできるさ、スディチ。

[ガヴィル] 人に良くしてやるのに理由なんていらねぇだろ?

[ガヴィル] どうしてもっていうなら、相手が落ちぶれていくのを見たくないってのは理由にならねぇのか?

[ガヴィル] ほら、立てよ、スディチ。

[ガヴィル] めそめそすんな。

[ガヴィル] お前は最初、アタシの部族を騙して、今もたくさんの人に迷惑をかけてる。

[ガヴィル] だから一発ぶん殴る。

[ガヴィル] 耐えろよ、痛くしねぇから。

ガヴィルが拳を振り上げるのを見つめながら──

スディチはその一瞬の間に、様々なことを思い出した。

師匠の授業を受けていた時の喜び。

師匠が去った後の悔しさ。

コンペで失敗するたび、設計部の扉から出る時の落胆。

そうするうちに、ドームを見上げる時に湧き上がる気持ちは、闘志から怒りへと変わっていった。

これらの感情は自分だけのものであり、それを理解できる者は誰もいない。理解される必要もないと、彼はずっと思っていた。

しかし今この瞬間──こんなにも自分のことを理解しようとしてくれる人が、そして助けようとしてくれる人がいることに、彼は気付いたのだ。

彼はようやく理解した。自分は意固地になりすぎていたのだと。

そして彼は覚悟した。自分は今、確かにこの拳を受けるべきだと。

「ドン!」

しかし、予想していた痛みは訪れなかった。

彼が下を見ると、テーブルの一部が深々と拳の形に陥没していた。

[ガヴィル] ハッ、今になって怖くなったか?

[ガヴィル] 安心しな、アタシの拳は悪い奴をぶん殴ることにしか使わねぇ。

[ガヴィル] お前は悪い奴じゃねぇ、ただ頭があんま良くねぇだけだ。殴ったりしねぇよ。

[スディチ] 誰が頭が良くないんだ!

[ガヴィル] ほう、まだ口答えする気力があんなら、大丈夫そうだな。

[ガヴィル] どうだ、今ならアタシと一緒に来てくれんだろ?

[スディチ] 仕方ないな。

[アヴドーチヤ] では、これより採決を開始いたしますわ。

[アヴドーチヤ] 一つ目の案に賛成の方は、挙手をお願いいたします。

広場には、パラパラと少なくない数の手が挙がった。

彼らの表情は落ち着き払っている。手を挙げる者は多くないだろうとわかっていながら、それでもこの選択をしたようだった。

アヴドーチャはわかっていた。この選択をするドゥリン人は、常に自らが犠牲になることを厭わないと。

[アヴドーチヤ] 記録員の方は一つ目の案に賛成した人数を記録してください。

[アヴドーチヤ] ……はい、では下ろしてください。

[アヴドーチヤ] 二つ目の案に賛成の方は、挙手をお願いいたします。

今回、手を挙げた者は先ほどよりずっと増え、その多くが手に酒瓶を握っていた。

彼らのほとんどが、がっしりとした体格の持ち主で、掘削に自信があるのは明らかだった。

[アヴドーチヤ] 記録員の方は二つ目の案に賛成した人数を記録してください。

[アヴドーチヤ] ……はい、では下ろしてください。

[アヴドーチヤ] 三つ目の案に賛成の方は、挙手をお願いいたします。

......

広場がしんと静まる。

手を挙げる者はいない。

アヴドーチャはわかっていた。これも当然のことであると。地上へ向かう――それはドゥリン人にとって重大すぎる決断であり、彼女一人がスピーチをした程度で簡単に心を動かせるものではない。

しかし、広場でひそひそと話すドゥリン人たちを見て、彼女は自分の話が無意味だったわけではないとわかった。

ドゥリンたちは恐れているのではなく、ただきっかけが必要なだけなのだ。

今、あともう一押しが必要なのだ。

彼女は心の中でひそかに罪悪感を覚えた。

過去の彼女であれば、恐らく地上に向かうことに真っ先に反対していただろう。

だが今の彼女は、そのために他人を説得しようとしている。

しかし罪悪感はすぐに消え失せた。なぜなら彼女は、自分が正しいと思うことを行っているからだ。

[アヴドーチヤ] 地上へ向かうことに関して、いくつか補足しなければならないことがございますわ。

[アヴドーチヤ] アカフラは湿潤なジャングルです。年間を通して、気温が低くなることはありません。

[アヴドーチヤ] 温度管理システムがなくとも、我々は問題なく順応して暮らすことができるはずですわ。

[アヴドーチヤ] それから、アカフラは豊富な水産資源を持つ湖と、天然の滝を有しておりますわ。つまりそこには天然の「どでかい水たまり」があるということですの。

[アヴドーチヤ] さらに、そこには豊富な鉱物資源や土地も備えておりますわ。我々が望めば、そこに新たに都市を築くことも可能ですわよ。

[アヴドーチヤ] もちろんそれに加えて、ゼルウェルツァが誇る――皆様にまた笑顔を与える新たなシンボルだって作れますわ!

[アヴドーチヤ] ですが、この点に関してはアカフラのリーダーと少し話し合う必要がありますわね。

[アヴドーチヤ] ……

[ガヴィル] イナムならきっと賛成してくれるぜ。

[アヴドーチヤ] ガヴィルさん!?

[ガヴィル] よぉ、アヴドーチャ、連れてきてやったぜ。

[アヴドーチヤ] え? 誰をですの?

[ガヴィル] スディチだよ。お前らの話し合いもそんくらいだろ。お次はドーム改修の件について話し合うんじゃねぇのか?

[ガヴィル] アタシってば、めっちゃナイスタイミングだったんじゃね?

[アヴドーチヤ] 全くナイスタイミングではありませんわ!

[ガヴィル] あっそ。まあいいや。とにかく、アタシはリーダーじゃねぇけど、あいつの代わりに言っといてやるよ、アカフラはドゥリンのみんなを歓迎するぜ!

[アヴドーチヤ] 早く壇上から降りてくださいまし!

[ガヴィル] ケチくさいな、もうちょっとしゃべらせてくれよ!

[アヴドーチヤ] ダメですわ!

[心を動かされたドゥリン] ガヴィルも、あの地上人たちも、みんな面白い奴らだよな。

[理性的なドゥリン] だな。それに、あいつらは単にいい奴ってだけじゃなくて、すげぇ強いしな。あいつらと友達になるのは悪くない選択かもな。

[上機嫌なドゥリン] 私もそう思うわ! しかもアカフラにはもっと大きな「どでかい水たまり」があるんでしょ。それ以上に面白いことなんてある?

[理性的なドゥリン] だけど冷静に考えてみると、これはドゥリンの全種族の未来に影響することかもしれないぞ。

[心を動かされたドゥリン] だけど予想できる未来は、どれも受け入れられそうな結果だろ。

[上機嫌なドゥリン] そうよ、アヴドーチャの話の中の地上は、私たちが聞いてたのと同じだし、良くないことがたくさん起きてるけど――

[理性的なドゥリン] でもそういう出来事があったとしても、結局アヴドーチャみたいに優しい人もいるのなら、何も俺たちが恐れる必要はないかもな。

[上機嫌なドゥリン] それに、それにね、地上ではあの『奇談怪論』が、いまだに刊行中なんだって!

[アヴドーチヤ] ガヴィルさん、わらわがこの時のために、どれだけ頑張って準備をしたかご存じですの!?

[アヴドーチヤ] 貴方が茶々を入れたせいで、最終的に皆様が地上に行かないと決めたらどうしてくれますの!?

[ガヴィル] うーん……けどさっき見渡してみたけどよ、ドゥリン人の顔には憧れや期待の表情が浮かんでたぞ。きっと同意してくれるはずだぜ。

[ガヴィル] お前はもうあいつらを説得できてるんだよ。

[アヴドーチヤ] 貴方という方は、どうしていつもそう楽観的なのかしら……

[エッジ] ところでガヴィル、スディチの様子はどうだ?

[ガヴィル] やってみるってよ。

[ガヴィル] ってあれ? あいつはどこだ?

[エッジ] あいつがまだ広場に残っているのが見えたぞ、だからお前に尋ねたのだ。

[エッジ] しかし、確かにやってみるつもりはあるようだな。

[エッジ] ならば私も手伝ってやるとするか。

広場には大変な人だかりができ、人々がこぞって地上へ向かう件について話し合っている。

そんな中、彼は一人で孤立しているようだった。こういった状況に慣れていないため、本当であればガヴィルと一緒に部屋に入るべきだったのだ。

しかし彼は動じない。

自分が恐れているわけではないことは理解していた。

自分の内に衝動があり、言いたいことがあるのもわかっていた。

ただ、どう口を開けばいいのかを、彼は知らなかった。

[エッジ] そうだ、諸君に一つ残念なお知らせがあった。

[エッジ] 我々の設計代表代理であるキャッチ・ライトレースだが、ゼルウェルツァがまもなく滅ぶと知った後、現職を辞任し、ひとまず我々とは別の道を歩むことを決めた。

[エッジ] 彼は、行方不明の前設計代表、ヴィンチ・ブランクキャンバスを探しに行くことにしたそうだ。

[エッジ] 彼の決断について、私は理解と尊重を示す。

[エッジ] そして彼は去る前に、ヴィンチの弟子──スディチ・ブランクキャンバスに彼の仕事を引き継がせると指名している。

[エッジ] スディチ・ブランクキャンバスが才能あふれる建築デザイナーであることをよく知っているため、私も彼の指名に同意した。

[エッジ] ではこれより、スディチ本人から諸君に一言もらうことにしよう。

[エッジ] スディチ、何か言葉を。

[スディチ] ……

[スディチ] オレは……みんながオレのことをあんまりよく知らないってことはわかってる。みんなが知ってるのはオレの師匠である、かのヴィンチ・ブランクキャンバスの方だ。

[スディチ] オ、オレと師匠のスタイルは違う。師匠のスタイルは物欲への対抗を強調し、オレのスタイルは──

[スディチ] ごめん、オレが言いたいのはこんなことじゃない。

[スディチ] オレが言いたいのは……地上へ向かう案についてはさっき聞いた。

[スディチ] これは、みんなにとって簡単な決断ではないことはわかってる。

[スディチ] でもオレは、これが最も安全な方法だとも思う。

[スディチ] この案を選べば、オレたちにはまだ都市の遺影を完璧にする時間がある。

[スディチ] オレにできることは多くない。だけど、この最後の時間でオレは、できる限りドームの改修案を描き上げたいと思う。

[スディチ] それに、もし可能であれば、この計画を通してドームをより強固なものにしたいんだ。

[スディチ] 活性化した源石鉱脈の爆発を完全に食い止めるのは不可能だけど、新しいドームは地上へ向かう時間を稼いでくれるはずだ。

[スディチ] だからみんな……みんなで一緒に地上へ行こう。師匠も……きっとそう言うはずだよ。

広場はしんと静まり返っている。

[スディチ] (小声)エッジ先生、オレ何か間違ったこと言ったかな?

[エッジ] いいや、よく言った。小僧、お前ならやれるとわかっていたぞ。

[エッジ] では諸君、三つ目の案について、改めて採決をするぞ。

次の瞬間、スディチの言葉で意見が統一されたかのように、一人、二人、三人……やがて、すぐには数えきれない数の手が挙がっていく。

彼らは口々に違う言葉を叫んでいるため、スディチはうまく聞き取れなかった。

しかし彼には自分を褒めたたえるいくつかの声が微かに聴こえた。

遠い高台の上に、キャッチの姿が見えた。手を振る彼はまるで「おめでとう」と言っているかのようだった。

彼は身体に電流が突き抜けるような感覚を覚えた。

人に認められるということ――それが、こんなにも胸が高鳴ることだと、彼は初めて気付いたのだ。

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