aklib_story_塵影に交わる残響_LE-2_熱情あるいは悲愴_戦闘後

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塵影に交わる残響_LE-2_熱情、あるいは悲愴_戦闘後

通りかかったエーベンホルツとクライデがハイビスカスを助ける。だがツェルニーから借りていたチェロが破損してしまった。二人の演奏は依然ツェルニーから認められていない。しかしコンサートの開催日は確実に迫っている。


人々がハイビスカスに向かって押し寄せる。アンダンテがなんとか前に出て盾になり、必死で押し止めようとしたが多勢に無勢であった。

群衆はすぐにアンダンテを押しのけ、ハイビスカスをぐるりと取り囲んだ。

[酔っぱらった感染者] 二度も同じこと言わせんじゃねぇ、消えろ!

[アンダンテ] 何を考えてるの!? 彼女はあなたたちを助けに来てくれたのに、どうしてこんなことを!?

[怪しい感染者] アンダンテ、こいつはあんたには関係ない! この魔族を守りたいと言うのなら、さっさとこいつをアフターグロー区から追い出せ!

[クライデ] い――

[クライデ] 一体何があったんですか?

[アンダンテ] クライデ? ハイビスカスが……みんなに囲まれてるんだ!

[クライデ] どいて、どいてください――入れてください!!

[酔っぱらった感染者] お前、どっから湧いて来やがった?

[酔っぱらった感染者] あぁ、思い出した。いつだったか、爺さんと二人でこの区に流れ着いたガキだな。余計なことに首を突っ込むんじゃねぇ、おとなしく帰って爺さんの面倒でも見てろ!

[クライデ] ハイビスカスさんは皆さんを助けに来てくれたんですよ。どうして彼女にこんな仕打ちをするんですか?

[酔っぱらった感染者] お前みたいな奴にはわかりっこねぇ、俺たちゃ魔族の手から自分の家を守ってるんだ! 失せろ!

[クライデ] ハイビスカスさんはそんな人ではありません!

[クライデ] 鉱石病の治療に来てくれたんです。彼女が誠心誠意、感染者のために走り回っているのは皆さんもその目で見たでしょう?

[怪しい感染者] 鉱石病の治療? こいつが誰を治せたっていうんだよ!

[ハイビスカス] クライデさん。私は大丈夫ですから、関わらないでください。ここはヴィセハイムですから、街中で彼らが暴力を振るうことなんてできません。

[酔っぱらった感染者] 何ができないって!?

[クライデ] そんなっ!! 僕のチェロが!?

[ハイビスカス] あなた正気ですか!?

[ハイビスカス] 私が気に食わないなら、私に攻撃してきなさい! どうして彼に術を放つんです? 彼は関係ないでしょう!?

[酔っぱらった感染者] お……俺は人に向けたんじゃ――

[怪しい感染者] 魔族どもと議論する必要はない! 早く失せろ! さもないと、そのチェロと同じように体に穴があくぞ!

[怪しい感染者] フルート?

[怪しい感染者] 今度は誰なんだ、出てこい!

[物好きな感染者] ……

[物好きな感染者] 心臓が――バクバクする……

[怪しい感染者] *リターニアスラング*、どうしてあいつが出てくるんだ……

[酔っぱらった感染者] おい、お前らどこ行くんだ、何で――

[物好きな感染者] 聴こえなかったのか? あの音が……

[酔っぱらった感染者] ……まさか……まさかあれは――そんな……

[酔っぱらった感染者] お許しください、ご勘弁を――ちょっと飲み過ぎただけなんです。決して無礼を働くつもりは……

[酔っぱらった感染者] ――ってもう誰もいない? 何してんだ俺は、早く逃げないと!

[ハイビスカス] あんなにたくさんの人がいたのに……

[ハイビスカス] もういなくなったの?

[ハイビスカス] クライデさん、大丈夫ですか? お怪我はありませんか!

[クライデ] 大丈夫です、でもチェロが……

[ハイビスカス] あっ、表板がひどく割れちゃってる……直せますか?

[クライデ] わかりません……

[ハイビスカス] 助けてくれてありがとうございます。

[エーベンホルツ] 気にするな。

[エーベンホルツ] 初めまして――ではないが、ちゃんと挨拶をしてはいなかったな。

[エーベンホルツ] 正直、さっきは危なかったぞ。アフターグロー区もヴィセハイムの一部ではあるが、普通の保安官はここへは来たがらないからな。

[エーベンホルツ] もし集まった者たちが本当に暴力に訴えていたら、すぐに助けが来るとは限らなかった。

[ハイビスカス] 改めてお礼を言わせてください。あなたのことは何とお呼びすればいいでしょうか?

[エーベンホルツ] エーベンホルツでいい。

[ハイビスカス] はい。それで……エーベンホルツさんは彼らが言っていた予言について聞いたことはありますか?

[エーベンホルツ] 一切ないな。私もたった今、人々の口から初めてその話を聞いた。

[ハイビスカス] つまり、この予言はクリフィーパティオ区までは広まっていない、ということでしょうか……

[エーベンホルツ] クリフィーパティオ区?

[ハイビスカス] ヴィセハイムの貴族の方は、皆さんクリフィーパティオ区に住んでいらっしゃるんでしょう?

[エーベンホルツ] 私とあれらを一緒にしないでくれ。

[ハイビスカス] え? あなたはヴィセハイムの貴族では……

[エーベンホルツ] 私はヴィセハイムの人間ではない。

[エーベンホルツ] それと、貴族の身分を無遠慮に詮索するのは、あまり褒められた行為ではないな。

[ハイビスカス] ……

[ハイビスカス] ということは、ツェルニーさんのコンサートに参加するために、わざわざやってきたんですか? あなたも感染者ですか?

[エーベンホルツ] いいや、私は鉱石病に感染してはいない。

[ハイビスカス] でも、噂ではコンサートに参加しに来る人はみんな感染者だと――

[エーベンホルツ] 話はこれで終わりにしよう。

[ハイビスカス] お急ぎなんですか?

[エーベンホルツ] もちろん急いでいる。

[エーベンホルツ] 元々はクライデと一緒にツェルニーの家へ向かう途中だったんだ。今日の練習の成果を見てもらうためにな。まさかこんな場面に遭遇するとは思っていなかった。

[ハイビスカス] お時間を取らせてしまって、すみませんでした。

[ハイビスカス] では、私はひとまず事務所に帰ることにします。

[クライデ] ……

[エーベンホルツ] ほら、もう落ち込むな。ひとまずツェルニーの家へ行くぞ。あれほど君のことを気に入っていたんだ、またチェロをくれるだろう。

[クライデ] あなたはまたそんな……

[エーベンホルツ] いや、皮肉のつもりで言ったわけではない……

[クライデ] ……大丈夫です。

[エーベンホルツ] だが本当に妙な話だ。「陛下の予言」など全く聞いたことがない。

[エーベンホルツ] (まさかゲルトルーデか?)

[クライデ] ちらっと聞いたことはあります……でもとても曖昧で、サルカズについての言及はなかったはずですが……

[エーベンホルツ] まったくあの連中も、そんなに好きなのであれば、「女帝の声」の前で「かの陛下」と繰り返していればいいものを。その方が見物だろうが。

[エーベンホルツ] はぁ、まあいい、それよりコンサートの方が大事だ。

[エーベンホルツ] ま、この話はやめにして、早くツェルニーの家に行こう。

[クライデ] でも、チェロが……

[エーベンホルツ] さっき言っただろう、ツェルニーが用意してくれるさ。

[エーベンホルツ] それに、これは君のせいではない。ツェルニーがこのチェロのことで何か言ってきても、私が間に立つさ。気に病むことなどないだろう?

[クライデ] ……はい。

[ツェルニー] チェロが壊れた?

[ツェルニー] まさかあなた方も喧嘩をしたのですか!?

[エーベンホルツ] 違う、そうではなく――

[ツェルニー] クライデさん、あなたが話してください。

[エーベンホルツ] ……

[クライデ] ここに来る途中で、僕たちはハイビスカスさんに会ったんです。

[ツェルニー] ハイビスカスさんに?

[クライデ] 大勢の人に囲まれ、魔族は出て行けとかアフターグロー区に災いをもたらすなとか言われていました。

[ツェルニー] なんと救いようのない。

[クライデ] ハイビスカスさんを庇おうとしたのですが、それで……群衆の一人が放ったアーツでチェロを壊されてしまって。

[ツェルニー] 街の中でアーツを放つなんて、連中はどこまで頭のネジが飛んでいるんです!

[ツェルニー] で、あなたがその群衆を追い払ったと?

[クライデ] いえ、エーベンホルツさんが追い払ってくれました。アーツを使って僕とハイビスカスさんを助けてくれたんです。

[ツェルニー] 彼が? あなたを助けた?

[クライデ] はい。

[ツェルニー] そうですか、わかりました。

[ツェルニー] そのチェロ、到底使える状態には見えません……はぁ、このような出来の良いチェロは、私も一つしか持っていなかったのですが。

[クライデ] 申し訳ありません……

[ツェルニー] 謝る必要はありません。あなたのせいではありませんから。むしろ私の方こそ、アフターグロー区を代表して、愚か者たちの行為について謝罪すべきでしょう。

[ツェルニー] とにかくそのチェロはここに置いてください。ほかにお渡しできるものがないか探してみます。

[ツェルニー] ……この量産品しか残っていませんでした。

[ツェルニー] 今日はひとまずこれを使ってください。それでは、練習の成果を見せていただきましょうか。

[ツェルニー] 始めてください!

[ツェルニー] ……

[エーベンホルツ] ミスター・ツェルニー……どうだった?

[ツェルニー] ……

[ツェルニー] 向上がみられないわけではない。

[ツェルニー] それにあなた方からすれば、一日しか練習をしていない新曲です。私もあまり高い要求をすべきではありません。

[ツェルニー] ですが昨日に指摘した問題は、何一つとして解決していませんね。

[エーベンホルツ] 何一つとして解決していない? そんな――

[エーベンホルツ] ……

[ツェルニー] 反応は随分と速くなりました。ですがやはり自分のパートでは周囲が見えずに暴走して、どこかひけらかすような演奏をしていて、結局クライデさんがあなたに合わせにいってしまっているのですよ。

[ツェルニー] 曲を己のものともできていないのに、一体何をひけらかそうというのです? 未熟ですか?

[エーベンホルツ] ……

[ツェルニー] それと装飾音に関して……音は出せていますが、そのせいでブレスが不安定になり演奏全体の調和が危うくなっています。それで意味があるのですか?

[ツェルニー] クライデさんの方は、これまで通り堅実に弾けていますよ。問題は熟練度ですね。もう少し練習すればさらに良くなるでしょう。

[ツェルニー] ですが『夕べの夜明け』は二重奏です。片方が妥協して、もう一方に合わせていては演奏は成立しません。

[ツェルニー] 率直に言って、私は今『夕べの夜明け』を演奏曲のリストから外したいと思っています。

[クライデ] ツェルニーさん……

[ツェルニー] 言いたいことがあるならどうぞ。

[クライデ] エーベンホルツさんに、もう一度演奏させてあげられませんか? 今度はあなたのピアノ伴奏に合わせて。

[ツェルニー] 本気ですか?

[ツェルニー] 私はあなたのように彼に合わせはしませんよ。彼が醜態を晒しても私のせいにしないように。

[クライデ] 構いません。

[エーベンホルツ] ……

[クライデ] (小声)気合を入れてください、ここが勝負どころですよ。

[エーベンホルツ] (うなずく)

[ツェルニー] 準備はよろしいですか?

[エーベンホルツ] (深呼吸)

[エーベンホルツ] やるぞ。

[エーベンホルツ] ――どうだ!

[クライデ] ツェルニーさん?

[ツェルニー] ひけらかす様子に全く変わりありません。フルートを何だと思っているのです? あなたの技巧を誇示するための道具ですか?

[エーベンホルツ] ……

[ツェルニー] ですが。

[ツェルニー] 私はあなたのテンポに合わせるつもりは全くありませんでしたが、それでもご自分のパートを比較的安定して吹き切りましたね。

[ツェルニー] クライデさんは確かにあなたに合わせていますが、単純にその癖に合わせているだけで、あなたのレベルに合わせているわけではないということがわかりました。

[ツェルニー] 足りないものはまだまだありますが、最低ラインにはギリギリ達していると言えます。

[クライデ] つまり……?

[ツェルニー] 合格です。

[クライデ] やった!

[エーベンホルツ] (安堵して息を吐く)

[ツェルニー] 理解されていない可能性もあるので断っておきますが、この最低ラインとは今日時点での下限です。

[ツェルニー] あなた方には都度テストを課します。もし公演直前になってもこのレベルであれば、ステージには上がらせません。いいですか?

[クライデ] わかりました!

[ツェルニー] それと、クライデさんが今使ったチェロは量産品で、急場しのぎのものです。きちんとした楽器を用意することをお勧めします。

[クライデ] ですが、この前頂いたものはもう……

[エーベンホルツ] 大丈夫だ、私に任せろ。

[ツェルニー] ほう?

[エーベンホルツ] 明日一緒に買いに行こう。最高の楽器を選んでやる。

[信じやすい感染者] 何ですって?

[怪しい感染者] だから、かの陛下だ! かの陛下の予言なんだ!

[信じやすい感染者] 何てことかしら……歩きながら話しましょう。もっと詳しく教えてもらえる?

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