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ウォルモンドの薄暮_TW-3_高塔の花火_戦闘前
ここ最近医療拠点が火災に見舞われたという事実は、アントの凄惨な最期を意味していた。失意の底に落ちたフォリニックはアントの遺体を確かめに行こうとするが、その最中街へ攻め込もうとしているマドロック小隊に遭遇する。
[スズラン] こ……これは……
[フォリニック] ……
[フォリニック] ロドスの物資箱で間違いないわ。識別コードも日付もついてる。
[フォリニック] ……前回の定期連絡のときに、私が送った……
[フォリニック] ……
[スズラン] フォリニックお姉さん……
[フォリニック] 火災はどうやって起きたんですか?
[タチヤナ] 事故――元々はそう分析されていました、ですが……
[タチヤナ] ここには明らかなアーツの痕跡が残っていました。アント先生はとても真面目で慎重な方ですから、危険な可燃物を放置しておいたりはしないはずです。
[タチヤナ] 明らかな発火点は確認できていません。しかしテントの金属支柱は溶けていて、死体も……
[タチヤナ] あ……
[フォリニック] ……大丈夫です、続けてください。
[タチヤナ] ……遺体にはテントを離れようとした痕跡も、苦しんだ様子もありませんでした。おそらく皆さん、一瞬で顔もわからなくなる程に……
[タチヤナ] でも、アント先生や患者たちが逃げる間もないほど、急に火が回るでしょうか。
[タチヤナ] アーツを使ったとしても、普通の火が残した痕跡には見えません。まるで何か特殊な方法で瞬間的に高温になったような……
[フォリニック] 亡くなった方の中に、感染者は何人いたんですか?
[タチヤナ] えっ? えーっと……街の感染者は三人です。皆さんここで治療を受けていた方たちです。ケヴィンさんとビーダーマンさん、エッケハルトさん……他に……
[フォリニック] ……
[タチヤナ] ……トール、トールワルド。
[タチヤナ] 彼は憲兵長の一人息子で、私の昔なじみでした……感染者ではありませんでしたが、アント先生の手伝いをしていました。
[スズラン] ……タチヤナさん、もしあなたにも辛いお気持ちがあるのなら、私たちに打ち明けてみませんか。
[タチヤナ] えっ? 私はそんな……
[スズラン] いいえ、わかりますよ。この場所は悲しみに満ちていますから。
[スズラン] ここには……たくさんの悔しさと、喜びと、苦しみがあったみたいです。今はもう、全て消えてしまっていますが。
[タチヤナ] それも……アーツですか?
[スズラン] いえ、似たようなことを、何度も目にしてきたからわかるんです。こんな状況だと皆さん気丈に振る舞いますが、本当はそれじゃダメなんですよ。
[スズラン] 私の考え過ぎかもしれませんが、もしタチヤナさんがずっと無理を続ければ、周りの皆さんは今以上に心配しますよ。
[スズラン] こんなときは泣いたっていいんです。誰も文句なんて言いません。
[タチヤナ] ……ありがとうございます。私もわかっているんです。ですが今はまだ……まだ、気を緩める訳にはいきません。
[スズラン] はい――
[フォリニック] ……わ、私を見ないでよ。わかってるわ、リサちゃんは心配しなくていいから。
[スズラン] はい!
[フォリニック] ええっと……あの、ごめんなさい!
[タチヤナ] えっ? どうして急に……?
[フォリニック] ……ロドスを出発するときに覚悟はしていたんです。アントは真面目な子で、いつも定期連絡は時間ピッタリでしたから。
[フォリニック] オペレーターからの連絡が途絶えることが何を意味するか、私はよくわかっています。ロドスでは何度もそんな別れを経験しました。……でも、アントに関してだけは、信じたくなかったんです。
[フォリニック] ふぅ……つまり、あの、さっきは感情的になりすぎました。ごめんなさい。
[フォリニック] この事件で何かを失ったのは、ロドスだけじゃないのに。
[タチヤナ] ……八人の遺体が、セベリン憲兵長によって運び出されました。
[タチヤナ] 街には感染者の遺体処理の専門家はいませんので、簡単に埋葬してあげることしかできません……
[タチヤナ] 彼らは……ウォルモンドと共に進むことはありません。街の外の荒野に埋められ、ウォルモンドがこの場所を離れてしまえば、二度と故郷に戻ることは叶わないんです。
[タチヤナ] 本来なら……そんな措置は取らず、私たちの伝統に則って供養したいんですが。
[スズラン] 同じ様なことは……色んなところで起きています。
[フォリニック] ……って、八人? 亡くなったのは八人なんですか?
[タチヤナ] はい、そうです。先程お話した五人の他は、恐らくここに治療を受けに来ていた、ウォルモンド外の放浪者だと思われます……
[タチヤナ] 大裂溝が現れた際、ウォルモンドは事前の避難ができず、周囲に駐留していた商人や観光客の多くも天災に巻き込まれました……
[タチヤナ] ウォルモンドもひどい状況でしたが、彼らも大変だったでしょう。荒野を進むこの街を追いかけることしか、選択できなかったんだと思います。
[タチヤナ] あの時は、多くの難民たちが街にやって来ました。アント先生は……差別などせず、手助けを望む感染者たちみんなを助けてくださいました。
[フォリニック] つまり八人の遺体とは、非感染者の遺体が一体、感染者の遺体が七体ということですね……
[フォリニック] 感染者の遺体は今どこに? 体内の源石融合率によっては、バイタルサイン停止後数分から数時間の内に、二次拡散が起きる可能性があります。専門的な処理を行わないと危険です。
[タチヤナ] あ、それは……感染が軽く、高温で一瞬にして体組織が破壊されたことから、大きな危険はないとセベリン憲兵長が判断されて……
[フォリニック] ……専門家はいないのではなかったんですか?
[タチヤナ] はい、セベリン憲兵長もただ経験に基づいて判断しただけで、そこまでの確信があるわけではないと仰っていました……
[フォリニック] 経験……感染者の死体処理なんて、どんな仕事でそんな経験を……
[フォリニック] ですが、血の繋がった息子を亡くしてもあれだけ冷静でいられるなんて、見た目ほどいい加減な人物ではないのかもしれませんね。
[フォリニック] 私に感染者たちの遺体を検査させてもらえませんか……アントのことも一目だけでも見られれば。
[タチヤナ] もちろん構いません、私が憲兵長に説明します。しかしほとんどの遺体は炭化がひどく、誰が誰だか……
[フォリニック] 大丈夫です――
[スズラン] あっ――!
[フォリニック] リサちゃん?
[スズラン] このプレートは……
[フォリニック] ……アントのIDカードね、焼けずに残ってるなんて……
[フォリニック] ……そうだ。そういえば……
[フォリニック] あの子、仕事のときにIDカードが邪魔だってよく言ってたわね。胸の前に下げてるだけで、どこが邪魔なんだか……
[フォリニック] ああ……行きましょう。早く、あの子に会いたい。
[フォリニック] 爆発音――?
[タチヤナ] 街の方向です!
[スズラン] フォ、フォリニックお姉さん! 誰か近づいてきます!
[武装した感染者] ……ああ?
[武装した感染者] そ、そのマークは……ロドスか……? お前たち、いつここに……
[フォリニック] その装いは……普通の感染者には見えないわね。
[フォリニック] リターニア人? それとも前に言ってたサルカズ?
[タチヤナ] ……最近街の周囲に現れた武装集団です。正体不明のサルカズを中心に、現地の感染者たちを大量に受け入れているようです……
[タチヤナ] 彼らは――「マドロック小隊」と名乗っています。
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