aklib_story_翠玉の夢_DV-S-1_心に困しみ

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翠玉の夢_DV-S-1_心に困しみ

フェルディナンドがドロシーのためにローキャン水槽から回収した実験データを持ってきた。しかし、彼女がそれを求めた理由は、フェルディナンドの予想を超えるものだった。


[フェルディナンド] どうぞ、君の欲しがっていたデータだ。

[ドロシー] ありがとう、フェルディナンド。わざわざあなたが持ってきてくれるなんて。

[フェルディナンド] 君が政府の関係部門へ取りなしてくれたおかげで、ローキャン水槽の大半のデータは回収できた。だが、このことを知る人間は少ないほうがいいからな。

[フェルディナンド] それと……君がこのデータを欲しがる理由も知っておきたくてね。

[ドロシー] ……

彼女は静かに、息が詰まるほど集中して、目の前のモニターを見つめていた。

画面にはある映像が映っている。被写体は白い髪の少女だ。

その少女は、睡眠と食事以外ほとんどの時間を、空っぽの部屋でぼんやりと丸くなって過ごしていた。

そして、時々実験室へ移されると、厚さ1メートル以上の壁で隔てられたもう一方の実験室にあるテーブルや椅子を鉄くずに変えるのだ。

[ドロシー] 本当に綺麗な子ね。

[フェルディナンド] 君の口ぶりはローキャンを思い出させるな。被験者を「傑作」として見せびらかすのは、あの手の狂人だけだと思っていた。

[ドロシー] 彼が道徳的な一線を越えた、と多くの人が非難しているのは知ってるわ。

[フェルディナンド] 道徳など、凡人がリスクを回避するために自分自身にはめた足枷に過ぎない。

[フェルディナンド] 科学とは常識を超えるものだ。道徳的基準で科学者を評価することはとてつもない侮辱に値する。

[フェルディナンド] ローキャンが犯した最大の失敗は、果てしなき未知を前にして狂気に駆られ、科学者として持つべき理性を失ったことだ。

[フェルディナンド] ――最後の映像を見れば、君が「綺麗」と評した子供がどのようにラボを天災の現場に変えたのかを目の当たりにできる。

映像が切り替わった。

当時の監視カメラは音声まで記録するものではなかった。だが、画面の向こうで次々に上がっていた悲鳴は、時を超えて別のラボにも衝撃を与えうるものだった。

建物が崩れ、どんなに瓦礫が飛び散ろうとも、一面に広がる血の色は覆い隠せない。

[ドロシー] ……

[ドロシー] この子は……結局、どこへ行ったの?

[フェルディナンド] わからん。彼女に関するデータには明らかに改ざんの跡があった。しかし、ローキャン水槽のすべての遺産同様、彼女には特定の人々からすれば利用価値があることは確かだ。

[ドロシー] 私……この子を見つけたいわ。

[フェルディナンド] ……

[フェルディナンド] ローキャンの実験を引き継ぐために、というわけではないと解釈しておこう。

[フェルディナンド] 何にせよ、彼女はあまりにも制御不能だ。ライン生命にそんなリスクを負うことはできない。

[ドロシー] ……私には、実験を続けようなんて残酷なお願いはできないわ。この子は望んで実験室に入ったわけじゃないもの。

[フェルディナンド] まさか、彼女の治療を考えているのか?

[フェルディナンド] 私は医者でこそないが、実験プロセスを見る限り、そんな妄想はしないほうがいいと思うがね。

[ドロシー] いいえ、そうじゃなくて……

[ドロシー] この子を見つけて……抱きしめてあげたいだけなの。

[フェルディナンド] な……どういうことだ……?

[ドロシー] この子は……すごく孤独だと思うの。

[ドロシー] 家族を奪われて、挙げ句ほかの誰とも違う存在にさせられて……

[ドロシー] 今頃……どこにいるのかしら。

[ドロシー] 新しい友達はできたかしら。新しい敵ができてはいないかしら……

[ドロシー] ……この子の声が聞きたいわ。

[ドロシー] 過去を変えてあげることはできないけれど、せめてこの子に素敵な未来がありますように……

[フェルディナンド] 君はつくづく……予測不能だな。

[フェルディナンド] そう感情的な科学者は滅多にいない。理性で己を律することができない以上、君はいつかローキャンを超える狂人になってしまうかもしれないな。

[ドロシー] ……狂人、ね……私はこれまで何度も、同じような状況を夢に見ているの。

[ドロシー] それもこの子を見つけたい理由の一つなのよ。

[ドロシー] もし、この子が生きていたら……こんな悲劇的な過去から救ってくれた人がいるのなら……

[ドロシー] いつか私が本当に狂ってしまっても……誰かが、きっと私を止めてくれると思うから。

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