N700系新幹線電車

ページ名:N700系新幹線電車

登録日:2017/08/29 Tue 19:46:06
更新日:2024/02/09 Fri 10:49:15NEW!
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N700系新幹線電車とはJR東海JR西日本が共同開発した新幹線電車である。東海道山陽新幹線用車両としては第5世代目の車両にあたり、山陽・九州新幹線用としてJR九州も保有している。


開発の経緯

国鉄分割民営化で東海道新幹線を受け継ぎ、稼ぎ頭として重点的に経営資源を注入していたJR東海は最高速度を0系100系よりも50km/h向上させた300系を開発し、JR西日本は300km/h運転を実現し、東京博多間ののぞみ運用を考慮した500系を開発。そして両社共同で300系と500系の反省点を活かし、汎用性と乗り心地をよりブラッシュアップした700系を生み出した。


しかしここで満足しないのがJR東海。将来的なデジタルATCの導入と新幹線品川駅開業に伴う列車本数増加を見越し、より高い加減速性能を持つ車両を欲していた。そしてJR西日本も飛行機への対抗馬として、最高速度300km/hを出せて、各号車の定員を300系や700系に揃えた車両を欲しており、両社の要求を具現化するべく共同開発されたのがN700系である。


仕様の決定

700系がデビューして間もない2000年から共同研究が始まり、その2年後から開発がスタート。2003年には基本仕様が公表された。


500系と700系は東海道新幹線では最高速度270km/hを達成していたものの、トップスピードを出せるのはまとまった直線と緩い曲線だけで、全体の3分の1程度しかない。東海道新幹線の最低半径であるR2500区間に270km/hで突入すると、強い横Gが乗客にかかってしまう。これを解決し、更に所要時間を短縮するため車体傾斜システムの搭載が決められた。
この車体傾斜システムを活用することで、東海道新幹線全体の3分の2で270km/h運転を実現した*1


更に起動加速度も新幹線としては高めの2.6km/h/毎秒に設定された。この数値は首都圏のE233系とほぼ同じである。


先頭形状は遺伝的アルゴリズムを活用して導き出された700系のカモノハシに似たエアロストリーム形状からエアロ・ダブルウィング形状とした。500系が15mというロングノーズになっていたのは時速300km/hでトンネルへ突入した時に発生するトンネル微気圧波による騒音を抑えるためで、微気圧波対策としては良好な結果を残せたものの、先頭車両のデッキや座席指定の取り扱いで不便を来したため、N700系ではノーズの長さを短くすることで定員を確保し、断面を滑らかに変化させることで空気の流れを改善し、微気圧波による騒音を基準値内に収めた。
トンネル微気圧波とは、列車が高速でトンネルに突入することで入口とは反対側の出口で発生する大きな騒音の事で、列車がトンネルに入ることでトンネル内の空気が急激に圧縮され、それが出口で急激に解放されることで破裂音を生じたりする。


試作車

2005年、試作車であるZ0編成が落成した。4月より本格的な試運転を開始し、7月には東京・新大阪間の通し運転、博多までの試運転も実施した。この試作車の走行試験で得られたデータを元に量産車であるZ1編成が落成した。


Z0編成とZ1編成以降の量産車には以下のような違いがある。

  • 車掌室とコンセントの位置
  • 喫煙ルームの有無

これらが異なるのと、それまで技術試験車として活用していた300系J1編成が廃車されたことで量産化改造は行わず、2019年まで新技術の試験に使われていた。
ドクターイエローは運転周期と時刻が概ね分かっているのに対し、Z0編成は運転周期も時刻も分かっておらず、更に見た目も普通のN700系と変わらないのでドクターイエロー以上に見れたらラッキーな車両だった。
N700Aの登場後、Z0編成にも改良工事が施工されX0編成となった(番台区分は9000番台のまま)。


2018年、後継となるN700Sの確認試験車J0編成が落成。技術試験車としての役割をJ0編成に譲り、2019年に廃車された。廃車後は1・8・14号車の3両がリニア・鉄道館の展示車両として選定され、それ以外の車両は解体された。


営業運転開始

2007年7月1日のダイヤ改正より運行を開始。当初はのぞみ運用をメインに使用し、量産車が追加投入されて300系の廃車が進むに連れてひかり・こだまへの充当も増えていった。


車内設備

車内設備は300系・700系を踏襲し、普通車は3列+2列のリクライニングシートが104cmピッチで並び、グリーン車は2列+2列のリクライニングシートが116cmピッチで並ぶ。普通車の窓側全席とデッキ側全座席、グリーン車の全座席にコンセントが設置されており、電池残量を気にすることなくモバイル端末を使用できる。
車体幅は車体傾斜装置を装備した関係で700系より若干狭くなっているが、室内空間容積は同等に確保されている。
窓の大きさは歴代東海道・山陽新幹線用車両の中で最も小さく、眺望がやや悪い。


全車両を禁煙車としたが、喫煙する利用者も多い実情を考慮し、3・5・7・10・15号車のデッキに喫煙ルームが設置された。喫煙ルームは完全分煙構造となっており、タバコの煙が喫煙ルームの外に漏れないようになっている。
投入開始から間もない頃は都合により300系や700系で代走することもあり、その場合は事実上全車禁煙の扱いとなっていた。
なお、JR東海はJR西日本・JR九州と共同で2024年春で喫煙ルームの全廃を発表。空いた喫煙ルームには非常用飲料水を配備する予定としている。


デッキ・運転席出入口には防犯カメラが設置された。2015年には同年に発生した火災事故の影響から、客室やデッキ通路部にも防犯カメラが追加設置されている。


車体傾斜装置

N700系最大の特徴・そして秘密兵器。車上コンピュータに線形データを記憶しておき、曲線区間に突入する前に最大1度車体を傾斜させる。車体の傾斜は台車の空気ばねに圧縮空気を送り込むことで行う。


派生車両

7000・8000番台

九州新幹線全通によって山陽新幹線とレールが繋がり、直通運転を行うことが決定した。直通列車用車両に求められる仕様は

  • 九州新幹線の有効長に対応できる8両編成であること
  • 博多-新鳥栖間と新八代以南に存在する最大35パーミルの急勾配にも対応できること
  • 東海道・山陽・九州の3つの保安装置・無線に対応できること*2

などで、これに対応すべく16両編成のN700型をベースにした8両編成のN700系7000・8000番台が開発されることになった。


車内設備は指定席が3+2からグリーン車と同じ2+2配列に変更され、グリーン車と普通車の合造車が存在し、性能面でも両端の先頭車もモーター付きの電動車になっている、車体傾斜装置が省略されているなどの違いがある。


全車両禁煙なのは16両編成と同じで、喫煙ルームも健在。


N700A

700系の後継車として開発されたN700系の改良型で、東海車は1000番台、西日本車は4000番台を名乗る。外観にはほとんど違いがなく、見分けるには車体側面に貼付されたロゴマーク以外ない。
主な改良点は以下の通り

  • ディスクブレーキの締結方式の変更により700系よりも制動距離を20%カット
  • 台車振動検知システム採用
  • 車体傾斜装置の動作範囲を拡大
  • 定速制御を採用

これら車両面の改良と地上設備の改良によって東海道新幹線の最高速度は300系のぞみの運転開始以来およそ20年ぶりに向上し、285km/hとなった。


後にN700Aの改良点を従来のN700系にも適用する改造工事が行われ、現在全てのN700系がN700Aタイプとなっている*3。無論、試験車のZ0編成も例外ではない。


N700-I

2009年11月16日に開催された「高速鉄道シンポジウム」で発表された、N700系の海外輸出仕様。
上記の7000番台・8000番台と同様、海外の高速鉄道で多く見られる8両編成を基本としており、輸送量に応じて様々な編成が組めるようになっている。
最高時速は330km/hと東海道・山陽新幹線よりも早い。
これに東海道新幹線をベースとする輸送システムをセットにした「N700-I Bullet」が企画されたが、2017年現在残念ながら導入先は現れていない。


N700S

2016年に発表されたN700系のさらなる改良型。従来のN700系はJR東海・西日本の共同開発だったが、N700SはJR東海単独開発である。
先頭車両の形状がエアロ・ダブルウィングから更に進化したデュアル・スプリーム・ウィング形となり、トンネル通過時の騒音や空気抵抗の低減を目指す。更に機器の小型化や配置の最適化により、機器の構成を大きく変えることなく16両編成から8両編成まで4両単位で自由に組み替えが出来るようになり、西九州新幹線向けに6両編成が登場している。
乗客サービス面での改良も行われ、モバイルコンセントを全座席に拡大、バッテリーの容量を増大させることで停電時でもトイレが一部使用できるようになる。
ちなみにN700SのSは「最高の」を意味するSupremeに由来する。



追記・修正は次世代から究極の標準へと移り変わるのに抵抗のない人がお願いします





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  • N700Sのロールアウトも控えてる今、完全新型の900系がいつ開発されるのか -- 名無しさん (2017-08-30 06:42:09)
  • 頭が9の車両は試作車などの事業用車に該当するため、営業用で900系という車両が作られることはないな -- 名無しさん (2017-09-01 13:27:04)
  • 500系・700系と比べて柔らかくなった顔つきが0系のイメージに回帰した感あって好き -- 名無しさん (2018-07-24 13:20:47)
  • アメリカのテキサスで走る予定の車体はN700Sベースなんだよな。 -- 名無しさん (2021-04-17 00:43:11)
  • 300系~700系が色々と意欲的に新しいことに取り組みながら欠点も抱えてたのに対し、平均速度・快適性・汎用性が極めて高いレベルでまとまった集大成って感じ。マイナーチェンジこそ続いてるけど、これを超える新型車両は今でも想像が付かないな。 -- 名無しさん (2022-01-19 02:06:11)

#comment

*1 ほぼ100%ではないのは東京-新横浜間全体に急な曲線が存在するため。
*2 山陽新幹線専属車両でも新大阪駅から大阪の車両基地まで回送列車として東海道新幹線を走行する
*3 改造車はJR東海車が2000番台、JR西日本車が5000番台となっている。

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コメント

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