ドクターイエロー

ページ名:ドクターイエロー

登録日:2017/08/30 Wed 18:43:28
更新日:2024/02/09 Fri 11:02:29NEW!
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ドクターイエローとは、新幹線の線路、架線、信号の状態を測定・検査するための車両の愛称である。
旅客を載せて走る通常の新幹線と形状はあまり変わらないが、その名の通り黄色いのが特徴。
これは

  • 事業用の車両は警戒色という意味で黄色を入れると決められていたから
  • 夜中に走る事が多いので、見えやすい色で塗装し事故を防ぐ
  • 普通と明らかに違う色にする事で、お客さんが間違って乗るのを防ぐ

という3つの理由があると言われている。


正式には新幹線電気軌道総合検測車と呼ばれ、おおよそ10日周期で運転されている。
運転日は一切明かされておらず、見ると幸せになれるとまるで縁起物のように扱われている。
子どもたちからの人気も非常に高い。


乗客を乗せることはないが、普通の座席も用意されている。主に報道関係者や視察団の添乗などで使われ、国鉄末期にはドクターイエローを使った団体列車も運行されている。


東海道・山陽新幹線のドクターイエロー

921形0番台

新幹線の初代軌道検測車。
921-1は建設されたばかりの線路に不具合がないか調べるため、東海道新幹線開業前の1962年に登場。921-2は新幹線開業後の予備車確保の意味合いを込めて1964年に登場。


1号車は完全新造車だが、2号車は在来線の旧型客車から改造された。だが後のドクターイエローと異なりどちらも結局は動力を持たない客車なので自力走行はできず、ディーゼル機関車に牽引されて測定走行を行った。*1
ただし既に「黄色地に青帯」というドクターイエロー色を纏っており、「黄色い新幹線の軌道等を計測する車両」をドクターイエローの定義とするならば、これが初代となるだろう。
検測走行時の最高速度は160km/hだが、200km/hで走ることも可能ではあった。


3つの台車を備え、中間台車が検測用だった。


1両は1976年に廃車・解体された。
もう1両は東海道・山陽新幹線での運用終了後に東北新幹線小山試験線で使われ、1980年に廃車・解体された。


941形

東海道新幹線開業前、鴨宮試験線で使われていた試験電車1000形A編成から改造された電気試験車→救援車。
1000形の外見は0系新幹線電車とよく似ているので、「普通の新幹線と同じ形だが黄色い」事をドクターイエローの定義とするならば、こちらが初代となる。
後のドクターイエローより側面の青い線が長く、ヘッドライトまで延びているのが特徴。
救援車としての出番は一度もなく、動くのは検査と訓練の時ぐらいで1975年に廃車・解体された。


922形

0番台

1964年に鴨宮試験線で使われていた試験電車1000形B編成を改造して誕生した電気・信号検測車。
単独で測定できるのは電気と信号関係だけで、レール関係は客車ベースの921形をディーゼル機関車に牽引して測定していた。
こちらも0系そっくり。
1975年に廃車・解体された。
編成記号・番号はT1。


10番台

T1編成が老朽化し、運用面での不都合*2も多く、博多開業も迫っていたので、1974年に新造したもの。
外見は完全に黄色い0系。
0系第16次車と同時に発注されたので側面窓は大窓になっている。編成記号・番号はT2。


5号車には二代目の軌道検測車921形10番台が組み込まれている。
車体断面は他の車両と同一だが、車体長は他車の25m級に対して17.5mと短く、自重は60トンを超えていた。
これにより、これまで別々に検測していた電気・軌道・信号を1度の走行で検測できるようになり、効率がアップしている。


国鉄分割民営化後はJR東海へ継承され、2001年に後継車のT4編成へ役割を譲る形で廃車・解体された。


20番台

T2編成の増備車として1979年に登場。0系27次車と同時に発注されたので側面窓は小窓になっている。編成記号・番号はT3。
こちらも軌道検測車921形20番台が組み込まれている。


国鉄分割民営化後はJR西日本へ継承され、T2編成よりも後に製造されたために活躍期間も長く、0系引退後も東海道へ検測運転で乗り入れることもあった。
2005年に廃車されたが、先頭車922-26が名古屋のリニア・鉄道館で展示されている。


923形

T2・T3編成の老朽化や、最高速度の向上により検測ダイヤを組み込むのが難しくなったため、700系をベースにして製造された。
最高速度は東海道・山陽どちらも270km/h
軌道検測方式も従来の3台車方式から2台車レーザー光方式に変更され、車体軽量化・車体長統一を実現した。
ちなみに実車が登場する前のイメージイラストでは、車体がパールホワイトで塗装され帯が黄色になっていた。塗り分けはベース車の700系と同じ。


JR東海に0番台T4編成が、JR西日本に3000番台T5編成が在籍しており、外観の違いは殆ど無い。JR西日本分も普段は東京に常駐しており、検査もJR東海へ委託している。


阪神淡路大震災とドクターイエロー

1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災。この地震で、山陽新幹線は神戸市内の区間を中心に高架橋崩落などの被害を受けた。
一刻も早く復旧させるため、高架橋の補修に必要なモルタルを調達したものの、京阪神エリアには在庫がなく、名古屋や関東などから調達することになり、名古屋からはヘリで運べたものの、関東エリアから運ぶにはトラックでの長距離輸送が必要となった。


しかし当時は新東名高速道路や新名神高速道路も完成前。道路状況は壊滅的でトラックでの迅速な輸送は不可能に等しい。そこで考え出されたウルトラCが東京で待機しているドクターイエローを使って神戸へモルタルを運ぶというものだった。


白羽の矢が立てられたのはJR東海所属のT2編成。地震発生から2日後にモルタル200袋と作業員24人を載せて東京を出発。以後東京と関西の間をドクターイエローを使用した建設資材の運搬列車が往復することになった。


こんな芸当が出来たのは地震発生当日たまたまT2編成が神戸より東側に、T3編成が神戸より西側に居たのとドクターイエローの車両そのものが建設資材の運搬にも耐えられる設計になっていたからである。


懸命の資材輸送と作業員の奮闘により、崩落した高架橋は無事復旧。復旧後最初に通過した列車は西日本所属のT3編成だったとか。


東北・上越新幹線のドクターイエロー

外見は「黄色い200系新幹線電車」と言って差し支えない。
東海道新幹線のドクターイエローと異なり、帯の色が200系と同じ緑色なのが特徴。


老朽化により、後継のEast-iに置き換えられて現存しない。


925形

東北・上越新幹線用の200系がベースなので、乗り入れることができたのは東北・上越・長野新幹線だけ。
在来線を改軌したためにトンネル等の設備が小さい山形・秋田新幹線へは入れなかった。


0番台

1979年登場。軌道検測車として921-31を組み込んでいた。
長野新幹線開業時に周波数50/60Hz両用化改造、勾配対策がなされ、軌道検測車に2台車の921-32を組み込むようになった。2001年廃車。
編成記号・番号はS1。


10番台

1983年登場。新造車ではなく、200系のプロトタイプ車である962形を改造したもの。
軌道検測車として921-41を組み込んでいた。
0番台同様、長野新幹線開業時に周波数50/60Hz両用化改造、勾配対策がなされた。
2002年9月運用終了。
編成記号・番号はS2。


921形

30番台

軌道検測車。仕様は東海道・山陽用の10・20番台とほぼ同様の3台車、17.5m級車両。31と41の2両が存在し、31がS1編成へ、41がS2編成へそれぞれ連結されていた。


921-32

軸重制限が東北・上越よりも厳しい長野新幹線での軌道検測を可能にするため、200系の中間車から改造された車両。レーザー光による測定を日本で初めて導入した車両で、外観をよく見ると方向幕・指定席/自由席表示・雪切り室を塞いだ跡が残っていた。


1両しか存在しないので、普段はS1、S2のどちらかへ組み込み、通常の定期検測では一定期間同一編成を連続して使用した。
East-iの導入による925形の廃車直前に検査期限が切れたため、2002年に廃車された。


E926形

愛称「East i」。白と赤のどちらかと言えば救急車を連想させるカラーリングとなっているが、これもドクターイエローの仲間。
外観は窓が少なめのE3系。東北・上越・北陸・北海道・秋田・山形の各新幹線を走行し、北陸新幹線のJR西日本区間も走る。
6両編成1本とバラの1両が製造された。軌道検測車のE926-3・13以外すべての車両がモーター付きで、ATC検測を行う時は先頭車両の運転台側台車のモーターをカットして運行する。


軌道検測車は車両検査と検測スケジュールが被った場合に備えて予備が1両製造されている。この予備車は専用の改造を施したE2系N21編成の1号車と2号車の間に連結して使用していた。車体断面が揃っておらず、デコボコな編成が高速走行する様はとてもシュール。
予備車は2015年に廃車・解体されている。



創作の中のドクターイエロー

子供人気が高い車両でもあることから、子供向けのアニメ作品やおもちゃへの登場が多い。

925形をモチーフにしたヒカリアンとしてDr.イエローが登場。ヒカリアンステーションのオペレーターの一人であり、メカの整備から線路の整備まで一手に担う技術者。ヒカリアントレーラーやビッグワンダーの操縦手も兼ねている。


923形T4編成をベースに開発されたシンカリオンとしてシンカリオン ドクターイエローが登場。運転士は清洲リュウジ
シンカリオン初の5両編成で変形する。使用する武器はレーザーウェポンで、状況に応じてソード、ブラスターと変形して使い分ける。更にE5はやぶさとのクロス合体機構も備える。
原作に相当するおもちゃのラインナップにはなく、アニメ版が初出となる。
その後第73話にて同じ編成をベースにした別機体のシンカリオン 923きゅうにいさんドクターイエローが登場している。運転士は速杉ホクト。こちらは2両変形となっており、オーバークロス合体に対応させている。武装はケンソクウェポン。劇場版ではリュウジも搭乗した。
続編『シンカリオンZ』ではシンカリオンZ ドクターイエローが登場している。運転士は安城シマカゼ。武装はトングレールソードとイヌクギショットガン。こちらは強化モード「Zホセンモード」への変形、更にE5(Z)との超Z合体機構も備える。


  • 謀略軌道 新幹線最終指令

北上秋彦作の長編推理小説。
時速100kmを下回ると爆発する爆弾を取り付けられた東北新幹線やまびこ・こまちが突貫工事による線路の接続で東北新幹線から東海道新幹線へ乗り入れた後の霞払いと作業員の輸送を兼ねる列車として登場。
発刊が1998年なので、922形が使われたと思われる。


ドクターイエローの将来

今後、ドクターイエローの後継車は製造されないという見方が強い。なぜなら検測装置の小型化が進み、営業用車両に搭載することが可能になったからだ。
実際、九州新幹線を保有するJR九州では、営業車両である800系の一部編成に検測装置を必要に応じて搭載して検測を行っているし、JR東日本ではEast-iの予備車を廃車にしている。
営業車両への測定装置搭載は営業車両に余計な負荷がかかることになるが、営業運転をしながらデータ収集が可能になるというメリットもある。効率化を進めたい鉄道会社としてはドクターイエローを無理に維持することもないのだ。
しかし営業車の測定装置では取得できるデータの精度にも限界があるため、当分の間はドクターイエローを併用し続けるようだ。


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  • 保育園時代の乗り物ビデオでこの新幹線ばっか何度も観たよ。 -- 名無しさん (2017-08-30 20:48:55)

#comment

*1 1号には発電用ディーゼルエンジンを使って低速で移動するための機能を持っていた。
*2 電気・信号検測と軌道検測を行う車両が別々でダイヤをそれぞれで組まなければいけない上、軌道検測車は最高速度が160km/hと遅かった。

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