登録日:2013/10/05(土) 17:10:02
更新日:2025/10/25 Sat 20:57:04NEW!
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金田一少年の事件簿 金田一少年シリーズエピソード項目 金田一友人喪失シリーズ 長野県 軽井沢 館もの 別荘 洋館 誤解 不幸の連鎖 キノコ ドクツルタケ 哀しい解決編 金田一少年ノベルズ項目 金田一少年・追憶の3部作
邪宗門のことは忘れ、速やかに立ち去れ。
さもなくば地獄変の屏風絵ごとき惨劇が、邪宗館に襲いかかる。
『邪宗館殺人事件』とは、『金田一少年の事件簿』での事件の1つであり、かつて金田一少年が解決した事件のひとつ。マガジン本誌連載終了後に刊行された唯一のノベルス作品。
連載終了後ともあってマイナーなタイトルだが、金田一少年の事件簿の中では『雪影村殺人事件』に匹敵する切ないストーリーであるという評価が多い。
以下、ネタバレにご注意ください
【あらすじ】
夏休みのある日、自宅の押し入れを整理していた一。
このとき、コーヒーカップの破損防止に使われていた新聞紙に、六年前の冬山遭難事故の記事を発見する。
現場は軽井沢で、6年前の夏の数週間を過ごしたとある館の近くであることに気付き、古いタウン誌を引っ張り出し、突如として軽井沢行きを決意する。
しかし、訪れた先の「邪宗館」では突然何者かに脅迫状を送りつけられ、その後友人の1人が何者かに殺害されてしまう…。
【登場人物】
- 井沢研太郎
イケメン天才プログラマー。プログラマーとして商売が出来るほどのスキルがある。
十年前、家族でスキーに来ていたとき、車の排気口が雪で塞がれ排ガスが車内へと逆流し、両親と妹を失った。
このとき本人は、風邪をひいてホテル内にいたため、1人だけ命を救われることとなった。
瑠璃子に思いを寄せており、彼女が一に興味を抱いていたため、一にライバル心を燃やしている。
- 常葉瑠璃子
天才美少女バイオリニスト。
基本的に大人しく時々好奇心旺盛であるものの、ちょっとしたことで機嫌を悪くすることがあると言う、ややデリケートな性格の持ち主。
一が美雪を伴って現れると、最初のときだけ嫉妬し、その後は普通に接している。
研太郎の家族が亡くなる半年程前に、家族と訪れた浅間山麓でのキャンプ中に毒キノコによる食中毒事故を起こし、両親と弟二人を失った。
瑠璃子自身はお腹を壊していたため、消化の悪いキノコを食べるなと母親に言われており、キノコ鍋の汁しか摂っていなかったことで一命を取り留めた。
一に対し特別な興味を抱いている節がある。
- 荒木比呂
若手天才文学作家。世間では芥川賞候補ともっぱらの噂。
物心付いた頃からの施設暮らしであり、両親の記憶はないが、施設時代には虐待された過去を持つ。
小説は書くだけでなく読むのも好きであり、時代に名を残す著名な作家はある程度知っている。
北原白秋の『邪宗門』初版本と言うレア物が書庫から発見されたのも読書好きの彼が書庫を巡っていたからこそ。
非常に価値あるその本は、館の主人である龍之介の提案でサロンへ飾られていた。
しかし、その後この事件1人目の犠牲者となり、館の近くにある廃屋で何者かに殺害されているのが発見された。
自室にいるときにその場にあったハンマーで殴られ、その後廃屋に運ばれたらしい。
犯人は何の見立てなのか『邪宗門』初版本のページを一枚ずつ引きちぎり、廃屋にある死体までの道しるべを作った。
死ぬ以前に何かの秘密を知っていたようで、6年前の日記に「『邪宗門』と言う人物の殺人を見た」と言う暗号めいた文章を小説体で書いていたが…?
- 絵馬純矢
若手天才画家。
絵を描けばかなり良い値段で売れ、複製画を描いてくれと依頼されることもある。
「邪宗館」のオーナーである絵馬龍之介の子。
小学生の頃より絵の才能を開花させていたが、学校でいじめられて登校拒否に陥っていた。
父の龍之介が特別な才能を持った同年代の子供と一緒に生活をさせようと言う教育方針により、孤児達が館の同居人となり、
彼らは『仲間』として強い絆で結ばれるようになる。
- 遠藤樹理
「邪宗館」に住み込みで働くメイド。メガネをかけた、美人秘書みたいな女性。
家事全般や看護、車による来客の送迎などを行う。
山奥の館で働いているのが不思議なほど、優秀な人物。
- 三島幾真
龍之介の元教え子で背の高い青年。
龍之介からは気に入られているようだが、瑠璃子からは嫌われている。
しかし本人は瑠璃子を気に入っており、彼女を「瑠璃子姫」と呼ぶ。
嫌がられてるんだから素直に退けよ。
比呂が殺害された頃、瑠璃子を名乗る何者かに呼び出されたと言い、1人だけアリバイがなかった。
また、龍之介が過去に何かミスを犯したことを知っているらしい。
- 絵馬龍之介
「邪宗館」のオーナー。高名な菌類学の専門家で、昔は上田理科大学の教授だった。
子供達に負けず劣らずのハイスペックお父さん。
孤児達のことは呼び方こそ「○○くん」と他人行儀だが、我が子と分け隔てなく扱っており、若者達の間で両親の有無が確執を生むような事態は発生していない。
全員の得意分野を伸ばせる家庭教師を付け、彼らが才能を遺憾なく発揮出来るようにサポートを行っていた。
それぞれ異なる分野で優れた実力を持つ子供同士に共同生活を送らせることにより、お互いが良い刺激となって成長しより高い能力を発揮できるようすることが目的で、
その狙いは見事に的中した。
要は金の卵を発掘して天才に育てあげた教育者の鑑みたいな人。
2人目の犠牲者で、トリカブト入りコーヒーを飲んで自殺したかのように見えたが…?
- 絵馬翠
龍之介の妻。一が帰ってしばらくしたある日、家の階段から落ちてしまい、下半身不随の車椅子生活を余儀無くされた。
これをきっかけに龍之介は大学を辞め、妻の介護に専念するようになる。
三島は「翠が車椅子から立ち上がった姿を見た」と言っていたが…?
- 堂本富士雄
住み込みで働いている館の管理人。
- 堂本香苗
堂本富士雄の妻で、夫と共に館の管理人を勤めている。
【レギュラー陣】
- 金田一一
毎度お馴染み主人公。
新聞記事を見て、自分が少年時代にとある殺人事件を見過ごしたことに気付き、贖罪の意思で邪宗館を訪れる。
邪宗館の仲間とは小学生時代の一時期を一緒に過ごしたことがあり、高名な祖父を持った特別な才能の持ち主であったことから『仲間』として受け入れられていた。
- 七瀬美雪
毎度お馴染みヒロイン。
一のお目付役として同行する。
邪宗館メンバーとの絆はなくても、友人である一の友人だからと言う理由で暖かく迎えられる。
長野県警の堅物警部。
相変わらず愛想は悪いが、情報は提供してくれる。大学時代は文学青年だったらしい。
友人が死んで落ち込んだ一を見たときは、流石に少し同情していた。
毎度お馴染みイヤミ警視。関係者がハイスペックな連中ぞろいの現場で一が苦戦していたため、美雪に助っ人を頼まれて電話してきた。
一には当初嫌がられてたものの、彼が勘違いしていたある知識について訂正した事で感謝される。
【その他】
- 邪宗門
事件の真犯人。本文中では便宜上、正体の伏せられた真犯人を指す怪人名として用いられるが、
一や関係者が真犯人を指して「邪宗門」と呼ぶことはなかったため、厳密には怪人名ではない。
一、美雪、瑠璃子が廃屋を調べているとき、ボウガンの矢に「邪宗門」のことを忘れなければ悲劇が起こると言う脅迫状(冒頭参照)を括りつけて飛ばしてきた。
比呂の日記によれば過去にも何か人殺しを行っているようだが…?
- 出島丈治
6年前、浅間山中で遺体となって発見された雑誌編集者。
足を骨折し、餓死した状態で発見され、遭難死したものと見られていた。
しかし、一は彼がとほぼ同時期に邪宗館近くの廃屋で「DEJIMA」のリュックを発見したことがあり、館のなかでうめき声を聞いていた。
当時小学生の一には事情が飲み込めなかったが、高校生となって振り返ったとき、出島は何者かによって廃屋に拉致され、
死後山中に放置され遭難を装われたのではないかと言うことに気づく。
一は身近で起こった殺人に気付かなかったことを悔い、彼の死の真相を確かめるべく邪宗館行きを決意した。
以下、事件の真相。
常葉瑠璃子
彼女が事件の真犯人「邪宗門」。
家族が命を落とした原因は、菌類学者(キノコやカビが専門)の龍之介がタウン誌に誤った情報を記載したことによるもの。
極めて毒性の強い「ドクツルタケ」の写真を誤って毒性なしの「シロマツタケモドキ」であるとして記載し、それが誤食に繋がってしまった。
一が持ち込んだタウン誌の記事を偶然見て、龍之介の大きな過ちに気付いて激しい怒りを覚え、死んだ家族の復讐として殺害を決行した。
殺害を決意した翌日夕方には既に龍之介が毒殺されており、復讐を動機とする殺人では「雪影村」を上回る過去最速。
当該記事を見てもらえば分かるがドクツルタケは血を吐いてのたうつほどの激しい中毒症状が出る毒キノコであり、
そんなキノコによって目の前で家族全員を失った瑠璃子の憎しみはそれほどに強かったのだろう。
また、比呂に関しては何の遺恨もなかったが、瑠璃子のちょっとしたことですぐ心を乱す性格が災いして、会話の中でカッとなって衝動的に殺害した。
彼に「記事を見たの。龍之介は人殺しよ。」と伝えると、
「6年前から僕も知ってた。金田一が(記事を)持って来たことも知ってる。でも昔のことなんだから忘れるべきだ。」と返されたため、
愛する家族を忘れろと言われたことに激しい怒りを覚え、咄嗟にハンマーで殴ってしまったのである。
母のおかげで命拾いしているのだから、家族を忘れることなど彼女にとってはもってのほかであろう。
ちなみにハンマーは比呂が釘の緩んだ机を補修するために部屋へ持ち込んでいた物で、たまそこにあったから凶器にされてしまった。
- 絵馬龍之介
菌類研究を行って行くうちに潔癖性になってしまい、6年前には既にキノコを生で触れなくなっていた。
キノコを写真で鑑定して雑誌に記載していたため、「ドクツルタケ」の写真を「シロマツタケモドキ」と誤って紹介してしまった。
これが原因で出島丈治に何度も大金をせびられたため、口封じのために止むを得ず彼を遭難に見せかけて殺害した。
しかし、良心の呵責に耐えられず、妻の翠にだけは全てを語っていた。
- 出島丈治
龍之介の誤情報を記載したタウン誌の担当編集者だった。
自分の担当した雑誌だったことがきっかけで龍之介のミスに気付いたものと考えられている。
雑誌編集社を退社後、事業を試みては失敗して借金を追う度に龍之介を脅迫し、大金をせびって返済の金づるにしていたために殺害された。
人の弱みに付け込み、度の過ぎた脅迫を行って自分の身を滅ぼした愚か者。
今回の関係者の中では唯一ともいえる外道。
- 絵馬翠
瑠璃子の家族の死から出島殺害までの全てを龍之介本人に聞かされていた。
龍之介は警察に突き出しても良いと翠に言ったが、孤児達の生活を守るために彼女は敢えて夫を庇った。
秘密を背負う苦しみと罪の意識から一度自殺を図って飛び降りたが死ねず、代わりに医者の診断結果を捏造させ、
脊髄損傷による下半身不随と言う診断を出すことで龍之介を館に縛り、贖罪をさせようと考えていた。
長年歩いていなかったため、足腰は衰えていたが、神経を痛めたわけではないため、辛うじて自分の足で立つことが出来た。
更に、とても悲しいネタバレ。
- 荒木比呂
脅迫状を送りつけたのは彼。
龍之介が出島殺しの犯人であったことを以前から知っていたため、
一が出島丈治のことを調べていることを知ったとき、平穏を壊されまいと思って脅迫状を送りつけた。
「『地獄変』の屏風絵のごとき惨劇」とは北原白秋の『邪宗門』のことではなく、芥川龍之介の『邪宗門』の冒頭文を借用している。
脅迫状が芥川の『邪宗門』をなぞらえているのに、比呂の死体が白秋の『邪宗門』に関連づけられる形で見つかったのは、
脅迫文の正しい意味を知らない瑠璃子が脅迫状を自分の衝動殺人の偽装工作に利用したため。
彼の暗号めいた日記は、万が一の事態を想定し、洞察力の高い一だけが意味を理解するように、後付けで名前部分を「邪宗門」に書き換えたものである。
殺人犯は「邪宗門」と言う人物→文学作品『邪宗門』の作者は芥川龍之介→絵馬龍之介は人殺し
つまり、
事件の真犯人「邪宗門」→瑠璃子
「邪宗門」の脅迫状→比呂
比呂の日記の「邪宗門」→龍之介
であり、「邪宗門」は“6年前に人殺しを行ったことがあり、今回は脅迫状を出した上で殺人を行った真犯人”の二つ名と見せかけて、
実は場面によって全く異なる人物を指していると言うミスリード。
もっとも、他人の二つ名の名前を借りて別人が事件を起こすパターンは過去にもあったし、
容疑者の年齢を考えると3要件を全て満たせる人物はセリフの少ない管理人夫婦くらいしかいないため、
日記の「邪宗門」と真犯人の「邪宗門」が別人であることは比較的気付きやすい。
龍之介の過去のことを忘れるよう、瑠璃子に進言したのは事実だが、「家族のことなんて忘れてしまえ」などと言う意図はなかった。
長年一緒に暮らしてきた親しい仲だと思ってツーカーで話そうとしたところ、
お互いの全く別の話が偶然にも繋がってしまい、誤解を生んでしまったために殺されてしまった。
瑠璃子視点
瑠「(タウン誌のキノコの)記事を見たの。龍之介は(私の家族が毒キノコを食べる原因を作った)人殺しよ。」
比「(龍之介の毒キノコと君の家族の話は)6年前から知ってたよ。金田一が(タウン誌を)持って来たってことも知ってる。
でも過去のことだから仕方ない。(家族のことなんて)忘れるべきだ。」
(比呂は物心ついたときからの孤児なので、彼には『家族の大切さ』が分からない。瑠璃子の家族なんてどうでもいいと言う意味になる。)
比呂視点
瑠「(出島って男が死んだっていう新聞の)記事を見たの。龍之介は(この出島を手にかけた)人殺しよ。」
比「(出島のことは)6年前から知ってたよ。金田一が(新聞の記事を)持って来たってことも知ってる。
でも過去のことだから仕方ない。(平穏な暮らしを守るためには)忘れるべきだ。」
(龍之介を告発すると邪宗館の経営が苦しくなり、皆で一緒に暮らせなくなる可能性がある。)
この事実を知らされた瑠璃子は自分が罪もない友人を手に掛けてしまったことを理解し、
罪の重さに耐えられず一時はパニックを起こして泣き叫びながら暴れ出してしまった。
その後、悲鳴を聞き付けた純矢や研太郎も協力して瑠璃子を取り押さえ、彼女は落ち着いてから警察に自首すると言う形で事件は終わりを迎えた。
つまり一は人を1人見殺しにしたことを悔い、新聞記事と古いタウン誌を持って邪宗館を訪れたのだが、
ふたつの媒体のふたつの記事が余計な波紋を作ってしまい、結果的に親しい知人を2人も死なせることになってしまった。
金田一の行動が犯人の動機の遠因に繋がっていた事や(主に誰かさんのせいで)一が来る事を見越して事件が起きる事はままあれど、今回のような「 金田一一の来訪その物が事件の引き金 」という事件はシリーズでは後にも先にもない。
殺された比呂には大きな非があったとは言い難く、瑠璃子を意図せず刺激してしまっただけである。
龍之介のドクツルタケ誤記載はあってはならないレベルのミスであり、実際にこのミスが原因で死者を出しているが、それに対する罪の意識は十分にあり、
瑠璃子の家族を奪ったことを深く悔い、出来るだけの贖罪は行うと言う意思を持って長い年月を過ごしていた。
瑠璃子を初めとした孤児を引き取り、我が子同然に養育していたのはおそらく、自分の罪を償う意思があってこそなのだろう。
可能な限り罪滅ぼしを行うことを決意し、6年間延々とその罪を償い続けたにも関わらず、それを知られることなく、
単なる厚顔無恥な人殺しと見なされ、命を奪われてしまったのは何とも気の毒な話である。
前科持ちとはいえ同情した読者も少なからずいたことだろう。
この平穏は瑠璃子が家族の死の真相を知らず、比呂も出島の件を黙っていたという危ういバランスの上で保たれていた。
翠の秘密を知り龍之介の秘密をも探っていた三島の存在もあるため、例え一が来ずともこの平穏はいずれ何らかの形で崩壊していた可能性は十分にある。
とはいえこの事件は結果的に一の贖罪意識が引き金となって逆に友人達の悲劇を生むこととなり、一を激しく悔やませる後味の悪いものとなってしまった。
殺された2人はどちらとも外道と言えるような人物ではなく、邪宗館の平穏を保とうとしていた人物であったことは何とも皮肉である。
帰りの電車を待つ駅のホームで美雪が一を「人が1人亡くなったことを無視できないことは間違ったことではない」と慰め、そこで今回の物語は終わる。
割とどうでもいいネタバレ
- 遠藤樹理
実は出島の恋人で、彼と出会った軽井沢が懐かしくて邪宗館のメイドを務めていた。
龍之介と邪宗館について出島から話を聞いたことがあり、邪宗館で夫人の介護を行うメイド募集を聞いてやって来た。
出島とは深い関係になる前に死別したらしく、彼のダークサイドは全く知らなかったため、何故彼が死んだのかは理由を分かっていなかった。
しかし、彼が事故死でないことだけは察していたのか、一から死の経緯を聞かされても動揺などは見せず、ただ懐かしそうに出島との思い出を振り返るだけだった。
- 井沢研太郎
『黒魔術殺人事件』にて再登場し、自分の会社を立ち上げていた。しかし・・・。
- 絵馬純矢
実は絵馬龍之介夫妻の実子ではなく、養子。夫妻の会話を偶然立ち聞きして、真実を知ってしまった。
「コイツが犯人で他にも重大な事実を立ち聞きしたのか!?」…と思わせるためのミスリード。
【余談】
実は歴代のノベルズ版にはある共通の欠点が存在していた。
それは「パラ見した時のネタバレ事故率が高い」という事である。
絵がメインの漫画版と違いノベルズ版は文章がメインのため読者の警戒心が薄く、読もうかどうかの下見のつもりでパラ見した結果、挿絵で壮大なネタバレを喰らう事が少なくないのだ。
その内容も「金田一と誰かが言い争っている(多分こいつが犯人だろう)」「誰かが別の誰かを叩いてる(多分どっちかが犯人だろう)」「挿絵にトリックその物が載ってる(言わずもがな)」と多岐に渡る。
過去にそういったネタバレを起こさずに済んだのは中編ゆえに挿絵も少なかった雷祭くらいである。
本作ではその辺の問題に対する対策のためか、挿絵にはトリックはおろか犯人すら映さないように考慮されている。犯人と対峙中の挿絵すら、一枚だけの上に一だけを映す構図になっているのだ。
しかしノベルズ版は短編を除けば現状では本作が最後であるため、残念ながらこの対策は本作限りの物となってしまっている。
【豆知識】
北原白秋の『邪宗門』はキリシタン文化のロマンを綴った詩集。
芥川龍之介の『邪宗門』は中世日本を舞台に強力な法力を持つ異教の法師が活躍する小説で、未完で終わった作品。
(法力=修行の道を歩む過程で備わると言われる魔力のようなもの。仏様の不思議なパワーを借りられるようになる…と考えればおk。)
この作品の冒頭に「この前は『地獄変』についてお話ししましたから次は別の話をしましょう(要約)」と言う文章があり、
これが『邪宗門』と『地獄変』を結び付ける鍵となる。
『地獄変』は『宇治拾遺物語』の「絵仏師良秀(えぶっしりょうしゅう)」を元に描いた芥川龍之介の小説。
殿様の依頼でリアルな地獄絵図の屏風絵を描くことになった良秀(よしひで)を中心に物語が描かれる。
良秀はキチガイじみた傍迷惑な性格だが、絵仏師としての圧倒的な技量だけは周囲から大きく評価されていた。
人物1人を書く際は、毎度実際に現実の人間(主に弟子)をガチで苦しませて絵のモデルにしており、
その分だけ絵はいつもリアリティ溢れる見事な物を描きあげるのを特徴としていた。
(例:鎖に縛られて苦しむ人物を描きたい→弟子を縛り上げて梟に襲わせる→そのガチで苦しむ様子を絵にする)
ラストでは「牛車に乗って地獄の業火に焼かれる女の絵が描きたいが、モデルがいないので誰かを焼いてくれ」と殿様に頼んだところ、
良秀の愛娘がモデルにさせられ牛車ごと燃やされてしまう。
「『地獄変』の屏風絵のごとき惨劇」とは「絵の人物のような苦しみを本当に味あわせてやる」と言ったニュアンスで、要約すれば「お前の大事な人がガチで死ぬほど苦しむことになるになるぞ」と言うこと。
『宇治拾遺物語』の「絵仏師良秀」は「邪宗館殺人事件」との関連性が薄いため割愛。
追記・修正は邪宗門を読んだ方がお願いします。
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