助詞

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「_○○」と表した助詞は、平板型の単語に続く場合は助詞の前にアクセントの下がり目が来るが、それ以外の単語に続く場合はそのまま低い音が続く。例えば「行くがな」「食べるがな」は「‾いく'がな」や「_たべる'がな」となるが、「行ったがな」「食べたがな」は「‾いっ'たがな」「_たべ'たがな」となる。「_」も「‾」も付けなかった助詞は、前の語と合わせて平板型の発音となる。例えば「行くけ」「食べるけ」は「‾いくけ=」「_たべるけ=」となる。

断定表現「(の)や」が前に付くと、「_」で表した助詞も「‾」で表した助詞も基本的に下がり目が「(の)や」の前に移る。例えば「行くさかい」は「‾いくさ'かい」と発音するが、「行くんやさかい」は通常「‾いく'んやさかい」と発音し、「‾いく'んや・‾さ'かい」と発音すると念を押して相手に言い聞かせるような口調となる。ただし、「な(ー)」「なーし」「ね(ー)」は「(の)や」に左右されず常に高い音から始まる。

終助詞・間投助詞

  • _いな:鬱陶しがる気持ち、訝しむ気持ち、呆れ、予想外で驚く気持ちなどとともに疑問文を強める。エ音のあとでは「えな」になる。「何?」を強めた「_なに'ーな」、「なんで?」を強めた「_なんで'ーな」、断定助動詞「(ん)や」を強めた「_(ん)やいな」(必ず疑問詞とセット)、後述「かいな」に現れる。
     (例){なに} [すん]にゃいな
     (訳)何をするんだよ
  • ‾か'いな_かいな:共通語の「かよ」「かい」「かな」に相当する。ややおっさん臭い印象がある。
     (例){ほんま}[か]いな
     (訳)本当かよ
     (例)[どれ] {やったかいな}、[どれ] {やった}{かいな}ー
     (訳)どれだったかな、どれだったかなぁ
  • _がな:よく知られた関西弁の終助詞だが、単に「」と言うこともある。子供時代、きつい言い方だからあまり使わないようにと母からたしなめられた覚えがある。
     (例){もー} [ほっと]いたら {えー}がな
     (訳)もう放っておけばいいじゃないか
  • ‾くらい=、‾く'らい:用言終止形のあとに付けて「当然~に決まっている」といった意味を表す。ほぼ理解語彙。
     (例)[ほんなも]ん、[え]らい[くらい]
     (訳)そんなの、しんどいに決まっているとも
  • 疑問を見てな。
  • _で:よく知られた関西弁の終助詞。尻上がり気味に発音することも多い。京都や大阪での用法と変わらない。
     (例){はよ} [いく]でー
     (訳)早く行くよー
  • _ど:終助詞「ぞ」の変形。筆者は使わないが、祖父母が時折使っていた。一般的に「ど」は「ぞ」と比べて粗野な言い方とされがちだが、祖父母は単純に「ぞ」が訛って「ど」と言っているだけで、「ど」と「ぞ」で使い分けているようには見えなかった。
     (例)[ほら] [あ]ついど
     (訳)そりゃ暑いぞ
  • ‾な('ー‾な(ー=):京都や大阪と同様に多用する。「‾な'あ」単体で呼びかけの感動詞としても使うが、その際二~三度繰り返して言うことが多い。
     (例)[な]ー[な]ー、[これ] [おしえて]ーなー
     (訳)ねえねえ、これ教えてよ
  • ‾な'ーし:上記「な(ー)」を丁寧にしたもの。祖父母世代(ほぼ女性層に限られる)が使うのを時折耳にするが、親世代で既に死語化している。
     (例)[え]らい {すんません}[な]ーし
     (訳)申し訳ありません
  • にゃねん断定を見てな。
  • ‾ね('ー)‾ね(ー=):敬体では共通語に寄せて「な(ー)」ではなく「ね(ー)」を使う(祖父母世代は敬体でも「な(ー)」を多用する)。常体でも緊張した場面や恰好つけて言う場面で「ね(ー)」を使うことがあるが、呼びかけの感動詞としては使わない。
  • _ほん:ある程度の確信や信念とともに、自分の考えや情報を相手に伝える時に使う。「がな」に近いが、より柔らかい言い方。筆者にとっては理解語彙に近い存在だが、「ほん」を使わないとしっくりこない場面があるのも事実である。「行こほん」「取ったろほん」のように意志形とともに使うこともあるが(筆者にとっては理解語彙度がさらに高い)、共通語に訳すとなると「行こうよ」「取ってあげようよ」では違和感があり、「行くとしよう」「取ってあげるとしよう」と訳すかいっそのこと「行くよ」「取ってあげるよ」と訳すほうが近いように感じる。
  • _やん(か):「じゃないか」「じゃん」に相当。「がな」にニュアンスが近いが、こちらのほうが柔らかい。「_やんか'ー」または「_や'ん」と発音して「(知っているとは思うけど)~でしょ?」という意味合いを、「_んやんか'ー」または「_んや'ん」で「~んだけどさあ」という意味合いをもって使うことも多い。これらの用法は「ねん」やその過去形「てん」と合わさって「_ねんか'ー」「_てんか'ー」と言うこともある。「_んやんか('ー)」は「_にゃんか('ー)」になることがある。
     (例){えー}やん {えー}やん
     (訳)いいじゃんいいじゃん
  • _やんな('ー):「だよね(え)」に相当。単体で相槌にも使う。祖父母世代は使わない。「_んやんな('ー)」は「_にゃんな('ー)」になることもある。
     (例)[な]ー[な]ー、[こ]んで {おーた}ーる{やんな}ー?
     (訳)ねえねえ、これで合ってるよね?
  • _よ:名詞や指示詞、接続詞、接続助詞のあとに直接付けて、相手の注意を引きつけようとする間投助詞。「神田の生まれよ」のような江戸弁、あるいは「ハヤシもあるでよ」のような名古屋弁に似る。相手に言い聞かせようとする気持ちが強い場合や、相手の反応を確認しながら言うような場合は下げずに言うこともある。だらだらと話すような場合には「よ'ー」と下降を加わえて言うが、やや野暮ったい印象がある。小学生時代、担任に「_あのよ'ー」と話しかけて「品のない言葉だから『あのね』と言いましょう」と言われ、却って「あのよー、この世ー」と面白がって言い続けた思い出がある。
  • _よな('ー)_よね('ー):共通語からの借用語だが、「だよな」「だよね」に関しては、そのままの形を使うのも、「だ」を「や」に置き換えて言うのもどこか違和感があり、断定辞を付けずに言う。
     (例){いつ}も {ここ}で [かいもんする]んよな
     (訳)いつもここで買い物するんだよね
  • _わ:よく知られた関西弁の終助詞。京都や大阪での用法と変わらない。敬体にもよく付けるが、成人するまでは「敬体+わ」はおっさん臭く感じて避けていた。「わい」は筆者は使わない。母は「〜たらどう?」の意味で「_たらわ?」と言うことがある。
  • _わいな(ー):後述「わな(ー)」を強めたもの。投げやりな気持ちや鬱陶しく思う気持ちが強くなる。使用頻度は低い。「_わいな'ー」と下降が加わると、しみじみとした心情が強くなる。
  • _わな(ー):「わ」と「な(ー)」が合わさったもの。自分の意向を相手に軽く伝える。「_わな'ー」と下降が加わると、自分が見聞きしたことを良くも悪くも肯定する気持ちを表す。

接続助詞・副助詞

  • _かて:「僕かて」のように体言のあとに付けると「~だって」「~も」を意味し、「行ったかて」のように用言の過去形のあとに付けると「~ても」を意味する。筆者は基本的に「‾か'て」とは発音せず、また「行かんかて」のように否定形のあとに付ける用法を持たない(年配世代から聞くことはある)。
     (例){わたし}かて [おこると]きわ [おこる]{で}
     (訳)私だって怒る時は怒るよ
  • _けど‾け'(ん)ど:逆接を表す。筆者は「が」は使わない。単体で語頭で使うこともある。
     (例)[け]んど、[ほら] [おか]しーわ
     (訳)けど、それはおかしいよ
  • ‾さ'かい(に):理由を表す。「さけ」は筆者は馴染みがない。筆者の世代では共通語の「から」に押されつつあるが、京阪神ほどは死語化しておらず、祖父母世代は言うまでもなく、親世代も日常的に使っている。小学校時代、新興住宅に住む同級生から「それどこの方言?」と言われ、恥ずかしくなって一時期使わなくなったものの、中学の古語辞典に「さかい」が載っているのを見つけて「由緒ある言葉やったんや」と自信を取り戻し、以前にも増して使うようになった過去がある。
  • _で:理由を表す。「さかい」との明確な使い分けはないと思うが、短く言いやすいこともあってか、若年層でも比較的使われているように感じる。語形は共通語の「ので」に似るが、疑問終助詞や断定辞を後ろに続けることができるなど、用法は「から」に近い。終助詞の「で」と同音だが、こちらのほうが僅かに音が低いような気がする。また、終助詞「で」は尻上がりの発音で伸ばして言うことがよくあるが、こちらの「で」を尻上がりの発音で言うことはまずない。筆者は基本的に「で」の前にアクセントの下がり目を置くが、母など周囲の発音を観察していると、無核の語に続く場合にはアクセントを下げずに言っていることが多い。
  • ‾と'さいが:動詞の連体形に付けて順接条件を表す「と」を強調した形。江戸弁の「ってえと」にニュアンスが似ている。理解語彙で、親世代でもほぼ死語。
     (例)[こんだけ] {あめ}が {ふると}さいが、[じ]めん {ゆるゆるに} {なってまう}わ
     (訳)これだけ雨が降ると、地面がゆるゆるになってしまうよ
  • もって=:動詞の連用形に付けて、「~ながら」「~つつ」を意味する。理解語彙に近い。
     (例)[え]らい[え]らい [いーもって] {ある}いた
     (訳)「しんどいしんどい」と言いながら歩いた

助詞の省略

格助詞「を」は、はっきりと伝えたい場合や改まった場面以外では、共通語以上に省略が起こる。

関西の方言らしく、「~と言う」「~と思う」のように引用を表す助詞「と」あるいは「て」も省略が起こる。なお「と言う」は「(っ)ちゅー」とも言うが、筆者にとって「(っ)ちゅー」は、「あっちゅーま」(=あっという間)という慣用表現を除いて、いかにも方言らしい言い方に感じられ、「と」を抜く言い方のほうが方言らしさが薄く、比較的改まった場面でも言いやすい感覚がある。「と」を抜いて言うのも非共通語であることに変わりないのに。

共通語の「といって」に当たる表現も「言うて」と助詞を略して言うことが多いが、「といって」ではなく単に「と」あるいは「って」と訳す方が自然な場合がある。「{ここ}のうどんは {おいし}ー[ゆ]ーて [有名]やねん」など。

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