発音

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アクセントを除いて、基本的な発音体系は共通語と大きく変わらず、東北方言や名古屋方言などと違って「五十音では全然書き表せない」というようなことはない、と自分では思っている。共通語との違いは以下のとおり。

母音

母音の音素は /a, i, u, e, o/ で、半母音の音素に /j, w/ がある。

関西の方言らしく、母音をはっきり発音する。中村明裕氏に母音「う」のフォルマントを測ってもらった際には、筆者の「う」は長野県出身の中村氏と比較して円唇性が高いという結果が出た(2014年6月20日の中村氏のツイート)。一方で、中舌寄りだという指摘を受けたこともある(2019年8月3日のふなや氏のツイート)。

一拍語は長音化させて言うことが多く、「[どこが][い]たいん?」「{手え}」のように単独で言う場面や「{木い}[植]えた」「[魔あ]{射す}」のように助詞を省略して言う場面では必ず長音化する。

関西の方言は母音の無声化がほとんどないとされるものの、筆者の発音は無声化がほとんどないとは言いがたい。無声化が起こりやすいのは主に次の二つ。

  1. 敬体「です」「ます」の「す」。
  2. アクセント核直後かつ後ろに摩擦音が続く時の「き」「く」「し」「す」など。無声化とともにアクセント核が後ろにずれる傾向がある。例えば「作者」「貸した」は通常「‾さ'くしゃ」「‾か'した」であるが、「‾さ'しゃ」「‾か'た」のようになることがある。

共通語の影響によるものか、地域の方言に元々ある特徴か(昭和の時点で、湖東と湖北では無声子音に続く文節末の「う」に無声化傾向があると記録されている)、それとも単なる筆者個人の滑舌の問題か、その背景は定かではない。もっとも、筆者は上記の1を共通語の影響だという認識を持っているため、方言らしく話そうとする際には「ですー」「ますー」のように無声化させない発音を心掛けている。

「やばい→やべー」や「すごい→すげー」のように「あい」「おい」を「えー」と言う連母音変化は、筆者の同世代では結構よく聞かれ、親世代でもふざけた時などに言うことがあるが、筆者には関西らしくない言葉遣いという認識があるため、極力言わないようにしている。「まずい→まじー」のような「うい」から「いー」への変化は筆者の周囲ではまず聞くことがない。

古い記録では湖東・湖北の一部で「あい」が「あえ」のように変化するとされるが(例えば明治22年生まれの愛知郡の方の音声記録の「大名みたいな」など)、祖父母の口から聞いた覚えはなく(筆者が単に覚えていないだけかもしれないが)、成人後に米原辺りのお年寄りの方と会話した時に「重たい」を「おもたえ」のように言うのを聞いて「ほんまに言う人やあるんや!初めて聞いた!」と驚いたぐらい、馴染みがない。

子音

子音の音素は /k, s, t, c, n, h, m, r, g, z, d, b, p/ 。

ガ行鼻濁音は意識すれば発音できるが(カラオケで歌う時など)、日常会話のなかで実際に発音することはほとんどない。鼻濁音を発音するとしても、伝統的な共通語にあるような「数字の5は語中でも鼻濁音にしない」などの細かいルールはなく、語中のガ行はなんでも鼻濁音で言うことになる(オノマトペはさすがに鼻濁音になることは少ないが)。

関西の方言ではサ行がハ行に変化することが知られるが、全てのサ行がハ行化するわけではなく、特定の表現に限られた現象である。筆者の方言で起こるハ行化は以下のもの。

  1. 「こそあど」の「そ」を使った表現。詳しくはこそあほを参照。
  2. 「‾し'ち(七)→‾ひ'ち」と「‾しつ'こい→‾ひつ'こい」。方言らしく話そうとする時の、半ば意図的な変化。もっとも、それを意識しぎて、方言らしく話そうと意図していなくても「質問→‾ひつもん=」「筆談→‾しつだん=」のように「しち・しつ」と「ひち・ひつ」を言い間違えてしまうことが稀にある。
  3. 「行かへん」のような否定表現「へん」。そもそも「せん」がハ行化したものだという意識がない。
  4. 「行かはる」のような待遇表現「はる」。そもそも「なさる」がハ行化したものだという意識がない。
  5. 「‾くださる=→‾くだはる=」。筆者は言わないが、祖父母はよく言っていた。
  6. 二人称「_おまはん=」。筆者はほとんど言わないが、母や祖父母はよく言う。逆に「おまさん」「おまえさん」のような言い方は聞かない。

「ません→まへん」「ましょう→まひょ」のような敬体「ます」の活用形のハ行化や、「おまはん」以外の「さん→はん」は、親世代はもちろん祖父母世代ですらたまにしか言わないレベルのコテコテの方言という認識があり、まず筆者の日常会話では出てこない。なお、ハ行→サ行の例は上記2以外まずないが、祖父母は「人」を「‾し'と」と言うことがあった。

マ行がバ行に変化することもある。筆者が日常的に言うのは「‾おぼ'たい(重たい)」「‾さ'ぶい(寒い)」「‾ねぶ'たい(眠たい)」に限られるが、祖父母は「‾ひぼ=(紐)」「‾つべ'たい(冷たい)」「‾とぼす=(灯す)」なども言っていた。

和歌山や丹波など関西各地でザ行・ダ行・ラ行がごっちゃになる現象があるが、筆者の日常会話では「_のぞ=(喉)」と終助詞「で」ぐらいで、そもそも後者は「ぜ」が変化したものだという意識がない。祖父母や母は終助詞「ぞ」を「ど」と言うこともある。

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