aklib_story_鍛造

ページ名:aklib_story_鍛造

このページでは、ストーリー上のネタバレを扱っています。

各ストーリー情報を検索で探せるように作成したページなので、理解した上でご利用ください。

著作権者からの削除要請があった場合、このページは速やかに削除されます。

鍛造

マッターホルンはひどく損傷してしまった盾を新しいものと取り換えようとしていたが、その盾の話を聞いたヴァルカンには違う考えが浮かんだ。


[ケオベ] ヴァルカンお姉ちゃん!

[ケオベ] (くんくん)

[ケオベ] やっぱり! はちみつクッキーの匂いがするなーって!

[ヴァルカン] やあ、ケーちゃん。今ちょうど焼き上がったんだ。ほら、ここにあるぞ。

[ケオベ] わぁーい。

[ケオベ] えーっと、ヴァルカンお姉ちゃんの分が一個でしょ、でおいらの分が一個! マッターホルンおじさんも一個で、おいらが一個! それでラヴァお姉ちゃんが一個で、おいらが一個と……

[ヴァルカン] ふっ……

[エンジニアA] ヴァルカンさん、メンテナンスが必要な武器をお持ちしました。提出された最新の分はこれで全てです。

[ヴァルカン] 了解した。ごめん、ケーちゃん。仕事が入ったから一人で遊んでおいで。

[ケオベ] うん! わかった。

[エンジニアA] 研磨や油さしなど簡単な作業はすでに済ませています。ただ、構造が複雑なものがいくつかあり、どのような処置が適切か、我々では判断し切れませんでした。

[ヴァルカン] 分かった、見せてくれ。

[エンジニアA] はい、例えばこちら。源石回路、クロスボウの本体と細かいパーツは全部分解しておきました。ここに並べますね。

[エンジニアA] 稼働テストと大方の手入れももう済ませてあります。難点は改造作業です。

[エンジニアA] 持ち主の狙撃オペレーターからは、武器にシールドのようなパーツを付け加えてほしいとの希望です。

[ヴァルカン] 私が前に設計したラウンドシールドのようなものか? 一度に大人数を攻撃から守る効果は見込めないが、ベルトにかけて携帯するのには便利だ。

[ヴァルカン] 搭載した源石回路も、ある程度狙撃オペレーターのアーツを増幅してくれる。極限条件下では、相手に致命的な打撃を与えることも可能だろう。

[エンジニアA] しかし、クロスボウ本体に追加するとなると、不必要な重量を増やすことになって、かえって武器の強度に悪影響が出ると思います。なので、この改造申請は却下するべきではないかと迷っています。

[ヴァルカン] いや、その心配はない。私に任せてくれ。

[ヴァルカン] 私が以前研究していた伸縮パーツ、それからブレミシャインが開発した極薄素材はここに使えるかもしれない。

[エンジニアA] そうですか。なら、後のことは頼みました、ヴァルカンさん。

[ヴァルカン] 今日も依頼が山ほどあるな……

[エンジニアB] みんな外勤任務を終えると、武器のメンテナンスと修理が必要ですからね。

[ヴァルカン] この無数のひっかき傷……かなりの激戦だったようだな。

[ヴァルカン] ここの裂け目なんかは一際大きい。もしこの盾がなければ、きっと重傷を負うことになっていただろう。見てくれ、刺さったままの矢じりもある。

[エンジニアB] ヴァルカン先輩、マッターホルンさんの盾も送られてきましたよ。

[エンジニアB] うっわ、盾が、何て傷だ……彼はこの盾を使って山でも切り崩したというのですか?

[ヴァルカン] うーん……何とかして手を加えなければ、この盾の寿命はもうすぐで尽きてしまうだろう。

[ヴァルカン] 私がバラしておくから、すまないが、各パーツの破損具合をチェックしてくれ。

[エンジニアB] ……

[ヴァルカン] ……どうした? なにか問題でもあったか?

[エンジニアB] い、いえ! その……実は、自分は新入りで、先輩のお手伝いって思うとどうしても緊張してしまって……! しかもヴァルカン先輩と一緒に働くだなんて!

[エンジニアB] ヴァルカン先輩のことはエンジニア部の先輩方からたくさん聞いています! わ、私、頑張りますから!

[ヴァルカン] そうか、これから精進してくれ。

[ヴァルカン] では、私は適したな鋼材を探してくる。

[ヴァルカン] ハイビスカスのアーツユニットとフェンの槍、ビーグルの盾に、これはクルースのクロスボウ……

[ヴァルカン] これらの武器は、毎度のこと群を抜けて破損状態がひどいものだ。

[ヴァルカン] そっち側にあるのが彼女たちがロドスに入りたての頃に使っていた武器で、こっち側のは私が改造したものだ。その違いが見て取れるか?

[ヴァルカン] ――ロドスのオペレーターたちは様々な状況下で作戦行動をとらなければならない。多様な作戦のニーズに合わせるためには、武器にもそれぞれの状況に応じた機能を追加していく必要がある。

[エンジニアB] そうなんですね、わかりました!

[ヴァルカン] そして改造工程において何よりも重要なことは、各オペレーターの性格とニーズをよく考慮することだ。技術者の自己満足のために使用者のニーズを疎かにすることはくれぐれもしないように。

[エンジニアB] 例えばクルース先輩の武器に付けられているこのストラップとか、ですか?

[ヴァルカン] そうだ。

[ヴァルカン] 武器には持ち主の思いが込められてる場合が多いからな。メンテナンス作業をする際は、そういったことも気に留めておかなければならない。

[ヴァルカン] 使用者をよく理解すること、それはよりよくその要望に応えることにも繋がるだろう。

[ヴァルカン] よし、とりあえずここにある武器のメンテナンスは終了だな。

[ヴァルカン] さあ、ご主人たちのところで存分に実力を発揮してくれ。

[???] すみません、ヴァルカンさんはいらっしゃいますか?

[ヴァルカン] ああ、入ってきてくれ、ロックはかけていない。

[マッターホルン] 失礼します――ヴァルカンさん、今日は新しい盾の鋳造をお願いしたく、依頼しに来ました。

[マッターホルン] 今使用しているものはこれまでも何度も直していただいてますが、強度が落ちてきたのをこの頃明確に感じるようになりまして……それで思い切って手放す時がやって来たんだなと。

[ヴァルカン] この盾を? これは、確かに何度も修理に出しているものだな。

[マッターホルン] ええ、これはイェラグから持参してきたものなんです。

[マッターホルン] イェラグの気候はほかの地域とはだいぶ違いますから、この盾には極低温の環境でも強度が低下しない特別な鋼材が使われています。

[ヴァルカン] だが逆を言えば、それはイェラグ以外の地域では本来の性能を発揮できないことを意味する。

[マッターホルン] そうなりますね。以前にもそう指摘していただきましたが、何ぶんこの盾には俺の思い入れがあるものですから、どうしても取り換えたくなかったのです。

[マッターホルン] ただ、今回出来てしまった傷はあまりにも酷いので……こいつもそろそろ限界かと。

[マッターホルン] ここを見てください。外勤任務だったのですが、狂暴化したハリノミの群れと荒野で遭遇してしまい、奴らの吐いた毒液は盾の裂け目から浸食してしまっています。

[マッターホルン] 今までの修復は毎度完璧なまでに仕上げてもらってますが、今度ばかりは……この浸み込んだ毒液や、へばりついたハリノミの死骸を完全に取り除くのだけでもかなり手間がかかるでしょう。

[マッターホルン] 素人の私が見ても分かります。これを直すのはきっと一筋縄ではいきません。

[マッターホルン] それに、これ以上修復しても、もう在りし日の輝きは取り戻せないでしょうから……ここらがこいつの寿命の迎え時なのかもしれません。

[ヴァルカン] どれ、見てみよう。

[ヴァルカン] ……ハリノミの毒液、それと口器の欠片も付着してるのか、確かに厄介ではあるな。

[ヴァルカン] 今回は裂傷も大きい、背面の枠組みまで変形してしまっている。

[ヴァルカン] ……内部の亀裂も肉眼で確認できるほどに大きくなってしまっているな。一体どんな任務をやってきたんだ?

[ヴァルカン] 強いダメージはあえて受けずに回避したように見受けられる。さもなければ……この噛み跡から見るに、この盾はとっくに荒野でバラバラになっていただろう。

[ヴァルカン] それで、この盾はどうするつもりだ?

[ヴァルカン] 通常、使われなくなった武器は旧武器庫に収められる。そのうちの一部は予備役のオペレーターたちの実戦訓練に使われ、残りはエンジニア部が回収して解体し、リサイクルされる。

[ヴァルカン] 特別に思い入れなどがある物なら、専用の保管所に預かってもらったり、あるいは各自で保管することもある。

[マッターホルン] ……俺は……

[マッターホルン] ヴァルカンさん、俺の家はシルバーアッシュ家の護衛の家系です。この盾もシルバーアッシュ家の職人が鍛えてくれたもので、骨を埋める覚悟で戦場に赴けという我が一族の誓いが込められています。

[マッターホルン] 父が俺にこの盾を託した時も、その誓いを終身忘れることなく貫き通せと戒められたものです。

[マッターホルン] それに、旦那様からエンシアお嬢様をお守りするよう仰せつかっているのですから、この盾もその使命を背負っているんです。

[マッターホルン] ヴァルカンさんに何度も直していただいたことには本当に感謝しています。この盾は俺にとって、何より大事なものですから。

[マッターホルン] ただ――今回の破損状況ではもう……

[マッターホルン] ですので、こいつは綺麗にしていただき、記念に保存しておいて、新しい盾を作っていただくのがよろしいかと思っています。

[ヴァルカン] 現在の技術では新しい盾を作るのは造作もない。今ある素材と、何度も君の盾を修復してきた私の経験をもってすれば、すぐにでも君の要求に合う盾を作り上げられるだろう。

[ヴァルカン] ただその前に、一つ聞いておきたいことがある。

[ヴァルカン] もし、今の盾を元通りに……いや、もっと良い状態に仕上げられると言ったら、君はどうする? それでも記念品にしてその辺に飾ってしまうか、それとも手に取り使い続けるのか。どっちだ?

[マッターホルン] ……

[ヴァルカン] 綺麗にする方法とか、鋳造や材料を探す手段とか、そういうことは考えなくていい。ありのままの答えを聞かせてくれ。

[ヴァルカン] 君はここにやって来て、この盾の物語と受け継いだ誓い、そして君にとっての意味を教えてくれた。

[ヴァルカン] 君がこの盾を何よりも大事にしていることは分かっている。

[マッターホルン] そうだとしても、もう元の状態に戻すことは……

[ヴァルカン] だが、君はまだ私に聞いていない。私がそれを元通りに直せるかどうかを。

[マッターホルン] ……そんなこと、できるはずがありません。

[ヴァルカン] 私の工房に来たからには、できる。

[マッターホルン] まさか……

[ヴァルカン] 分かっているよ。君は何を捨てて、何を残すべきなのか、それを決断するためにずっと考え込んできたのだろう。

[ヴァルカン] 私のところに来る者たちはみんなそうだ。

[ヴァルカン] 少し話をしよう、マッターホルン。

[ヴァルカン] ロックロックという、ヴィクトリア人の娘と面識はあるか? 以前話すことがあってな、本艦には数回しか来たことがないのだが、それでも印象深い子だったよ。

[マッターホルン] 俺は面識はありませんが……なぜ彼女を?

[ヴァルカン] 面白い人だと思ったんだ。それに、私とどこか似ている気がする。

[ヴァルカン] 彼女は古い工業地区の生まれで、その場所に強い思い入れを持っていた。いま彼女が身につけているものはすべて自作らしい。

[ヴァルカン] 私の工房に来て、機械を見てどれも気に入った様子だったが、それでも彼女は自作の日用品を使い続けることに拘っていた。

[マッターホルン] ……ヴァルカンさんが毎日ここで火を起こし、インゴットを打つのと同じように、ですか?

[ヴァルカン] そうだ。

[ヴァルカン] そんなことをして何の意味があるのかと言われたら、正直、意味はないんだ。

[ヴァルカン] ここにある機械を見てみろ。わずかな時間で大量のインゴットを生産してくれる。ロックロックだって、自分の作ったものがそれほど精巧ではないことは分かっているはずだ。

[マッターホルン] でも、あなたたちは、それを続けていると……

[ヴァルカン] そう、その行動に意味があるからだ――私は鍛冶職人、それが私の根で、根底にある礎だ。

[ヴァルカン] ロックロックが自作にこだわり続けるのも、彼女は自分の根があの古い工業地区にあると思っているからだ。たとえ、彼女が新しい工業技術を受け入れていたとしてもな。

[ヴァルカン] だから、私にはわかるよ。いくらロドスでの暮らしに馴染んでいるとしても、君の根はイェラグの雪山にあるのだろう。一族の、父や祖父の教えをその胸に抱き続けるのと一緒だ。

[ヴァルカン] 鍛冶職人ではなく、一人の友人として君にお願いしたいんだ。私にもう一度、その盾を修復させてはくれないか?

[マッターホルン] ……

[ヴァルカン] 私に任せてくれ、必ず満足のいく結果を出してやる。

[エンジニアB] 先輩、さっきの会議ヴァルカンさん出てませんでしたよね? 一体どうされたんでしょうか。ついこの前に作業のお手伝いをさせてもらってたんですが、ここ数日は工房にもいらっしゃらなくて……

[エンジニアA] マッターホルンさんの盾の修復に使う新しい金属素材を探しているらしい。

[エンジニアB] マッターホルンさんの盾ですか?

[エンジニアB] 浸食がひどくてもう使い物にならないって言ってませんでした? かなり長い時間をかけて洗浄したんですが、それでも汚物を完全に取り除くことができなかったんですよね。

[エンジニアB] マッターホルンさんだって、あの盾はもう取り換え時だって言ってませんでした?

[エンジニアA] 元々はそのつもりだったらしいが、この前話を聞いたら、ヴァルカンさんが直してくれるって約束してくれたとか。

[エンジニアB] 直す? あんなボロボロになった盾を、ですか?

[エンジニアA] お前はまだ新人だから知らないのか。ここの部門の人手がまだ足りてなかった頃、ロドスにいるオペレーターたちの武器は全部ヴァルカンさん一人で見てくれてたんだぜ。

[エンジニアA] で、これは聞いた話だが、俺もまだ入職してなかった頃に天下無双の神器を作ったらしい。それが炉から出た時、天と地が揺れ動き、太陽と双月すら色褪せ、ロドス本艦中に激震が走った――!

[エンジニアA] ――ってのは大袈裟かもしれないけど、ヴァルカンさんはその名の通り、正真正銘の鍛冶の神だって、エンジニア部の古株は皆口を揃えて言うんだ。

[エンジニアB] はぁー……見てみたかったな……そんな仕事ぶりを……!

[エンジニアB] 今ヴァルカン先輩は工房にいますか? 手元の作業が終わったら、見に行ってもいいですか?

[エンジニアA] やめとけ、今日も留守なんだ。昨日俺にこれからの仕事を手配してから、そのまま鉱石探しに出かけちまったよ。

[エンジニアA] 今頃はどっかの山の洞窟に籠ってるんだろう。

[村人の声] お嬢ちゃん、だから話を聞いてくれって! この洞窟には入っちゃいけねえよ! 中にはおっかねえバケモノが潜んでるんだ!

[村人の声] 前にも砂金掘りやら賞金稼ぎやら、トレジャーハンターだのと色んな連中がやってきたが、ほとんど帰ってこなかったんだぞ!

[村人の声] だいいち、そんな足じゃ動きにくいだろ? 入っても死ぬだけだ。悪いことは言わないから、思いとどまるんだ!

[ヴァルカン] ……

[ヴァルカン] 心配は無用だ。爺さんこそ、しばらくはこの洞窟から離れた場所にいたほうがいい。

[村人の声] やれやれ、これだから若いもんは……

[ヴァルカン] ふぅ……

[ヴァルカン] ようやく着いた。座標も推測していたのとそこまでズレはなかったようだ。ここで間違いないな。

[ヴァルカン] 環境も規模も予測通り。

[ヴァルカン] 特殊な地形での採掘作業は少々手間取ってしまうかもしれないが、麻酔剤と囮の設置はできている――

[ヴァルカン] イェラグの鍛造法では、寒い環境下で鋼材がさらに強靭になる。盾を修復するためには、それと同じことができる完璧な素材を見つけなくては。

[ヴァルカン] 数年前に、オリジムシの体に生えた鉱物の結晶を偶然手にしたことがある……とても小さなカケラだったが、オリジムシが分泌した物質を吸収したためか、強靭度が極めて高い。

[ヴァルカン] ……

[ヴァルカン] 深さは約三百メートル。装備をもう一度確認。よし、問題ない。

[ヴァルカン] ……こんなにあっさりトラップに引っかかったのか?

[ヴァルカン] よし、失神状態になったな。

[ヴァルカン] 眠っていてくれよ、少し結晶を借りるだけだから……

[ヴァルカン] マズい、奥にもう一つ巣穴があったのか!

[ヴァルカン] 持ち帰った鉱物は鍛造してインゴットにできた。温度区分によって異なる排出物質の確認と、それぞれの温度での強度テストも完了している。

[ヴァルカン] テスト結果を見ると、これを心鉄にするのが最適なようだ。内側に強靭度の高い他の素材を挟み込めば、大きな力を加えても武器は破断しにくくなる。

[ヴァルカン] だが、焼き入れの最適時間と温度管理がネックだな。

[ヴァルカン] 一昨日は一部だけ焼き入れをしてみたが、ダメだった。幸い、事前に防護措置を十分に採ったおかげで飛び散った破片によるケガは防げたが。

[ヴァルカン] やはり、温度管理はもっとデリケートな調整が必要だな。

[ヴァルカン] こっち側の棚と物品をどかそう。もっとスペースを空けないとな。

[ヴァルカン] さすがクルビア製の機械だ。狂いがない。

[ヴァルカン] ……では、作業を始めるか。

[ヴァルカン] 各金属の比率をハイライトで表示、酸素の数値も……

[ヴァルカン] これに基づいて温度と時間を設定し直して……

[ヴァルカン] 角度を調整……温度を上げて……初期化……

[ヴァルカン] ふぅ――もうすぐ最大値だ!

[ヴァルカン] よしっ、完成だ!

[ヴァルカン] ゴホッゴホッ、新しい鍛造法の――

[ヴァルカン] 実験成功だ。

[ドーベルマン] ヴァルカン? 何か用か?

[ヴァルカン] 失礼する、ドーベルマン教官。

[ヴァルカン] この盾の具合を試してみたいのだが、あそこの訓練設備を使ってもいいか?

[ドーベルマン] ああ、もちろんだ。

[ドーベルマン] 予備オペレーターたちにも手伝わせようか? 新兵たちにとってもいい鍛錬になるだろう。

[ヴァルカン] それは助かる、礼を言おう。

[予備隊オペレーター] ドーベルマン教官、準備できました!

[ヴァルカン] それでは足りない。もっと全力でこの盾を攻撃してくれ。

[ヴァルカン] 私のことなら心配ない。

[予備隊オペレーター] あの、ドーベルマン教官……?

[ドーベルマン] ヴァルカンの実力はお前たちの比ではない。その上、これは彼女が新しい鍛造法で作った盾だ。遠慮は要らん、全力を尽くせ。

[予備隊オペレーター] はい!

[予備隊オペレーター] ハァ……ハァ……

[ドーベルマン] どうだ?

[ヴァルカン] やはり、ドーベルマン教官に頼みたい。

[ドーベルマン] いいだろう。

[ドーベルマン] いくぞ――!

[ドーベルマン] ハァッ――!

[ドーベルマン] ほう、いい盾だな!

[エンジニアB] ク、クロージャ先輩! ちょっと伺ってもよろしいでしょうか……

[クロージャ] なになに、どうしたの?

[エンジニアB] その……ヴァルカン先輩のことなんですが……ロドスじゅうに激震が走るほどの神器を作ったというのは、本当なんですか?

[クロージャ] ……

[クロージャ] それ……誰から聞いたの?

二週間後

[ヴァルカン] ふぅ――

[ヴァルカン] よし、これで完成だ。

[ヴァルカン] 順調に終わったな。予定の納期にもこれで間に合う。

[ヴァルカン] 最後にもう一回テストをしよう。これが終わればちょうど引き渡しの時間になるだろう。

[マッターホルン] すみません、ヴァルカンさんはいらっしゃいますか?

[ヴァルカン] ああ、入ってくれ。

[ヴァルカン] 君の盾、約束通り直しておいたよ。

[マッターホルン] なんと……

[マッターホルン] まさか本当に直していただけるとは……お見それしました、ヴァルカンさん。

[ヴァルカン] 手にとってみてくれ。

[マッターホルン] これは……まさしく俺が今まで使ってきた盾です!

[マッターホルン] 本当に見事に修復していただいたのですね?

[ヴァルカン] ああ、新しい鉱物と鍛造方法を用いてな。本来あった鋼材の中に、さらに強靭度の高い素材を埋め込んでおいた。

[ヴァルカン] 耐寒の面では、以前より性能は落ちてしまうかもしれないが、この心鉄なら過酷な環境でも破断する心配はないはずだ。

[ヴァルカン] 盾そのものの強度は前とほぼ差はない。元の形をそのままにして、背面に源石回路を付けておいた。これは自動で触発する仕組みだから安心してくれ。使用者がアーツを扱える必要はない。

[ヴァルカン] ここで振り回すのはまずいから、あとで訓練場で試してみてくれ。

[マッターホルン] 俺は……

[マッターホルン] 絶対に無理だと思っていました。でもヴァルカンさん、あなたは……

[マッターホルン] 本当にたった二週間でこれを?

[ヴァルカン] それだけ時間があれば十分だ。

[マッターホルン] つい先日も外勤任務に行かれていたものですから、てっきりまだまだ時間がかかるんだと思っていました……

[マッターホルン] 本当に心から感謝します、ヴァルカンさん。

[ヴァルカン] いいんだ、それが私の仕事だからな。

[ヴァルカン] 武器を直し、みんなの要求に応える。そして、その武器が持ち主の手でさらに本領を発揮することができれば、こちらとて本望だ。

[ヴァルカン] ましてや、武器は人それぞれにとって異なる意味を持っている。

[ヴァルカン] となれば鍛冶職人として、当然ベストを尽くさねばならない。

[ヴァルカン] それが、私の鍛冶職人としての根なんだ。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧