aklib_story_強さに果てはなし

ページ名:aklib_story_強さに果てはなし

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強さに果てはなし

ロドスの訓練室にて、熾烈な戦いがまさに繰り広げられようとしていた。果たして、石子マスターの称号を手にするのは誰なのか!?


[ジュナー] あっ、ちょうどよかった。ズィマー、リェータ、こっち来て!

[ジュナー] ほら! ぼさっとしてないではやくはやく!

[ズィマー] なんだ? ケンカの助っ人でも探してるのか?

[リェータ] ケンカだって? よしきた!

[ジュナー] 違うわよ。実はね――

[ジュナー] 訓練室のフィットネス入門講座に来ている感染者の子供たちの面倒を見てほしいの。どっかのバカがドーベルマンの前でおやつを見せびらかしちゃって大変なのよ。

[リェータ] おお、おやつネットワークの危機か!

[ズィマー] ……子供の面倒?

[ジュナー] 注意事項はメモに書いておいたわ!

[ジュナー] それじゃあ、頼んだわよ。後でご飯おごるから!

[リェータ] おぉー、足速いな! ジュナー教官ってクランタだっけ?

[ズィマー] なんでアタシたちがガキの面倒見なきゃなんねえんだ?

[リェータ] ……確かにそうだよな? 私もお前も、どう見たって子供の扱いが得意そうに見えないのに。

[リェータ] しかもロドスに来たばっかの子たちなんだろ? うーん……

[ズィマー] チッ、めんどくせえ。

[ズィマー] ……仕方ねえ、一日だけだし、ちょっと我慢すれば、すぐに終わんだろ。行くぞ。

[リェータ] ……ははっ、そりゃあまあ……

[リェータ] 私と違って、勇敢で聡明な冬将軍は、向かうところ敵なしだしー?

[ズィマー] はぁ? オマエ、逃げる気か?

[リェータ] 子供相手に授業とか、私には無理! あとはお前に任せた! がんばれよ! はちみつジュースは取っといてやるからさ!

[ズィマー] おい!!

[ズィマー] *ウルサススラング*ふざけんな!

[ズィマー] ……

[ズィマー] (授業とか、考えただけで頭が痛いぜ……)

[ズィマー] (……おっ、静かだな? 大人しくしてくれてんのか?)

[ズィマー] (ならまだマシか。)

[ズィマー] ……

[感染者の女の子] ほらほら、全員こっちに注目!今からあたしの言うことをちゃんと聞くこと!

[感染者の女の子] あたしに一撃で倒されたヤツが、アニキ面してたわけ? でもあんた腕は悪くなかったよ。今日からあたしの子分一号ってことで! そっちの二人は二号と三号ね!

[感染者の女の子] そしてこの場所が、あたしの新しい縄張りだよ!

[ズィマー] ......

[感染者の女の子] あれ! あんたも新入り? 遅れて来たから一番下っ端ね!

[ズィマー] ……?

[感染者の女の子] これから、あたしのことは姉御と呼ぶように! 分かった?

[ズィマー] (へぇ~? ここの全員を倒して従わせたってことか。この子、なかなかやるじゃねえか。)

[ズィマー] (……って、感心してる場合じゃねえな。アタシは授業しに来たんだから。)

[ズィマー] おい、そこのちびっ子! なーに偉そうにしてんだ!

[ズィマー] (こういうガキは、一発ぶん殴れば大人しくなるよな?)

[ズィマー] (いや、アタシは授業しに来たんだし、暴力は良くねえよな。)

[ズィマー] オマエら、よく聞け! 来るはずだった教官に用事ができてな、代わりに今日はアタシがオマエらの指導をすることになった。全員、大人しくしとけよ!

[ズィマー] さっきもらったメモは……っと、あった。おいオマエ! さっき騒いでたオマエだよ! 遮蔽物から降りろ! アタシは医療オペレーターじゃねえんだ。高いとこから落っこちて泣いても知らねえぞ。

[感染者の女の子] ちょっとあんた、子分のくせに、なんて口利くのよ! それに、あたしが落ちたり泣いたりするわけないでしょ!

[感染者の子供たち] そうだ! そうだ!

[ズィマー] (くっ、耐えろ! 殴っちゃダメだ!)

[ズィマー] 「子供たちの安全に注意しながら、トレーニングマシンの名前と使い方を教える。実際に触らせてもいいけど、絶対にケガはさせないように!」

[ズィマー] (汚ぇ字……ジュナー教官、マジで急いでたんだな。)

[ズィマー] ほら、集まれ! ジュナー教官から課題が出て……オマエ、いつまでそこに立ってんだ?

[ズィマー] めんどくせぇな……さっさと降りろって言ってんだろ!

[感染者の女の子] いやだ! あたしは姉御だから、みんなを見下ろせる場所がいい!

[感染者の子供たち] そうだ! そうだ!

[ズィマー] ……

[ズィマー] (マジで一発ぶん殴りてぇ!)

[ズィマー] 教官からケガさせるなって言われてんだよ! そこは危ねえから、早く降りろって!

[感染者の女の子] フーン、だから?

[ズィマー] ……言うことを聞け!

[感染者の女の子] なんで姉御が子分の言うことを聞かなきゃいけないわけ? あんたこそ、あたしの言うことを聞きなさいよ!

[感染者の子供たち] そうだそうだ! 姉御の言うことを聞け!

[ズィマー] あぁ? アタシにそんな口利くとはオマエ、マジでぶん殴られてぇのか?

[感染者の女の子] あんたじゃ無理だよ~だ! あたし、アーツでぶっ飛ばせるけど、あんたは石が生えてないし、どうせアーツも使えないでしょ?

[ズィマー] (あぁもうー! このクソガキが! 代わりにリェータのヤツを引きずってきてぶっ飛ばしてやりてぇ……)

[感染者の女の子] それに、あたしはすごいんだよ! だから教官以外の言うことを聞くなんて絶対にいや!

[ズィマー] その教官がアタシに頼んだんだよ!

[感染者の女の子] 子分の言うことなんか聞きたくないもん!

[ズィマー] ……

[ズィマー] (このガキ、怒られるとどんどん頑固になるタイプか?)

[ズィマー] (ロサがいりゃよかったのに。アタシに優しいお姉ちゃんのマネなんかできねえし、こいつを大人しくさせることもできねえなら、他のガキはもっと無理だろうな……)

[ズィマー] (このままじゃラチが明かねえ……どうにかして言うことを聞かせねえと。)

[ズィマー] なぁオマエ、マジでそんなに強ぇのか? アタシにはそう見えねえけどな。教官がオマエの指導をアタシに頼むってことは、アタシの方が強ぇってこと。だから、ここの姉御はアタシなんだよ。

[感染者の女の子] そんなことないもん! 姉御はあたしなの!

[ズィマー] だったら賭けをしようぜ。

[感染者の子供たち] 賭けだって! 楽しそう!

[ズィマー] オマエが負けたら、大人しく言うこと聞きな。代わりにアタシが負けたら、オマエの子分になってやるよ。まぁ、絶対に無理だとは思うけど。

[感染者の女の子] あんたは元々あたしの子分じゃん。そんな意味のない賭けなんかしないよ!

[ズィマー] そうだ、アタシは元々オマエのこぶ……は?

[ズィマー] (思わず話に乗せられちまった! ああ! チクショー!)

[ズィマー] ……本当は負けるのが怖ぇからやらねえだけだろ? 一番下っ端の子分にビビってるヤツは姉御失格だな!

[感染者の女の子] はあ?

[感染者の女の子] あたしは姉御で、子分はあんたなの! そこまで言うならやってやるよ!

[ズィマー] オマエの特技はなんだ?

[感染者の女の子] 石子(いしなご)! あたし、チョーーー得意だから!

[感染者の女の子] 絶対に姉御って呼ばせてみせるもん!

[ズィマー] よし! 交渉成立!

[感染者の子供たち] バトルだ! バトルー!

[ズィマー] 姉御ちゃんよ、よーく見ておきな。これが本物の姉御のすごさだ!

[ズィマー] (石子なんて数えきれないほどやってきたんだ。こんなガキに負けるはずがねえ……)

[ズィマー] 行くぜ!

[ズィマー] (石を上に投げて、手の甲で一つ受け止めて……手で掴んでまた投げる。そんで一つ拾ってキャッチ、二つ拾ってキャッチ……三つ、一つ……)

[ズィマー] クリアだ。

[感染者の女の子] ふんっ! レベル1なんて誰でもできるよ。

[ズィマー] OK、じゃあ次はレベル2だ!

[ズィマー] (一気に投げて、手の甲で二つキャッチ! ほいっと、一回キャッチして一回乗っけて。もっかい投げて、よっと……)

[感染者の女の子] 落とせ! 落とせ!

[ズィマー] (そう簡単に落とすわけねえだろ! ったくこのガキは……まぁ、見てなって。)

[ズィマー] (一つ、二つ、三つ、一つ……よし、レベル2もクリア。)

[ズィマー] 次はレベル3だな。投げて、拾って、二つ、三つ、一つ……

[感染者の女の子] 落とせ! 落とせってば!!

[ズィマー] 全部キャッチしたぜ。次で最後だ!

[感染者の女の子] フン、それぐらい、あたしだってできるし!

[ズィマー] (ふぅー、一旦心を落ち着かせて……)

[ズィマー] (よし、行くぞ! 片方で七つ掴んで、こっちで一つ投げる! 受け止めて……四つ離してもう一度キャッチ! もう一回投げて……三、二、一……よし!)

[ズィマー] これで終わりだ!

[感染者の女の子] ……

[ズィマー] (手の甲にある八つを、放り上げて掴む!)

[感染者の女の子] あぁっ! 二つ落とした!

[感染者の子供たち] 落とした! 落とした!

[ズィマー] あちゃー、しくったか。まっ、結果にしちゃ悪くはねえ。

[ズィマー] ほらガキ、オマエの番だぜ。どんだけ得意か見せてみろ。

[感染者の女の子] フン、言われなくたってやるってば。

[感染者の女の子] それとガキって言うな。姉御って呼びなさい。

[ズィマー] はいはい、それじゃあ姉御ちゃん、始めてくれ。

[感染者の女の子] ……

[感染者の女の子] …………

[ズィマー] (おぉー、確かに上手い……動きも俊敏だし、特技だと言うだけのことはある。おっ、そろそろ終わりそうだな……)

[ズィマー] おっと! 三つ落としたな! オマエの負けだ!

[感染者の女の子] ……

[ズィマー] それじゃあ、これからはアタシの言うことをちゃんと聞けよ。もう遮蔽物に登っちゃダメだからな。

[感染者の女の子] さっきズルしたでしょ! だから今の勝負はなし!

[ズィマー] ズルだぁ? ズルしてんのは今のオマエだろうが!

[感染者の女の子] 違うもん! ズルしたのはそっちだもん!

[感染者の女の子] それに姉御がズルするわけないじゃん!

[感染者の子供たち] そうだ! そうだ!

[ズィマー] あっはははっ! じゃあもっかいだ!

[ズィマー] 一二三四五六……七つか。さっきよりは上手くいったな! でもアタシは八つだから、またオマエの負けだぜ。

[感染者の女の子] ……

[ズィマー] 今度こそ言うこと聞けよな。

[感染者の女の子] ……フン。

[ズィマー] ん?

[ズィマー] (おいおい、やっとの思いで取り付けた約束なのに、平気で破るのかよ。)

[ズィマー] (今のガキってみんなこうなのか?)

[ズィマー] ……約束も守れねえヤツなんかを、子分一号と二号だって、姉御とは呼びたくねえだろうな?

[感染者の女の子] ……

[感染者の女の子] 分かったよ。何すればいいの?

[ズィマー] マシンの名前と使い方を覚えるんだ。気になるなら直接触ってもいいぜ。

[感染者の女の子] それじゃあ、始めるよ。

[感染者の子供たち] おっす、姉御!

[感染者の女の子] ……

[ズィマー] ……

[ズィマー] (しょげたツラしやがって。あれくらいで傷つくなんて、これだからガキは面倒なんだよ!)

[ズィマー] そのーなんだ。オマエ、腕は悪くなかったぜ。ただ、アタシの方が遊んだ回数が多いから、経験の差で勝っただけだ。

[ズィマー] 最後に投げる時はスナップを効かせてみろ。そうすりゃ時間差で落ちてくるから、ズラして手の甲で受け止めればたくさんキャッチできるんだ。

[ズィマー] 試してみな。

[感染者の女の子] ……

[感染者の女の子] 一二三四五六七八……

[感染者の女の子] うわぁ、本当にできた。

[感染者の女の子] わぁーい♪

[ズィマー] ほらな? そんじゃ、元気出たみたいだし、そろそろ始めるか。

[ズィマー] 真面目に勉強しろよ! ジュナー教官が戻ってくるまでいい子にしてたら、石子の究極テクニックを教えてやる。そいつをマスターできれば、向かうところ敵なしだ。

[感染者の女の子] ほんとう?

[ズィマー] オマエに噓ついてどうすんだよ?

[感染者の女の子] やった!! お姉ちゃんっていい人なんだね!

[感染者の子供たち] いい人! いい人!

[ズィマー] 全員に教えるなんて言ってねえだろ? 喜ぶにはまだ早いぞ! 授業を始めるからさっさと集まれ!

[ズィマー] (もうお姉ちゃん呼びかよ。チョロいな。)

[ズィマー] よーく聞けよ。こいつがバーベルで、こっちのラックみたいなヤツが「スミスマシン」だ。バーベルのバーをここのレールに固定すると、どうなると思う?

[感染者の女の子] ……バーベルが取れなくなる?

[ズィマー] あ? ちげーよ。スミスマシンはバーベルの動きを制限するだけだから、取れなくなるわけじゃねえ。バーベルが前後に動くのを防ぐことで、腰や膝のダメージを軽減できるんだ。

[ズィマー] こんな風にスクワットしたりとかな……バーベルをこう持って、膝がつま先より前に行かないように意識しつつ、息を吐きながらしゃがんで、吸いながら立ち上がる。

[ズィマー] あとはここに寝そべって、バーベルを上げることで、上半身を鍛えることもできるぞ。バーベルの重さ設定には気をつけろよ。支えきれない重さにしちまうと……グシャッ――だ。

[ズィマー] だからくれぐれも気を付けるように。分かったか?

[感染者の子供たち] うん! バーベルは重過ぎると、押しつぶされてぺちゃんこになるんだよね!

[ズィマー] お? おお……

[ズィマー] そうだ。ぺちゃんこになりたくねえなら、トレーニング中は安全に注意すること!

[ズィマー] 次はこの懸垂マシンだ。本体に背中を向けて、グリップを両手で掴んだら、アームレストに腕を置いて体重を預ける。そんで腹に力を込めて、足を直角に持ち上げれば、腹筋を鍛えることができるぞ。

[ズィマー] そうだな……この種目は比較的にケガしにくい。誰か試したいヤツはいるか?

[感染者の女の子] はいっ! あたしあたし!

[ズィマー] オマエの背じゃ届かねえか。ほら、抱えてやるよ。

[ズィマー] よっと!

[感染者の女の子] ここを掴めばいいんだよね?

[ズィマー] あぁ、そんで腕を乗っけたら体重をかけて……いけそうか?

[感染者の女の子] うん!

[ズィマー] フラフラすんなよ。背筋は真っすぐ、腹に力を入れて、足を真っすぐ伸ばしたまま、腹筋を使って持ち上げるんだ。吸って……吐いて……いいぞ、その調子だ。

[感染者の女の子] (プルプル)

[ズィマー] おい、腕んとこから源石が出てるから、ぶつけねえようにしろよ……ここ、痛いか?

[感染者の女の子] 触んないで!

[ズィマー] おいこら! マシンの上で暴れんな!

[ズィマー] ケガでもしたらどうすんだ?

[感染者の女の子] ……お姉ちゃんって、体に石生えてないでしょ?

[ズィマー] ……まあな。

[感染者の女の子] じゃあ、あたしに近付かない方がいいよ。

[ズィマー] ……まずはマシンから降りな。

[ズィマー] なんで近付いちゃダメなんだ?

[感染者の女の子] だってあたし病気だから。みんな、あたしを避けたり、石をぶつけたりするの。お姉ちゃんも石が生えてないなら、あたしに近付かないのは当たり前でしょ?

[ズィマー] ……

[ズィマー] 何言ってんだ? ここにゃ石が生えてるヤツがそこら中にいるってこと、ジュナー教官から聞かされてねえのか? 下らねえこと言ってないでトレーニングに集中しろ!

[ズィマー] ……

[ズィマー] ……

[ズィマー] 石をぶつけられた時、やり返したか?

[感染者の女の子] した! ボコボコにしてやったよ!

[ズィマー] やるじゃねえか!

[ズィマー] ……あー、でもケンカは一応良くねえことだからな。今後はすぐに誰かを殴ったりしちゃだめだぞ。

[感染者の女の子] どうして?

[ズィマー] うーん……とにかくダメなんだ。

[感染者の女の子] うん。

[ズィマー] よし、懸垂マシンの説明はこれくらいでいいだろう。正しいフォームはジュナー教官があとで教えてくれるから、残りのマシンの説明を一通りしてやるよ。

[感染者の女の子] ……

[感染者の女の子] お姉ちゃんの名前、教えてよ。

[ズィマー] ん? アタシは……ズィマーだ。コードネームだが。

[感染者の女の子] コードネーム?

[ズィマー] あぁ、今はズィマーと名乗ってる。

[ズィマー] オマエは?

[感染者の女の子] あたしにはまだコードネームがないの……

[感染者の女の子] 決まったら教えてあげるね!

[ズィマー] ははっ、楽しみにしてるよ。

[ズィマー] よし! これで全部だ。ちゃんと覚えたか?

[感染者の女の子] もちろん! あたし、頭いいもん!

[感染者の子供たち] 覚えた! 覚えた!

[ズィマー] 興味が湧いたなら、今後もジュナー教官の講座に参加して、体の鍛え方を学ぶといい。

[ズィマー] 他のオペレーターも色んな入門講座を開いてるから、気になるもんがあるなら行ってみな。

[ズィマー] それと、ロドスにはオマエらと同世代のヤツもたくさんいるから、そいつらと遊ぶのもありだぜ。

[ズィマー] それじゃあ、授業はここまで! ジュナー教官が戻ってくるまで、石子の究極テクニックを教えてやるよ!

[感染者の女の子] 究極テクニック!!!

[感染者の子供たち] 教えて! 教えて!

[ズィマー] よーし、全員集まれ。いいか、こうやって……こうすりゃ……

[ジュナー] ただいまー。はぁ~、無事に解決したわよ。よかったよかった!

[ズィマー] 教官。

[感染者の子供たち] 教官だー。

[ジュナー] ズィマー、今日はありがとうね。あとでご飯おごってあげるよ……あれ、リェータは?

[ズィマー] ハッ、ガキの世話だって聞いた途端に逃げやった。

[ジュナー] アハハハ、じゃあ、あの子の分のお礼はなしね。それで、今日の授業はどうだった?

[ズィマー] マシンの名前と使い方を教えて、何個か実際に試してもらった。全員なかなか筋がよかったぜ。

[ジュナー] いい感じね。あとは私がやるから、先に休んでて。

[感染者の女の子] ……

[ズィマー] じゃあ、マシンを片付けとくよ。

[ジュナー] みんな、こっちにおいで。最後に今日の勉強成果を披露してもらったら、授業を終わりにしましょう。

[感染者の子供たち] えっと、これがバーベルで、このマシンに固定できるの。こうやると足の筋肉を鍛えられて、ここに寝そべって持ち上げると、腕を鍛えられるんだよ。

[感染者の子供たち] これは……

[感染者の子供たち] あれは……

[ジュナー] みんな、バッチリよ! すごいわ! 体に痛いところはない?

[感染者の子供たち] 大丈夫!

[ジュナー] よかった。でも念のためにチェックさせてね。

[ジュナー] ……

[ジュナー] うん、ケガをしてる子はいないみたいね。安心したわ。

[ジュナー] それじゃあ、今日はここまで。宿舎でゆっくり休んだら、夜は食堂で好きな物を食べてね。周りを散策してみるのも楽しいわよ。

[ジュナー] それじゃあ、解散!

[感染者の子供たち] 教官、ズィマーお姉ちゃん、さようなら~。

[ジュナー] はい、さようなら。

[ズィマー] あぁ、じゃあな。

[感染者の女の子] ……

[感染者の女の子] ズィマーお姉ちゃんが先生をやるのは今日だけなの?

[ジュナー] そうよ、今日だけ特別に来てもらったの。次回からは私が授業をするわ。

[感染者の女の子] じゃあ……今度からはお姉ちゃんも一緒に授業を受けてもらえる?

[ジュナー] へぇ〜?

[ジュナー] 意外と懐かれてるじゃない?

[ズィマー] まぁ……は?

[感染者の女の子] ズィマーお姉ちゃん、もう来てくれないの?

[ズィマー] あぁ、アタシはたまたま手伝いに来ただけなんだよ。今更入門講座を受けても仕方ねえし、これからは……そうだな……もう顔を出さねえと思う。

[ズィマー] 教官の話をよく聞いて、ロドスの生活にしっかり馴染めよ。

[感染者の女の子] うん……

[ジュナー] ふふっ、こんな面白い展開になるのは、予想外だったわ。

[ジュナー] ねぇ、ズィマーのどこをそんなに気に入っちゃったの? なんか言われたとか?

[感染者の女の子] ケンカはよくないから、これからはケンカしちゃダメだって!

[ジュナー] ?

[ズィマー] ……

[ジュナー] へぇ~……ふ~ん……ケンカしちゃダメ、ね……プッ。教えてくれてありがとう。もう戻って休んでいいわよ。

[感染者の女の子] 分かった……教官、ズィマーお姉ちゃん、さようなら……

[感染者の女の子] あのね、お姉ちゃん……あたし、明後日もこの訓練室で授業を受けるからね。

[ズィマー] そうか?

[ジュナー] あらあら、逃げちゃった。

[ジュナー] さっきの言葉の意味、分からなかった?

[ジュナー] 次もあなたに来てほしいってことよ。アハハハ、あんなに懐かれるなんて、一体あの子に何をしたわけ?

[ジュナー] 私だって、あそこまで好かれたことないのに……もしかして、私って意外と見た目怖いのかしら?

[ズィマー] ……

[ジュナー] あら、呼ばれちゃったみたい。ごめんね、ちょっと行ってくるわ。

[ジュナー] IDカード渡しておくから、これで好きなものを食べてきて。返す時は部屋の前に置いといてくれればいいから。

[ジュナー] 遠慮せずに美味しいものを食べてね!

[ズィマー] あぁ、ありがとよ! じゃあな、教官!

[リェータ] アハッ! こんなとこにいたのかよ。やっと見つけた!

[リェータ] ほらよ、はちみつジュースを持ってきてやったぜ!

[ズィマー] チッ! よくもまあノコノコと戻ってこれたな?

[リェータ] そう言うなって! せっかく人が大事に大事に取っといたジュースを分かち合おうとしてるのによー。

[ズィマー] フン、オマエが逃げちまったせいで、こっちは丸一日クソガキ共の相手をしてたんだぞ!

[リェータ] アッハハハハ! 我らの冬将軍がガキの世話とか、アハハハ!

[ズィマー] ……どっかの夏将軍みてえに、逃げたりしねえからな!

[リェータ] まぁまぁ、はちみつジュースを持ってきてやったんだし、いい加減機嫌直せよ……ほら飲め飲め! 私からのお詫びだ!

[リェータ] うまいだろ? なんてったって私の秘蔵品だからな!

[ズィマー] ああ……確かにうまい。

[リェータ] なぁなぁ、今日あったことを聞かせてくれよ。子供の相手をした感想は?

[ズィマー] ただ授業をしてやっただけだよ。

[ズィマー] でも……なぜか一人の女の子に、やたら懐かれちまってな……

[リェータ] 女の子に懐かれたぁ? ボコって、うんうん頷くしかできないようにしたとかじゃなくて?

[ズィマー] ボコられてえのはオマエだろ!

[リェータ] ちょっ、冗談だって! ほら、続きを聞かせてくれよ。

[ズィマー] だから……授業の後にアタシを引き止めたり、次も来てほしいとか言い出したんだよ……アタシがそんな簡単な授業を受けに行くわけねえだろ? でもよ……

[ズィマー] ……

[リェータ] どうしたんだよ。歯切れ悪いな。

[ズィマー] なんでだか分かんねえんだよ。

[リェータ] 何がだ?

[ズィマー] アイツ、アタシのどこをそんなに気に入ったんだ……?

[ズィマー] アイツに怒鳴っちまったし、ゲームでも負かして恥をかかせてやったんだ。嫌われるなら分かるけど、好かれる理由なんてねえのにさ……次の授業に誘われたんだぜ?

[ズィマー] それに前のアタシはその……分かるだろ? あんな感じだったし……でもそんなのお構いなしに、純粋に次も来てほしい口ぶりだった……

[リェータ] ゴクゴクゴクッ……プハァ! 何かと思えば、そんな下らないことで悩んでんのかよ! その子はただお前がいい奴だと思ったから好きになっただけだろーが!

[リェータ] 逆にその子がオマエを嫌う理由なんてあんのか?

[ズィマー] ……

[ズィマー] …………

[リェータ] ほらな! 答えられないだろ? つまり、その子はただ単にお前が好きだってことだよ!!!!

[ズィマー] 食堂で喚くんじゃねえ!

[リェータ] バカ、揺らすなって! 今飲んでんだ……うへぇ~、目が回る……酔い覚ましに水買ってくるわ……

[リェータ] こ、ここで待っててくれ……

[ズィマー] チェッ、弱ぇくせにあんなに飲みやがって。そのうち酔っぱらって船から落っこちても知らねえぞ。

[ズィマー] ……

[ズィマー] うっ……こいつはマジでジュースなのか……?

[ズィマー] ちょっと頭がクラクラしてきたな……

[ズィマー] ……

[ズィマー] ……そうだよな、アタシを嫌う理由なんてねえもんな。

[ズィマー] もう前のことを気にする必要はねえよな……あの子だって……ちっとも気にしてねえし……

[ズィマー] ちっとも……

[ズィマー] ヘへッ。

二日後

[ジュナー] さあ、今日の授業を始めるわよ~。

[感染者の女の子] はーい……

[ジュナー] どうしたの? 元気ないわね。

[感染者の女の子] ううん……なんでもない。

[???] ほら、だーれだ?

[ズィマー] じゃーん! ズィマーお姉ちゃんのおでましだぜ!!

[感染者の女の子] へ???

[感染者の女の子] ――わぁ! やったあ!!!

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