aklib_story_一人前の戦士

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一人前の戦士

イナムたちが地下から帰ってくるまでの間、フリントたちは首長が送り込んだスパイたちの前でひと芝居打ち、うまく時間を稼いだ。


[興奮したアダクリス人] かませー! 思いっきりぶん殴れ!

[興奮したアダクリス人] いけ! 右だ右! 横っ面に入れろ!

[囃し立てるアダクリス人] いいぞ、その調子だ! よそもんのうすのろ野郎をぶちのめせー!

[囃し立てるアダクリス人] よっしゃ! 俺たちティアカウの強さを、存分に見せつけてやれ!

[巻き込まれた行商人] ず、ずいぶん激しくやり合ってるが、この二人は何かのっぴきならない因縁でもあるのか?

[興奮したアダクリス人] あぁ? こいつらに因縁があるかなんて知るかよ。拳でぶちのめすだけだ!

[囃し立てるアダクリス人] そうそう、たかが喧嘩だよ。そんな複雑なことじゃないって。

[囃し立てるアダクリス人] てかアンタ見ない顔だな、よそから来たのか?

[巻き込まれた行商人] あ、ああ。私はあちこちを回ってる行商人でね。ついさっき着いたところなんだ。

[巻き込まれた行商人] 噂じゃここには色んな部族がいるって聞いたから、いい商売ができるかもしれないと思って……

[囃し立てるアダクリス人] うお、ギョウショウニンなのか! えっーと、たしか……物売りだよな! いいじゃねぇか。物を売るやつは大歓迎だぜ!

[囃し立てるアダクリス人] だが兄ちゃん、慌てんなって。何か売りたいなら後で見せてもらうからよ。まずは喧嘩を楽しもうぜ!

[巻き込まれた行商人] いや、でも……

[興奮したアダクリス人] おい見ろよ、入った入った! 綺麗に入ったぜ! よくやった!!

[興奮したアダクリス人] ティアカウ最強だぜ!

[巻き込まれた行商人] ……

[ブローカ] ……チッ。

[ブローカ] これがお前らのもてなし方なのか?

[フリント] フッ、笑わせるな。

[フリント] 先に挑発してきたのはお前だろう。いまさらそれを言うのか?

[ブローカ] さっきも言っただろう。本当に気付かなかったんだ。

[ブローカ] 車のドアが少し高くてな、もうお前が乗ってるかと思った。

[フリント] ……

[ブローカ] ……

[ブローカ] ……後でドアを透明のやつに変えておくから。

[フリント] 無駄口はいい、さっさと来い!

[フリント] 今日こそ決着をつけてやる。私は我が部族で最も大柄で屈強な戦士……

[興奮したアダクリス人] 何してんだチビ、早くぶん殴れ! 俺たちを叩きのめした時の気迫をもういっぺん見せてみろ!

[囃し立てるアダクリス人] そうだそうだ! お前のあのスゲー早ぇゲンコツをそいつにお見舞いしてやれ!

[フリント] ……

[ブローカ] 先にうるさい野次馬を片付けるか? 待つぞ。

[フリント] ……黙ってろ!

[フリント] ッ……

[ブローカ] お前は素手だ、こっちは得物がある。

[フリント] だからなんだ?

[ブローカ] お前に勝ち目はない。

[ブローカ] 言っておくが、武器は遠慮なく使わせてもらうぞ。

[フリント] フンッ、勝手にしろ。

[フリント] どっちが勝つかはお前が決めることじゃない! まずは私の拳に聞いてみろ!

[ブローカ] ……野蛮だな。

[ブローカ] ジャングルから出てだいぶ経ったのに、共通語以外は何一つ学んでないようだ。

[ブローカ] 確かにここは……こういう場所は……

[ブローカ] ……お前のような頭の固い奴にこそお似合いだ。

[囃し立てるアダクリス人] おい、あいつ俺たちのことを褒めてるぜ!

[囃し立てるアダクリス人] 全くその通りだな! 俺たちアカフラしか、あんなチビ……だけどゲンコツがでけぇ戦士を育てられるんだ!

[興奮したアダクリス人] えっ? あいつ俺たちを褒めたのか? じゃあどうすんだ、これ以上やり合う必要はあるのか?

[巻き込まれた行商人] ……オホン、今のは褒め言葉ではなかったと思うが……

[ブローカ] どいつもこいつも野蛮な連中だ……

[フリント] ……フンッ、何とでも言え。

ティアカウの戦士はやや棒読みの口調でそう言うと、鋭い視線で周囲にいる人々を見渡した。

彼女の視線はとある人物のところで少し留まった。

[フリント] 今日のことは忘れないぞ、後で絶対落とし前をつけてやる!

[フリント] 余所者が。それほど我々ティアカウの戦士を下に見るなら、さっさとアカフラから出ていけ!

[ブローカ] 望むところだ。

[ブローカ] そもそも、お前ら野蛮人の住処に車を修理する工具の一つでもあれば……はぁ……

[フリント] (こんなところで時間を無駄にする必要なんてなかった!)

[ブローカ] ……こんなところで時間を無駄にする必要なんてなかった。

[フリント] あの鉄のデカブツが途中で壊れるなんて思わないだろう! 全く使えないやつだ!

[フリント] おい、そこの。

[巻き込まれた行商人] ……

[フリント] キョロキョロするな、お前に言ってる!

[巻き込まれた行商人] え?

[巻き込まれた行商人] わ、私かい?

[フリント] そう、お前だ。お前はその、なんとか商人なんだろう?

[巻き込まれた行商人] えっ、ああ、そうだ。行商人だ。

[フリント] 傷を治せるものはあるか? 少しくれ、できるだけ効き目の早いやつがいい。

[フリント] お前は何が欲しい? 交換だ。

[巻き込まれた行商人] その……商品というのはお金で買うものなんだけど……

[フリント] 面倒臭いな……前に来た商人は物々交換してくれたのに、なんでお前はダメなんだ?

[ブローカ] それはお前らが拳で脅したからだろ?

[フリント] うるさい、お前は黙ってろ。

[フリント] 本当に物々交換じゃダメなのか? 良いものがたくさんあるんだ。もし交換でいいなら、私の住んでるところまで連れて行こう。あそこはアカフラで一番賑やかな場所なんだ!

[巻き込まれた行商人] ……

[巻き込まれた行商人] もしもお客さんが本当に良いものを出してくれるのならば、私も商人だ。もちろん物々交換の相談にものらせてもらうよ。

[フリント] おお!

[ブローカ] 本気かよ?

[巻き込まれた行商人] 商売ってものは、臨機応変にやらないとね。あはは。

[巻き込まれた行商人] それで、今すぐ向かうのかな? その、アカ……アカホ……

[フリント] アカフラだ。

[巻き込まれた行商人] そうそう、アカフラ。そのアカフラで一番賑やかな場所を、ぜひとも見てみたいね。もしかしたら、あと一儲け二儲けできるかもしれないし。

[フリント] はは、もちろんだ!

[フリント] さあ、ついて来い!

[興奮したアダクリス人] おいおい、もう終わりか?

[囃し立てるアダクリス人] あいつらどこに行くんだよ? そっちは全然人がいねえ場所だぞ。狩りにでも行く気か?

[興奮したアダクリス人] さあな……あーあ、喧嘩も終わっちまったしな。よし、俺たちももう行くか。あの赤髪のよそもんが「ジャングル七号」を組み立て終わったか見に行こうぜ!

[囃し立てるアダクリス人] 行こう行こう。イナムがいない今のうちに、さっき届いたデカいやつをいじってみよう!

[ブローカ] ……

[巻き込まれた行商人] ハァ……ハァ……

[巻き込まれた行商人] ま、まだなのか?

[フリント] もうすぐだ。

[フリント] ちゃんと後ろをついて来いよ。この辺りは獣が多いからな、はぐれたら身の安全は保証できない。

[巻き込まれた行商人] え? もうすぐ一番賑わってる場所に着くんじゃないのか? なんで獣がいるんだ?

[フリント] 何もおかしいことはないだろう。ティアカウの戦士なら、獣が出る場所に住んでいて当然だ。

[フリント] 独りでジャングルに入り、一番狂暴な獣を倒してやっと、一人前の戦士なのだから!

[巻き込まれた行商人] そりゃまた大したものだ……

[巻き込まれた行商人] そういえば君も先程は、素手であの黒髪のフェリーンとやり合っていたね。ここの戦士はみんなそうなの?

[フリント] 大体な。槍を使って獣を狩る者もいるが、私には槍は必要ない。

[フリント] 私に言わせれば、戦士ならば拳があれば十分だ。

[巻き込まれた行商人] はは、君ほどの凄腕なら、確かに必要ないかもね。

[巻き込まれた行商人] ああそうだ。さっきの君たちの話を聞く限り、乗り物が故障したんだよね?

[巻き込まれた行商人] 君はあの人たちと一緒に、外から来たの?

[フリント] ……あんな少しの話でそこまで分かったのか?

[巻き込まれた行商人] ああ……まあ、当てずっぽうが当たっただけだよ。

[巻き込まれた行商人] それに、君は共通語にも達者だ。おそらくサルゴンの外で学んだんだろう?

[フリント] 不思議な奴だな。分かったなら分かったでいいじゃないか。何を緊張しているんだ。

[フリント] 少し前に、外の連中が何人かここへ来て、ジャングルを出て働けば大儲けできるという話を持ちかけてきたんだ。

[巻き込まれた行商人] おお! それでついて行ったの?

[フリント] そんなわけあるか! 私がそんなヒマ人に見えるか?

[フリント] ただ連中に強そうな奴がいたから、ついて行っただけだ!

[フリント] だが行ってみたら、鉄の箱に閉じこもっているうすのろどもの護衛ばかりをやらされてな。うんざりだ! 全く外の連中ときたら、憶病で弱っちいのに、人には指図するんだ。

[巻き込まれた行商人] ……

[フリント] それで、金も貰わずに、ここに帰ってきたんだ。

[フリント] あの黒髪のノッポは本当なら、私をここまで送ってきた後、とっくに帰るはずだったんだが、乗ってきた鉄の箱が動かなくなったとか言い出して、ずっとグズグズしてるんだ。

[フリント] あいつらの鉄箱の直し方なんて知るか! どれもこれも、見たこともない変な形の金属の機械ばっかりだし!

[巻き込まれた行商人] まあ、ここには修理道具なんてなさそうだしね……

[フリント] なんだって?

[巻き込まれた行商人] オホン。つまり乗り物の修理なんて、難しくてそう簡単にはできるものじゃないって言ったんだよ。

[巻き込まれた行商人] ところで、アカフラの戦士さんたちは、もっと便利な道具を買うつもりはないかい?

[フリント] たとえば?

[巻き込まれた行商人] たとえば、そうだな……あのフェリーンの持っていた乗り物とか、あるいは自動でいろんな作業をしてくれる機械とか。

[フリント] 興味ない。

[フリント] そんなものを買ってどうするんだ? 賭けてもいいが、私の拳一発にすら耐えられないだろう。

[巻き込まれた行商人] ……

[巻き込まれた行商人] こりゃ参ったな……

[フリント] どういうことだ?

[巻き込まれた行商人] 実はね、外でアカフラの噂を聞きつけたので、新しい商売ができないかと思って運試しのつもりでやってきたんだが……

[巻き込まれた行商人] どうやら……そんなチャンスはなさそうだな。

[フリント] 噂? 外ではなんて言われてるんだ?

[フリント] ティアカウの戦士の勇名がついに広まったとか――

[巻き込まれた行商人] あ、いや、そんな話じゃないよ。

[フリント] チッ。

[巻き込まれた行商人] このジャングルにとても繁栄した大きな部族が住んでいると聞いたんだ。機械も使っているし、最近では外との貿易も始めたらしいと……

[フリント] ……

[巻き込まれた行商人] だがこの様子じゃ、噂は当てにならなさそうかな。

[巻き込まれた行商人] いいや、結論を下すのはまだ早いか。ハハ、商売は辛抱強さと用心深さが肝心だ。帰りはこの辺りをもう一度、よく回ってみるとしよう。

[巻き込まれた行商人] もしかしたら、噂の大部族と遭遇できるかもしれないしね!

[フリント] ……それはどういう意味だ、まさか私がウソをついたとでも言いたいのか?

[巻き込まれた行商人] そんなまさか。

[フリント] お前――

[フリント] ――待て、動くな!

[フリント] ……

[フリント] こっち来い。隠れていろ。

[巻き込まれた行商人] なにっ?

[フリント] グズグズするな。早く!

[フリント] ――良い獲物が来た。

[フリント] ふぅ……

[フリント] よし、もう大丈夫だ、出て来てもいいぞ。

[巻き込まれた行商人] 本当に一人でこんな獣の大群をやっつけるなんて……

[フリント] 大したことじゃない。言っただろう、一番狂暴な獣を倒せてこそ、一人前の戦士なんだ!

[フリント] 今回は大きな群れだったから、手こずったように見えたかもしれないが、あんな獣なんて私の敵ではない。

[巻き込まれた行商人] ……

[巻き込まれた行商人] ……ありがとう。

[フリント] 礼を言われるほどのことじゃないって。そもそも、お前をここまで連れてきたのは私だからな。

[巻き込まれた行商人] ……だがさっきは、身の安全は保証できないと言ったじゃないか。

[フリント] あっ……

[巻き込まれた行商人] はぁ……

[巻き込まれた行商人] さあ、急いで傷の応急手当をしなくちゃな。ちょっと待ってて、今薬と包帯を出すから。

[巻き込まれた行商人] ほら、これ全部あげるよ。さっき守ってくれたし、報酬代わりでタダでいいよ。

[フリント] お、おお! いいのか?

[巻き込まれた行商人] もちろん。持っていってくれ。

[巻き込まれた行商人] ……

[巻き込まれた行商人] うぅん、確かに君たちは外で聞いた話とは違うみたいだな。

[巻き込まれた行商人] あの噂はどうやら嘘っぱちのデマだったらしい。

[フリント] 待て。

[フリント] 誰が嘘っぱちのデマだと言った?

[巻き込まれた行商人] え? まさか……

[フリント] 私たちの部族は大きいし、すごく繁栄してるのも本当だぞ!

[フリント] 部族総出で狩りに出る時には、多い時だと四五十人にもなるんだからな!

[巻き込まれた行商人] はぁ……

[フリント] 気を付けろ! 急にフラついてどうした?

[巻き込まれた行商人] だ、大丈夫だ。歩き過ぎて足が疲れたんだ……それよりまだ着かないのか?

[フリント] 焦るな。もう目の前だ、すぐに着く。

[フリント] 見たらきっと驚くぞ。

[冷静な女性] お帰りなさい、どうだった?

[巻き込まれた行商人] ……収穫無しだ。

[冷静な女性] その顔、どうしたのよ?

[巻き込まれた行商人?] 散々だった。はぁ、頭に筋肉しか詰まってない野蛮人と遭遇したんだけど、村に入るにはどうしても向こうの勇士と勝負しなくちゃいけないとそいつに言われて、それで殴られたんだ。

[巻き込まれた行商人?] いざ入ってみたら、村は小さいし貧しいし、住人も少なかったよ。車の修理道具すら知らないんだぞ。行かなけりゃよかった。無駄足だ!

[巻き込まれた行商人?] そっちは何か収穫はあったか?

[冷静な女性] いいえ、何も。こっちは赤髪のヴァルポが車両の修理してるのを見てただけだったわ。おまけに、修理が終わったらドライブしようってしつこく言われてね。

[冷静な女性] 村をグルっとひと回りしてみたけど、ボロ家が何軒か建っていただけだったわ。

[冷静な女性] でもあの人、あんまり私たちに深入りしてほしくないような感じがしたわ。何か隠し事でもしてるんじゃないかしら。

[巻き込まれた行商人?] ……噂は事実じゃなかったってことさ。

[冷静な女性] 本当にそう言い切れるの? ていうかあなた、パーディシャーが私たちをここへ派遣した目的を忘れたわけじゃないでしょうね?

[巻き込まれた行商人?] 忘れてなんかいないさ、だが結果はもう見えたよ。

[巻き込まれた行商人?] 少なくとも現時点では、この場所に発展している部族は存在しないようだ。利益も期待できそうにないな。ここに派遣されたあのトランスポーターの言った通りだった。

[冷静な女性] でもあの噂……

[冷静な女性] やっぱり何か気になるのよね。

[巻き込まれた行商人?] 君も言ってる通り、しょせん「噂」だ。噂。

[巻き込まれた行商人?] ここのトランスポーター……確かイナムだったか。彼女はもともと商売が好きだったろう、多少大げさに報告していても不思議じゃない。

[巻き込まれた行商人?] それに……

[巻き込まれた行商人?] 領地にしようと狙っている首長たちの求める富を生み出せない可能性が高いのに、我々が下手に期待を持たせた報告をしたところで、ロクな目に遭わないぞ。

[冷静な女性] ……それもそうね。

[冷静な女性] あなたの言う通りだわ。ゲンコツの大きさを競うことしか頭にない野蛮人たちが、私たちを騙せるとは思えないわね。

[巻き込まれた行商人?] 行こう、早く都に戻ってパーディシャーに事情を説明しよう。

[フリント] ……

[ブローカ] 片付いたか?

[フリント] ああ。

[フリント] そっちは?

[ブローカ] オートメーションの機械と旋盤は、まとめて近くの洞窟に隠しておいた。何も見つかっちゃいないさ。

[ブローカ] 部族の連中にも改めて釘を刺しておいた。外から来た人たちの前では機械のことは絶対に口にするなとな。

[フリント] 助かる。あとはイナムたちが帰ってくるのを待つだけだ。

[フリント] 手紙だけ残して勝手にどっかに行きやがって、ったく。

[フリント] そうだ、お前のその顔のアザなんだが……

[ブローカ] ああ、平気だ。

[フリント] 悪かった。今度、訓練場で殴り返させてやるよ。

[ブローカ] いいさ、気にするな。

[ブローカ] こういう芝居は、俺なんかよりもキアーベの方が上手かったんだろうが。

[フリント] 仕方がない、相手は一人だけじゃなかったんだ。キアーベにはもう一方の足止めをやってもらわないと。

[フリント] 本当ならば、あの芝居を殴り合いにまでエスカレートさせる必要はなかったんだが、でも……

[ブローカ] でも?

[フリント] フッ、少しばかり拳がうずいてな。

[ブローカ] ……

[ブローカ] さっきの話はなしだ。やはり今度訓練場で一発殴らせてもらおう。

[フリント] ハハッ、冗談だよ。

[フリント] ああでもしなければ、あいつらは我々の頭には拳しかないと信じてくれなかっただろう。

[フリント] 外へ出かける戦士たちが休憩に使うだけの廃れた村に連れて行ったんだが、まったく疑われなかった。

[ブローカ] まったく疑ってないわけでもないだろう。

[フリント] 確信を持たれなければいいんだ。

[フリント] 確証がなくて、意思を決めきれないうちは、上へ報告することはないだろう。

[フリント] ――と、ドクターがそう言ってた。

[ブローカ] 確かにな。

[ブローカ] 向こうだって所詮は下っ端だ、わざわざ上に睨まれるようなことはしないだろう。

[???] その通りだ! なんせこの俺様まで芝居に付き合ってやったんだからな、何の問題もねぇだろう!

[キアーベ] あ~、マジで疲れた。自分で車をバラしてから、また組み立てるなんてよ!

[フリント] 面倒をかけたな。あの時はこの方法しか思いつかなくて。

[フリント] もし弁償が必要なら……

[キアーベ] いいって、大したこっちゃねぇよ! こんなの昔俺らが詐……商売をやってた時もよく使った手なんだ。そうだよな、ブローカ?

[ブローカ] ……

[キアーベ] おい待て、ブハハハハハッ! おいブローカ、ブフッ、なっんだよその顔のアザは! ヒィ~腹いてェ~!

[ブローカ] ……黙れ。

[キアーベ] ハハハハハ!

[フリント] オッホン。そろそろ本題に入ってもいいか?

[フリント] 今回、うまく追い返してやったから、しばらく奴らが来ることはないはずだ。今はイナムやズゥママ、ガヴィルも留守にしてるから、ひとまずはやり過ごすしかない。

[ブローカ] あれで向こうが諦めるとは思えないがな。

[フリント] ああ。もしこの程度で誤魔化せるような連中なら、イナムもわざわざ私をここに寄越すはずがない。

[フリント] ……ウチの部族の連中にもジャングルの周辺を見張るように言っておく。もしまた誰か来たら、その時にまた対策を考えよう。

[キアーベ] ほほぅ。

[フリント] ……どうした?

[キアーベ] いや、ちょっと意外だったぜ。ここのボス……あのイナムとかいう奴は、結構お前のことを信用してるんだな!

[キアーベ] お前はいつもブレイズに引っついてばっかりで、こっち出身の連中ともあまり仲良くなさそうだったからな。イナムからの手紙を受け取ってこんなに早く行動するとは思わなかったぜ。

[フリント] 確かに、私は部族の人とあまり関わりを持とうとはしなかった。

[フリント] ただ、この前たまたまクルビアに行った時、廃棄された旋盤をできるだけ持って帰ってきてくれとイナムに頼まれたんだ。

[フリント] 関わりといったらそれくらいだ。今回、なぜ彼女が私を信用してくれたのか……自分でも分からない。

[ブローカ] あれを全部お前が持ち帰ってきたのか?

[ブローカ] なかなか見る目があるな。どれも直せば使えそうだ。

[キアーベ] 理由なんて簡単じゃねぇか。お前に見どころを感じたんだろ? いいことじゃねえかよ!

[キアーベ] ここぞって時には、俺様がアドバイスしてやろうと思ってついてきたけど、そんな必要はなかったみてぇだ。

[キアーベ] いっつもブローカと殴り合ってるから、てっきりお前もなんも考えず突っ込んでって拳ですべてを解決するタイプだと思ってたんだがな。

[フリント] 拳をまったく使わなかったわけでもないぞ。

[キアーベ] んあ?

[フリント] なんでもない。

[フリント] アカフラはあまりにも大きく変わった。部族の村に置かれた変な形の……機械は、一体どうやって作り出されたのかまったく想像ができない。

[フリント] ズゥママが作った物も相当に変だと思っていたけど、でもあれらよりはまともな形をしていた。

[キアーベ] 俺は結構面白いと思うけどな。

[ブローカ] 使えるなら何だっていい。

[フリント] それもそうだな。ああいう機械を使い始めて、私たちの暮らしも豊かになった。

[キアーベ] そんなにあっさり受け入れてんのか? 今じゃ生産も農業も狩りも全部機械に任せるんだぜ。この調子じゃ、お前たちティアカウの戦士の拳至上主義もいつかは消えちまうんだろうな。

[キアーベ] 本当にそんなんでいいのかよ?

[ブローカ] よせ、キアーベ!

[キアーベ] あー悪ィ悪ィ、ちょっと気になったんで聞いただけだよ!

[フリント] ……

[フリント] 部族を離れてここを出た時点で、私にはもう部族のやることに口出しする資格がなくなったんだ。

[フリント] これがティアカウの選択だというのなら、きっと問題ないはずだ。機械のことは少しも分からないが、私はここにいるみんなを信じてる。

[ブローカ] ああ。

[キアーベ] なるほどな。

[フリント] それにロドスに入ってから、私も色々と考えてみたんだ。

[フリント] ……相手を拳で伸せば話が終わるなら、私もあれだけ悩んでなんかいなかったさ。

[フリント] この前……ドクターの護衛として、一緒にどこかの企業との商談に参加したんだ。そいつらは来て早々に人を使って我々を脅そうとした。

[ブローカ] よくあることだ。

[フリント] そこで私はつい、向こうの連中を全員殴り倒してしまった。

[ブローカ] ……それもよくあることだ。

[キアーベ] あー……そういう状況に対処するのは確かに面倒だな。

[キアーベ] ドクターは止めに入らなかったのか?

[フリント] 止められた。でも私はドクターが寝てる間にやってしまったんだ。

[キアーベ] へぇ。いや待てよ、その話どっかで聞いたことがあるぜ。

[キアーベ] もしかして、ドクターにゆっくり休んでもらいたいって、部屋の前で門番してたら、因縁つけにきた連中がいて、全員ぶちのめしたって、あの話か?

[フリント] その話はもうやめてくれ……

[フリント] 危うく商談がダメになりそうだったんだ。最後はドクターのおかげでなんとかなったんだが、そのせいでドクターの少ない休憩時間をさらに削ることになってしまった。

[フリント] ……とにかく、私はみんなに迷惑をかけてしまったんだ。

[キアーベ] ドクターが一緒で助かったな。その後怒られたか?

[フリント] それはなかった。だが、ロドスに帰ってからドクターからこう言われた。拳の強さこそ正義だというのは間違っていないと。

[キアーベ] はぁ?

[フリント] だが、それはとてつもなく強い拳でなければならないんだ……少なくとも、今の私たちじゃあ足りない。だからそれ以外のやり方を探さなきゃならないんだって。

[ブローカ] 言えてるな。

[キアーベ] た、確かに……

[フリント] 待て。

[フリント] ……

[フリント] 何か音が聞こえないか?

[イナム] ふぅ、やっと上がってこれた……

[ユーネクテス] 感心している暇はないぞ。早速準備に取りかかろう。

[ユーネクテス] ん? なんでこんなところに機械が山積みになっているんだ?

[フリント] イナム、それに……

[イナム] あら、クマールじゃない、会えて嬉しいわ。

[イナム] その顔からすると、少なくとも悪いことは起きなかったみたいね。

[フリント] ……まあ、そうだな。

[イナム] それはよかった。例の人たちを追い払ったのよね? あんたに任せておけば、きっと大丈夫だと思っていたわ。

[イナム] このあとも色々手を貸してほしいことがたくさんあるんけど、ただその前に……

[イナム] 人が住めるように、手ごろな場所を空けておかないといけないの。手伝ってもらえない? もうすぐ地下から大勢のお客さんがこのアカフラにやってくるのよ。

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