aklib_story_予想外の悩み

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予想外の悩み

頻発する戦闘の中、マウンテンは礼服が戦闘に不向きだと気づく。しかし、彼は何となく礼服にこだわりがある様子だ。それに対し、後方支援のオペレーターが提案した解決方法とは——


[前衛オペレーターA] マウンテン、賞金稼ぎがそっちへ行った。かなりの数だ!

[マウンテン] ご安心ください、この程度なら一人で対応可能です。

[バウンティハンター] チッ! こいつら一体どこから湧いて出やがったんだ? 仕事を邪魔しやがってよ。ロドスか……覚えておくからな。

[マウンテン] 残念ですが、あなた方はここまでです。

[バウンティハンター] 図体がデカいからって、俺たち全員を相手に勝てると思うなよ!

[バウンティハンター] 行くぞ、てめえら!

[マウンテン] フンッ。

[前衛オペレーターA] あいつら数が多いな。急いでマウンテンの支援に行くぞ。

[前衛オペレーターB] ああ、もちろんだ。でもあんまり心配はしてねぇけどな。

[前衛オペレーターB] 奴らの実力じゃ、何人でかかろうがマウンテンにゃ朝飯前だろ。

[前衛オペレーターA] は? 確かに体格を見る限り、かなりタフそうだというのは理解できるが、攻撃が得意なタイプではないだろう。普段もあんなに腰が低いし。

[前衛オペレーターB] お前、彼と組むのは初めてだな?

[前衛オペレーターB] 俺も最初はそう思ってたよ。強そうなのは外見だけだろうってな。

[前衛オペレーターB] だが、すぐに間違いだって気付いたんだ……あの新人はヤベぇぞ。

[前衛オペレーターB] つまりだな……

[前衛オペレーターA] つまり?

[マウンテン] フンッ!!!!

[前衛オペレーターB] おっと……

[前衛オペレーターA] どうした?

[前衛オペレーターB] 話は後だ、マウンテンの後ろへ回るぞ。俺たちはこぼれてきたのを捕まえるだけで十分だろう。

[バウンティハンター] 化け……物……め。

[マウンテン] 他のオペレーターたちと比べれば、私などまだまだですよ。

[マウンテン] ふう……

[マウンテン] いけませんね、何人か取り逃がしてしまいました。この人数を一人で相手しようとしたのは、いささか慎重さに欠ける行為でした。気持ちがはやりすぎたようです。

[前衛オペレーターB] マウンテン、逃げようとした奴らは捕まえたぞ。

[マウンテン] 感謝いたします。

[前衛オペレーターA] うわっ! 全員ぼこぼこに伸されてるじゃないか。なんというか……すごいな。

[前衛オペレーターA] 近くの木も軒並みやばい折れ方してるし……ははっ、お前が落ち着いてた理由が分かったよ。

[前衛オペレーターB] だろ? それにしても早かったな。さすがマウンテンだ。

[マウンテン] 途中でみなさんに協力を要請すべきでした。まだチームでの作戦に慣れておらず、申し訳ありません。

[前衛オペレーターB] 問題ないさ。今回だってよくやってるよ。

[マウンテン] いえ、任務の目的は賞金稼ぎが付近の村にもたらす被害を解消することでした。一人でも逃せば後顧の憂いが生じます。

[マウンテン] お二人がいなければ、今回の任務は失敗するところでした。

[前衛オペレーターA] 謙虚だな、まったく……

[マウンテン] 自分の作戦行動を省みて、改善に取り組むのは当たり前のことではないですか?

[前衛オペレーターB] いや、まぁその通りなんだがな。こんなに真面目な新人は久々だ、少し感動したよ。

[前衛オペレーターB] ところで……大丈夫か、それ?

[マウンテン] 問題ありません。全てただのかすり傷です。すぐに治ります。

[前衛オペレーターB] 傷のことじゃない。お前の服のことさ。

[マウンテン] 服?

[前衛オペレーターA] マウンテン、お前の礼服、破けてビリビリになってるぞ。ほとんど裸みたいだ。

[マウンテン] あぁ、これは申し訳ありません。大変お見苦しいところを……

[マウンテン] 戦い始めるといつも他のことが頭から飛んでしまうのです。

[前衛オペレーターB] ははっ、別に構わねぇさ。だが前回もそうだったろ? 本当に任務用の服を支給してもらわなくてもいいのか?

[前衛オペレーターB] 任務に出るたんびに礼服を一揃いダメにするなんて、もったいねぇだろ?

[マウンテン] 着慣れているので礼服の方が落ち着くのですよ。ですが仰る通り、確かに毎度服を駄目にするのは無駄ですね。少し考えてみます。

[支援オペレーター] 戦闘に適した礼服がほしい……ですか?

[マウンテン] はい。もちろん、この要求が不合理であれば、無理は申しません。

[支援オペレーター] ええと……まず、あなたの場合、制服は別途申請が必要ということは聞いていますね?

[マウンテン] ええ。後方支援の担当者が教えてくれました。私の体格に合う標準の制服はないため、必要ならば別途申請をしなければならないと。

[マウンテン] その時は、オペレーターになった後にこれほど頻繁に戦地へ赴くとは思っていなかったので、ずっと申請していませんでした。

[支援オペレーター] つまり、任務に行くといつも私服がボロボロになってしまうというわけですか……

[マウンテン] その通りです。

[支援オペレーター] じゃあ今まで、何着も自腹で服を購入したんじゃないですか? かなり高くついたでしょう。

[マウンテン] 実は、初月の給与はほぼ全て、礼服の新調に費やしました。

[支援オペレーター] ええっ? そんなに!

[マウンテン] 私は監ご——ゴホン……私は故郷を離れたばかりですが、ロドスの配給にはすべてが揃っていて、特に自分で何かを買う必要はなかったため、そこまで大きな問題ではありませんでした。

[マウンテン] しかし、このまま続けるのも得策とはいえません。

[支援オペレーター] というか礼服を着ずに戦えば問題の……半分は解決されるのでは?

[マウンテン] 確かにその通りです。ですから先程も申し上げた通り、無理にとは言いません。

[マウンテン] ただ、私個人は礼服を好んでいますし、他のオペレーターの服装もかなり自由なように見受けられたので、とりあえず可能かどうか伺いにきました。

[マウンテン] もし難しいのであれば、丈夫な戦闘服を申請するまでのことです。

[支援オペレーター] うん……あなたのような要望は確かに珍しいです。

[支援オペレーター] オペレーターの服装は皆それぞれに特徴的ですが、そのほとんどは彼らの作戦に影響を与えないものです。

[マウンテン] そうでしたか、では結構です。

[支援オペレーター] ちょっとちょっと、まだ話は終わっていませんよ。私は珍しいとは言いましたが、ダメだとは言っていません。

[マウンテン] え?

[支援オペレーター] どのみちあなたの制服は、オーダーメイドしなくてはなりません。ほんの少し手間が増える程度ですから、問題ありませんよ。

[支援オペレーター] あっ! そうだ、丁度いいわ。

[支援オペレーター] オーキッドさん!

[オーキッド] 何? 今忙しいから、アフタヌーンティーは無理よ。

[支援オペレーター] いえいえ、そうじゃないんです。あのですね——

[オーキッド] …………

[支援オペレーター] お願いできますか? オーキッドさん。

[オーキッド] ……何だか頭痛がしてきたわ。

[支援オペレーター] そんなこと言わないでくださいよ、オーキッドさん。ほら、あなたは毎日後方支援はつまらないって言ってるじゃないですか。本件はただのオフィスワークと違って面白いはずですよ。

[オーキッド] つまらないのと疲労は別よ。半ば後方支援扱いされて仕事が回ってくるせいで十分疲れてるのだけど。

[支援オペレーター] ボーナスが出ますよ。

[オーキッド] 本当に?

[支援オペレーター] 皆の悩みを解決すれば、当然追加報酬が有ります。

[オーキッド] ……危うく心動かされるところだったけど、私は所詮デザイナーで仕立屋じゃないわ。服を作るなら、頼む人間を間違えてるわよ。

[支援オペレーター] はぁ……

[オーキッド] ふぅ……わかったわ。誰に頼めばいいかは知ってるから。

[オーキッド] あなたのコードネームはマウンテンね?

[マウンテン] そうです、レディ。

[オーキッド] レディ……よしてよ、私のコードネームはオーキッドよ。マウンテンあなた、ちょっとこっちにいらっしゃい。ついてきて。

[支援オペレーター] ありがとうございます、オーキッドさん。

[オーキッド] 午後のケーキ、一切れ残しといてよ。

[支援オペレーター] 分かりました!

[マウンテン] オーキッドさん。

[オーキッド] なぁに?

[マウンテン] 先程のお二人の会話から推察するに、ロドス内には専門の仕立屋がいるのですか?

[オーキッド] いいえ。私が会わせようとしているのもオペレーターの一人よ……ただ彼女は服の仕立てもやってるってだけ。

[マウンテン] ……ここではそのようなことも許されるのですか?

[オーキッド] どんなこと?

[マウンテン] これまでの任務経験から、ロドスは警備会社という性質が強い組織であると思っていました。

[マウンテン] そのような組織で、仕立屋のような副業を許可している例は今まで聞いたことがありません。

[オーキッド] ……どうやら本当にロドスに入ったばかりのようね。

[マウンテン] といいますと?

[オーキッド] あなた、ロドスについてだいぶ誤解してるわ。

[オーキッド] …………

[オーキッド] ま、誤解というほどでもないわね。私も初めはあなたと同じような認識を持ってたから。

[マウンテン] 詳しくお聞かせ願いたい。

[オーキッド] あなたの喋り方、ミッドナイトとはまた別の方向でイライラさせるわよね……

[オーキッド] 私が説明しなくても、もう少ししたらきっと分かるわよ。

オーキッドはとある部屋の前で足を止め、ドアをノックした。

[バイビーク] あら、オーキッドさんでしたか。ごきげんよう。

[オーキッド] ええ、お疲れ様。

[バイビーク] こちらの方は……?

[マウンテン] 私は新人オペレーターのコードネーム、マウンテンです。

[バイビーク] あら、はじめまして。コードネーム、バイビークです。

[オーキッド] 今日は任務はないの?

[バイビーク] あります。出発予定は二時間後です。

[バイビーク] あの、何かご用でしょうか?

[オーキッド] 二時間あれば多分間に合うわね。あのね——

[バイビーク] なるほど、マウンテンさんは戦闘に使える礼服がほしいんですね!

[マウンテン] もしご迷惑でなければ……

[バイビーク] まったく迷惑などではありません!

[バイビーク] むしろ、どうかわたしにお任せください!

[バイビーク] 生地を戦闘に適した素材に変更すれば……。いいえ、それではダメだわ。仕上がりの美しさに影響が出てしまうかも知れない……

[オーキッド] バイビーク、立ったまま考えてないで、まずは試してみなさいよ。

[バイビーク] あ、そうですね!

[バイビーク] すみません……このような試みは初めてなので、少しお時間を頂くかもしれません。

[マウンテン] 問題ありません。作って頂けるのであれば、私は喜んで待ちます。

[バイビーク] ではついてきて頂けますか。

[バイビーク] オーキッドさんもご覧になります?

[オーキッド] まだ処理しなきゃいけない書類が山積みなのよね。それにケーキも……でも、ひとまずデザインを見に行くわ。

[オーキッド] どんな服が出来上がるか、私も興味あるしね。

[バイビーク] マウンテンさんは、礼服に何かこだわりでもあるのですか?

[マウンテン] こだわり……というほどでもないのですが。

[マウンテン] 私は幼い頃から父親にこのような服を着せられていました。長く着るうちに慣れてしまったのです。

[マウンテン] それと……

[バイビーク] あ、もしも話しにくいことであれば、言わなくても大丈夫ですよ。ただ何となく不思議に思っただけですから。

[マウンテン] いえ、話しにくいわけではありません。本当に自分の心にそういう考えがあるのか自問していたのです。

[マウンテン] 私はかつて……諸事情があり、しばらく実家を離れ、とある場所に留まらざるを得なくなりました。

[マウンテン] その間の生活は少々……苦しいもので、礼服を着るような機会もありませんでした。

[マウンテン] その後、その場所を離れてロドスへ移動する機会を得てすぐ、私は礼服を揃えました。

[マウンテン] そこに家庭を懐かしみ、両親を恋しく思う気持ちがあったかどうか……それは自分でもわかりません。

[バイビーク] そうだったんですね……今でもご両親には会えていないんですか?

[マウンテン] はい。ロドスに来たのも、いつか彼らに会いに行けるかも知れないと期待してのことです。

[マウンテン] あの苦い日々の初めの頃……ただ緩慢に過ぎていく時間を味わい始めた頃は、両親をとても恋しく思いました。

[マウンテン] しかし時が経つにつれ、両親のいない生活にも慣れていきました。

[マウンテン] ですから私の礼服に対する態度が、着慣れているからなのか、それとも一種の郷愁の念からなのかは自分でもはっきりしません。

[オーキッド] その両方でも別におかしくないわよ。

[マウンテン] ……それもそうですね。

[マウンテン] ところで、バイビークさんは仕立て職人なのですか?

[バイビーク] あ、いいえ。わたしはただ仕事の合間に裁縫をするのが好きなだけです。

[バイビーク] ロドスに来てから随分経ったせいか、わたしの趣味を知った方々が訪ねてくるんです。

[マウンテン] オーキッドさんは先程デザイナーだとおっしゃいましたね?

[オーキッド] ええ。以前はファッション誌の編集をしていたの。

[オーキッド] ロドスの制服のほとんどは量産品でしょ? でもここには変わった……個性的すぎる連中がいて、人とは違う物を欲しがるのよ。

[オーキッド] そういう時こそ、私とバイビークの出番ってわけ。

[オーキッド] ハァ……最初は楽しんでやってたんだけど、そのうち「やっぱり制服を着てれば?」って思うようになっちゃって……だって次々に奇妙奇天烈な注文を付けてくるんだもの。

[オーキッド] あなたの要望は、実のところこれまで私の経験した中では、かなり平凡な方だわ。

[バイビーク] でも、人のためにお洋服を作ることはとても楽しいです。確かに、たまに少しおかしな注文もありますが、それを実現するのもまた、面白いんです。

[オーキッド] まったくこの子ったら……そういうことばっかり言ってたら過労死しちゃうわよ? あまり他人を甘やかしすぎないことね。

[バイビーク] ですが、オーキッドさんもA6のみなさんに対してとても寛容だと思います……

オーキッドは天を仰いだ。

[マウンテン] …………

[オーキッド] どうしたの、さっきからずっと黙っているみたいだけど。

[マウンテン] ああ……申し訳ありません。お二人の会話を聞いていると、自分が一瞬繁華街を歩いているような錯覚を致しまして……

[オーキッド] ……今度あなたにミッドナイトっていう奴を紹介してあげるわ。

[マウンテン] オペレーターの方ですか?

[オーキッド] ええ。彼とあなたが会話をしたらどうなるか、とても楽しみだわ。

[バイビーク] あ、着きました。

[マウンテン] ここは……倉庫?

[バイビーク] はい。普段は倉庫として使用しておりますが、わたしが裁縫をする場所でもあるんです。

[バイビーク] では、マウンテンさん、これから採寸をさせて頂きます。わたしの言う通りに動いて頂けますか?

[マウンテン] 承知しました。

[バイビーク] よし。うん。これで必要なデータは全て取れました。

[バイビーク] そういえば、マウンテンさんは礼服のデザインに関して何か好みがありますか?

[マウンテン] 特にありません。今着ている服に似たもので結構です。

[バイビーク] では、お色はどうしましょう?

[マウンテン] 白でお願いします。

[バイビーク] 分かりました。では後はお任せください。

[バイビーク] 出来上がったらお声掛け致します。

[マウンテン] もういいのですか?

[オーキッド] ええ。

[バイビーク] 特殊な注文はありませんでしたが、やはりデザインは一から考えた方がいいですね……

[バイビーク] そうだわ。先月デザインしたものを少し手直しすれば、使えるかもしれませんね。

[オーキッド] 私に見せてくれたアレ?

[バイビーク] そうです。

[オーキッド] あのデザイン自体は問題ないわ。けど……マウンテンに着せる服としてはちょっと上品過ぎない?

[バイビーク] ええ……確かにそうですね。

[オーキッド] デザインも縫製も急ぎじゃないんだし、今重要なのはやっぱり生地選びよ。

[オーキッド] 装備関係の後方支援チームに聞いてきてあげるわ。彼らならどんな生地が戦闘に適しているか知っているはずよ。

[バイビーク] わたしも一緒に行きます。

[バイビーク] 礼服というからには、礼服らしい品の良さも兼ね備えていなければなりません。ただ戦闘に適した丈夫な生地というだけでは、質感を損なうと思うんです。

[オーキッド] ダメって訳じゃないけど、あなたは任務があるんでしょう?

[バイビーク] あ! しまった。忘れるところでした!

[バイビーク] すみません。ではわたしが戻ってから一緒に行って頂けますか?

[オーキッド] ええ、早く行ってらっしゃい。

[バイビーク] 分かりました!

[オーキッド] あなたも聞いてたでしょ? 戻って待ってなさい、もし後方支援ですぐに買い付けができれば、一週間ほどで出来上がるわ。

[マウンテン] ……分かりました。

一週間後。

[バイビーク] マウンテンさん、試着できましたか?

[マウンテン] もう少しです……

[マウンテン] お待たせしました。

[バイビーク] いかがですか?

[マウンテン] とても着心地がいいです。

[マウンテン] デザインも好みですし、生地も非常に丈夫だ。

[マウンテン] どうもありがとうございます。

[バイビーク] お礼を言わなければならないのはわたしの方です。

[バイビーク] 実は、生地の問題でずっと悩んでまして。なかなか満足のいく材料が見つけられませんでした。

[バイビーク] ですがちょうどその時、前に父が工業用の装備を作る際に使用していた素材のことを思い出したんです。

[バイビーク] 以前は、それを用いて服を仕立てるなんて考えたこともありませんでした。ですが今回の件をきっかけに試してみたところ、想像以上に具合が良かったんです。

[バイビーク] わたしにとっては、制作の視野が広がる良い経験になりました。

[マウンテン] そうでしたか、それはまったく願ってもないことです。

[オーキッド] 一般のデザイナーだったら、工業用素材を使うなんて考えられないと思うけど……ロドスだったら、確かにそんな常識に囚われる必要はないわね。

[バイビーク] では、まだ任務が残ってますので、お先に失礼します。

[バイビーク] 服になにか問題があれば、いつでもわたしの所へ来てくださいね。

[マウンテン] わかりました。

[マウンテン] …………

[オーキッド] なにボーッとしてるのよ?

[マウンテン] ……大したことではありません。ただ、お二人を見ていて、自分が自由を得ているということを、私はまだ本当の意味で理解していなかったと気付いたのです。

[マウンテン] 本当にありがとうござました、オーキッドさん。

[オーキッド] 服のことなら礼には及ばないわ、すべきことをしたまでよ。

[マウンテン] いえ、礼服の件はほんの一面にすぎません。あなたは私に、自身の問題のありかについて気付かせて下さった。

[オーキッド] ……そういう言葉をカタパルトかミッドナイトの口から聞きたいものだわ。

[マウンテン] えっ?

[オーキッド] 何でもないわ。私はあなたが何を経験してきたか知らないし、何のためにロドスに来たかも知らないけど——

[オーキッド] 以前あるチャラい男性広報員が私に言った台詞を思い出したわ……それはあなたにとっても、きっと有用だと思うわよ。

[マウンテン] 是非お聞かせ願いたい。

[オーキッド] 彼は私にこう言ったのよ。「よく考えてほしいんだ――ロドスで、どんな生活を送りたいかを」ってね。

[マウンテン] …………

[オーキッド] 今後、服に関することなら私に訊きに来ても構わないわ。

[オーキッド] だけど死ぬほど忙しいから、なるべく私じゃなくて、あの子の方に訊きに行ってちょうだい。

[マウンテン] 分かりました。

[マウンテン] それと……自分がロドスでどのような生活がしたいのか、もう一度考えてみることにします。

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