aklib_story_特大クッキー

ページ名:aklib_story_特大クッキー

このページでは、ストーリー上のネタバレを扱っています。

各ストーリー情報を検索で探せるように作成したページなので、理解した上でご利用ください。

著作権者からの削除要請があった場合、このページは速やかに削除されます。

特大クッキー

ケオベの単純で素朴な一日。


ロドス本艦

ヴァルカンの工房

[ヴァルカン] ケーちゃん、ちょっといいかな?

[ケオベ] お姉ちゃん? どうしたの?

[ケオベ] お手伝い? 頑張るよ!

[ヴァルカン] いや、お手伝いではなくてね。装備のメンテナンス、最後にしたのはいつかな?

[ケオベ] え? えっと……

[ケオベ] ちょっと待ってね。

[ケオベ] えーと……一、二……

[ケオベ] (指を折って数えている)

[ケオベ] 15日くらい前、かな?

[ヴァルカン] そろそろヤバいな。今日は装備のメンテナンスをしよう。

[ケオベ] 分かった。

[ヴァルカン] 前描いてあげたメンテナンスの手順図は持ってる?

[ケオベ] あるよ! なくしちゃいけないから、部屋に貼っておいたんだ!

[ヴァルカン] なら……部屋にある工具と消耗品のストックは足りている? 不足しているならここから持って行くといい。

[ケオベ] 大丈夫! 足りてるよ!!

[ヴァルカン] よし。

[ヴァルカン] じゃあ、これから炉の火を落とすから、終わったらケーちゃんは先に部屋に戻って始めてて。

[ケオベ] え? 消しちゃうの?

[ヴァルカン] ああ、今日はボイラー室の点検とメンテナンスなんだ。今のうちに倉庫に行って注文しておいた材料を受け取りに行くから、炉を見てられないんだよ。

[ケオベ] おいらが見てるよ!

[ヴァルカン] 火を見るのは、ケーちゃんにはまだちょっと早いかな。

[ヴァルカン] それに、もう武器のメンテナンスを頼んだからね。違う?

[ケオベ] うっ……

[ヴァルカン] ほら、そろそろ行こうか。

[ヴァルカン] お昼は作ってあるから、出て行く時は持って行くんだよ?

[ヴァルカン] 帰ってきたらケーちゃんのところに行くから。

[ケオベ] うん、分かった。

[ヴァルカン] じゃあ、後で。

[ケオベ] 早く帰ってきてね!

[ケオベ] あぁ……行っちゃった……

[ケオベ] おいら……何してようかなぁ……

[ケオベ] ……うーん。

[ケオベ] とりあえず、部屋に戻って、お宝のメンテナンスをする! それでお姉ちゃんが来るのを待つ!

宿舎エリア

ケオベの部屋

[ケオベ] んーと……図には、植物油を使うって書いてる。

[ケオベ] 植物油?

[ケオベ] これ……かな?

[ケオベ] ラベルに書いてるのは――植……物……油……

[ケオベ] よし、当たってる!

[ケオベ] それで、次は……えーと?

[ケオベ] んーと、植物油を見つけたから、その次は……

[ケオベ] 布に油をちょこっとだけつけて、お宝のピカピカしてるところに優しく食べさせるんだった。

[ケオベ] そうそう、こうだこうだ!

[ケオベ] おいら超ハッキリ覚えてたよ! お姉ちゃん褒めてくれるかな?

[ケオベ] えへへ。

[ケオベ] 頑張って終わらせて、お姉ちゃんにいっぱい褒めてもらおう!

[ケオベ] 前に全部できた時は、コマを作ってくれたからね。

[ケオベ] 今度は何だろうなぁ?

[ケオベ] うーん……

[ケオベ] そういえば、油ってどんな味なんだろう。

[ケオベ] お宝の食べ物って言ってたよね。おいしいのかな? ちょっとだけ……

[ケオベ] (指に油をつけて、なめる)

[ケオベ] ――おえぇ!

[ケオベ] お宝はこんなのがおいしいのかぁ。

[ケオベ] おいらは無理だなぁ。好みは一緒だと思ってたんだけどな。

[ケオベ] フンだ、別にいいよ。

[ケオベ] 続けよ続けよ。

[ケオベ] うーん……

[ケオベ] よし、終わったぁ!

[ケオベ] 次は何だっけ?

[ケオベ] あっ、今度はピカピカしてないところに油を食べさせるのか。

[ケオベ] でもこっちには別の油をあげなきゃいけなくて……

[ケオベ] うぅ。

[ケオベ] ……

ケオベがメンテナンスを始めてだいぶ経った後――

[ケオベ] もうすぐ終わりそうだけど……

[ケオベ] お腹空いちゃったよ。

[ケオベ] うーん。先にごはん食べよ。

[ケオベ] 今日のお昼は――

[ケオベ] 獣肉のステーキ! それにソースのかかったマッシュポテト!!

[ケオベ] わー!

[ケオベ] あむあむあむ!!!!

[ケオベ] ハァ……ごちそうさま!

[ケオベ] さすがお姉ちゃん、お料理も最高!

[ケオベ] でも、もうちょっとだけ、足りないかな?

[ケオベ] うーん、今は何時だろう?

[ケオベ] えっと、じゅ……11時15分……お昼だー!

[ケオベ] みんなのお昼ごはんの時間だよ!

[ケオベ] ってことは――

[ケオベ] やったぁ!

[ケオベ] しゅっぱーつ!!!

11:30 A.M.

ロドス食堂

[ケオベ] ごはんの時間はやっぱり人が多いや!

[ケオベ] 今日はどんなお料理があるのかなぁ。

[ケオベ] うーん? おー、おいしそう!

[ケオベ] こっちのも!

[クーリエ] ケオベちゃん、こんにちは。食べたいものはお決まりですか?

[ケオベ] えっとねー、ちょっと見てみるだけ。

[ケオベ] (ここにこんなにたくさんあるなら、きっと中にはもっとたくさんあるよね?)

[ケオベ] (よし、どうやって忍び込むか考えよ。)

[クーリエ] 注文されないんですか?

[ケオベ] うん、やめておくよ。

[ケオベ] じゃあね!

[クーリエ] はい、さようなら。

[ギターノ] クーリエよ、カウンター前の料理がもうすぐ来るゆえ、注意してくだされ。

[クーリエ] わかりました。

[クーリエ] (小声)彼女が来ました。

[ギターノ] (小声)承知した。

[ケオベ] 注意深く観察しないとチャンスにもピンチにも気付かないって、お姉ちゃんが言ってたもんね。

[ケオベ] 前回はちゃんと見てなかったから、入り口にいたおじさんにつまみ出されちゃったんだ。

[ケオベ] 今回はうまくやるぞ!

[ケオベ] 絶対、入ってやるんだ!

[ケオベ] うーん……

[ケオベ] ……

[ギターノ] それは野菜スープじゃな、わらわの記憶が確かならば、真ん中のはずじゃ。あちらのクーリエがおる場所じゃ。

[グム] わかった、ありがとう!

[ケオベ] (おいらが今いる場所の近くに扉があって……)

[ケオベ] (その扉のそばに綺麗なお姉ちゃんがいる。入る時にバレないようにしなきゃ。)

[ケオベ] (クマちゃんがお姉ちゃんと話してる。)

[ケオベ] (隣においしそうなものがいっぱいあるけど、見てる人がいる。)

[ケオベ] (もうちょっと遠くにちょっとだけ隙間が見えるけど、狭いな。おいらじゃムリ!)

[ケオベ] (やっぱり扉から、かな?)

[ケオベ] (でも、入り口は人がいっぱい通ってるからなぁ……)

[ケオベ] (うん、もうちょっと様子を見よう。)

[ケオベ] (よし、人が減ってきた。)

[ケオベ] (いなくなった!)

[ケオベ] (今だ!!)

[ケオベ] (行くぞ!!!)

[ケオベ] おいしいごはん!

[グム] わああケーちゃんここに入ってきたらダメだよ!!

[ケオベ] ダメなの?

[グム] ダメ! 扉に張ってある紙は見た?

[ケオベ] 見たよ。

[ケオベ] 赤いまん丸に斜めの線が描いてあった。

[ケオベ] あとケーちゃんの顔も!

[グム] それは「ケーちゃん進入禁止」って意味だよ、わかる?

[ケオベ] わかるよ。

[グム] わかるならなんで入ってくるの!

[ケオベ] お腹空いた。

[グム] それならあそこに並んで注文してから食べて。

[ケオベ] お腹空いた。

[グム] と、とにかく、ケーちゃんは入ってきちゃダメなの! あそこに並んで!

[ケオベ] お腹空いた!

[グム] えーっと、うーんと……わかった、グムがどうにかするから!!

[グム] でもどうしたら……うーん……あっ!

[グム] ねえケーちゃん。もし……

[グム] グムがこのクッキーをあげたら、出ていくって約束してくれる?

[ケオベ] (くんくん)

[ケオベ] うん!

[ケオベ] いいよ!

[グム] じゃあ、はい……

[ケオベ] ありがとう!

しばらくして――

[ケオベ] クマちゃんがくれたクッキー、おいしかったぁ!

[ケオベ] でもあれっぽっちじゃ足りないよ……お腹空いたー。

[ケオベ] クマちゃんごめんね。おいらやっぱりそこに隠してある、おいしいものいっぱい食べたいの!

[ケオベ] さっきは嬉しすぎて声が出ちゃったから、見つかっちゃった。

[ケオベ] 今度は同じ失敗はしないよ!

[ケオベ] うーんと、まずは周りをちゃんと見ないと……

[ケオベ] ……

[ケオベ] (扉の方にはあのお姉ちゃん以外、あんまり人はいないな?)

[ケオベ] (あれ扉が開いてる!?)

[ケオベ] (わあ!!)

[ケオベ] (中のあのカゴ、パンがいっぱい入ってる!)

[ケオベ] (ここまでいい匂いがする! 焼きたてほやほやみたいだ!)

[ケオベ] (食べたい!)

[ケオベ] おいしいごはん、今行くよ!!!

[ケオベ] ……あぅ。

[ギターノ] おや、なんじゃなんじゃ、そんなに慌ておって。

[ケオベ] (しまった、見つかった?)

[ケオベ] えーっと……

[ケオベ] んーと、ううっ……

[ケオベ] (どうしようどうしよう!)

[ケオベ] !

[ケオベ] お、おいら、トイレに行きたいんだ。

[ギターノ] 厠はあちらじゃ、標識が見えるじゃろう。青とピンクの人形が描いておる。分かるな?

[ケオベ] あっ、そうなんだ!?

[ケオベ] ありがとう、お姉ちゃん!!

[ギターノ] 構わぬ、次は間違えるでないぞ?

[ケオベ] うん!

[ケオベ] (ふぅ、なんとかごまかした。もし捕まって、ヴァルカンお姉ちゃんに知られたら、絶対怒られるよ。)

[ギターノ] ……

[ジュナー] ギターノ、これでラストよ。

[ギターノ] おう、お疲れじゃのう、それは奥のノイルホーンのところじゃ。

[ジュナー] ……はいはい。

[ギターノ] どうしたのじゃ? 何ぞあったか?

[ジュナー] ちょっとね。グムに噛まれたのよ。

[ギターノ] ほう、おぬしたちはいつの間にそんなに仲が良くなったのかのう?

[ジュナー] 笑い事じゃないわよ、割と本気で痛いのよね。

[ギターノ] フフッ。

[ギターノ] おう、そうじゃった。

[ジュナー] え?

[ギターノ] 少ししたら入り口の準備スペースにレギュラーセットを二つ置いてほしいんじゃ。

[ジュナー] ペローのための?

[ギターノ] そうじゃ。

[ジュナー] わかった。注文は通しとくわ。

[ジュナー] それにしても……いたた……

[ギターノ] もうしばらくしたら痺れるかもしれんぞ?

[ジュナー] いやだな、勘弁してちょうだい。

[ギターノ] 冗談じゃよ。

[ジュナー] あなたの冗談って冗談に聞こえないのよね。で、本当のところはどうなの?

[ギターノ] 冗談じゃと言うておろう?

[ギターノ] 早く注文を伝えてくるがよいわ。もうしばらくで仕事が終わる。ようやく遅い昼食じゃ。

[ジュナー] わかったわ……

[ケオベ] よーし、今度こそ失敗しないぞ!

[ケオベ] 今はどんな感じかな?

[ケオベ] ……

[ケオベ] ラッキー! 誰もいないんじゃない?

[ケオベ] あ、入り口のお姉ちゃんまでいなくなってる!

[ケオベ] イェイ!!

[ケオベ] えっへへー!

[ケオベ] よしよし、扉も鍵かかってない。

[ケオベ] 入るよー!

[ケオベ] おおぉ! やっぱりおいしそうなごはんがあるよ!!

[ケオベ] いただきまーす!

[ケオベ] わ~んふふ、おいしいー!

[ケオベ] 最高だよー!

[ケオベ] ……あむあむあむ。

[ケオベ] ふぅ、ごちそうさま! もうお腹いっぱいだよ!!

[ケオベ] 帰ってお宝のメンテナンスの続きしよーっと!

[ケオベ] うーん……

[ケオベ] そういえば、さっき、クマちゃんのお腹もぐーぐー鳴ってたよね?

[ケオベ] 自分も腹ペコなのに、おいらにクッキーくれたのかな?

[ケオベ] なんだかクマちゃんに悪いことしちゃった気がする……

[ケオベ] お姉ちゃんが、誰かに助けてもらったら、その人に倍にしてお礼しなさいって言ってた。

[ケオベ] クマちゃんはおいしいクッキーをくれたから、おいらはとってもおいしくて、でっかいでっかいクッキーをお返しすればいいのかな?

[ケオベ] よーし、お姉ちゃんが帰ってきたら話してみよう!

[ケオベ] じゃあ、まずは帰って、言われてたことをやっちゃおう。

ケオベの部屋

[ケオベ] うぅ……

[ケオベ] うーん……これでいいのかなぁ?

[ケオベ] お宝のメンテナンス、終わり!

[ケオベ] お宝を入れる袋と、リュックもきれいにしたよ。

[ケオベ] あとはお姉ちゃんを待って……

[ケオベ] 早く帰って来ないかなぁ、そしたらクマちゃんの腹ペコの時間が短くなるのに……

[ケオベ] 誰?

[ヴァルカン] 私だ。

[ケオベ] あ、お姉ちゃん! 今開けるね!!

[ケオベ] お姉ちゃん、待ってたんだよ!

[ヴァルカン] 今日の仕事は順調だったからな、これでも早く帰ってきたんだよ。

[ヴァルカン] ところで、メンテナンスの成果を見せてもらおうか?

[ケオベ] うん!

[ケオベ] さっき終わったばっかりだよ。お宝は全部机の上に並べてあるよ!

[ヴァルカン] よし、見よう。

[ヴァルカン] ……

[ケオベ] (大丈夫! ちゃんと絵の通りにしたから。)

[ケオベ] (自信あるよ!)

[ケオベ] (間違ってないよ!)

[ケオベ] ど……どう?

[ヴァルカン] うん、油が均一に塗ってある。

[ヴァルカン] (近づいて嗅ぐ)

[ヴァルカン] 指定した油が指定されたところに使われている。

[ヴァルカン] ふむ……

[ヴァルカン] 鞘もきれいにしたんだな?

[ケオベ] うん、そうだよ!

[ヴァルカン] よし。

[ヴァルカン] うむ、よくできている。

[ケオベ] ありがとうお姉ちゃん!

[ケオベ] えへへ。

[ヴァルカン] では私は工房に戻るが……一緒に来るか?

[ケオベ] うん!

ヴァルカンの工房

[ヴァルカン] 今回の材料は質が良い。

[ヴァルカン] 材料に恥じない、使い手に満足してもらえるものになればいいのだが……

[ケオベ] (早く言わないと、クマちゃんがまだお腹ペコペコのままだよ!)

[ケオベ] (でも……なんか緊張する、言えない……)

[ケオベ] ……

[ヴァルカン] どうした? 何か言いたそうにしているが。

[ケオベ] あっ、うん……えっとね。

[ヴァルカン] うん。

[ケオベ] お姉ちゃん、おいらにおっきくておいしいクッキーの作り方教えてくれる?

[ヴァルカン] どうした? ついに自分で作りたくなったのか?

[ケオベ] あっ、そ……そう! そうだよ。

[ケオベ] 早く教えて? クマちゃんがお腹ペコペコで死んじゃう!

[ヴァルカン] クマちゃん? ……グムのことか? どうかしたのか?

[ケオベ] えっ……うん!

[ケオベ] お昼……そう、お昼にね、お昼にクマちゃんに会ったの!

[ケオベ] それでおいしいクッキーくれたの! だからお礼したいなぁって。大きくておいしいのを贈りたいの! でもクッキーなんか作れないし、クマちゃんのお家がどこなのかも知らないから――

[ケオベ] だから、おいら……

[ヴァルカン] 分かった。

[ケオベ] お姉ちゃん――

[ヴァルカン] 安心していいから、落ち着け。

[ケオベ] 本当に? おいらちょっとどうしていいか、分からなくなっちゃって……

[ヴァルカン] うん、大丈夫だ。

[ヴァルカン] 今から言うことをよく聞くんだよ。いいか?

[ケオベ] うん……

[ヴァルカン] グム……クマちゃんの部屋なら知ってる。

[ヴァルカン] だから、一緒にクッキーを作って、一緒に持っていこう。

[ケオベ] 本当に!? 良かった!

[ヴァルカン] ああ。ケーちゃんが作りたいというなら、いつでも教えるよ。

[ケオベ] うん! 作りたい!

[ヴァルカン] ちょうどここに少しだけ発酵させた小麦粉がある。大きなクッキーを作ろう。いいか?

[ケオベ] うん!

[ヴァルカン] どれくらいの大きさがいい?

[ケオベ] とにかくおっきいのがいい!

[ヴァルカン] なるほど、いいだろう。

[ヴァルカン] ではまず準備をしよう。そこの作業台を片付けてくれる? その間に私は、炉に火を入れて温めておく。

[ケオベ] うん!

[ヴァルカン] よし、これくらいスペースがあれば十分だ。

[ヴァルカン] さて、ケーちゃん。 手はちゃんと洗ったか?

[ケオベ] 洗ったよ!

[ケオベ] わぁ、これって何?

[ヴァルカン] これは生のクッキー生地だ。

[ケオベ] おいらは何をすればいいの?

[ヴァルカン] 簡単だ。この生地をこねてくれ。

[ヴァルカン] まずは思うままにやってみて。もし間違ってたら私が教えるから。

[ケオベ] ……こねる?

[ケオベ] こう、かな?

[ヴァルカン] そうだ。ほら、続けて。

[ヴァルカン] 大丈夫だ。そのまま力を入れてこねるのを続けるんだ。

[ヴァルカン] もうちょっとだ。

[ヴァルカン] そろそろいいだろう。それをプレートに載せて――

[ヴァルカン] ナイフで、二つに分ける。

[ケオベ] こう?

[ヴァルカン] そうだ。

[ヴァルカン] 生地を二つに分けたら、それぞれを伸ばして丸い形にするんだ。

[ヴァルカン] そう……そうだ。

[ヴァルカン] 今回はオーソドックスな、生地の味を楽しめるプレーンクッキーを作ろう。もっと上手になったら、生地そのものの作り方や混ぜ込むのに適した材料の使い方も教えるよ。

[ヴァルカン] この端のところがまだ平らになってないぞ? そう、そこだ。

[ヴァルカン] よし、よくできている。

[ヴァルカン] あとはプレートを炉に入れれば終わりだ。ほら、炉は熱いから手袋をはめて。

[ケオベ] うん。

[ケオベ] 炉の中にある棚に載せるの?

[ヴァルカン] そうだ。

[ケオベ] よし――載せたよ!

[ケオベ] クッキーって意外と簡単なんだね。

[ケオベ] あとは何かするの?

[ヴァルカン] 時間を見る。

[ケオベ] あぁ――

[ケオベ] それが一番難しいや。

10分ほど経過――

[ヴァルカン] ケーちゃん。

[ケオベ] え?

[ヴァルカン] もう時間だ。クッキーを出してみよう。

[ケオベ] できたのか!?

[ヴァルカン] ああ。

[ケオベ] おおおっ!

[ケオベ] うわ!

[ヴァルカン] 危ない!

[ヴァルカン] まずは手袋をはめて。気を付けて取り出すんだ。

[ケオベ] う、うん。

[ヴァルカン] そこのテーブルに置いて。あとはクッキーが手で持てるくらいに冷めたら完成だ。

[ケオベ] 本当に? やったー!

[ケオベ] (くんくん)

[ケオベ] いい匂い!

[ケオベ] 絶対、おいしいよね?

[ケオベ] ちょっと味見してみるね?

[ケオベ] (端を少し割って、欠片を口に入れる)

[ヴァルカン] どうだ?

[ケオベ] おいしい!

[ケオベ] やっぱりクッキーはホカホカのが一番おいしいね。

[ケオベ] 早くクマちゃんに渡しに行こう?

[ヴァルカン] そういうことなら、木の板で挟んで持っていこう。これで多少冷めにくくなる。ケーちゃんが好きなホカホカで渡せるよ。

[ヴァルカン] 今回は私が連れて行くが、次からは一人で行けるように場所も覚えるんだよ?

[ケオベ] うん! わかった!

宿舎エリア

グムの部屋前

[ヴァルカン] さあ、着いたぞ。ここだ。

[ケオベ] うん!

[ケオベ] (ノックをする)

コンコンコン

[???] 入っていいぞ、開いてる。

[ケオベ] (キョロキョロ見渡す)

[ケオベ] クマちゃん、いる?

[グム] ケーちゃん! どうしたの?

[ケオベ] いた!

[グム] えっ、グム?

[ケオベ] あのね、クマちゃん。

[ケオベ] お昼にクッキーを貰ったから、お返しに来たよ。

[ケオベ] ヴァルカンお姉ちゃんが作り方を教えてくれたの。ほら、できたてだよ!

[グム] うわあ、ありがとう! でもちょっと……大きすぎるよね?

[ケオベ] そうかな。早く食べてね! 冷めたら美味しくなくなっちゃう。

[ケオベ] じゃあ、ばいばい。

[ヴァルカン] どうだった?

[ケオベ] クマちゃん喜んでくれた!

[ヴァルカン] そうか、それはよかった。

[ケオベ] お姉ちゃん。

[ヴァルカン] ん?

[ケオベ] クッキーの作り方、教えてくれてありがとう!

[ヴァルカン] フッ。

[ヴァルカン] 礼を言われるほどのことでもない。

[ヴァルカン] それに上手になれば、自分で作って独り占めして食べることもできるぞ?

[ヴァルカン] いつかは、自分ではちみつクッキーも作れる。好きだろう。

[ケオベ] わあ、それすっごくいい! 食べたい!!

[ヴァルカン] ああ。

[ケオベ] でもおいら、やっぱりお姉ちゃんが作ってくれるはちみつクッキーがいいな。

[ヴァルカン] そうか?

[ケオベ] そうだよ!

[ヴァルカン] フッ、それもいいな。

[ヴァルカン] 戻ろうか、誰も炉を見てないのはよくないからな。

[ヴァルカン] それに、さっき作ったクッキーがまだ半分残ってるだろう。

[ケオベ] そうだった!

[ケオベ] 急いでクマちゃんに渡しに行ったから、味見しかしてないや。

[ヴァルカン] ああいったシンプルなクッキーを、もっと美味しく食べるには他の材料も必要だ。

[ケオベ] !?

[ヴァルカン] 例えば……そうだな。 今日のお昼のソースを覚えているか?

[ケオベ] うん!

[ヴァルカン] あれにつけて食べてみたいと思わないか?

[ケオベ] 思う!

[ヴァルカン] なら急ごう。

[ヴァルカン] それに、私もいささか腹が減ってきた。

[ケオベ] うん!

[ケオベ] おいしいクッキー、楽しみだなぁ!

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧