aklib_story_驚靂蕭然_12-10_放送線混雑中_戦闘後

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驚靂蕭然_12-10_放送線混雑中_戦闘後

Wは重傷のケルシーを送り届けることに。ロドスはデルフィーンの提案を受け、大公爵たちが救助せざるを得ないような策略を計画。封鎖エリアの怒り狂った暴徒たちは、シージの身分が王族であるという真実を知らされるのだった。


[シャイニング] Wさん、もう少し車の速度を落としていただけませんか。

[W] 重傷者の状況を見てから言ってくれるかしら? のんびりしてあのババアがくたばってもいいなら、あたしは万々歳だけど。

[W] また坂を越えるわよ。しっかり掴まってなさい、あんたたち。

[シャイニング] こうした揺れはケルシー先生の傷に良くありません。

[W] だから何? テレシスでも殺せなかったのよ。ちょっとばっかり揺れたとこで、今さら死ぬわけないでしょ。

[W] うーわ、ひっどいわねこの道、砲弾のせいで穴だらけじゃない。こんなとこ突っ切らないといけないわけ?

[シャイニング] 迂回すればいいでしょう。

[W] もう遅いわ、だって入っちゃったもの。

[Mon3tr] (威嚇する唸り声)

[W] 爪をあたしからどかすことね、ケルシーのペットちゃん。

[W] でなきゃ車から飛び降りてもいいのよ。あんたの可哀想なご主人様を運んでついてこれるならね。さっさと選んだら。

[Mon3tr] (高ぶった雄たけび)

[W] そのバカでかい金属の頭で何か企んでるの? 試してみなさい、喜んで付き合ってあげるわよ。

[W] それか、さっさとあんたをタイヤの下に放り込んで轢いてやるべきかしらね。

[シャイニング] Wさん、道を急ぐのが最優先です。

[W] クソババアは今、説教どころか一言だってしゃべれないのよ。そこのペットが死ぬほど焦っておどおどしてる様子を見て! 今まで生きてきてこんなに気分が良かったことはないわね!

[W] あんた、この機会に自分の上司に仕返ししてみたくならないの? 普段は医療部でふんぞり返ってるケルシーが、今はこーんなみっともない姿なのよ!

[シャイニング] 今の彼女は私の患者です。

[W] チッ、相変わらずつまんないわね。

[W] クロージャたちに伝えなさい、あたしたちの通ったルートをついてくるようにって。大公爵とサルカズがものすごい勢いでやり合ってる中で、抜け道がどこにあるか知ってるのはこのあたしだけよ。

[シャイニング] この辺りの地形と状況に、とても詳しいのですね。

[W] この数年間、あたしがどうやって生き延びてきたと思ってるの? まさか、ロンディニウムの下水道でずっと潜水してたとでも思ってるわけじゃないでしょ?

[W] 傭兵にはね、傭兵のやり方ってものがあるの。

[W] この廃墟を抜けたらゴールよ。

[シャイニング] 彼女は、もうそこに?

[W] 当然でしょ。他人に貸しを作るチャンスをみすみす逃すなんて間抜けのすることよ。

[W] あと、車椅子の運搬は別料金だから。もう一つあたしに借りができたわね。

[シャイニング] ……分かりました。

[W] ところで、あんた彼女とどんな関係? 車椅子の女の子をロンディニウムまで引っ張ってくるなんて、どっちにとっても良いことじゃないでしょ。

[シャイニング] 彼女は私の……

[シャイニング] いえ、私は彼女の罪です。

[アーミヤ] ……通信基地局に行くのですか?

[デルフィーン] 私たちが居るということを、広く知らせなければいけませんから。

[ドクター選択肢1] これは誘いだ。

[デルフィーン] 鋭いですね、ロドスのドクター。

[ドクター選択肢1] 大公爵たちは我々の存在を知る必要がある。

[ドクター選択肢1] 知ってなお動かないなら責任問題になる。

[ドクター選択肢1] 玉座争いの相手に弱みを見せたい者はいない。

[デルフィーン] ……想像以上にヴィクトリアを理解されているんですね。

[イネス] でも通信基地局なんて残ってるの?

[デルフィーン] 確かに、サルカズは封鎖の際にこの区のネットワーク中枢を真っ先に壊しました。でも、とあるホテルの中に、まだ使えるかもしれない場所が残っています。

[デルフィーン] ノーポート区が衰退する前までは、ロンディニウムで一番良いホテルだったんですよ。

[デルフィーン] それで各国からの旅行者のニーズを満たすために、ホテルに高出力の通信装置を用意していたんです。

[デルフィーン] 今は瓦礫で塞がれているように見えますが、もし中に入ることができて、設備が使える状態で残ってれば、多分……

[イネス] たとえ使えたとしても非常に危険よ。きっと送信する信号の暗号化なんて、できないでしょう。

[デルフィーン] 民間用の古いモデルですからその通りでしょう。

[デルフィーン] だから誰でも簡単に、私たちの発信内容を知ることができます。

[イネス] サルカズたちは即刻対処に動くでしょうね。

[デルフィーン] 虐殺を黙認したという汚名を、大公爵たちが背負いたくないことに賭けるしかないです。

[デルフィーン] それに、私は信じています……大公爵の中にも我が身を犠牲にすることを厭わない人がいると。彼らだって、廃墟になったヴィクトリアは見たくないでしょう。

[イネス] 例えばウィンダミア公爵とかかしら?

[デルフィーン] ……

[デルフィーン] 彼女もそのうちの一人かもしれませんね。

[イネス] 面白いわね。デルフィーン、あなたは本当に新聞をたくさん読んできたみたい。

[イネス] ドクター、アーミヤ、この計画は実行する価値があると思うわ。膠着した局面を打開するには少しばかりの混乱が必要よ。

[イネス] 大公爵がノーポート区へ進攻するのであれば、隠れ蓑としてもちょうどいいでしょう。隠されている飛空船を引っ張り出すのにも、区画内の人々に避難のチャンスを与えるのにも使える。

[シージ] ならばその前に、区画内の無意味な奪い合いや殺し合いを止めなければならないな。

[アーミヤ] 彼らに、再び団結する理由を与える必要があります。

[ドクター選択肢1] 例えば皆に希望の存在を知らせるとか?

[アーミヤ] その通りです。

[アーミヤ] さらに一歩進んで、この区画に残っている物資を、必要な人々に適切に分配することができれば……もっと長く持ちこたえられるかもしれません。

[アーミヤ] ドクターが仰ったように、崩れた信頼を再び築き上げるんです。

[イネス] フッ、本物だろうが偽物だろうが、一応希望ではあるってこと。

[カドール] で、それがオマエらの天才的な計画? 瓦礫に埋まったホテルで、ボロっちぃ基地局を探し出して、外の公爵どもにオレらがここで生き地獄を味わってるから、助けてくださいってすがるのか?

[カドール] ご立派じゃねぇか。拍手を送ってやりてぇくれぇだ。

[デルフィーン] 何か他に良いアイディアがあるなら、言えばいいでしょう。

[デルフィーン] ただし、サルカズの封鎖壁に突っ込む以外のものでお願いします。

[カドール] ケッ。オレはただ、コソ泥や詐欺にまで手を染めた挙句、胸糞悪ぃお偉方に尻尾を振って媚びなきゃいけねぇのかと思ってよ。

[デルフィーン] もし今回の作戦を救援要請って呼びたくないのでしたら、駆け引きだと思えばいいです。

[カドール] ご大層な言葉じゃねぇか。「駆け引き」だってよ! こそこそと城に篭ってやがる奴らと駆け引きできるチャンスが、オレらにもあるなんてな!

[デルフィーン] もしこれからも路上で人の物を奪い続けたいというなら、私は止めません。

[カドール] それはまた違う話だろ!

[デルフィーン] カドール、あなたが自分の「プライド」を大事にしてるのは分かっています。でも今はそんなこと言っている場合じゃないんですよ。

[デルフィーン] 大公爵の動きを利用できるのであれば、彼らをこの区に招くのが正しい道です。

[カドール] 招き入れた後どうなるかは考えてんのかよ?

[カドール] 大公爵たちがオレらを助けてくれる、そりゃ喜ばしいこった。で、その後は?

[カドール] 連中の戦艦に乗って、オレらの偉大なるロンディニウムに進軍すんのか? それとも領民にでもなって、カスターかウェリントンの工場でボロ雑巾みてぇになりながら働けってか?

[カドール] 利用とかそういうんじゃねぇよ。*ヴィクトリアスラング*! オレらの命をお貴族様どもに売り渡す行為だろうが!

[カドール] 一回やったら最後、オレらはノーポート人じゃなくなって、あの連中に捏ねくり回される難民になるんだろ!

[デルフィーン] 今だって似たようなものでしょ!?

[デルフィーン] 今の私たちが自由で気楽なノーポート区民だとでも!?

[デルフィーン] 戦争が始まったんです! 私たちはその真っ只中にいるんです!

[デルフィーン] あなたが夢見ているように、突然現れたヒーローと一緒にノーポート区民を率いて、外にいるサルカズたちをコテンパンにやっつければ──

[デルフィーン] それで全てが元通りになるとでも思っているんですか!

[デルフィーン] 何が「プライド」ですか。現実を見なさい、カドール! 私たちの有様を!

[デルフィーン] 分かっているでしょう! 私たちは全員理解しているんです……自分が何をしたかを!

[カドール] ……

[カドール] オレは──

[シージ] チッ、何事だ!?

[カドール] 表通りだ! 武器を持て!

[ベアード] 落ち着いて、まずは状況を──

[ベアード] あいつら命が惜しくないの? まだこんなに暴れられるほど体力があるのは一体誰?

[ベアード] 今はノーポートに隠れてる人は皆、私たちと同じように、物資が逼迫してるはず──

板を打ちつけられた窓の隙間から見えるのは、いまだ消えない煙塵だけだった。

続けて聴こえてきたのは怒号と罵声、そして咽び泣く声と命乞いである。ここ数日、彼らはそれらを聞き流し、まるでないもののように行動することに慣れてしまった。

しかし今、その声はもはや路地裏の短い響きでは収まらなかった。そこには不安やためらい、ごまかしや偽装などは一切ない。

煙の中、一台の荷車が表通りをゆっくりと滑るように動いている。それには、かつてどこかのホテルで、遠方から訪れた客人のスーツケースを運ぶために用いられていた過去があるかもしれない。

だが、爆風によって煙の中から飛び出してきた荷車は、今この瞬間すべての者たちの視線と欲望を一心に集めることとなった。

その荷車には、物資が山のように積まれていたのだ。缶詰の箱がいくつもあり、きれいな水に、見てくれは悪いがおいしそうな食べ物……

[ベアード] あれは……

言葉の続きを発するより早く、ベアードは自分が……荷車から目を離せなくなっていることに気付いた。

[絶望した暴徒] お……俺にはこの食いモンが必要なんだ、どけ!

[興奮した暴徒] どくのはお前の方だ! クソッ、お前に手を出したかねぇんだよ。こんな量食いきれないだろ! 退けよ!

[絶望した暴徒] 少しでいいから分けてくれ、パン何個かで十分だから……

[興奮した暴徒] まずはその手をどけろ!

群衆は罵り合い、殴り合い、荷車はある者の手からまた別の者の手へと絶え間なく移動していた。

人々は倒れても再び起き上がり、山のような希望へと群がる。その中から自分の取り分を確保できることを期待して。

だが、願いを叶えられる者はほとんどいないのだ。

[カドール] *ヴィクトリアスラング*、あんなもん、どっから湧いて出やがったんだ!?

[カドール] あと三十分もすりゃ、こいつら同士討ちで全員死ぬぞ!

[カドール] おい、やめろ! やめろっつってんだろうが!

[ベアード] 行っちゃダメ、今は近づかないで。

[ベアード] 彼らは聞く耳なんて持ってない。私たちにできることはない……

ベアードは誰かがそばを通り過ぎる気配を感じた。

[ベアード] シージ!

シージのハンマーが凄まじい勢いで地面に叩きつけられ、爆風が通りを満たしていた煙と血生臭さを吹き飛ばした。

彼女は目の前の群衆を見据え、彼らも彼女をじっと見つめている。

[興奮した暴徒] シージ……

[興奮した暴徒] お前がなぜここにいる? 何のつもりだ?

[シージ] 貴様のことは覚えているぞ。アルジェ。ちびが三人いただろう。今も元気にしているか?

[興奮した暴徒] ハハハハハ、元気にしているかだと?

[興奮した暴徒] 会えばわかるだろうさ、お前が死んだ後か、俺が死んだ後にな。

[興奮した暴徒] これでよかったんだ。あいつらは解放された、こんな所で獣みたく食いモンを奪い合う必要もない。清らかなまま死んでいったのさ。

[興奮した暴徒] シージ、お前はどうする気なんだ? 俺に慈悲を与えて、あいつらに会わせてくれるのか?

[シージ] 私たちはここで対立する必要はない。ここで隣人に刃を向けたところで意味はないんだ。

[興奮した暴徒] 意味なら大いにある。

[興奮した暴徒] 意味はあるんだよ、シージ。パンが一つありゃ、俺は今晩生き延びられる、運が良けりゃ、明日の晩もな。

[興奮した暴徒] お前は腹が減ってねぇのか? 喉が渇いてねぇのか? まだ選んでる余裕があるのか?

[興奮した暴徒] だとしたらお前はまだそこまで苦しんじゃいねぇってことだ。お前にとっちゃまだ他人事なんだよ。

[興奮した暴徒] 答えろよシージ、お前は俺からどれだけの希望を奪うつもりだ?

[興奮した暴徒] 以前はお前に敵わなかったが、今の俺なら──

[興奮した暴徒] うっ──ぐあっ──

[アーミヤ] ダメです、やめてください!

[アーミヤ] あなたのそれは自分の命を削っているんです! 今のそのアーツ適性の増幅状態は、単に急性感染がもたらす病理的な影響でしかありません。

[アーミヤ] 私たちならあなたを助けることができます。お願いです、今すぐやめてください!

[興奮した暴徒] どけっ、どきやがれってんだ! お前らみたいな偽善者は部屋に閉じこもるか、この奪い合いにでも加わってろ!

[興奮した暴徒] 誰だって生き延びてぇに決まってんだろうが。俺の知る限りじゃ、これが一番確実な方法だ。

[カドール] クソッ、アルジェ、オマエそんなにオレに張っ倒されてぇのか!?

[カドール] だったら──

[モーガン] もういい、もうやめて!

[モーガン] みんな! ここにアレクサンドリナ・ヴィーナ・ヴィクトリア殿下がいるよ!

[シージ] モーガン!

[モーガン] アスラン王の末裔──アレクサンドリナ・ヴィーナ・ヴィクトリア殿下が、「諸王の息」を持って帰ってきたんだ!

[絶望した暴徒] ヴィクトリア……シージ、お前の姓はヴィクトリアだったのか!?

[絶望した暴徒] その剣が……「諸王の息」だと?

[絶望した暴徒] しかし……

[絶望した暴徒] 前々から……お前がただのフェリーンではないんじゃないかと思っていた。だが……

[デルフィーン] ……

[デルフィーン] 殿下のご要望に応じ、大公爵たちの部隊がすでにこちらへ向かっています。

[デルフィーン] サルカズたちにも、彼らを止めることはできません。たとえあの飛空船が加わったところで敵いはしないんです! 私たちは助かるんですよ!

[シージ] デルフィーン、貴様まで……

[カドール] 殿下?

[カドール] シージ……オマエは*ヴィクトリアスラング*王室の人間なのか?

[カドール] ハハハ……

[絶望した暴徒] 大公爵、大公爵たちが遂に──

[絶望した暴徒] シージ……いや、アレクサンドリナ殿下、私は……

[興奮した暴徒] ううっ──

[アーミヤ] ……鉱石病の急性症状です。

[アーミヤ] すぐに抑制剤の注射の準備をします、病状は芳しくありません。

[モーガン] みんな聞いた? 吾輩たちには薬もあるんだよ! もう少しの辛抱なんだよ──

[モーガン] ……本当に、もう少しだけ頑張れば終わるから。

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