aklib_story_驚靂蕭然_12-6_誰が為の戦争_戦闘後

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驚靂蕭然_12-6_誰が為の戦争_戦闘後

ホルンとMiseryが自救軍の撤退を援護するも、危機的状況に陥る。そこに最後の蒸気騎士が現れた。そしてWがフェイスト小隊の支援に駆け付ける。一方、ノーポート区のグラスゴーは物資不足という難題を抱えていた。


[感染者] うぐっ……あぁ……

[感染者] ここには……本当に何もないんだ。

[飢えた暴徒] とぼけんじゃねぇぞ! コンロを使ってただろ、この目ではっきり見たんだよ。お前どこで食いもんを手に入れた?

[飢えた暴徒] 何で毎日食いもんが手に入るんだよ!?

[感染者] 俺は……たまたま拾っただけだ……

[飢えた暴徒] 拾った?

[冷静な暴徒] あんまりやり過ぎるなよ。そいつが鉱石病の急性発作を起こさないように気を付けろ。そうなったら俺たちまでおしまいだ。

[飢えた暴徒] 倉庫はどこにある? 言え!

[感染者] 本当に俺は……ただ拾っただけなんだよ……誰かが窓枠のところに置いていったんだ……

[飢えた暴徒] まだそんなデタラメなことを──

[???] 彼の話がそんなに信用できないのかな?

[???] 感染者だってたまにはツキが回ってきて、食べ物を拾うことがあるだろう。それの何がデタラメなんだい?

[飢えた暴徒] 誰だてめぇ。食いもんを獲りに来たのか?

[???] ご機嫌よう、俺の名はレイド。

[レイド] ――以前ウルサスにいた頃は、「紅の刀」と呼ばれていた。

[Misery] スピードを上げろ、俺たちからはぐれるな。

[ホルン] 持ちこたえて! もうすぐで着くわ!

[自救軍戦士] くそっ、奴らどんどん人数が増えてやがる。

[自救軍戦士] 白狼、あんたとあんたの一族の話は聞いたことがある。

[自救軍戦士] 今日ここで、あんたと肩を並べて戦えて光栄だったよ。

[自救軍戦士] 俺たちのロンディニウムのため、俺たちのヴィクトリアのために――

[ホルン] 何をするつもり──

[ホルン] ……

[Misery] 止まるな、走り続けろ!

[サルカズ兵士] サルカズの裏切り者とヴィクトリアの虫けらどもめ、時間の無駄でしかない追いかけっこもそろそろ終わりにしようぜ。

[サルカズ兵士] どこへ逃げようとしてるんだ? 自分の死から逃れたいのか?

[サルカズ兵士] テメーら、それから陰に隠れてるテメーらの仲間も全員、俺たちが殺してやるよ。これがテメーらに返す借りだ!

[サルカズ兵士] これがロンディニウム、ヴィクトリア、そしてこの大地の一人一人に返す借りだ!

[サルカズ兵士] 逃げろよ。逃げてみやがれ。だが、テメーらは嵐からは絶対に逃げられねぇ、戦争からは逃げられねぇんだよ!

[ホルン] 黙れ!

[ホルン] (チッ、人数が多すぎる。何とかしてここを突破しないと!)

[ホルン] (残る手榴弾はあと一つ……)

[ホルン] ロッベン、この手榴弾を渡しておくわ。下へ行って、動力エリア内にある下層デッキを直接爆破して。

[ホルン] Miseryさん、彼らを守ってください。あなたたちはまだ前へと進み続けなければなりません。

[Misery] あんたは──

[Misery] ……わかった、安心しろ。

[ホルン] あとは、運に任せましょう。

[ロッベン] ホルンさん、あなた──

[ホルン] 口を閉じなさい。殴って言い聞かせる暇すら惜しい。

[ホルン] 早く!

ホルンは振り返り、波のように押し寄せる敵へと向き直った。

彼女は薄笑いを浮かべて思った──そろそろすべてを終わらせるべきだと。

終わりのない逃亡、果てのない争い、そして何度も訪れる一睡もできない夜。

軍人とは本来戦争の中で死ぬべきだ。

[ホルン] バグパイプ……今頃どうしてるかしらね。

彼女は武器を握りしめ、突撃の体勢を取った。

暗雲立ち込める空の下、遠くから近づいてくる奇怪な音があった。

それはとても聞き覚えのある音だ。ロンディニウムでは久しく鳴っていなかった音だ。

人々が遠い記憶と曖昧な噂の中にしか、その発生源を見出すことのできない音──

[ロッベン] あれは──

[ホルン] !

[Misery] ホルン、今のうちだ。行くぞ!

[サルカズ兵士] ──

[サルカズ兵士] お前は……何だ?

[「最後の蒸気騎士」] (重苦しい噴射音)

[「最後の蒸気騎士」] 『ヴィクトリア』。

[ロックロック] くそっ、このゲート──

[ロックロック] 分厚すぎる、向こうに声が届かない!

[ロックロック] チッ! あいつらが指揮官とキャサリンさんを連れて行ったのは、彼女たちをサルカズとの交換条件に使う気じゃないでしょうね?

[ロックロック] あの恥知らずの裏切り者ども──

[フェイスト] シャイニングさん、こいつをこじ開けられるか?

[フェイスト] これ以上ここで足止め食らってるわけにはいかないんだ。サルカズたちがいつやってくるかもわかんねーしな。

[シャイニング] やってみましょう。

[クロージャ] いや、ダメだって! 大きな音を出しちゃダメ! それじゃもっと早く敵を引きつけるだけだから!

[クロージャ] ここにいるのは重傷者と非戦闘員なんだよ。もし、本当に王庭の奴らと戦うことになったら、あたしたちは逃げられても、彼らはどうするの?

[フェイスト] だけど、ここにいたって結局死ぬのはおんなじだろ? あいつらが何考えてるかは知んねーけど、俺たちをただ閉じ込めておくだけってことはねーはずだ。

[クロージャ] あたしのドローンには小型レーザーカッターが付いてる。この鋼板は分厚いけど、もう少し時間をくれれば……

[フェイスト] どんくらいだ?

[クロージャ] 急かさないでってば! まずは出力テストをしなきゃ……

[ロックロック] フェイスト、ビルの件は覚えてるでしょ?

[ロックロック] きっと……きっとあの化け物がまたあたしたちの中に紛れ込んでたに違いない、あいつがまたあたしたちを騙したんだ!

[ロックロック] あまりにうかつだった、もっと早く気付くべきだったのに!

[ロックロック] 姿を変えられるサルカズ……まだここにいるのかな?

[ロックロック] あんなのがいたら、あたしたちは一体……誰を信じればいいの?

[フェイスト] ……

[フェイスト] もし……そうじゃなかったら?

[ロックロック] だってあの人たちは戦友だよ! あたしたちと同じロンディニウムの工員でしょ!

[フェイスト] んなの分かってるよ。俺はあいつらと一緒に育ったんだからさ。

[フェイスト] けど、もし……

[フェイスト] もしこれがあいつら自身の選択だったら、トミーやパットやダイ、あいつらが他の連中と一緒にこれを決めたんだとしたら?

[ロックロック] そんな、どうして……あたしたちは仲間なんじゃないの!?

[フェイスト] ま、仲間に裏切られた事実を認めるより、仲間が入れ替わったって思う方が楽だよな。

[フェイスト] だけどさ、もう起こっちまったんだよ。

[フェイスト] あいつらの考えなら、ちったぁわかるぜ。怒りが燃やした情熱が消えちまうとさ、戦い続ける選択をするのは簡単じゃねーもんな。

[フェイスト] 指揮官も言ってたろ? 結局さ、俺たちは普通の人間なんだよ。

[フェイスト] 認めるしかない……俺だって同じだ。ここを離れるのが怖ぇ。

[フェイスト] 逃避や退却ってのは、俺たち一般人が戦争に直面した時……真っ先に選択しちまうもんだよ。それも無意識にな。

[ロックロック] だったら残ったっていい! 君の友達と一緒に!

[フェイスト] そんなことするわけないだろ。

[フェイスト] 俺は恐怖としっかり向き合わなきゃならないんだ。そうすることで……勇気の価値ってのを自分に言い聞かせることができんだから。

[フェイスト] あいつらはまだ、本当の一線を越えちゃいねーって俺は信じてる。ただ、恐怖に取り憑かれちまっただけだってな。

[フェイスト] でもそんなことは、もう重要じゃねーんだ。

[フェイスト] 俺はばあちゃんと指揮官を助けに行くよ。前の時と一緒だ。

[フェイスト] だけど、負傷者たちには一刻の猶予もない。

[クロージャ] レーザーカッターでの切断作業を開始したよ! えーっと……大体二十分くらいかな?

[ロックロック] あたしも手伝う。工具ならいつも持ち歩いてるし!

[クロージャ] ロックロックちゃんのハンマーとレンチは、この扉には役に立たないよ。

[クロージャ] 気楽に待っててよ、もう少しでここを静かに出られるから……

[クロージャ] な、なに? サルカズの行動は検知してないんだけど!?

[フェイスト] シャイニングさん──

[???] あら、シャイニングじゃない。久しぶりね。そういえば最近、家族の集まりに行ったって聞いたけど?

[シャイニング] ……Wさん、いらっしゃったのですか。

[クロージャ] W! 今の音、ロンディニウム中に響き渡ったからね! 全部とは言わないけど、半分は絶対!!!

[W] 盛大だったでしょ? あたし、爆薬の分量調整にはとっても自信があるもの。

[W] ケルシーが可哀そうなくらいコテンパンに負けたって聞いたから、多忙なスケジュールの合間を縫って見に来てあげたのよ。

[W] あ~らら、ホントにひどい有様ね。テレシスも容赦ないわ。

[W] あいつなら「自分の旧友」に対して、多少なりとも優しくするものと思ってたんだけど。

[シャイニング] 先生はまだ目を覚ましていません。

[W] ほんと残念だわ、涙を数滴くらいは絞り出してあげるべきかしら。

[W] それとも、今の内にこのクソババアが二度とあたしに歯向かうことができないようにしてやろうかしら?

[Mon3tr] (しわがれた雄たけび)

[W] うぇっ、こいつまだ生きてたのね。

[Mon3tr] (威嚇する唸り声)

[W] チッ、何でこんなに凶暴なのよ。

[シャイニング] Mon3trもひどい損傷を受け、二時間前にようやく運動機能が回復したばかりです。とはいえ、やはり刺激するのは控えた方がいいでしょう、Wさん。

[W] ハァ。あたしはあんたのご主人の命を救ってあげたのよ? 少しくらい敬うことを覚えたら?

[W] でないと、フフッ──

[Mon3tr] ......

[Mon3tr] (妥協するように低く唸る)

[W] 分かってるじゃない。それでいいのよ。

[クロージャ] 王庭軍の奴らがこっちに向かってる! 早く、奴らが来る前に──

[W] ギャーギャーうっさいわね、クロージャ。耳が痛くなるでしょ。

[クロージャ] 誰のせいだと思ってんの!

[W] なら、あんたたちのお仲間にとっとと足を動かすよう言いなさい。

[W] ロンディニウムの外にいくつか良さげな場所を知ってるんだけど、あんたたち見に来たくない?

[デルフィーン] 私たちの物資ですが、楽観的に見積もれば、まだあと一週間は持ちます。

[ベアード] 悲観的に見積もったら?

[デルフィーン] ……

[ベアード] うん、わかった。

[ベアード] カドールと何とかする。

[デルフィーン] 外の状況は今どんな風ですか?

[ベアード] 普段は一万人足らずの街に、数倍の人口が押し込められた。追加の補給もなければ、警察や法律もない。

[ベアード] これだけ日数が経っても私たちが生きていられるのは、市民たちにまだ道徳心が残ってるおかげ。

[デルフィーン] カドールの拳が硬いだけかもしれませんよ。

[ベアード] 否定はしない。

[デルフィーン] 大公爵たちの動きについて何か分かったことはありますか? 聞いた話によると……ウィンダミア公爵軍の駐屯地はここからそんな遠くないはずですが。

[デルフィーン] 彼らは……私たちの境遇を見て見ぬふりはしないはずです。

[ベアード] 噂では……夜に空を横切る光を見たって人が複数いるらしい。

[ベアード] 私たちはみんな、サルカズの空飛ぶ物体を目にした……ロンディニウムから切り離された日、あの影が区画全体を横切っていくところを。

[ベアード] 恐らく、大公爵たちはあれを恐れている。彼らは今、探りを入れるようにしか攻めることができない。

[ベアード] もちろん、すでに外は争いでめちゃめちゃになってロンディニウムが木っ端微塵になっている可能性もあるけど、それはわからない。

[デルフィーン] ここにまだ生きてる人がいることを、大公爵たちが知らないという可能性は?

[デルフィーン] 彼女……大公爵たちは……私たちがみんな死んだと思ってるとか。

[デルフィーン] もし情報を発信できれば……

[ベアード] どうやって? 都市間通信ネットワークはとっくに麻痺してる。

[ベアード] 私たちみたいな封鎖エリアに閉じ込められた哀れな人間は、明日の食料の心配をするくらいしかできない。

[デルフィーン] ……本当に信じられません。ほんの数日前までは、ビデオシアターでランクウッドのB級映画を見ていたのに。

[デルフィーン] あれは何というタイトルでしたっけ? 『ミュータント・バトルロイヤル』?

[デルフィーン] B級映画らしい感じでしたけど、エンディングは意外と感動的でしたね。

[ベアード] 知らない、寝てた。最後の爆発で移動都市がバラバラになったシーンは見た。

[ベアード] あと覚えてるのはマクラーレンの金払いが良かったことくらい。当然と言えば当然。私たちは何度も彼のためにビデオシアターでの騒ぎを鎮めてあげた。

[ベアード] 彼が無事だといいけど。今の外の状況は彼の適応障害に良くない。

[デルフィーン] ビデオシアターに行ってみましたが、扉はがっちり閉まっていて入れませんでした。

[デルフィーン] そう言えば、どうしていつもビデオシアターで寝てるんですか? 私たち初めて会った時だって……

[ベアード] あなたの笑い声で私が目を覚ました。

[デルフィーン] ごめんなさい。でも、あの映画ほんとに面白かったんですよ。

[デルフィーン] 結局のところ、ビデオシアターで寝てるあなたが悪いのでは。

[ベアード] あそこは寝心地が良い。

[デルフィーン] あの監督、コメディー界ではすっごく有名で、私はあの人の──

デルフィーンのお腹が悪いタイミングで鳴り、ようやく少し和んだ空気を現実に引き戻したのだった。

[デルフィーン] ……ごめんなさい。

[ベアード] あなた食べる量が少なすぎる。そんな調子じゃ体力が持たない。

[デルフィーン] 平気ですよ。私たちは、これからも耐えていかなきゃいけないんですし。

[ベアード] ……昔の生活は終わった。すべてが一瞬で今の姿に変わったから。

[ベアード] 周りは狂った人と死体だらけ、それとサルカズが建てた封鎖壁……この数日間あそこを突破しようとした連中もいるけど、彼らの首は今もまだ壁に吊るされてる。

[ベアード] 私はいまだに理解できない、どうして──

[デルフィーン] 戦争は始まったんです、ベアード。

[ベアード] 分かってる、分かってるよ! でも「戦争が始まった」なんてたった数文字で……

[ベアード] あらゆる過去が一瞬で消えてしまうなんて。

[ベアード] これは誰の戦争なの?

[デルフィーン] 公爵たちが……ヴィクトリアを守るために……

[ベアード] 私に分かるのは、これが私の戦争じゃないってことだけ。

ふいに暗闇から微かな物音が聞こえた。それに加え、缶同士が軽くぶつかり合う音も。

[ベアード] ……あなたそこで何してるの?

[臆病な市民] えっと……その……

[ベアード] 今日の夜番はあなたじゃない。

[デルフィーン] 今コートの中に何を隠したんですか?

[臆病な市民] く……来るな!

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