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淬火煙塵_11-5_等価交換_戦闘前
商人の物資と輸送支援と引き換えに、アラデルは代々伝わる蒸気甲冑の売却を迫られる。フェイストとドクターは共に軍事工場へとやってきた。アーミヤ率いる部隊はサルカズ王庭軍を牽制し、各方面の行動を援護する。
1098年
p.m. 2:55 天気/曇天
ロンディニウム
[モリー] ゴールディングさん、やっと戻ってきましたか!
[ゴールディング] もう開演しちゃいましたか?
[モリー] まさか。あなたが一年以上も稽古をつけてきた劇を、子供たちが初めて通しで演じるんです。あなたが戻ってこないのに、誰が始められるんですか?
[ゴールディング] では、特等席で見ないといけませんね。
[モリー] みんな、準備はいいですか?
[やんちゃ&無邪気な声] バッチリだよ!
[ゴールディング] では始めましょう。
[モリー] 明かりを落としますよ――
第一幕\n――――――\n第一場
[農民] おはようございます、閣下! 浮かない顔をされていますが、閣下にそのようなお顔をさせているものとは一体?
[貴族] おぉ、勝利の角笛は城壁の上で、すでに三日三晩鳴り響いているというのに、なぜ私の心はこれほどまで焦燥に灼かれているのであろう?
[農民] 我らの偉大なる将軍様は、とうに凱旋されたではありませんか? 彼の勇敢さと恐れを知らぬ精神を称えましょう!
[貴族] 勇敢さ? 恐れを知らぬ精神とな? そうかもしれぬ。しかし彼が帰還した時の目の光を見なかったのか! 彼が王冠を見た時、まるで荒野を飛び回る羽鷲が足を引きずる肉獣を狙うかのようだった!
[農民] 貪欲は、善き人を軽々と地獄へ堕とします。
[貴族] それでも人々は常に、その利益は当然自分が受けるべきだと思っているのだ。
[ロンディニウム商人] こちらが我々の条件です、アラデルさん。
[ロンディニウム商人] 「貨物」をロンディニウムに運ぶということですが、今回は通常とは異なりますね。数量にしろ重量にしろ……一般的ではございません。
[ロンディニウム商人] 何を輸送するのか、なぜ必要なのかは問いません。ですがこれを行うことで、我々にどれだけのリスクがあるかはご理解いただけると思います。
[ロンディニウム商人] それに、よくご承知のことと思いますが、目下このような手伝いをできる者はごくわずかですよ。
[ロンディニウム商人] 物流の出入り口は、サルカズがしっかりと見張っております。もしもこういった秘密裡の取引を彼らに知られれば、我々の誰も生きてロンディニウムを出ることはできません。
[ロンディニウム商人] あなたにどんな後ろ盾が存在しようと、付いているご友人たちがいくら貪欲であろうと、彼らがあなたに中央区で今のような生活を保障できようと、恐らくこの件は難しいかと。
[ロンディニウム商人] この取引を成立させたいのならば、リスクに見合った報酬を差し出していただく必要があります。
[アラデル] ……
[アラデル] 会っていただいて感謝いたします、ベーダーさん。ご提案はよく検討しておきますわ。
[ロンディニウム商人] 時は人を待ってはくれない。できるだけ早い決断をお願いいたしますよ。
[クロヴィシア] 随分と高い要求だな。
[アラデル] こうなることは事前に話し合っていたでしょ。今じゃ王立造幣局もサルカズの手中にあるの。この情報はマグナ区の銀行家たちを通じてすべての国に広まっているわ。
[アラデル] 密輸ビジネスをする商人は、得たお金が来月には紙くずの山になることを最も危惧しているの。長期的に価値を保てる報酬を必要とするのも当然ね。
[クロヴィシア] 承諾するつもりか?
[アラデル] ベーダーさんの言葉は正しいわ、「時は人を待ってはくれない」。
[アラデル] 私たちに残された準備の時間は、せいぜい五日。都市防衛軍司令塔を襲撃するなら、より多くの武器を市内に送ってもらわなければならないのよ。
[クロヴィシア] ……しかし彼らが求めるものは、キミにとってただならぬ意味を持つだろう。
[アラデル] ……
[アラデル] ハハ。
[アラデル] でも私たちはこの立場にいるの、クロヴィシア。
[アラデル] ……私は、この立場にいるのよ。
[アラデル] 私にとって、あれはどんな意味があると思う?
[クロヴィシア] 恐らく……
[アラデル] いいえ、あなたがどのような予想をしたとしても、すべて間違っていると断言できるわ、クロヴィシア。
[アラデル] 私のことを立派なカンバーランド公爵だとでも思っている?
[アラデル] あの時あなたはまだ生まれてなかったでしょうね。
[アラデル] でも私は、ヴィクトリアのあの偉大な獅子王陛下が、王宮の庭園で絞首台に吊るされるのをこの目で見たの。
[アラデル] 私の姓はカンバーランド。そしてカンバーランドは陛下の最も忠実な友人だった。これは誰もが知っていることよ。
[アラデル] 私が今無事にあなたの目の前に立っているのは、かつて議会に座っていたあの偉い人たちのお情けだとでも?
[アラデル] たとえそうでも、私はレト中佐のパーティーによく参加してるわ。彼らからしてみれば私はまだ使い道があるの。私に民衆を落ち着かせてほしいから。
[アラデル] 当然、これは私たちのすべきことのため。でもこれが私のやり方でもある。
[クロヴィシア] キミの犠牲はよく理解しているんだ、アラデル。キミの援護がなければ、自救軍が今日まで生き延びることはなかった。
[アラデル] ……私はもう子供ではないもの。
[アラデル] 屋根裏部屋のあれも、もう何でもない。
[アラデル] ただの鉄くずよ。
[アラデル] ……エルシー。
[アラデル] あれを下へ運ぶよう手配してほしいの。よろしくね。
[執事エルシー] ……
[アラデル] 私の決定に反対?
[執事エルシー] ……言えません、お嬢様。
[アラデル] いいえ、言ってちょうだい。
[執事エルシー] アラデルお嬢様、お嬢様が何と言おうと、あれは……カンバーランド家の蒸気甲冑なのですよ!
[執事エルシー] あなたのご先祖様――かの高貴な老公爵様の血が、あの甲冑には流れているのですよ。あれはヴィクトリアがカンバーランド家に与えた栄光、カンバーランド家の「高潔不変」の象徴なのです。
[執事エルシー] あの鎧が戦火に滅びるならばそれもよし、別の高潔なお方の手に渡るのもいいでしょう。ですが……ですが、欲に目がくらむ商人が商品として扱うようなことはあってはなりません。
[アラデル] ベーダーさんではふさわしくないと思うの?
[執事エルシー] 古の甲冑をコレクションにするのですよ! それにどうせ安い値段で――
[アラデル] エルシー、あなたはずっとそばにいてくれているわ、私が生まれてからずっと。
[アラデル] 私たちはもう存在しない「カンバーランド家」を共に今日まで守ってきた。
[アラデル] カンバーランド家は、中身のない名詞の山で成り立っているのではないの。「栄光」、「忠誠」、「純粋」あるいは「善良」? 今ではもう、意味なんてとっくに失っているわ。
[アラデル] エルシー、あなたと私よ。カンバーランド家は、あなたで、そして私で成り立っているの。
[執事エルシー] ……わかりました、お嬢様。
[アラデル] 今日は……あの人たちからの手紙はあった?
[執事エルシー] まだ何も届いていません。
[アラデル] ……
[アラデル] 知ってるかしら、エルシー。あの頃の音楽が……いまだ私の頭の中で残っているみたい。
[アラデル] この邸宅はかつて、とある国王をもてなしたわね。でも彼は今、どこにおられるの?
[シージ] ……
[アラデル] 申し訳ございません、アレクサンドリナ殿下――
[シージ] ……ヴィーナでいい。
[アラデル] 来たのね、ヴィーナ。
[シージ] 戦士たちと巡回に行ってきた。
[アラデル] いまだに自救軍の戦士たちと一緒に任務に出るなんて、見上げたものね。
[シージ] できるだけやれることをやっておきたい。
[アラデル] 彼らは、あなたがここにいるとわかれば、それで十分でしょうに。
[シージ] クロヴィシアさんから話は聞いた……
[アラデル] ハハ、屋根裏部屋がガラクタまみれだったから、やる気を出して掃除しなくちゃいけなかったの。
[アラデル] あの場所はほこりがすごいから、高貴な殿下のお手を煩わすのは忍びないわ。
[シージ] ……
[シージ] アラデル。
[シージ] 私は、貴様があの甲冑を売らざるを得ない姿など見たくない。
[アラデル] それは殿下としての命令なの?
[シージ] 命令する資格など私にはない。貴様が、ここの自救軍の責任者だ。
[シージ] 何が自救軍にとってより得策であるかは、私より貴様の方がよく理解している。甲冑と引き換えにチャンスを得られることも、私には理解はできる。
[シージ] だが……少し時間をくれないか。
[シージ] 私が何とかする。
[アラデル] ……ヴィーナ、この件にあなたは関わらなくていいのよ。
[シージ] それは、自救軍オークタリッグ区の責任者としての命令か?
[アラデル] わかったわ。
[アラデル] もしこれまでのすべてが、起きていなければ、あるいは……
[アラデル] いえ、意味がないわね。もう起きてしまったのだから。
[ロンディニウム市民] ハイディさん!
[ハイディ] どうされましたか、ゴールディングの情報が得られたのですか?
[ロンディニウム市民] はい。先ほど本屋の発信機を通じてメッセージを送ってきました。すでにハイディさんの端末に転送してあります。
[ハイディ] わかりました……よかったです。
[ハイディ] メッセージには、彼女は安全とありました。オークタリッグ区の計画は、つつがなく進行中です。
[ハイディ] 彼女に返信をお願いします。先ほどドクターの小隊が無事に歩哨所を抜けて、ハイベリー区への潜入に成功しました。ロドスに協力してくれている傭兵方のおかげです……
[ロンディニウム工員] キャサリン来てくれ! 九番荷降ろしエリアのベルトコンベアに問題が発生した!
[キャサリン] 見せてみな。
[キャサリン] ……
[キャサリン] ネジが一本緩んでるね。
[キャサリン] パット!
[ロンディニウム工員] はい。
[キャサリン] 今日はあんたが当番だろ。時間はどんどんなくなってるんだよ。あんたこの仕事ぶりはどういうことだい?
[キャサリン] 今日の進捗に遅れが出たら、釘代わりに頭をサルカズにぶん殴られないように気を付けな。
[ロンディニウム工員] すんません、キャサリンさん。
[キャサリン] ……レンチは? 寄越しな。
[ロンディニウム工員] はい……
[???] ほらよ。
[キャサリン] こういう時はすぐ動くのかい……
[キャサリン] ……
[キャサリン] ……あんたかい。
[フェイスト] 久しぶりだな、ばあちゃん。
[フェイスト] ただいま。
[キャサリン] ……
[キャサリン] パット!
[ロンディニウム工員] キャサリンさん……
[キャサリン] 仕事上がったら、班長のとこ行って反省してきな。
[ロンディニウム工員] えぇ!?
[キャサリン] 工場で最も重要な、荷降ろしエリアに部外者を入れたんだよ。追い出されないだけでも感謝するんだね。
[フェイスト] ……ばあちゃん、パットは関係ないって。こいつが俺をここに入れたわけじゃないよ。
[キャサリン] そうかい。パット、トミーとダイを呼んで一緒に反省してきな。あんたら三人とも逃げられると思うんじゃないよ。
[フェイスト] ……
[キャサリン] あんた、それとそばにいるこの素性の知れない変人……
[ドクター選択肢1] 自分のことか?
[ドクター選択肢2] ……
[キャサリン] ついておいで。
第三幕\n――――――\n第七場
[騎士] ご老人、王宮はなぜこれほどまで静かなのだ?
[老人] 王宮? 王宮などどこにあるのじゃ?
[騎士] 今その王宮の外壁にもたれかかっているではないか。
[老人] どいてくれんかのう、鉄の塊よ、日差しを遮っておるんじゃ。
[老人] わしは、ただ誰もいない空き家に寄りかかっているだけじゃ。
[騎士] 私は蒸気騎士、汚れと不義を粛清する!
[老人] 若いの。何もかも、もう終わったんじゃ。
[騎士] いや、終わりはしない!
[騎士] 何が善悪であるかを考え続けている限り、選択を下すことを恐れない限り、終わりはしない!
[騎士] 私はそのために来たのだ。私の隊に加わるよう人々を招くのだ!
[騎士] あなたでさえ、いまだ握りしめた拳を緩めていないではないか、違うか?
[ロドスオペレーター] アーミヤさん、気付かれました!
[アーミヤ] 敵の人数はわかりますか?
[ロドスオペレーター] 偵察オペレーターの報告だと、少なくとも四隊の巡回隊がこちらに向かってきています。
[アーミヤ] 司令塔へ近づくには、前方のエリアを通る必要があります。
[ロドスオペレーター] 俺たちは、たった今このエリアに足を踏み入れたばかりだってのに……
[アーミヤ] サルカズの守備隊の対応があまりにも早いです。つまり、私たちは待ち伏せされていたということです。
[アーミヤ] 予備ルートの状況はどうなっていますか?
[ロドスオペレーター] もし傭兵を全員、真正面におびき寄せられれば……
[ロドスオペレーター] いや、ダメだ!
[ロドスオペレーター] こちらに急速に近づいている部隊がもう一つある! 自救軍の兄弟がたった今発見した!
[アーミヤ] 自救軍は何と?
[ロドスオペレーター] サディアン区から撤退する時に鉢合わせたのと同じ部隊らしい! 奴らの戦い方は全く……全く……
[ロドスオペレーター] 「人間らしく見えない」って。
[アーミヤ] ……ブラッドブルードの手下です。
[アーミヤ] 全小隊メンバーに伝えてください。作戦は中止です。撤退準備を。
[ロドスオペレーター] 間に合いません。ブラッドブルード兵のスピードは人とは思えないんです……自救軍の戦士が奴らと交戦し始めた!
[アーミヤ] 目標変更、自救軍戦士を支援します!
[サルカズ戦士] あのコータスはどこにいる?
[自救軍戦士] 何のことだ?
[サルカズ戦士] とぼけるな。あいつはここ数日、貴様らと一緒にいるはずだ。
[自救軍戦士] 何言ってるのかさっぱりだ、それにお前に答えるわけねぇだろ。たとえ殺されてもな。
[サルカズ戦士] なんだ、また石頭どもか。
[自救軍戦士] うあ――! 何だこれは……虫!? クソッたれ!
[ロドスオペレーター] おい、耐えろ!
[ロドスオペレーター] 隊形を整えろ、地を這うしか能がない虫なんぞに崩されるな。
[アーミヤ] 重装オペレーター、自救軍が撤退できるよう援護してください!
[アーミヤ] ロドスは自救軍と共に来ました、去る時も一緒です!
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