aklib_story_光冠残蝕_10-2_ターゲット奪取_戦闘前

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光冠残蝕_10-2_ターゲット奪取_戦闘前

ロンディニウムの外、インドラとダグザがダブリンに奇襲作戦を展開した。


a.m. 7:25 天気/曇天

ロンディニウムから10km 荒野の車道

[ロドスオペレーター] 通信信号が消える前、BSWの飛行ユニットは前方100メートルほどの位置にいた。

[ロドスオペレーター] 俺が望遠鏡で具体的な位置を確認するから――って待て、なに立ち上がってるんだ!?

[インドラ] 煙の臭いがしねぇか?

[ロドスオペレーター] いや……

[インドラ] その鉄の塊を使う場面はなさそうだな。わざわざ確認しなくても飛行ユニットは確実に前にあるぜ。

[ロドスオペレーター] 敵の数を確認しなくていいのか?

[インドラ] 多くても三十は超えねぇな。

[ロドスオペレーター] えっ、それも嗅いでわかるのか?

[インドラ] あ? 何を訳わかんねーこと言ってんだ。事前情報にあったろ。あいつらの小隊は通常三十人構成だって出発前にモーガンが言ってたが。

[ロドスオペレーター] あっ、そうだった、Miseryさんからの情報でもあったな。敵の行動パターンだと、付近にあと二つの小隊がいて、互いに支援し合っているはずだ。

[インドラ] フンッ、あいつらマジでここを自分たちのシマだと思い込んでるみたいだな。

[ロドスオペレーター] 早まった行動をとるなよ。アーミヤさんが言っていた。ロンディニウムに入るまでは、でかい騒ぎを起こしてはならないとな。多数の勢力の目があるんだぞ。

[インドラ] バリン、子ウサギの隊で俺たちと組み始めてから何日経った?

[ロドスオペレーター] 本艦を離れてから数えれば、五日だな。

[インドラ] ならお前、ヴィーナがグラスゴーに来て俺らの王になるまで、どんだけかかったか知ってっか?

[ロドスオペレーター] ……知らない。

[インドラ] 二日だ。たった二日だ。

[インドラ] 一日目にヴィーナは俺と喧嘩して勝った。二日目、俺たちは一緒にリターニアの悪党どもをぶっ飛ばした。

[インドラ] あの日から、俺たちは生死を共にする仲なんだ。

[ロドスオペレーター] ……俺らの付き合いは長くないが、君の能力は信頼している、インドラさん。

[インドラ] ならいい。行くぞ、ダグザに追いつくんだ。

[ロドスオペレーター] ダグザさんはもう行動しているのか!? もしかしてさっき一瞬で通り過ぎていった黒い影、あれダグザさん?

[インドラ] そうだよ。入ったばっかの頃は未練ったらしく騎士の格式だの、ふさわしい振る舞いだの気にしてやがったが、今じゃ喧嘩がありゃ誰よりも真っ先に突っ込んでくぜ。

[インドラ] 急がねぇと、あいつ一人で全部片付けちまう。

[インドラ] あいつは几帳面で合理的だからな。きっと側面から登っていく。俺たちは背後から回り込んで、周りの奴らを転がしてから飛行ユニットのドアに突撃だ。

[ロドスオペレーター] わかった、俺が援護しよう。

[インドラ] 頼んだぞ。この喧嘩で勝ち星を上げりゃ、お前も俺たちの兄弟だ。

[ロドスオペレーター] ハ……ハハ。

[インドラ] えーっと、ロドス流だとどう言うんだったか……あっと、そうだそうだ。

[インドラ] 救助対象、ロンディニウム市民一名、BSWパイロット一名。敵性組織名称――

[インドラ] ――ダブリン。

[ダブリン兵士A] おい、大人しく座ってろよ。こっそり発信機に触ろうなんて考えるんじゃねぇぞ。

[ロンディニウム市民] こ、殺さないでくれ! 手がしびれて、ちょっと手を動かしたかっただけなんだ……

[ダブリン兵士B] おい、やりすぎるなよ。もしこいつに死なせでもしたら、後で上官にどう説明するつもりだ?

[ダブリン兵士B] 忘れるな、俺たちの目的はこいつだ。この飛行器を手に入れるのはあくまでこいつのついでだ。

[ダブリン兵士A] これをどうやって動かすか知ってるのか?

[ダブリン兵士B] 知らん。

[ダブリン兵士A] だったらお前こそ入るなり操縦士を殺すなよ! さっさとこいつを連れて帰るぞ、ここでモタモタしても仕方ない。飛べないボロい乗り物なんざ放っておけ。

[ダブリン兵士B] 外には味方しかいないんだ、もう少しいても大丈夫だろ? サルカズは市内に、大公爵の軍隊は付属区画の兵営にいる。俺たちの邪魔をする奴なんざいないさ。

[ロンディニウム市民] き、君たちは、サルカズじゃないのか?

[ダブリン兵士A] お前目がついてねぇのか? 俺たちがあんなゴミに見えるか?

[ロンディニウム市民] ゴミ……ふふ……その通りさ……

[ダブリン兵士B] やめろ、質問以外でこいつと話すな。サルカズを裏切るようなイカれた奴だ、何かあるかもしれん。

[ダブリン兵士A] それもそうだな、慎重にしといたほうがいい。急いで撤収の準備をするぞ、俺は外の奴の様子を見てくる。

[ダブリン兵士B] ……

[ダブリン兵士B] 今何か音がしなかったか?

[ロンディニウム市民] いや、心臓がバクバク言っていて……僕は何も。

[ダブリン兵士B] 襲撃されているのか!? 上に何かいる――M-709、外から見えるか? M-709!?

[ダブリン兵士B] 黒い……爪? 荒野の野獣か?

[ダブリン兵士B] ち、違う! こいつは――武器だ!!

[ダブリン兵士B] 全員注意しろ、敵がこの飛行器の上に隠れている! 敵が……上部の金属を引き裂いている――

[ダブリン兵士B] うっ――!

[ダグザ] 私の一撃を防いだか。情報は正しかったな。

[ダグザ] 貴様ら、荒野の強盗なんかじゃねーな。ヴィクトリアの教育は、裏切り者の恩知らずを育てるためのものだったか? 答えろよ。

[ダブリン兵士B] ゴホゴホッ……へっまあまあ強いな。お前こそ魔族の下僕じゃねーかよ。

[ダグザ] 何だとっ……!

[ダグザ] その侮辱……貴様らに決闘を十回申し込んでも釣りが出る。

[ダグザ] ダブリンの兵士、覚えておけ。私たちはロンディニウムを略奪者の手から奪還する。相手があのサルカズどもでも、貴様ら裏切り者でも同じだ。

[ダグザ] いつまでも好き勝手できると思うなよ。じきに吠え面をかくことになる。

[ダブリン兵士B] フッ……ハッ……ハァ、その傲慢な態度を見るに、お前は貴族の人間か。まだ……生き長らえていたなんてな。

[ダブリン兵士B] つまりお前の目的もこの腰抜け野郎か。サルカズの手から逃げてきたこいつの持っている情報――

[ダグザ] 私が相手だぞ、貴様どこ向いて――

[ロンディニウム市民] た、助けて! 助けてくれ!

[ダグザ] 止めろ! そいつに手を出すな!

[ダグザ] って、フェイク!?

[ダグザ] このっ卑怯者がぁ!

[ダブリン兵士B] ぐはっ!

[インドラ] 何回も言っただろうが。喧嘩の時は、相手の小細工に気をつけろ。

[ダグザ] ……

[ダグザ] ……来るのがおせー。

[インドラ] 外の雑魚を片づけてやってたんだ。おいお前、こいつに言ってやってくれよ。外に何人いた? 七? 八だっけ?

[ダグザ] あなたと張り合うつもりはねーから。

[インドラ] ほんとか? じゃあなんでそんな顔してんだよ。

[インドラ] 初めて一緒に任務に出た時、お前が傭兵一人取り逃して、そっから三日も顔しかめたまんまだったんだろ。俺とモーガンが何かすげー病気になったのかと思っちまったやつ。

[インドラ] お前、今の顔はあん時とそっくりだぜ。

[ダグザ] ……あれは私の責任だった。それに、もうずっと昔のことだ。

[ダブリン兵士B] ゴホゴホゴホッ……お前ら……どっから、来やがった? そっちの黒服、貴族騎士だと思ってたがさっきの攻撃は……

[インドラ] ストリートギャングみたいってか? ハッ、目ざといじゃねーか。

[ダグザ] 急がないと。こいつは弱くない、外にいた連中よりも上だ。

[ダグザ] サルカズと公爵部隊が睨みを効かせている中で好き勝手できて、ロンディニウムへの主要な通路も確保するなんて、ダブリンはただの烏合の衆じゃねーよ。

[ダグザ] すぐにターゲットを救出し、安全なエリアまで戻る必要がある。

[インドラ] わかってるって。「いつまでも好き勝手できると思うな」、だろ?

[インドラ] 悪くねぇが、啖呵を切るなら、もうちょい凄みを効かせねぇとな。

[インドラ] 俺が教えてやったの覚えてるか? こう言うんだよ――

[インドラ] ――泣いて命乞いすんなら、今のうちだ。

[ダブリン兵士B] うっ……M-701から支援要請……マンドラゴラ様……

[ロドスオペレーター] ダグザさん、インドラさん、敵が近づいてる、撤退するんだ!

[ダグザ] 了解。

[インドラ] チッ、早ぇな。

[ダグザ] 偵察はあなたの担当だろ、付近にいるのに気づかなかったのか?

[インドラ] そんな面倒なこと知るか、来た奴全員ボコりゃいいだろ。

[ダグザ] ……バリン、ちゃんと隠れてな。入ってきた敵は、私とインドラで片づける。

[ダブリン兵士] 中にいるぞ!

[ロンディニウム市民] 君たち、た、助けてくれ! もうあいつらに捕まるのはごめんだ!

[インドラ] シーッ、声を出すんじゃねぇ。奥にでも隠れてろ。

[インドラ] ダグザ、俺たちはターゲットを連れて帰れりゃいいんだよな? このデカブツぶっ壊しても、問題ねぇよな?

[ダグザ] それは戻った後に自分でシージに言って。

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