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怒号光明_R8-8_無情に傾く「人心」_戦闘後
感染者の裏切りに、タルラは失望や怒りを覚えることはなかった。パトリオットに詰問され、彼女は自らの考えと決断を打ち明ける。それに納得したパトリオットは、ようやく首を縦に振るのだった。
[パトリオット] 死傷者の数を確認しろ。
[パトリオット] 君の予測通り、私たちは囮にされたようだ。
[パトリオット] 失望したか、タルラ?
[タルラ] ――いいえ。
[タルラ] 彼らがこうしたのには理由があり、その理由を私は知っています。その確かな理由のおかげで、私は過度な期待をせずに済んでいましたから。
[パトリオット] ……裏切り者は処刑せねばならん。
[タルラ] あの都市にいる大勢の人々の中から、どうやって密告者を見つけるんですか?
[パトリオット] 奴らは、自分たちのつかの間の安全のために同胞を売った。それを庇うのは、戦士を傷つけることと同義だ。
[タルラ] いいえ。彼らは初めから、「忠誠」を誓ったことなどないんです、ミスター。
[タルラ] 全員に完全無欠を求めるのですか? それは不可能です……そんな部隊は存在しません。
[盾兵] 我ら遊撃隊は――
[タルラ] 遊撃隊の戦士たちも完全無欠ではありません。
[タルラ] あなたたちの中でも、色々と考えて行動している人は少数派です。ほとんどの人は様々な目標を抱いてここで力を尽くしていますが、必ずしもはっきりとした考えがあるわけではないでしょう。
[パトリオット] 兵士よ、退がれ。彼女と言い争う必要はない。
[タルラ] 都市を破壊するのは、建設するよりもずっと簡単です、ミスター。彼らは放っておきましょう。
[タルラ] 感染者が生き延びるために、様々な方法を利用するというのなら、私はどの方法も成功してもらいたい。
[パトリオット] タルラ、君は犠牲を払うということが想像できないようだな。
[タルラ] 犠牲……
[タルラ] それは私が決めるべきことでしょうか?
[パトリオット] 私たちの多くはもうその覚悟ができている。血を流さずして勝利は得られない。
[パトリオット] 私にはわかる。君にもわかっているはずだ。君の言う南行きは、戦争の引き金になると。
[パトリオット] 帝国は感染者の団結が拡大するのを決して座視しない。君がアピールしているように、本当に感染者が一連の行動によって自分の運命を変えようとするなら、この戦争はどうしても避けられない。
[タルラ] ――はい、わかっています。
[タルラ] 私たちはまず感染者に、自分たちの命には意味があるということを理解してもらわねばなりません。
[タルラ] ですが、その後に起こることについては、感染者が向き合う義務はありません。
[パトリオット] 遊撃隊をその戦争に参加させたいのか?
[パトリオット] タルラ……君は、ウルサスと他国間の戦争を待ち、そこから機会を見いだそうと思っているのか?
[パトリオット] それとも自分でその戦争を始めたいのか?
[タルラ] ……
[パトリオット] 答えたくない、か。
[パトリオット] 無血の勝利を夢想するのはやめろ。
[タルラ] ええ、そうあるべきなのかもしれません。
[タルラ] ですが私は、誰かを犠牲にするつもりはありません。
[パトリオット] 激しい苦痛に耐える準備はできたか?
[タルラ] 準備などしていません。苦しい思いをするのは必然ですから。
[パトリオット] 君は誰もが善良であってほしいのか?
[タルラ] 私はただ、ウルサス人が皆生まれつき身勝手で残忍だと信じたくないだけです。
[パトリオット] 君もいつか、本当の悪に遭遇するかもしれん。
[タルラ] もう遭遇していると思います。
[パトリオット] そうならいいが。
[タルラ] 隊や同胞に忠誠を誓った戦士が、自分の利益のために裏切ったのであれば、その行為に対しては、私自身が懲罰リストを発行します。
[タルラ] しかし私たちには、絆で結ばれていない感染者を虐殺したり、征服したりする理由がありません。私たちの敵はそこにはいません。
[パトリオット] ………
[パトリオット] タルラよ!
[タルラ] ……!
[タルラ] なんでしょうか。
[パトリオット] 私はかつて様々な人を尊敬していた。多くの場合、彼らが強いからではなく、正直だったからだ。
[パトリオット] ――汝もかくあれかし。
[タルラ] ……その教え、しかと心に刻みます、ミスター。
[タルラ] ペトロワ、フロストノヴァの現在地は?
[ペトロワ] ……まだ窪地の入り口だ。私たちが都市を奪還するまで拠点を守ると言っていた。
[タルラ] 彼女たちと合流しよう。彼女にはきちんと謝らなければならない。
[盾兵] これで……いいんですか、大尉?
[パトリオット] 近くに少なくともあと三隊の現地駐屯軍がいるはずだ……各個撃破しなければ、資源は送り出せない。
[パトリオット] 結果的に彼女は間違っていなかった。移動都市は先へは進めない。
[イーノ] あ、タルラ姉さん!
[イーノ] ……
[イーノ] タルラ姉さん、何か嫌な事でもあった?
[タルラ] いや。
[タルラ] ……イーノ、サーシャ。
[タルラ] お前たちは、まだ本名で呼んでほしいと思ってるか?
[サーシャ] ……どうしてそんなこと聞くんだ?
[タルラ] 外を出歩くことが多くなると、自分を守るための名前を持っていた方が都合がいいんだ。
[タルラ] 自分で選ばなければ、この先ずっと人に付けられた名前で呼ばれることだってあるぞ。
[サーシャ] でも、あんたは名前を変えてない。
[タルラ] 変えたくないからだ。
[サーシャ] どうしてだ? さっき言ったことと違うじゃないか。
[タルラ] それは……私は表裏のない人になりたいからかな。
[サーシャ] つまり、今のあんたは考えてることと、やってることが違うのか。
[イーノ] サーシャ!
[タルラ] 恐らく、そうだな。
[タルラ] だから私はこの名を使い続ける。ただ、皆からすれば、この名前には何の意味もない。
[タルラ] なぜなら、私が誰なのかは、皆にとって重要ではないからだ。この名は私にとって重要なものであるというだけだ。
[サーシャ] そんなこと言われたら、あんたを何て呼べばいいかわからなくなったぞ。いったい何て呼んだらいいんだ?
[タルラ] ……
[タルラ] ではサーシャ、こう言っておこう。
[タルラ] 私はただの反抗する者、何の変哲もない一人の人間に過ぎない。
[タルラ] 名前など重要じゃないし、誰も私の名など覚えなくていい。この名はシンボルになるべきじゃないし、別の力を持つべきでもない。ただの名前だ。
[タルラ] ただ今は、私のことをタルラと呼べばいい。その名を呼ばれれば私は振り向くが、それだけだ。
[サーシャ] タルラ。
[タルラ] イーノも同じように呼ぶといい。
[タルラ] お前たちにはまだわからないかもしれないが……それでもやはり、これだけは言っておこう、サーシャ。
[サーシャ] 何だ?
[タルラ] お前たちが私をタルラと呼ぶのは、私を一人の友人だと思っているからであってほしい。志を同じくする友人だ。
[タルラ] 私が死んでも、私が人生で何かを成し遂げたからではなく、ただの友人として、その名を思い出してほしい。
[タルラ] 私はお前に、タルラという友人がいたこと、そして皆で共に過ごした日々を覚えていてもらいたいんだ。決して戦場に身を置く姿などではなくな。
[サーシャ] だけど実際、いつも戦ってばかりだし、悪人を殺してる姿のほうが印象に残ってるけど。
[タルラ] だとしても、戦う私に名前などあるべきじゃない。私たちは誰しも戦い続けていて、誰もが闘士だ。
[タルラ] うつむいたまま闘士の名前を呼び、その後ろについて歩いていてはダメだ。ダメなんだ!
[タルラ] 誰もがパトリオットになれるわけはないし、誰もが間違いを犯す。肩書を持っている者に盲目的についていくのではなく、彼がどこへ向かおうとしているのかをお前は頭を上げて見なければいけない。
[タルラ] だからここで覚えるのは、ただの友人の名だ。朝晩を共に過ごした人の名前だ。
[タルラ] すごく辛いキャンディを舐めさせて、歯を食いしばって笑うフロストノヴァ。珍妙すぎる野菜のごった煮を作ってくれるアリーナ。決して手を抜かずに訓練をつけてくれるパトリオット。
[タルラ] 彼らは皆友人だ。闘士ではない。
[タルラ] 私たちの、あらゆる闘士には名前はない。
[イーノ] ……タルラ姉さん、よくわからないよ。
[タルラ] そうか……私はただ、お前の友人になりたいだけなんだ。お前に私を信じてもらいたい。身分など関係なくな。
[タルラ] 私の全ての友人たちと同じように。
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