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局部壊死_6-14_氷原の霜_戦闘後
スノーデビル小隊は全員龍門でその命を散らした。龍門はもう安全だ。 ところが、ケルシーのドクターとの会話や、目を覚ましたフロストノヴァの言葉は、まだ事態が収束していないことを示しているのだった。
[レユニオン構成員] まさか……スノーデビルたちが……。
[レユニオン構成員] ……むごいな。本当にこの龍門で全員死ぬことになるのか。感染者の希望と伝説がまた一つ潰えちまった。
[レユニオン構成員] 急ぐぞ、近衛局が追ってくる。
[ナイン] 分かっている。
[レユニオン構成員] ……なんて目をしてやがる。
[レユニオン構成員] 本当のところはな、これまではあんたのことを龍門のスパイか何かだと疑ってた。
[ナイン] では今は?
[レユニオン構成員] もう誰も、そんなこと信じやしねぇよ。
[ナイン] 本当にスパイなら、お前を殺して口封じをするが。
[レユニオン構成員] 別にあんたに殺されるのなんか怖くねぇよ。今の龍門の様子を見てみろ、お前が龍門人でも、もう戻れはしねぇだろ。
[レユニオン構成員] あんたは俺たちよりもずっと悲惨なことになってんだ。
[ナイン] ……そうだな、私はもうスパイなどには成り得ない。今の私は、もう何者でもないのだ。
[レユニオン構成員] 何してんだ? おっ、花が咲いた?
[レユニオン構成員] おおー、あんたのアーツか? 綺麗なもんだな。
[ナイン] 彼らのことは、誰かが少しでも弔ってやるべきだ。
[監察官] なにをグズグズと……これだけ時間がかかるとは。
[???] 悪くないと思いますよ。一日で龍門市内のレユニオンを全て掃討できたのですから、満点をあげてもいいくらいです。
[???] ウェイ・イェンウは素晴らしい手腕だ。
[???] タイホー、あの噂は聞きましたか?
[監察官] ウェイ・イェンウの生い立ちのことですか?
[タイホー] それ以上は語るな。
[???] これは失礼しました。ですが、あの黒装束たちの腕を今の禁軍と比べた場合、いかがでしょう?
[監察官] フンッ、それは過大評価しすぎです。確かに彼らは他と比べれば優れているところはありますが……。
[タイホー] 危ない!
[???] この馬鹿野郎!!
[監察官] ――感染者?
[???] ッ!
[ブレイズ] ――ワイヤー!?
[???] あなた、本気で我々を殺そうというわけではない、そうですね? そのつもりなら、初めからアーツを使っているでしょうし。
[ブレイズ] ワイヤーなんかを武器にしてる男って、皆変態だって聞くけどね。
[???] 確かによくそう言われますが……。
[監察官] 感染者、公務の妨害は止めなさい。あなたまで合わせて処理することになりますよ。
[ブレイズ] 識別コードを持たない武装した不審者が戦場で殺されたところで、恨むのはお門違いってもんでしょ?
[???] 我々もあなたとレユニオンたちに繋がりがあったと証言することはできますよ。
[チェン] あなた方には、私の協力組織を調査する権限はないはずですが。
[???] だが我々は「感染者対策専門家」を名乗る艦艇が龍門停泊区に在留していることを知っています。チェン警司、それはこちらのブレイズ氏がまだ無傷であるただ一つの理由でもあるのですよ。
[チェン] あなた方はいつまで「視察」とやらを続けるつもりですか? 死線を彷徨う龍門人に、あと何回点数をつければ気が済むと?
[監察官] 口の利き方には気をつけてください。龍門のリスク抑制能力に対する査定は、元よりあなたたちを重要視しているからこそ行われているものです。
[チェン] それはご無礼を。では、言い方を変えましょう。
[チェン] この茶番をご覧になられて、お三方はご満足でしたか?
[監察官] チッ。
[チェン] ブレイズ、その辺にしておいてくれ。このお三方は我々がご接待を差し上げるような相手じゃない。あの黒装束たちが彼らの仲間ではないことも確かだ。
[???] 申し訳ありませんね、ブレイズさん。先程は不快な思いをされていなければ良いのですが。
[ブレイズ] ……礼儀正しく振る舞ってるけど、その喋り方は気に入らないね。
[???] 混じり気のない炎国訛りですね。
[???] 間違いなく父方から多くを受け継いだのでしょう。ですが今のあなたはただの感染者です。道は険しく、そして短いものです。
[ブレイズ] ……あんたは……?
[タイホー] 行くぞ。
[???] ではさようなら、ブレイズさん、チェン警司。
[ブレイズ] 待って! 私の親父が何だって!
[ブレイズ] ちょっと、まだ話は終わってない!
[アーミヤ] ブレイズさん!
[ブレイズ] ……。
[アーミヤ] 今は任務があるのを忘れないでください!
[ブレイズ] ……分かってるよ。
[アーミヤ] チェンさん。
[チェン] 我々は敵指揮官の痕跡を発見できていない。
[アーミヤ] 敵指揮官というと、どなたですか?
[チェン] こちらで把握しているのはメフィストだけだ。
[アーミヤ] ここからの追撃は、私たちロドスが実施します。
[チェン] これ以上むやみに深入りする必要はない。この戦いは実質的にもう終わっている。
[アーミヤ] ですが彼が犯した罪は……必ず報いを受ける必要があります。
[チェン] ……では君たちに任せよう。
[チェン] 各自出発だ。私はまだこの目で確かめねばならないことがある。
[ブレイズ] 待って、近衛局の隊長さん。
[チェン] なんだ?
[ブレイズ] ……さっきは、ありがとう。
[ブレイズ] それだけ。
[チェン] フッ、お互い様だ。
[アーミヤ] どうしてさっきは急に飛び出したんですか? ブレイズさん……あなたはあのタイミングで判断を誤るような方ではありません。
[ブレイズ] 一つ目の理由は本当に頭にきたから……。
[ブレイズ] もう一つの理由は、あの近衛局のチェンって人も同じくらいムカついてるって気付いたから。
[アーミヤ] ですが、私たちがあの場に割って入るべきだったのかは、あの時点では判断できませんでした。
[ブレイズ] だから私がその役を買って出たってわけ。
[ブレイズ] ごめん、次はもうやらない。
[アーミヤ] ……いえ、ブレイズさん。それは私が言うべきことです。「次はもうこんなことは起こさせない」って、私が言うべきなんです。
[アーミヤ] でも、いまの私にはそれを言う勇気がありません。それを……約束するだけの勇気が。
[アーミヤ] スノーデビルの皆さん……。
[ブレイズ] ……。
[ブレイズ] もう……おバカなウサギちゃんなんだから。
[アーミヤ] あっ、そんなに頭を撫でないでください、背が伸びなくなっちゃいます……。
[アーミヤ] ……もうっ、少しだけですよ。
[ブレイズ] 分かってる、分かってるって。
[???] どうだ?
[ドクター選択肢1] あなたか。
[ドクター選択肢2] ……。
[ドクター選択肢3] 何か用か?
[ケルシー] たまたま通りがかっただけだ。
[ケルシー] 君たちの心理状態が多少不安定になっているようだ。どうやらチェルノボーグの廃都市で、あのレユニオンの小隊との間に深い交流があったようだな。
[ケルシー] 見た限り、あの小隊の隊長は戦いには参加していない。
[ドクター選択肢1] つまり……。
[ケルシー] 龍門の眼は、もう感染者を追うことはないだろう。だがロドスの視野は、一つの都市など比べ物にならないほどに広い。
[ケルシー] ここから先は龍門はもう干渉してこない。もちろん君たちも干渉しない選択肢を選ぶことはできる。
[ケルシー] ……だが君たちは、それを選ばないだろう。「メフィスト」と呼ばれる感染者も、「フロストノヴァ」と呼ばれる感染者もな。
[ドクター選択肢1] どこへ行く?
[ケルシー] 私には私の仕事がある。
[ケルシー] それと、Dr.{@nickname}……。
[ケルシー] そんな目で私を見るな。
[ドクター選択肢1] もう隠し事は止めろ。
[ドクター選択肢2] ……。
[ドクター選択肢3] アーミヤはロドスには信頼関係が必要だと言っていた。
[ケルシー] だが私と君の間に信頼は必要ない。
[ケルシー] 君が必要としているのはオペレーターたちの信頼であって、私の信頼ではない。
[ケルシー] ——君のことなど嫌というほど知っている。だから私は君を信頼などしない。かつては君も私のことを信頼していなかったようにな。
[ドクター選択肢1] 昔のことなど知る由もないが。
[ドクター選択肢2] かつて?
[ドクター選択肢3] 今の自分にできることはあるか?
[ケルシー] ……。
[ケルシー] そうだ。
[ケルシー] ……。
[ケルシー] 失言だった。いま言ったことは忘れてくれ。
[ケルシー] ここからの行動は、より一層警戒が必要だ。死してなお一歩も引かない兵を訓練できる指揮官は、相当に危険な存在だ。
[ケルシー] 無論、最後まで見届けるかどうかは、君たち自身で決めると良い。
[ケルシー] そして、体力は温存しておいた方が良い。これから休息する余裕はもうないかもしれないからな。
[ドクター選択肢1] 龍門での戦いはもう終わった。
[ケルシー] 事態はそれほど簡単ではない。少なくとも私はそう考えている。
[ケルシー] Dr.{@nickname}、ここから君がロドスの責任を背負うかどうかは、自分自身で決めてくれ……。
[ケルシー] ……つまり、「ロドスのオペレーターたちが信頼するに足る者に、君がなるかどうか」を。
[迷彩狙撃兵] あっ、フロストノヴァさん、起きたか……。
[迷彩狙撃兵] ……あまり動いちゃダメだ! 俺が起こす。
[フロストノヴァ] 大丈夫だ。そんなに……気を使わなくていい。
[迷彩狙撃兵] ——
[迷彩狙撃兵] どこへ行くんだ? 戻ってはいけない。
[フロストノヴァ] ……。
[フロストノヴァ] そうか……私の兄弟姉妹たちは……。
[迷彩狙撃兵] ……だが戻るのはやめてくれ!
[迷彩狙撃兵] 彼らはあんたのために……。
[フロストノヴァ] 違う! 私の仲間を侮辱するな!
[迷彩狙撃兵] えっ……。
[フロストノヴァ] 彼らは確かに……ゴホッ、私のことも気に掛けてくれただろう。
[フロストノヴァ] だが彼らは、感染者の同胞のために誇り高き死を選んだのだ!
[フロストノヴァ] 彼らの最期の戦いは、一人でも多くの同胞を生きながらえさせるためであり、誰か一人の命のためではない!
[フロストノヴァ] ゴホッ、ゴホゴホッ、ゴホッ……。
[フロストノヴァ] ゴホッ、うっ……がはっ……。
[迷彩狙撃兵] フロストノヴァさん、あんた……大丈夫か?
[フロストノヴァ] そこまで気を遣うほど、私が軟弱に見えるのか?
[迷彩狙撃兵] ……!
[迷彩狙撃兵] すまない!
[迷彩狙撃兵] ただ、彼らはちゃんと面倒を見てくれと、そう言ってあんたを託したんだ。
[フロストノヴァ] だが私は約束したことも果たせないまま、大切な仲間たちを失ってしまった。
[フロストノヴァ] もう穴埋めをする機会すらない。
[迷彩狙撃兵] フロストノヴァさん……。
[フロストノヴァ] ……壁でうなだれているそいつは……。
[フロストノヴァ] ああ、メフィストか。
[フロストノヴァ] まだ意識を取り戻していないのか?
[迷彩狙撃兵] わからない。ずっとあんな様子だ。何も話さないし、何もしない。
[フロストノヴァ] ……。
[フロストノヴァ] 元いた場所に送っていってやれ。それで十分だ。
[迷彩狙撃兵] ああ。分かった。ふぅ、俺はてっきり……。
[フロストノヴァ] なんだ?
[迷彩狙撃兵] てっきりあんたがこいつを殺すかと思った。
[フロストノヴァ] もう私が手を下す必要もない。スラムの外で何があったか、私にもなんとなく分かる。
[フロストノヴァ] あの目は、全てを諦めた者の目だ。
[迷彩狙撃兵] えっ……?
[フロストノヴァ] ……それに、時折……。
[フロストノヴァ] ふと思い出す。三、四年前、こいつが歌を歌おうと努力していた様子を。
[迷彩狙撃兵] 歌? でもファウストが言ってた、こいつの喉は……。
[フロストノヴァ] だがそれでも、歌おうと努力をしていた。
[フロストノヴァ] 我々感染者は、最後には皆鉱石病に呑み込まれるとしても……。
[フロストノヴァ] それでも努力し、生きようとするものだ。
[フロストノヴァ] これからの残りの人生が、奴を罰し続けるだろう。
[フロストノヴァ] 狙撃手たち、教えてくれ。ロドスは先程の戦いに参加していたか?
[迷彩狙撃兵] 先程というと、あの……。
[迷彩狙撃兵] ……いや。俺が知る限りでは、参加していない。スノーデビルたちとロドスは戦っていない。
[フロストノヴァ] ……甘い奴らだ……。
[迷彩狙撃兵] 本当にここに残るつもりか?
[迷彩狙撃兵] 奴らが追ってこない可能性だってあるんだ。フロストノヴァさん、こんなところで命を無駄に浪費するな。
[フロストノヴァ] いや、私は廃都市でロドスの何人かと知り合った。もう一度会いたくてな。
[フロストノヴァ] これは私の約束したことでもある。
[フロストノヴァ] それに、ロドスは必ず来る。私には分かっている。
[迷彩狙撃兵] フロストノヴァさん……。
[フロストノヴァ] 往け、戦友たちよ。
[フロストノヴァ] この戦いは、レユニオンの敗北だ。レユニオンは過ちを犯したのかもしれない。
[フロストノヴァ] だが、お前たちにはまだ選択の余地が、再起を図る機会が残されている。
[フロストノヴァ] 往け、振り向くな。
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