aklib_story_闇夜に生きる_DM-1_埋蔵_戦闘前

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闇夜に生きる_DM-1_埋蔵_戦闘前

カズデルの混乱する戦場で、傭兵のヘドリーとイネスが正体不明の戦士を受け入れた――一人のWが死に、一人のWが仲間に加わった。


俺だ。

目標地点にて、信号煙を確認した。

……久しぶりに同業者を相手にして、こちらもそれなりに被害を受けた。

だが彼らが地下の発信局に蓄えていた物資を奪えば、多少は取り戻せるだろう。

偵察チームを先に行かせてくれ。

俺も急いで戻る。

……そうだ、想定外のことが一つ。

Wが死んだ。

[イネス] ……

[イネス] さっきの報告じゃ、五体満足で帰ってくるなんてとても思えなかったけど。

[イネス] ……苦戦したと装って、手柄をアピールしたかったの?

[ヘドリー] わざわざ拠点を離れて迎えに来たのは、心配してくれたからじゃないのか。

[イネス] 私は誰の心配もしないわ。自惚れないで。

[ヘドリー] ……無事に帰ってこれたのは、Wがいたからだ。奴が殿を務めてくれたおかげで、我々は全滅を免れた。

[イネス] ……

[イネス] ……それはいつのこと?

[ヘドリー] 二時間前、通信が切断されたときだ。我々のチームは伏兵に奇襲を受けた。

[ヘドリー] すぐにWが我々のいた廃墟もろとも爆破し、その混乱に乗じて我々は逃げられたが、奴は……

[イネス] それは……惜しいことをしたわね。

[ヘドリー] ……そうだな。もしWが生きて帰れば、その価値は俺を超え、最も値の張る傭兵と呼ばれることになっただろうに……

[ヘドリー] いや、やめよう。Wは戦争から解放されたんだ。

[イネス] 敵はもう撤退した頃でしょ。回収に向かう?

[ヘドリー] いや。そこまでリスクは冒せない。

[ヘドリー] それにしても、まさかお前が回収を提案するとはな。Wと親しかったのか? とてもそうは見えなかったが。

[イネス] 私はあの人が持っていた戦利品が惜しいだけよ。

[ヘドリー] ……特別な物は何もないさ。W以上のコレクションを持つ者も多いだろう。

[ヘドリー] この戦争が終われば、昔の仕事に戻る機会はいくらでもある。

[ヘドリー] ……もし本当に、終わるのならな。

[イネス] フンッ……

[ヘドリー] このままここにいれば、敵の的になるだけだ。日没前にここを脱出する。

[ヘドリー] 拠点に戻り、すぐに部隊を整えるぞ。準備ができ次第出発だ。

[イネス] へぇ――?

[イネス] いつから私に命令するほど偉くなったの? ヘドリー「副」隊長?

[ヘドリー] ……他のチームとの連絡が途絶えた今、総指揮権は俺にある。

[イネス] でも、私たちは平等な立場でしょう?

[ヘドリー] はぁ……

[ヘドリー] ……イネス、急ぎここを離れ拠点に戻ろう。それから雇い主と連絡をとって報酬の再交渉だ。

[ヘドリー] もちろんこれは、提案であって命令ではない。どうだ?

[イネス] フンッ……まあいいわ。

[イネス] Wが死んだことで、どれだけチップを上乗せしてもらえるかしら?

[ヘドリー] 山程だ。

[ヘドリー] 奴は優秀な傭兵だった。その優秀さは十分に値のつくものだ。

[イネス] じゃあ少なくとも……無駄死ににはならないってことね。

[イネス] Wは死に際に何か残して――

[イネス] ――静かに。

[イネス] 誰か来る。三時の方向よ。私たちの仲間じゃないわ……

[ヘドリー] ……

[イネス] ――一人ね。出てきなさい。

[ボロボロのサルカズ女性] ……

[イネス] サルカズ……? 現地人かしら?

[イネス] ――いや、違う。あなたが持っているのは、Wの剣と銃ね……

[イネス] あなたは何者? どうしてそれを持っているの?

[ボロボロのサルカズ女性] ……

[イネス] 話すつもりはないってこと? じゃあ、死んで。

[ヘドリー] 待て。

[ヘドリー] 彼女は我々の部隊を追ってきたんだ。

[ボロボロのサルカズ女性] ……

[イネス] ……つけられてるってわかってて、知らんぷりしてたの?

[ヘドリー] 我々はここまで、かなりのスピードで移動して来た。だが彼女はWの遺品を拾った上で追いついてきたんだ。身一つで、歩いてな。

[ヘドリー] 彼女のように「経験豊富」なサルカズは、優秀なガイドになる。そう思わないか。

[イネス] はぁ? 何馬鹿げたこと言ってるの? それなら尚更、ここで殺しておくべきじゃない。

[イネス] あなたがもし私たちの皆殺しを企んでるなら、そんな回りくどいやり方なんかしないで、直接武器を抜けばいいじゃない。

[ヘドリー] お前は……そんな訳があるか。

[イネス] あいつは刺客かもしれないでしょ? ガイドなんて頼んで、罠に誘導されたりでもしたらどうするつもり?

[イネス] あなたの首を欲しがってる人が、カズデルにどれだけいると思ってるの?

[ヘドリー] どれだけいるんだ?

[イネス] ……少なくとも目の前に一人。

[イネス] あなたの首にはそれだけの価値がある。今はその肩の上で保存しておいてあげてるだけよ。

[ヘドリー] なるほど。すぐに首を金に換えない倹約家ぶりに感謝しよう。だがイネス、俺はさっきの話は冗談で言ったわけではないんだ。

[ヘドリー] 彼女は危険を冒してWの剣と銃を回収し、堂々と我々の前にやって来た。

[ヘドリー] お前のアーツを使えばわかるはずだ。彼女に敵意はあるか?

[イネス] ……敵意があろうとなかろうと、まともな人は正体不明のサルカズをいきなり受け入れたりしないわ。

[ヘドリー] 考え方の違いだな。だがこの話を聞けば、お前も彼女に興味を持つはずだ。

[ヘドリー] ここに来るまでの間、俺はわざと何度か、彼女に隙を見せたんだ。それに対して彼女は……三度小石を投げつけてきた。

[ヘドリー] 面白い好意の示し方だと思わないか?

[イネス] ……はぁ?

[ヘドリー] 本音を言うなら……今回の戦闘で我々のチームにはかなりの空席が出た。募集をかけて来歴不明のサルカズを集めるくらいなら、俺は自分で選びたい。

[ヘドリー] つまり我々の規則に則り、彼女にもチャンスを与えたいと思う。

[ボロボロのサルカズ女性] ……

[イネス] 彼女はただの部外者よ。私たちの規則なんて関係ない……

[イネス] ――いや、いいわ。

[イネス] 出発は十分後よ。そのときに同行者が一人増えてても、気にしないことにするわ。

[イネス] でも逆にもし死体を一体増やすのなら――それが誰の死体でも、早めにやることね。

[ヘドリー] フフ、忙しい奴だ。

[ヘドリー] ……いいか、よく聞け。

[ボロボロのサルカズ女性] ……

[ヘドリー] お前が拾ったのは、俺たちの戦友の遺品だ。

[ヘドリー] それを置いていくのなら、俺は黙ってお前を行かせよう。その後どんな暮らしになるかは知らないが、少なくとも、ここに残るよりは長く生きられるだろう。

[ボロボロのサルカズ女性] ……

[ヘドリー] ……

[ヘドリー] 行かないのか。これが最後のチャンスだぞ。

[ボロボロのサルカズ女性] ……

[ボロボロのサルカズ女性] ……チャンス?

[ボロボロのサルカズ女性] ……もしあたしがあんたに背を向けたら、あんたは剣を抜いて、あたしを切るんじゃないの?

[ボロボロのサルカズ女性] だって最初からずっと……あんたの手は剣の柄に掛かってる。

[ヘドリー] ……悪くない答えだ。

[ヘドリー] お前は俺たちをどこかで見かけたことがあるのかもしれないし、他の誰かの下で仕事をしていたことがあるのかもしれない。だが俺はそんなことは気にしない。

[ヘドリー] 戦死者の武器を受け継ぐことが何を意味するか、わかっているのだろう?

[ボロボロのサルカズ女性] もちろん。

[ヘドリー] では、撤退の準備を優先しろ。細かい話は後だ。

[ヘドリー] ひとまず、お前には我々の部隊に帰属してもらう――

[ヘドリー] ――「W」。

我々の戦争は、絶え間なく続いている。

まるで戦いこそが、我々の生きる手段であるかのように。

……まるで? いや、事実そのものじゃないか。

武器を振るうことを躊躇い足を止めた者は死に、覚悟を決めて歩み続けている者は、生きている。

そして生き続ける者の中には……戦いを天職とする者がいる。

崩壊間近の廃墟で彼女を見たとき、俺の心は踊った。

確信したんだ。

彼女は史上最高のサルカズ戦士になるだろう、と。

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