aklib_story_喧騒の掟_CB-8_1141P.M._戦闘後

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喧騒の掟_CB-8_11:41P.M._戦闘後

イースはあるリーベリに監視されており、そしてモスティマは以前から鼠王の存在を知っていた。 再集合したペンギン急便はエンペラーから連絡を受け、パーティー現場に向かうのだった。


p.m.11:45 天候/曇天

龍門市街 カフェテラス

[イース] これは良い香りですね。

[イース] カフェテラス、サンドイッチ、ロウソク、人の流れ、キャンディの香り。

[イース] こちらのお嬢さんにきつく睨みつけられていなければ、私はもっとリラックスできるかもしれないのですが。

[???] ……私は偶然通りかかっただけよ。でもアナタの手にあるソレは、偶然の一言で説明できる物じゃないと思う。

[イース] 先ほど説明しましたよね。モスティマさんはペンギン急便の社員としてご自身の任務を遂行しているのです。私は彼女の代わりにこのアーツユニットを保管しているだけです、と。

[???] アナタね、彼女のアーツユニットに向かって独り言を言うような不審者を私が放っておくとでも?

[イース] ふ、不審者……。それは不本意ですね。見なかったことにしておいてください。

[???] ......

[イース] 彼女は無事だと思いますが。

[???] 彼女の心配をしているわけではない。

[イース] 面倒事も起こしてはいないと思いますが。

[???] ……そうだといいけど。

[イース] ……。

[???] ......

[イース] ……。(大人しくホテルにいた方が良かったかもしれませんね。)

[モスティマ] やぁ、ここにいたんだね。それで、さっきのはどういうこと?

[鼠王] ……なぁに、ちょっとした思いつきよ。

[モスティマ] 思いつきの割には随分と派手だったけど? ペンギン急便だってあの場にいたのに。

[モスティマ] それに貴方もいい歳だし、いつもそんなに力を振り絞っていたら寿命が縮むのでは?

[鼠王] お主はワシがそれほどまで力を使ったと思っておるのかな?

[モスティマ] ……そう。

[モスティマ] なら少なくともその殺気をしまってくれないかな? 面と向かって話すのも怖くなったよ。

[モスティマ] なにかあったの?

[鼠王] うむ、若者の警戒心を甘く見ておったかもしれないのう。龍門の若者にはいつも驚かされてばかりじゃわい。

[鼠王] 大したことではない。少し言う事を聞かない操り人形がおってな。責務に忠実な魚団子屋を誤って傷つけてしまった。それだけじゃ。

[モスティマ] 「それだけ」? そういう話は表情のコントロールの仕方を学んでからするべきだと思うね。

[鼠王] ……ずっと微笑んだままだと、微笑みの意味が失われてしまうということかのう。お主に比べれば、ワシはまだリラックスしとるよ。

[モスティマ] これらの状況は、貴方の想定内ではないの?

[モスティマ] 例えば、ペンギン急便とマフィアの衝突の収束が付かなくなるのを防ぐため、自分の手で彼らを懲らしめられる口実を探した、とか。

[鼠王] このお嬢さんが、あの阿呆ペンギンの元におるなんて、本当にもったいないのう。

[モスティマ] それはどうも。

[鼠王] ……だがワシは、彼奴らに好き勝手にスラムを踏み荒らしていいと許してないし、許した覚えもないのじゃ。

[鼠王] 彼奴らの横暴な態度は、既にワシの我慢の限界を超えておる。

[鼠王] もとはな、彼奴らがシラクーザとの些細な繋がりが、龍門に少しばかり面白い利益をもたらすかもしれんと思っていたが……。本当に失望したわい。

[モスティマ] ちょっとストップ……。私にそんな話をしてどうするつもり? 次は私の口を封じようとでも?

[鼠王] なに、老人とてたまには愚痴を吐くこともあるからの。

[モスティマ] そう。なら、安魂祭のイベントの一環ってことで。今の話、私は何も聞いていないよ。

[モスティマ] とまぁ、騒ぎが大きくなればなるほど、報酬の残金は多くなると信じているよ。

[鼠王] ほぅ、その金を手に入れたらどうする?

[モスティマ] まずはあのキャンディ屋さんを買い取るんだね。

[鼠王] フォフォフォッ、本当にお主は好きなものに一直線だのう。

[鼠王] よかろう。地下室以外なら、他のものは全て持って行きなさい。

[モスティマ] やっぱり、あそこに地下室があるんだね……。ちょっとは私の美しい思い出を守ってくれないかな?

[鼠王] あれはワシの店だからのう。

[モスティマ] 本当に残念だよ。貴方が引退したら、本物の雑貨屋さんの店主になるかと思ってたのに。

[鼠王] それもまた良かろうて。ただ、ワシが引退するまでまだ生きていたらの話だがの。

[鼠王] そろそろ夜も深くなってきた。ようやくこの祭りのイベントが正式に始まる頃じゃの。役者も揃ったことだし。

[モスティマ] 高みの見物はもう止めたと?

[鼠王] ……ここは良い眺めだと思わぬか?

[鼠王] 安魂夜は死者を悼み送る日。だが龍門は我々の街じゃ。

[鼠王] 生者が目一杯盛り上がれば、亡者は心残りなくこの地を去れるというものじゃよ。

[鼠王] それに棺に片足突っ込んどる老いぼれのネズミなぞ、少しでも身体を動かしておかんと、どっかの下心ある奴らに、亡霊扱いされてしまうからの。

[モスティマ] じゃあ、どう盛り上がるべきかな?

[鼠王] こう盛り上がるべきではないか?

[モスティマ] あ、なるほど。

[モスティマ] だとすれば、このお祭りの出費はちょっとかさみそうだね。いや、かさむどころか、これは浪費に近いね。

[鼠王] やはりお主は賢いのう。

[モスティマ] それもそうか。そうじゃないと、貴方はとっくにウェイ長官に目をつけられてるからね。

[鼠王] そんな肝を冷やすようなことを言うでない。近衛局とはもう二度とやり合いたくないのだ、すこぶる面倒だったのだぞ。

[鼠王] それに、この芝居の素晴らしいところは、あらゆる出費が全て役者の自己負担だということなのじゃ。

[バイソン] はぁ、はぁっ、あ、あいつらもマフィアのメンバー? ぼくたち、まだ走らないとダメなんでしょうか?

[エクシア] 明らかに違うね。たぶん前にあたしたちと揉め事を起こしたチンピラかなぁ。数が多すぎて覚えられないけどね。とにかく走ってれば撒けるから。

[バイソン] ぼくには今麺棒を持った奴が見えたんですけど……。

[エクシア] 喧嘩は普通そんなもんでしょ。あんまりスラムに来たことない?

[エクシア] ああいう人の店は、ウッカリ歯とか血が麺の中に混じっちゃうこともあるから、お客さんから猛クレームが来るみたいだよ。他人の歯を噛んでたからね——。

[バイソン] いや、そんな生々しい話はしなくていいですから。

[バイソン] ……エクシアはモスティマさんとは旧友なんですね?

[エクシア] キミ、あたしのこと呼び捨てにしたね?

[バイソン] モスティマさんは、ぼくの試験官だって言ってましたけど……。

[エクシア] は? そんなの初耳だけど?

[バイソン] ……でしょうね。

[エクシア] どうしてモスティマだけ「さん」付けなの。扱いが違いすぎじゃないかな。

[バイソン] あの人はぼくの理想のトランスポーターなんです——ぼくがこの職業を続ける理由も目的も、あの人は全て現実にしたんです。

[バイソン] ……少し羨ましいだけですよ。

[バイソン] ただ、あの人が何を考えているのかは分かりません。

[エクシア] 大丈夫。それが普通だから。あたしが彼女を追ってラテラーノから龍門に来て、それでボスに出会って、今までやってきたんだけど、結局いまだに彼女が何を考えてるのか分からないもんね。

[エクシア] だから最近はもう諦めてるかな。いっそ彼女がいきなり背後に現れるのを待つ方が気楽だよ。

[バイソン] そんな怖ろしげに言わないでください……。待って、ラテラーノから龍門まで追いかけて来た?

[エクシア] フフン、気になっちゃう~? こう見えても、実はあたしだって全然モスティマには負けてないのさ。ちょーっと差はあるかもしれないけど——、

[バイソン] いや、別にそこまで気になってませんよ。それより早くテキサスさんと合流しましょう。

[エクシア] ちぇー。

[テキサス] うっ。

[クロワッサン] これ、ちーと、やり過ぎとちゃうん?

[ソラ] これは正当防衛ですから、大丈夫ですよ!

[エクシア] あっ! テキサス~!

[テキサス] 無事なようだな。モスティマは?

[エクシア] その質問、必要? 見ればわかるでしょ。

[テキサス] みたいだな、すまん。

[エクシア] ……どうして謝るの? あと、どうしてみんなあたしの顔をじーっと見てるの?

[ソラ] あはは……。そうだね。モスティマが帰ってきてるなら、また後で会えるでしょ。

[ソラ] それよりも、あたしたちは、今新手の敵に集中しないと……。

[クロワッサン] しっかし、こら一体どうしたっていうんや?

[クロワッサン] この前ウチらが大声で騒ぎよって、エライ迷惑かけてもーたコトへの仕返しとはちゃうやろ?

[エクシア] その可能性はあるね。

[バイソン] あるの!? スラムの人ってそんな荒っぽいことするんですか?

[クロワッサン] そら難儀やなぁ。拳と拳を合わせんと、わかり合えんのかいな。ただ殴り合いっちゅーもんは、最も古くからある人間同士のコミュニケーションやからな。

[テキサス] 連絡が入った。ボスだ。

[エンペラー] もしもし~?

[エンペラー] お前ら、楽しくやってっか? まだ五体満足か?

[エンペラー] ああ、大丈夫だって? なら問題ねぇ。俺の話を聞くんだ。

[バイソン] ……エンペラーさん、社員用の保険ってたくさん加入してます?

[エンペラー] 今夜はな、車輪街で安魂祭のメインパーティーをやるんだ。みすぼらしい宣伝イベントばっかだけどよ。

[エンペラー] で、急だけどよ、俺はそのイベントに参加することにしたぜ。偉大なミュージシャンとしてな。

[エンペラー] いっちょ龍門に格調高いノイズってやつを響かせてやらぁ。あいつら感激しすぎて、今下でズラッと俺を拝んでやがるぜ。

[エンペラー] お前たちの任務は、ただ俺の後ろに付いてきて、ペンギン急便を倒すとのたまってるアホどもを一網打尽にすることだ。

[エンペラー] わかったな? わかった? オッケー! じゃそういうことで!

[テキサス] ……切れた。

[クロワッサン] なんや前にも似たようなこと、あったような気ぃするんやけど。

[ソラ] ……つまり、あたしたちもあの何とかパーティーに行けばいいってことね。

[エクシア] オッケー、レッツゴー!

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