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紅炎遣らう落葉_CF-6_「飛ぶな」の禁_戦闘前
ノイルホーンと学者アイルーはリオレウスのいた洞窟内へと墜落し、その周囲の環境からリオレウスの状況を推測する。その中で、源石がテラにもたらす影響について、ノイルホーンが学者アイルーに説明していると、洞窟の奥から助けを求める声が響いた。
[学者アイルー] ニャニャニャ~~!
[ノイルホーン] うわあああ~~っ!
[学者アイルー] ニャニャニャニャ~~!
[ノイルホーン] 風――強すぎんだろ、これ!!
[学者アイルー] ニャー! 落ちますニャ!
[ノイルホーン] なんつった!? ――風でよく聞こえな――ああ、クソ! 俺のマスクが!
[学者アイルー] 落ち! ます! ニャー!
[ノイルホーン] 俺がしっかり掴んでるから、落としたりしねえって!
[学者アイルー] リオレウスが! リオレウスが下に向かってるんですニャ~~ッ!
[ノイルホーン] はあ!? このっ……マスクがずれて何も見えねえじゃねえか!
[学者アイルー] の、ノイルホーン! リオレウスが――真っ直ぐ突っ込んでいきますニャ!
[ノイルホーン] ま――真っ直ぐ、なんだって!?
[学者アイルー] このままじゃ、ぶつかっちゃいますニャ~ッ!
[ノイルホーン] 待て待て! よし、これで前が見え――
[ノイルホーン] おわっ!? ぶ、ぶつかるっ!
[学者アイルー] ニャアア……! わたしのノート……尻尾……! 良かった、無事ですニャ!
[学者アイルー] ここは……どこですかニャ? 暗いですニャ……
[学者アイルー] ノイルホーン……ノイルホーン! 生きてるなら、返事してくださいニャ!
[学者アイルー] ニャ! 身体が半分埋まってますニャ……ノイルホーン、死んじゃだめですニャ……!
[ノイルホーン] 死んでねえっての……そうやってぐいぐい足を引っ張るなよ。
[ノイルホーン] 装備入れてる袋の中に携帯式のランタンがあるから、点けてくれ。
[学者アイルー] 携帯式のランタン、ニャ? ええと、これですかニャ?
[ノイルホーン] そうそう、それだ。下のボタンを押せば点くぜ。
[学者アイルー] わ、ピカピカですニャ! しかも全然熱くありませんニャ……これは一体どういう原理ですかニャ?
[ノイルホーン] あともう一つ……俺のツノ、石から抜けなくなっちまったんだけど……ちょっと登ってきて、手伝ってくれねえか?
[学者アイルー] 石から抜けないって……? 刺さっちゃったんですかニャ! ニャハハハ!
[ノイルホーン] お前なあ、笑うなって!
[学者アイルー] ニャニャ、今行きますニャ。
[ノイルホーン] おう。そっちから登れるはず……って、こらこら、俺を踏み台にすんな! そこ掴むのもやめろ!
[学者アイルー] よーし、登れましたニャ! 抜けないっていうのはここですかニャ……? えーいだニャ!
[ノイルホーン] いっててて……尻ぶつけた……
[ノイルホーン] ところで、リオレウスは? どこに行ったか見てないか?
[学者アイルー] 中に入っていきましたニャ。
[ノイルホーン] そうか。今通ってきた入口は……随分高いとこにあんだな。俺らだけで登るのは大変そうだ。何か別の方法を考えねえと……ヤトウに合図を送って、リオレウスも見失わない方法を……
[ノイルホーン] ……いや、そもそもここはどこなんだ?
[学者アイルー] ニャ? そんなのわたしが聞きたいですニャ!
[ノイルホーン] 洞窟は下に続いてて、リオレウスもそっちに向かった……もしかしたら、この下は村の洞窟に繋がってるのかもしれねえな……やっぱ一回下まで行って確かめてみねえと。
[ノイルホーン] 学者先生、ちょっと待ってくれよ! 一人でずんずん行くなって!
[学者アイルー] ニャ! 早く来てくださいニャ!
[学者アイルー] テラの自然法則は我々の大陸とあまり変わらないはずですが、わたしにも理解できないことが起きてるんですニャ! あのリオレウスの行動パターンだっておかしすぎますし、謎だらけですニャ!
[ノイルホーン] 謎か……そういやあのオトモも、異常が見られるとか言ってたような気がするが。
[学者アイルー] あとでちゃんと説明してあげますニャ!
[学者アイルー] まずはリオレウスが向かったほうへ行きましょうニャ! そこを調べれば……異変の真相を掴めるかもしれませんからニャ!
[学者アイルー] わたしは元王立古生物書士隊の学者として、必ず真相を突き止めて見せますニャ!
[学者アイルー] ノイルホーン……これを見てくださいニャ。
[ノイルホーン] おう、どうした? ――っ、とんでもねえにおいだ……
[ノイルホーン] なあ、これってまさか……
[学者アイルー] はい。ここにあるのは全部……リオレウスに引き裂かれた生き物の残骸ですニャ。
[ノイルホーン] 甲獣に角獣、羽獣もいるな……食うために捕まえたのか? にしては食べ残しが多すぎる気もするが……
[学者アイルー] そう、そこが変なのですニャ。リオレウスはアゴの力が強いので、骨まで砕いて食べられますニャ。つまり、こんな大きな食べ残しなんてするはずがないのですニャ。
[学者アイルー] その上、どれも原形が残っていますから……恐らく、単に仕留められただけでしょうニャ。齧った痕もありませんし……食用という可能性は低いと思いますニャ。
[学者アイルー] もっと奥まで進んでみましょうかニャ。
[ノイルホーン] ん、おう。
[学者アイルー] ニャ! なんてことでしょうニャ……!
[ノイルホーン] 何かわかったのか?
[学者アイルー] この残骸、炭になるまで焼かれてますニャ。多分、仕留めたあとに洞窟まで引きずってきて、死骸を燃やしてしまったのでしょうニャ……これでは食べようにも食べられないでしょうにニャ……
[ノイルホーン] どうしてそんなことを……怒ってるとか、か……?
[学者アイルー] ここにも、そこにも、向こうにもありますニャ! リオレウスは、この生き物たちを一口も食べていないようですニャ!
[学者アイルー] もしかして、テラの生き物を食べることができないのですかニャ?
[ノイルホーン] じゃあ、それが……あいつがおかしくなった原因?
[学者アイルー] まだわかりませんニャ。……確かに、空腹が行動パターンに影響するケースもありますが、それが原因とは言い切れませんしニャ……
[学者アイルー] 本当にどうしてなんでしょうニャ? さっぱりわかりませんニャ!
[学者アイルー] 観測データによると、テラの生物は我々と同じような生態系であるはずですニャ。それに、わたしはテラの食材を問題なく食べることができていますしニャ……
[ノイルホーン] 食べ物の問題じゃねえなら……源石のせいなんじゃねえか?
[学者アイルー] リオレウスが鉱石病に罹っていると言いたいのですかニャ?
[ノイルホーン] ――! あれは!
[学者アイルー] 何ですかニャ?
[ノイルホーン] 学者先生、この死骸をよけてくれねえか。この辺の土を掘り返してみたいんだ。
[学者アイルー] ニャ~、くさいですニャ……! あなた、どうして自分でやらないんですかニャ?
[ノイルホーン] 俺を騙して釣り竿持たせた仕返しだよ。
[学者アイルー] ……ムカっときましたニャ。ニャ! ニャ! ニャー!
[ノイルホーン] 待て待て、暴れんなっての。
[ノイルホーン] ……リオレウスの身体に源石の痕跡がある理由がわかったぜ。
[学者アイルー] この穴ぼこで、ですかニャ? どうしてわかるのですニャ?
[ノイルホーン] これは源石を掘り出した痕なんだ。つまり、この下は……
[ノイルホーン] 源石の鉱床ってことさ。
[ノイルホーン] 村の連中が必死に隠そうとしてるのがこの鉱床だったとしたら……なんとなく読めてきたぜ。
[学者アイルー] ちょっと、読めてきたって何がですかニャ?
[ノイルホーン] こうなってる理由が、だよ。極東の現状と枯渇していく資源、二つの側面から考えると……誰にも知られてねえ私有の源石鉱床があれば、未加工品でも莫大な利益が得られるはずだからな。
[ノイルホーン] こうして身内だけで採掘してるのは……外部の奴や大きい勢力にここの存在がバレちまえば、鉱床自体を横取りされると考えてのことだろう。……そうなりゃ最悪の場合、命の危険だってあるしな。
[学者アイルー] ニャ……? つまり源石というのは元々地中にある鉱物で、村人たちはそれを掘り出してたってことですかニャ?
[ノイルホーン] そういうことだ。
[学者アイルー] しかも、それはごく普通のことだと……?
[ノイルホーン] ああ。
[学者アイルー] わたしの記憶が正しければ……不治の病である鉱石病も、恐ろしい天災も、全部源石に起因するものと認識していますニャ。
[ノイルホーン] その通りさ。
[学者アイルー] じゃあ、どうしてそんな危ないものを掘り出すんですかニャ?
[ノイルホーン] んー……源石はエネルギー源だからな。
[学者アイルー] でも、木や油を燃やしたり、水蒸気を発生させるだけでも十分エネルギー源になりますニャ。
[学者アイルー] それなのに、自分から源石みたいな危険な物に近付こうとするなんて全然理解できませんニャ!
[ノイルホーン] こういうのはドクターの得意分野なんだがなあ……ええと、なんて言やいいんだ……? 元々、テラの人間はアーツってのを通じて、源石を利用してたんだが……
[ノイルホーン] 昔はそういう手段しかなかったのが、源石エンジンの技術が進歩したおかげで、今では工業エネルギーとしても普及しててだな……
[ノイルホーン] あー……俺アーツ使えねえし、どう説明したもんかな……そうだ、ランタン貸してくれ。
[学者アイルー] これで何を――わわっ、解体しないでくださいニャ! 灯りがないと大変なことに……!
[ノイルホーン] ほら、これ。
[学者アイルー] あれ……? き、消えてないですニャ……
[ノイルホーン] 見えるか? これは電池っていうんだが、ここについてる電球に、この電池がエネルギーを提供してるから、ランタンは光るんだ。
[学者アイルー] これと源石に何の関係があるのですかニャ?
[ノイルホーン] 電池の中には源石とアーツユニットが入っててな。それを介することで、電池は源石の力を電流に変えて、ランタンを灯してくれるってわけだ。
[学者アイルー] じゃあ、このランタンは源石のお陰で光ってるんですニャ。
[ノイルホーン] それだけじゃねえぞ。ランタンの電球だって、工場でライン生産されたものだからな。
[学者アイルー] ライン生産、ですかニャ?
[ノイルホーン] 同じ規格に沿った形で、製品を大量生産する仕組みさ。このランタンくらいだったら、大きな工場なら一日何千個も作れるんだぜ。
[学者アイルー] 何千個も!? 便利ですニャ……それじゃ、村の人たちが着ている服も同じ方式で作られているんですかニャ?
[ノイルホーン] だろうな。そういうふうに便利な機械を動かすことも出来るのが、源石エンジンってもんなのさ。
[ノイルホーン] だが、それだって源石なしじゃ動かせねえ。ここじゃ、大抵の地域の常識としてそういうもんなのさ。
[学者アイルー] つまりテラの科学は……いえ、文明までもが、源石と深く関わっているということですかニャ。
[ノイルホーン] 多分、そういうことじゃねえかな。
[学者アイルー] でも、我々の故郷のハンターさんたちにはこういうランタンも、あなたたちのような服もありませんニャ。確かにこのランタンは便利ですが……
[学者アイルー] 源石みたいな危険な物を使わなくたって、わたしたちは生活できていますニャ。
[学者アイルー] そう思うと、このテラにも、源石の代用品があってもおかしくないはずですニャ。
[ノイルホーン] ……お前らのとこでは、どこにでもハンターがいるもんなのか?
[学者アイルー] 当然ですニャ。モンスターを放っておけば、村の人たちの安全が脅かされてしまいますし、生活するにもモンスターの素材が必要になりますからニャ。
[ノイルホーン] じゃあ……ハンターの狩りってのは、毎回安全に進められるようなもんか?
[学者アイルー] 違いますニャ。狩りは……大抵危険を伴うものですニャ。成功率よりも失敗する確率のほうが上回っているのが常ですしニャ。
[学者アイルー] 強いハンターさんは貴重なのですニャ。一方でモンスターも手ごわいものですから、多くのハンターさんが狩りの途中で犠牲になってきたのですニャ。
[ノイルホーン] だったら、源石もお前らのとこでいうモンスターとそう変わらねえと思うぜ。
[学者アイルー] ニャ? どういう意味ですかニャ?
[ノイルホーン] 源石もモンスターも、避けようのない脅威でもあり、生きるための希望でもあるってことさ。
[学者アイルー] ニャ……
[ノイルホーン] ここで見ることはないかもしれねえが……天災ってのはしょっちゅう起きてるものなんだ。だから移動都市に住んでる人は多いし、一つの都市には数万人の人がいる。
[ノイルホーン] 移動都市ってのはその名の通り、天災が近付いてきた時は都市ごと移動しちまえるものなのさ。
[学者アイルー] 数万人の住んでる都市が……動くんですかニャ? すごい光景になりそうですニャ……でも、どうやってそんなに大きな都市を動かすんですかニャ?
[ノイルホーン] 源石を使うのさ。都市を動かすなんてこと、ほかのエネルギーじゃ到底できっこねえからな。
[学者アイルー] そういうことだったんですニャ……
[ノイルホーン] 俺たちだって、源石を使うことにはリスクがあるのは理解してる。
[ノイルホーン] だが……災害を前にした時、生き残るためならどんな頼りない枝でも掴むもんだろう。
[ノイルホーン] その枝に棘があるかどうかなんざ、その時は誰も気にしやしねえ。
[ノイルホーン] 実際、移動都市や源石技術が普及する前は、天災でたくさんの人が亡くなってたわけだしな。
[学者アイルー] テラというのは、なんとも恐ろしい土地ですニャ……
[ノイルホーン] それでも、たとえその棘で手が血まみれになろうと、その痛みに免じて天災が俺たちを見逃してくれるわけじゃねえからさ。黙って耐えるよりほかにねえんだ。
[ノイルホーン] ほかにも縋れるものがないかなんて、ずっと探し続けちゃいるが……まあ、棘のない枝を見つけられるその日までは我慢だな。
[ノイルホーン] どんな困難が降りかかろうと、歯を食いしばって生き延びるしかねえのさ。
[学者アイルー] ノイルホーン……あなたはわたしほど賢くはありませんが、今の話はとっても理に適っていましたニャ。
[学者アイルー] 思えば、我々の苦難も似たようなものですニャ。
[学者アイルー] 強大なモンスターを狩猟するための武器もまた、モンスターの素材でできているものですしニャ……
[学者アイルー] 狩りから戻らなかったハンターさんや新大陸開拓のために倒れた調査団員、危険生物のデータを集めるためにいなくなった書士隊の先輩たち……先人たちの犠牲があってこそ、今があるのですニャ。
[ノイルホーン] はあ、どこも事情は似たようなもんなんだろうな。人は脆いし、大地は残酷だ。
[学者アイルー] ただ……苦難が避けられないものであり、生きていくためには代償が必要なのだとしても……罪のない命が犠牲になる必要はあるのですかニャ?
[学者アイルー] 我々の故郷では……その源石のように、関係ない人たちまで苦しめるような事例は聞いたことがありませんニャ。
[学者アイルー] 鉱石病に罹りたくて罹ったわけではないのに、医療援助がなければ生き残ることもできないだなんて……それは、本当に正しいことなんですかニャ?
[ノイルホーン] 正しいわけねえだろう。
[学者アイルー] ニャ! 即答すぎて驚きましたニャ……
[ノイルホーン] だからこそ、誰かが先頭に立たなきゃなんねえのさ。代償を支払ってでも、あとに続く奴らの道を照らすために……
[???] ――あのー! もしかして、そこに誰かいるのー!?
[学者アイルー] わっ!? 誰の声ですかニャ!?
[ノイルホーン] わからん、話しかけてきてるみたいだが……
[???] お話し中にごめんね! ちょっとこっちを見てくれない!?
[???] あたし、もう三日もここに閉じ込められてるんだけど……ここを塞いでるものをどかしてもらえない? お願い!
[ノイルホーン] 助けにはいきたいけどよ……あんた一体どこにいるんだ?
[???] あっ、その前に! もうすぐ獣災が来ちゃうから気を付けてね。
[ノイルホーン] 獣災?
[???] 名前を聞けばなんとなくわかるでしょ? 森の動物たちが暴れ回って一気に押し寄せてくるの。
[学者アイルー] 確かに、聞き覚えのある声が聞こえた気がしますニャ。
[ノイルホーン] 俺にも聞こえたぜ……マジでまた来るのかよ……
[???] 注意して。多分、来るのは感染生物だからね!
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