aklib_story_登臨意_WB-9_冬蔵_戦闘後

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登臨意_WB-9_「冬蔵」_戦闘後

チョンユエは睚を倒し、自らの方法で玉門を救った。その後剣をワイ・テンペイに託すと、二人は四十年後に再戦することを約束した。被害を受けた玉門は修復に二ヶ月を要する。情報を得た睚は再び旅立った。


[チョンユエ] ……

[睚] ……

あれは二度目の、長い混沌の中での旅。

そして旅の果てに訪れた覚醒――

後悔。屈辱。不満。無知。

......

より多くは、困惑。

[睚] 我を止めると言うなら、彼れに代わって、質問に答えろ!

[チョンユエ] ……

[睚] お前に会うために、我はここまでやってきた。

[睚] 知っているか。見渡す限り、あの愚鈍な虫けらどもは岩脈を掘り、河床をうがち、清濁を逆転し、山岳や湖沼を汚した。奴らはそれらの醜い傷痕を、都市と名付けたのだ……

[睚] このとうに蝕まれた土地が、我らがかつて住み、戯れた場所だというのか?

[睚] 知っているか。この玉門という名の醜い傷痕の囲いには、彼れらが死に際に残した爪痕がいまだ残っている。

[睚] この千年来、あの虫けらどもはその爪痕を残したままだ。それを栄誉だと嘯き、文明の偉大なる里程標としているのだ。

[睚] それにもかかわらず、お前の欠片は今、そんな都市を守っていると言うのか?

[チョンユエ] 私は私、アレはアレだ。

[睚] (天地の抑えた怒り)

舟はいまだ進む。

両岸の草木は先よりもいささか低くなり、雪はさらに分厚い。

[睚] 覚えているか? 我らの意識がいかにして眠りなき混沌を旅し、この地の最初の生命となったのか。

[睚] 覚えているか? 我らがいかにして混沌が生まれて消えるのを、時間が秩序を得るのを、物事が分類されるのを、天地が徐々に天地となる様子を眺めてきたか。

[睚] お前はまだ、雲を突き破った瞳を覚えているか? 我々は蒼穹の間で見つめ合い、ぶつかり合い、川は赤く、山々は平らかになった。屍は空高くそびえ立ち、膿んで腐敗した後に新たな峰となった……

[睚] 本物の、戦争は、いかに壮大であった!?

[睚] (天地の抑えた怒り)

舟はいまだ進む。川面は船首が進むのと同時に延びていき、果てがない。

積雪はさらに深まり、言葉を発するごとに響くこだまはまるで雪崩のようであった。

どこも真っ白で、空は手を伸ばせば届くほどに低い。

[睚] あのような時代を経験しておきながら、なぜ自らの鱗や爪の間の虫けらと、それらが巻き上げるほこりなどを気にかける?

[睚] 人間を弄ぶために、お前は雲を吹き雨を降らせ、馬鹿げた「瑞祥」をもたらし、いわゆる真龍が討伐に勝つ手助けをした。それだけでも下らない……

[睚] それなのに千年後、なぜまた奴らに応じるのだ? 自らの同類を妨害し、唆し、取り囲んで、駆逐して殺すだと!?

[睚] 取るに足らないながらも勇敢であった奴らの先祖と比べれば、今の虫けらどもはさらに軟弱で見るに堪えぬ不潔さだ。なぜそんなものの支配者となろうとするのか――!?

[睚] 奴らの馬鹿げた「神」になろうとするのか!?

[睚] (天地の抑えた怒り)

[睚] 空間の果てまで見ても、太古から今日までの悠久の時間の中で我々のような存在に、お前ほど恥辱に満ちた者がいたか!?

答えろ、我が……同類よ!

[チョンユエ] 随分怒っているんだな。

[チョンユエ] 眠っていた数千年間、アレも常に今の貴女のように……

[チョンユエ] 屈辱を呑み込み、裏切りを噛み砕いて、答えを追い求めていた。

[チョンユエ] そうでなければ、我らのような欠片は生まれなかった。

[睚] ……

[チョンユエ] しかし我らはもはやアレではない。

[チョンユエ] よって貴女の質問に、私は答えてやれない。

[チョンユエ] 貴女が私の怒りを理解できないように、私も貴女の怒りを理解できない。

[睚] 怒り?

[睚] お前はいまだ人間の肩を持つのか? ここに至っても?

[睚] その剣を抜けば、まだ可能性が一筋あるか。

[チョンユエ] 貴女がどれほど、この空間を大切に思っているのか考えていた。

[チョンユエ] 春生じ、夏栄え、秋傷み、冬藏る。春秋を裁ち錯(まぢ)へ、宇を剪り腹に懷く。

[チョンユエ] 貴女が千年前に炎国から逃げた時、この小さな天地をどのように慌てて切り取って持ち去ったのか、その想像すらついてしまう。

[チョンユエ] その後どのようにしてこの大地の片隅に身を隠し、この小さな天地を幾度となく調べ、永遠に時が流れぬ風景を見つつ傷口をなめていたかもな。

[チョンユエ] 巨獣も、これほどまで感傷的な生命となってしまったのか。

[チョンユエ] その姿は貴女の言う軟弱で見るに堪えぬ不潔な人間と、どこが違うと言うのだ!?

[チョンユエ] 八千年を春とし、八千年を秋とする。雪は永遠に降りやまず、この天地は永遠にこの天地である。

[チョンユエ] これが貴女たちの時の尺度か……

[チョンユエ] 全くもって馬鹿馬鹿しい。

日、月、年。

寒さが来て暑さが去る、春が去り秋が来る。

どれだけ長い歳月であろうと、無数の細かい時間に分けることができる。

一心に、一手一手を重ね、大寒から三伏、そしてまた次の大寒。

人間とはかねてよりこうだ。命をごく細かく分解し、そのごくわずかな内に全てを感じる。

舟が止まった――

大きく硬い拳が、睚の胸元に突き当たった。

余計な動きなどない。万の技も一に帰す。武道は至りて簡し。

一面を覆う氷と雪が川の真中の一点に溶け込み、睚の身体は小舟から飛び出して……

冷たい地面に、どさりと落ちた。

[睚] これが……彼れの力を手放した後に習得した力か……

[睚] お前は確かに彼れではない……

[チョンユエ] ……

男は何も言わずに、目の前にいる息絶え絶えの「人」を黙って見つめる。

どのような生物であろうと、死に瀕した時は似たような姿になるのを知った。

[睚] なぜ……殺さぬ?

[チョンユエ] 代理人の器など、貴女は自由に創れるだろう。滅ぼしたところで意味がない。

[チョンユエ] 玉門を去るがいい。

[睚] ……

[睚] また会うことになるだろう。

[チョンユエ] ゴホッ……

[巡防営守備軍] 将軍、現時点における被災状況の確認が完了しました。

[ズオ将軍] 死傷者の状況は?

[巡防営守備軍] 天災が来る前に、東の住民たちはすでに無事西に移動しました。

[巡防営守備軍] 欽天監術師は都市の核心部にて第二の嵐に正面から抵抗し、半数近くが負傷。その際に龍門のリンさんとリン特使も協力してくれましたが……リンさんは重傷を負ってしまいました。

[ズオ将軍] ……

[巡防営守備軍] す、すでに軍の医館に搬送済みです。

[ズオ将軍] リン殿は義を重んじ手を貸してくれた、玉門は大きな恩がある。最善を尽くして治療せよ、間違いがあってはならない。

[巡防営守備軍] はい。

[ズオ将軍] 建物の損壊状況は?

[巡防営守備軍] 西側に影響はありません。南北両区域は天災が最も勢力を強めた際に砂嵐に見舞われ、程度は異なりますが一部の建築物に損壊が見られます……

[巡防営守備軍] 東側は砂塵と源石砂嵐が直撃し、最も深刻な状況です。

[巡防営守備軍] 玉門四衛のうち二つが深刻な損傷を受けており、修理する価値はないと判断した土木天師がすでに取り外しました。

[巡防営守備軍] 一番の問題は基礎壁も影響を受けたことです。部分的に立面構造がひどくずれているため、緊急の補強が必要です。

[巡防営守備軍] 他の都市防衛設備の損耗率はおよそ六割程度です。

[ズオ将軍] ……

[ズオ将軍] 土木天師の見立ては出ているか?

[巡防営守備軍] 数名の天師による、現時点での計算によると、最速で壁を修復したとしても、玉門が航行を再開できるまでには少なくとも二ヶ月の時間を要するとの見通しです。

[ズオ将軍] 二ヶ月……

[ズオ将軍] 天災が訪れる前の予測よりもいくらかましとなったか。

[ズオ将軍] 命を伝えよ。

[ズオ将軍] いまだ天災の余波があるかどうか明らかではないうちは、全員警戒を怠ってはならぬ。

[ズオ将軍] 引き続き被害状況の確認と、負傷者の搬送、臨時の天幕の増設を行い民を西の避難所から移動させて適切に配置せよ。

[巡防営守備軍] はい。

[ズオ将軍] 都市内の山海衆は?

[巡防営守備軍] 排砂溝などの都市防衛設備への襲撃、また民への侵害によって混乱の誘発を企てていましたが、巡防営の迅速な対応、さらには武人たちの手助けもあり、ほぼ鎮圧済みです。

[巡防営守備軍] ごく少数の者たちが壁の破壊に乗じて、都市から逃げ出しました。

[ズオ将軍] ……うむ。

[巡防営守備軍] ですが先日軍営に侵入して暗殺を試みた山海衆の首領は姿を現しておらず、すでに捜索に多くの人手を割いています。

[ズオ将軍] 姿を現していないだと?

[ズオ将軍] あの者の技量で、混乱に乗じて何もしていないのか……

[ズオ将軍] 宗師は?

[巡防営守備軍] 宗師は鋳剣坊に向かった後に、姿を消しています。

[ズオ将軍] ……

[ワイ・テンペイ] 剣を俺に渡して、どういうつもりだ?

[チョンユエ] 私の代わりに保管しておいてほしい……お願いだと思ってくれ。

[ワイ・テンペイ] なんだ。ではこの剣のために、街中が大騒ぎだったのか。

[ワイ・テンペイ] 一体どんな代物だ?

一振りの剣は、確かに単純な言葉では説明を尽くせぬほどに多くの意味を持っていた。

歳獣の十二分の一の意識が封印された器物であり、愛憎とすれ違いの証しであり、年季の入った古い剣である。

[チョンユエ] いつか訪れる、私たちの再戦の約束と見なしてくれて構わない。

[チョンユエ] また他人に奪われたり、あるいは質に入れて金に換えさえしなければいいさ。

[ワイ・テンペイ] うむ……

[ワイ・テンペイ] なかなかに重要なものなのだろうな。

[チョンユエ] もし持て余すようであれば……

[ワイ・テンペイ] 俺はただ……俺たちはそれほど互いを知っているとは言えんと思ってな。

[チョンユエ] 貴公のことは知っている。名はワイ・テンペイと言い、聡明な友人が二人、そして利発な娘が一人いる。

[チョンユエ] そしてこれまでに唯一、私に一撃を与えた者だということもな。

[ワイ・テンペイ] いいだろう。

[ワイ・テンペイ] 俺はお前のことを知っている。武を学んだ四十年の中で俺が唯一、倒せなかった相手だ。

[ワイ・テンペイ] この剣は、俺が持っておこう。

[ワイ・テンペイ] 再び四十年鍛錬を積んだら、お前を訪ねる。

[チョンユエ] いいだろう。

[チョンユエ] 待っているぞ。

[ワイフー] 先生、お伺いしたいのですが。

[ワイフー] この前、こちらの医館にいた大柄な従業員は、どれだけ薬代の負債があったのでしょうか? 私が代わりに支払います。

[医者] 必要ない。これだけ経っているんだ、負債なんてとっくにないさ。

[医者] あれは、言ってみれば彼に身を寄せる場所を与えるための口実にすぎなかったんだ。

[医者] 人助けの手伝いをする方が、いつも戦ってばかりよりマシってもんだろう……

[ワイフー] 大変、ありがとうございます……

[医者] 君は彼の娘さんかな?

[ワイフー] はい……

[医者] あんなおかしい奴に、こんな教養のある娘さんがいるなんて、不思議なもんだよ。

[ワイフー] ……

[医者] おかしい従業員だったけど、いなくなったらなったで少し慣れなくてね。

[医者] この床の砂を見てくれよ、私一人でどうやって片づければいいことやら……はぁ……

[ワイフー] わ、私が手伝います!

[リー] また何も言わず行っちまったのかい?

[ワイフー] はい。

[リー] 結局のとこ、あいつはあいつだなぁ……

[ワイフー] ですが今回は、もうあの人を見つけるのを優先するつもりはありません。

[リー] どうやら、お前さんも今後について考えがあるようだな。

[ワイフー] 探偵事務所の仕事も、学業も続けます。もちろん武術だっておろそかにしません。もっと鍛えます。

[ワイフー] 次あの人に会う時は、あごを蹴るだけでは済ませませんよ。

[山海衆頭目] ……

[山海衆頭目] 上から連絡がきた。態勢を整えたら、急いで次の任務地点へと向かうぞ。

[焦る山海衆メンバー] しかし結局玉門は無事天災を乗り越えて、我々も甚大な損失が出ました。

[山海衆頭目] (冷ややかに鼻で笑う)

密書は覆面の男の手の中で燃え、すぐに灰となった。しかし小さな金色は、火にさらされたことで、より輝いた。

それは特製の封蝋だ。朝廷の中でも一品の要人、三公を始めとする重要人物しか扱うことを許されないもので、使用できる者は五本の指に収まる。

男は封蝋をしばらく手の中で弄ぶとそっと握りつぶした。破片は砂ぼこりに混じり、消えてなくなった。

[山海衆頭目] 本来の任務は、朝廷の注意を十分引き付けられる騒ぎを起こすことだけだ。玉門はまだ大いに使いどころがある、本当に滅ぼせば、むしろ失うものの方が多い。

[焦る山海衆メンバー] ……

[山海衆頭目] 撤退するぞ。

[焦る山海衆メンバー] 先生を待たないのですか? 今回は彼女の助けがなければ、我々が事を成すのは難しかったはずです。

[焦る山海衆メンバー] 諦獣……先生が戻ってきた!

[山海衆頭目] ……

[山海衆頭目] お気をつけて……

[山海衆頭目] 玉門にいる誰が、先生にこんなひどい傷を負わせられるというんですか!?

[睚] ある「人」だ。

[睚] 何か情報は得られたか?

[諦獣] (奇怪な長い鳴き声)

[睚] 時間は?

[諦獣] (奇怪な長い鳴き声)

[睚] 二ヶ月?

[睚] ……十分だ。

[睚] もう彼れの位置はわかった。

[山海衆頭目] あなたの目的……あなたは一体……

[山海衆頭目] 先生、我々はここでお別れになるかもしれません。

[睚] 好きにしろ……

[睚] 我の邪魔はするなよ。

[睚] ……

どれだけ長い道であっても終わりはある。

呼び覚まされてから、それの訪れをよりはっきりと感じていた――いわゆる「死」というものを。

あの狩りの中で受けた傷は、元通り癒えることはないのだ。

お前にも目覚めていてほしいものだ。

残りわずかな時、残りわずかな同類よ。

我らは、けりをつけなければならない。

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