aklib_story_この炎が照らす先_FC-ST-2_燃え殻より

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この炎が照らす先_FC-ST-2_燃え殻より

リードのそばにいたターラー人は、そのほとんどが戦い続けることを決めた。そしてその頃、エブラナとウェリントン公爵は高速戦艦の上から眺めていた。ダブリンの大軍はすでに準備ができている。


[フィッシャー] ……「アルモニ」がスパイだということは確認できましたが、彼女が忍ばせていた諜報員は全員援護を受けつつ早々に撤退しました。

[フィッシャー] それから、例の感染者についてはもう一人のドラコで間違いありませんでした。彼女の動向はすでに我々の掌の上にありますので、ご命令いただければ、私の部隊が引き続き追跡します。

[フィッシャー] ……それと、不躾な質問ですが、衝立の向こうで報告をお聴きになられているのは、上官でしょうか? それとも……公爵殿でしょうか?

[カスター公爵] 鋭いのね。今までそれを看破することができたのは……もう何年前に出会った子だったか覚えていないわ。

[カスター公爵] ごめんなさいね。私はただ、この紅茶を楽しみたかっただけなの。あなたもこちらへ来てお座りなさいな。

[フィッシャー] ……

[フィッシャー] いいえ、私は感染者ですし、こちらに立っているだけで十分です。

[カスター公爵] あなた、来る時に街角の小さな劇場は見たかしら?

[フィッシャー] はい、見ました……劇場は営業しておらず、付近には怪しい人物もいませんでした。

[カスター公爵] あれは自称ターラー人の芸術家たちが建てた劇場で、毎晩ターラー文化を基にした作品が上演されているのよ。

[フィッシャー] ……彼らを調査せよということでしょうか?

[カスター公爵] いいえ。私は彼らの存在を素晴らしいと思っているの。

[カスター公爵] あのドラコを捕らえる件なら心配はいらないわ。他の人にやらせるから。あなたがもたらした情報には価値があるわ。あなたのその才能を有効活用するのに適した仕事があるの。

[カスター公爵] あなたには、ウェリントン公爵の行動を監視するために、ある場所へ行ってほしい。

[フィッシャー] ……わかりました。私の腕を買っていただき感謝いたします。

[カスター公爵] そうだ、この間の質問、答えはもう出たかしら?

[負傷した流民] なぁ、トランスポーターさん、手紙はどこまで届けられるんだ? どこでもいいのか?

[負傷した流民] そんじゃ、俺の代わりに手紙を書いてくれねぇか?

[負傷した流民] 二言三言でいいんだ、家族に俺はまだ生きているって伝えたいだけなんだよ……

[リード] さっきの農夫が言っていた通り、ここは定期的にキャラバンが通るみたい。あと三十分もすれば次のが来るはず。

[リード] キャラバンの乗り物に乗せてもらえそうなら……私はそれがベストだと思う。オークグローブ郡に近い地区は、ウェリントン公爵直轄の領地のはずだから、ターラー人への暴行は許されていない。

[リード] 安全のためにもこの機会は逃すわけにはいかない。捜索隊が付近の移動都市からここまで来るのに、急げば一時間もかからないから。

[リード] ……逃げ切ることさえできれば、今後の生活の心配はそこまで必要ないはずだよ。あの人たちの目的は私……キミたちの行方を見失えば、もう追ってはこないはず。

[ヴェン] えっ? ちょっと待って……つまり、バグパイプさんが君のことをダブリンのリーダーだとか言ってたのは、聞き間違いじゃないってことかい?

[リード] ええ。もしキミたちの中にまだダブリンと共に戦いたいっていう人がいるなら、私に付いてきてもいいけど……

[リード] だけど、ダブリンだからといって身の安全は保証できない。この先も今みたいに……多くの人に監視されて、追われ続けるかもしれない。

[負傷した流民] おーい、戻ったぞ。

[負傷した流民] 君に指示された通り喋っといたぜ。村から逃げた奴らと一緒にここでしばらく足を休めてるって話をして、スカハンナ原野にはない地名を適当に吹き込んどいた。

[負傷した流民] ……でもあのトランスポーターはいい人っぽかったぞ。もし彼女が本当にトランスポーターで、俺たちの動きを探りに来た奴じゃないとしたら、彼女に無駄足を踏ませちまうんじゃねぇか?

[リード] ……私は隠れるのには慣れてるけど、トランスポーターのふりをした追跡者もたくさん見てきたから、油断はできないよ。

[負傷した流民] ハァ……わかったよ。今後もこうやって生きていくしかねぇな。

[ターラーの流民] ため息つくなって。急いで手持ちの物資を分けよう。

[ターラーの流民] 怪我人は、無理してリードについてこうとするなよ。お前の代わりに俺たちがターラー人のために戦ってやるからよ。

[負傷した流民] ハハッ、それを言うんだったらさっきの戦闘も、ターラー人のために戦ったことにカウントしてもいいだろ……

[ヴェン] ……リードさん、こっちに来てくれないか。

[ヴェン] 君に言わなければならないことがあるんだ。

[ヴェン] 元々は遺書に書いていたことなんだけど……ハァ……でも結局私は生き延びてしまっただろ?

[リード] うん。それで?

[ヴェン] ……

[ヴェン] ……最初にクワで兵士を殴りつけて、みんなが逃げなきゃいけなくなる原因を作ったのは、私なんだ。

[ヴェン] あの夜、トゥーリ家の娘が兵士に殴られているのに気付いて、壁に立てかけられていたクワを持って近づいていったんだ。

[ヴェン] ごめんよ、震えが酷いだろ? ハァ……これだけ時間が経っても、まだあの光景をよく夢に見るんだ。

[ヴェン] まだ十四歳だったあの子は、甲高い声で泣き叫んだ。私はその悲鳴を聞いてパニックになったよ。

[ヴェン] すごく暗いのに、明かりをつけるのも許されていなかった。だからクワで頭を殴って血が出ても、それがどんなに酷たらしい様子だったとしてもよく見えないだろうと思って、かなり手ひどく……

[ヴェン] ただそれが……結果的に、こんなに多くの人に迷惑をかけることになるとは思わなかったんだ。

[ヴェン] みんなと一緒に逃げたけど、他の人たちが落ち着ける場所を見つけたら一人でどこかに行こうと思っていた。それが私の犯した過ちの償いだから……

[ヴェン] でも結局、足を休める場所まですら辿り着けなかった人がいる。

[リード] ……書類不備の前科の話は嘘だったの?

[ヴェン] ハァ……ごめんよ。

[ヴェン] 最初は指名手配リストに私の名前はなかったんだ。それでみんなにスパイだと疑われるんじゃないかって心配で、わざわざファーガルと一緒に薬屋を襲いに行った結果……君まで巻き込んでしまった。

[リード] それはヴェンのせいじゃないよ。遅かれ早かれ、私は自分の出自に向き合うことになっていたと思うから。

[リード] ……ターラー人たちも、いつかはそれぞれの悲劇に向き合うことになる。

[ヴェン] ……そうだね、そうなんだろうね……ハァ。

[ヴェン] ねぇ、モラン、君は……

[モラン] 何でしょう、ヴェン?

[ヴェン] ……いや、何でもない。ロープを貸して、私が縛るよ。それじゃあ荷物がすぐにほどけてしまう。

[モラン] フフッ、さすがプロですね。

[ヴェン] 君もリードさんと一緒に行くのかい?

[モラン] はい。セルモンが、私はとても力があるので色々と役に立てるはずだと言っていましたから。

[ヴェン] ……でも君は暗い場所ではものが見えないんだから、大変だろ?

[ヴェン] それに、これは戦争なんだよ。今後現れる敵は、おそらく私たちがあの夜見たものよりも多くて、恐ろしいはずだよ。

[ヴェン] 大砲みたいな兵器も使われるんだ。戦争っていうのは、剣で切られて血を流す程度のものじゃない。演劇みたいに倒れた英雄が立ち上がれるレベルじゃないんだ。人は一瞬で、惨めに死ぬんだよ……

[モラン] ……それでも私はこの道を選びたいんです。

[モラン] 自分の人生における数少ない、選択のチャンスですから。自分の生き方を選びたいです。

[リード] キャラバンが来た。

[ヴェン] よし、怪我人を送ってもらえるよう、私が交渉してくるよ。

[ヴェン] ……

[ヴェン] ……

[ヴェン] リードさん……私は逃げてもいいのかな?

[ヴェン] 私はもう、この道から外れてもいいのかな?

準備はすべて整った。

残るは……私の妹か。彼女は未だに外をうろついているが、いずれ正しい選択をするだろう。

高速戦艦「ガストレル」甲板

[エブラナ] かつて最も巨大であった移動都市のフレームに、ヴィクトリアの軍事技術の結晶を搭載した傑作だ。この高速戦艦に搭乗できることを多くの者が誇りに思うべきだな。

[エブラナ] テラの大地全体に目を向けても、この素晴らしさに比肩するような戦争兵器はないだろう。

[ウェリントン公爵] そうでなければ、ドラコの配下であった伝説の将校の名を冠するに相応しくありませんからね。

[エブラナ] この船の動向をうかがって、そこからあなたの立ち位置を探ろうとしている者も多くいたが……

[エブラナ] 成果を得た者はいないだろう。まして、七年にも及んだ巡航が突如終わりを告げ、今日が接岸の日になることを予測できた者などはおそらく皆無だ。

[ウェリントン公爵] 我々が方向を転じた後、どれほどのトランスポーターが報告の途についたのでしょうな?

[ヴィクトリア士官] カスター公爵を除く各公爵が監視態勢を続けておりますが、彼らの支配下にあるいかなる軍隊も、介入には間に合いません。

[ヴィクトリア士官] オークグローブ郡はすでに走行を止め、接続準備が整っています。本艦は、この七年で初めて移動都市に接近することとなりますが、停泊中、過度な資源補給や機械メンテナンスは必要ありません。

[ヴィクトリア士官] 伯爵は、その時になれば自ら港まで出迎えに来られると仰せになりました。

[ウェリントン公爵] 優柔不断なアスランの下僕どもは、この船がオークグローブ郡へと直行するのを知ってようやく、あの都市が一体誰のものであるかに気付くでしょう。

[エブラナ] 連中は何に対しても無知だ。彼の地に今再び上がらんとしている炎の色すら――知る由もない。

[エブラナ] ダブリンが──不平等からの脱却を渇望するターラー人たちが、すでにヴィクトリア各地から駆けつけている。

[エブラナ] 我が智将……彼女はよくやってくれたよ。

[ウェリントン公爵] ふむ。我が都市は、指定の位置に留まっているか?

[ヴィクトリア士官] はい。地形と安全を考慮に入れた都市航路上において、現在最も廃都市遺跡に近い位置に逗留しております。

[ウェリントン公爵] よろしい。――エブラナ殿下、ここへ来る途中、あなたはあの遺跡を訪れておられましたが、いかがでしたかな?

[エブラナ] ああ、あれで充分だ。ターラー文化の復興者どもが、ゲル王の城にどれだけ想像を膨らまそうと、結局は朽ちた廃墟にすぎない。

[エブラナ] ロマンチストどもが都市に入った時、野原の朝霧越しにあの方角を見て、かつてその丘にそびえ立っていた王城は、既に天災によって破壊されたのだと思い知らせることができればそれでいい。

[ウェリントン公爵] ターラー王朝が破滅し、ドラコ一族が逃げ出した後、アスランたちはあの石の城を放置し、その後は天災で崩落して、今となってはほとんどのターラー人に忘れ去られたと聞き及んでおります。

[エブラナ] あの古い王朝の残滓など……そもそもがくだらぬものでしかない。

[エブラナ] ヴィクトリアの君主はゲル王という称号を与えたが、そんなものは臣下を美化した言葉にすぎない。王冠が残っていれば、私はそれを熔かし、玉座が残っていれば、私はそれを焼いて灰にしただろう。

[エブラナ] しかし、あそこにはそんなものさえも残っていなかった。

[ウェリントン公爵] だからこそあの若きワーウィックは、ゲル王の伝説からターラーの歴史を読み取ろうとしておりましたな。それは決して悪いことではありません。

[エブラナ] あの「懐古主義者」――「北方戦線のワーウィック」のことか? ……あぁ、あなたは彼を知っているのか。

[ウェリントン公爵] ええ。かつて彼のパーティーに使者を送ったことがあります。この戦艦の巡航はまさにその時に始まりました。

[エブラナ] あなたは常にはるか未来まで見通しているな。

[ウェリントン公爵] いえ、こんなものははるか未来のうちには入りませんよ。

[ウェリントン公爵] それで、エブラナ殿下……オークグローブ郡もご覧になられるおつもりですか?

[エブラナ] もちろんだ。あの大火の後、どのような姿に再建されたのか興味がある。

[エブラナ] 何せ、私のかつての故郷なのだからな。

私は姉さんの槍を握って、廊下でしばらく待っていた。

屋敷の誰もが黙ってうつむき、忙しそうな振りをし、私の目を見るとすかさず視線をそらした。

先生の体調はずっと悪く、吹雪の夜にパーティーから帰った後は、自室から一歩も出なかった。医師のダリーは彼にスイートワインを用意したが、使い終えたグラスを回収しに来る者はいなかった。

扉の隙間から聴こえるのは薪が爆ぜる小さな音だけ。雪夜の暖炉の火は暖かいはずなのに、この時静かに燃えていた炎の音は私の歯の根を震えさせた。

私はそれでも意を決して扉を開けた。

[ワーウィック伯爵] ……君がすべての者に私を裏切るように根回しをしていたなら……私はこのスイートワインを飲むしかなかろう?

[エブラナ] あなたの使用人たちが反旗を翻して、私にすがった原因がなんであるのか……自分の過ちについて、あなたは真っ先に尋ねるだろうと思っていたのだが。

[ワーウィック伯爵] ゴホゴホッ……エブラナよ、そんなことは重要ではない……

[ワーウィック伯爵] 重要なのは、君は彼らに、ずっと君を信じさせ続けることができるかということだ。

[エブラナ] あぁ、もちろんだ。

[エブラナ] あなたは、なぜ私が彼らに味方したかすら訊かないのだな。

[ワーウィック伯爵] ゴホッ……君は、私の死後、この都市で何が起こるかわかるか?

[エブラナ] 貴族間のパワーバランスは失われ、議会においてフィリップ伯爵の発言に反対できる者はいなくなる。だがスタッフォード公爵に重用されるために、あの二人の若き男爵は陰で暗躍するだろう。

[エブラナ] 同時に、立場を取り返したばかりのターラー人は、彼らのリーダーと庇護者を失うだろう。

[エブラナ] 彼らは過酷な法律と貴族の気まぐれの間でかき乱され、蹂躙されることになる……徹底的にな。

[エブラナ] だが、たとえあなたが死なずとも、遅かれ早かれ起きることだ。

[エブラナ] 私の言っていることは間違っているか、先生?

[ワーウィック伯爵] フフッ……ではその時、君はどうするつもりなのだ?

[エブラナ] 私は……手を伸ばし、彼らを灰燼の中から引っ張り上げる。

[ラフシニー] ……

先生の血の気のない顔には、なぜか安堵の笑みが浮かんでいた。

[ワーウィック伯爵] 貪欲で、無尽蔵の野心を秘めたドラコ……私が半生をかけて見つけたものは、間違っていなかった……フゥ……

彼は眼鏡を外し、苦しそうにゆっくりと顔を動かすと、大雪の降る窓の外を見やった。

十年前の冬の夜、伝奇小説を読み終えて、背表紙の金箔のターラー文字を指先でなぞった時も、彼は今と同様、懐かしそうに何かを待ち望む眼差しをしていた。

[ワーウィック伯爵] 私には……ターラーの新時代が……目前まで来ているのが見える。

[ワーウィック伯爵] しかし……

[ワーウィック伯爵] ラフシニー……

[ワーウィック伯爵] まだ……

[ワーウィック伯爵] 君がいる……

私は微動だにせず部屋の入口に立っていた。正面に見えるガラス窓に──そこに映し出されていたのは、冷たい炎に照らされた私の顔だ。

これほど恐怖を感じているのに、なぜかその表情は、部屋の奥にある憐憫の顔と全く同じものだった。

……ラフシニー、君は誰が教えた道を歩く?

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