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この炎が照らす先_FC-7_生命の煌めき_戦闘前
ターラー人の呼び声がリードの信念を確固たるものとし、皆で協力し合って厳しい戦いを切り抜けるのだった。
[ワーウィック伯爵] 若き詩人よ、私では君に答えを与えることはできない。その役目は後世の者に託そうではないか!
[ワーウィック伯爵] ちょうど、今夜はもう一つ皆様にお伝えしなければならない重要なことがある。
[ワーウィック伯爵] ──恐らくこれが我ら「ターラー人の家」にとって最後の集まりとなるだろう。
[ユーモラスな貴族] これはこれは、伯爵、何をおっしゃいますの? 私たちの計画は、まだ始まったばかりではありませんか?
[ワーウィック伯爵] 心配することはない。ターラー人がなすべき自己の探究は、確かにまだ始まったばかり。役目を終えるのは、私個人が主催する小さな集まりだけだ。
[ワーウィック伯爵] ──そうだろう、私の忠実な従者よ?
[ワーウィック伯爵] ゴホッ、ゴホゴホッ……
[伯爵の従者] ……申し訳ございません、旦那様。私はただの使用人であり、そのようなことについてはわかりかねます。
[伯爵の従者] 外は大雪ですし、旦那様も体調が芳しくないご様子……お車なら、いつでもご用意いたしますが。
[ワーウィック伯爵] 必要ない。
[ワーウィック伯爵] ウィリアムズ君、この吹雪の中を少しだけ私と歩いてくれるかね?
[質素な服装の詩人] ……光栄の至りです、伯爵。私が身を寄せている旅館にはそもそも薪すらないので、このような吹雪など大したことはございません。
[ワーウィック伯爵] 本当か? いや……そうだったな、ターラー人居住区の冬季税条例を議会が施行するのを止めなかったのは私だ。
[ワーウィック伯爵] このような寒い気候では、火が不可欠だというのに。
[ワーウィック伯爵] 行こう。君の演劇作品についてもっと深く語り合おうではないか。それと、君が田舎で蒐集した物語や、ターラーの本来あるべき姿について。
「死が我々をすべての伝説と結びつけてくれますように。」
[セルモン] 静かにしろ……すげぇ重たい足音が聞こえねぇか? 手強い兵士に違いねぇ。
[セルモン] 行くぞ、反対側に隠れるんだ!
[モラン] 焚き火がまだ燃えていますね……一本抜いて松明代わりしてもよいでしょうか?
[セルモン] いいぜ、後でついてってやる。
[セルモン] おい──リード! 聞こえるか!
[ターラーの流民] リード──
[セルモン] 返事がねぇ……こっちだ、こっちに隠れろ! しばらくしたら二手に分かれて探すぞ!
[セルモン] リードが見つからなくても、バグパイプとチェンを見つけるぞ!
[特別行動隊兵士] ……
[セルモン] ……チッ。
[特別行動隊兵士] 貴様ら軍の作戦の邪魔をする気か?
[セルモン] だったらどうした? 見つかったんならやるだけだ。ヴィクトリアの軍人を相手にすんのはこれが初めてってわけじゃねぇ。
「リード」。
彼女を呼ぶ声が、何度も何度も煙と霧を貫いて届く。
リードは自分の進むべき方向がわかっていた。
[リード] みんなはこの争いに巻き込まれるべきじゃない。助けなきゃ──
[リード] ──うっ!
[「将校」] 惜しいな、少々狙いがずれたか。
[アルモニ] あら? この件をリーダー以外に報告した覚えはないのだけど……
[「将校」] まさかダブリン内部に情報網を張り巡らせているのは自分一人だけだとでも思っていたのか?
[「将校」] 君はあの傀儡を連れ戻そうとしているが、目下それを実行するのに相応しい者たちは、私の部隊をおいて他にいないはずだが。
[アルモニ] ええ、それについてはほんとに感謝するけど……あなたの目的は、私の行動の監視? それとも自らの手で彼女を排除すること?
[「将校」] もし彼女が、これ以上影としての身分に甘んじることを拒むというのであれば、私の剣は君のアーツよりも速く動くだろう。
[「将校」] 主のいないヴィクトリアで、各々が腹を探り合う様子は見飽きた。このような茶番をダブリンの中でまで演じ続けさせる必要はない。
[リード] キミが私を始末しに来たということは……ダブリンはもう、準備が完全に整ったの?
[「将校」] ああ。君は残された唯一の不安要素だ。
[「将校」] 傀儡らしく考えることを少なからず学んで、広い視座を持てるようになったと思っていたが、君の愚かな善良さには心底失望したよ。
[「将校」] もし君が初めから亡霊部隊の行動原則に従って、すべての目撃者を一掃していれば、度重なる失敗など起こるはずもなく、ここまでの局面に発展することもなかった。
[リード] ……
[「将校」] これで傷は二ヶ所だ。ドラコの身体機能に影響を与えるには不十分だが、たとえ他のダブリン兵がいなくとも、これは一方的な戦闘にしかなり得ないことは理解できただろう。
[「将校」] 君に、リーダーへ反旗を翻す資格があるとは到底思えん。
[ターラーの流民] あ、ああ──
[チェン] (……ターラーの民間人たちはこの方角か。バグパイプとリードも呼び声が聞こえれば、きっとこっちへ駆けつけるはず。)
[チェン] 耐えるんだ! 今行く!
[ターラーの流民] チェンさん? よかった、ようやく返事があった……
[チェン] ……速い! どこから攻撃してきた?
[???] チェン・フェイゼ……「チェン警司」。
[チェン] ──
チェンは声のする方に向かって剣を突き出したが、刃は濃い霧の中に吸い込まれただけだった。
彼女はわずかに寒気を感じた。
[???] あなたは、ヴィクトリア軍に手を出すことが、ウェイ・イェンウ様にどのような影響を及ぼすか考えたことはありますか?
[チェン] ……私は自分のやりたいようにやるだけだ、それにあの男と何の関係がある?
[チェン] 私はただ、紛争に巻き込まれた罪なき者たちを救うために行動しているだけだ。お前は外交的な観点から私を諌めようとしているが、まず自分の胸に手を当てて疾しいことがないか考えてみるんだな。
[???] あなたは事の複雑さから目を逸らしたいだけかもしれませんが……一つ熟考の後にご回答いただきたい質問がございます。
[???] あなたはなぜヴィクトリアにいらしたのですか?
[???] あるいは、あなたは誰のためにヴィクトリアにいらしたのかと聞くべきでしょうか?
[チェン] ……
[チェン] 私の出身、私の一族、あるいは私の個人的感情……どれも私たちの目の前の紛争とは無関係だ。
[チェン] お前が何をどう疑おうとも、私は今、ただこの手にある剣でもって答えるだけだ。
[チェン] 今すぐ──
[チェン] そこをどけ。
[バグパイプ] 見つけた、フィッシャーさん!
[フィッシャー] 平和的な話し合いに来たわけではないようですね。
[フィッシャー] ダブリンの部隊は目の前にいます。貴方の敵が誰なのかは一目瞭然のはずですが。
[バグパイプ] 悪いけど、今のうちの任務は救出だからね……部隊でうちらを包囲して、アーツで目くらませまでした人を味方とは思えないよ。この霧を払わなきゃうちらが突破できないのも事実だし。
[フィッシャー] では私を止めることですね。
[フィッシャー] 彼女を倒しなさい、時間を無駄にしないように。
[特別行動隊兵士] はっ!
[バグパイプ] ふぅ……弾薬があればよかったのに。やっぱり複数人を相手にする状況はしち面倒くさいね。
[フィッシャー] ……第二テンペスト特攻隊隊員、フィオナ・ヤング。コードネームは「バグパイプ」。
[フィッシャー] ヒロック郡事件に関する貴方の報告書はすべて拝見致しましたが、貴方の行動に対し、私は心から敬意の念を覚えました。
[フィッシャー] もし可能であれば、我々は戦うことではなく、手を取り合う選択をすべきです。
[フィッシャー] ヒロック郡事件の真相を追っておられるのであれば、我々はここでダブリン兵を捕虜にした後、正規の手続きに則って取り調べをし、貴方も欲する情報を得られるでしょう。
[バグパイプ] いや、いいよ。うちは他人の嘘を見破るのは得意じゃないし、尋問もそんなに上手くできないしね。
[フィッシャー] こちらの誠意を示すために、情報を一つお教えしましょう。
[フィッシャー] 赤鉄親衛隊。
[フィッシャー] 彼らが何者かご存知でしょう。そして思い出してみてください──今夜ここに現れたダブリン兵の戦い方を。
[バグパイプ] ……
[バグパイプ] ん? 今一瞬視界が晴れたような気が……おめーさん、このアーツを維持するのはかなり負荷が大きいんじゃない?
[フィッシャー] この計画に影響を及ぼすほどではありません。もちろん、いかなる者にも私の計画を破壊させるつもりはありませんが。
[フィッシャー] これは我々諜報員の戦争だと考えていただいて構いません……本当の戦争の勃発を防ぎ、幾千万の人々の平穏な暮らしを守るために、私は一歩も踏み違えることを許されないのです。
[バグパイプ] 任務の出来に良し悪しはあっても、それ自体が正しいか正しくないかの判断は難しいよ。
[フィッシャー] ……石?
[バグパイプ] あれっ、ヴェンさん! おめーさんどうして一人で来たの? ここは危険だべ!
[ヴェン] わ、私もわからないよ。霧が濃くて迷ってしまったみたいなんだ、アハハ……
[バグパイプ] ほら、早く逃げて! ここは本当に危険だから!
[ヴェン] ハァ……それはわかってるよ。でも君を助けないと。もっと危険な場所で戦ってる人だっているんだし……
[ヴェン] だ、大丈夫だ。私のことなら心配しないでくれ。私だってクワを使えば敵をやっつけられる。
[特別行動隊兵士] ……貴様ら、そんな拾いものの武器で俺を止めるつもりか?
[セルモン] ハッ、アンタがアタシらのリーダーを捕らえようとしてるんなら、止めねぇわけにゃいかねぇだろ?
[特別行動隊兵士] リーダー? 貴様らやはり──
[セルモン] やはりグルだったかって? そうさ、でなきゃあいつを助けに来るわきゃねぇだろうが。
[セルモン] あいつは強ぇし、逃げる時にゃアタシらを先導することができる。もうあいつなしじゃやってけねぇんだ。
[特別行動隊兵士] ……背後から不意打ちだと?
[セルモン] よくやった、モラン!
[モラン] ダメです、このボロボロの刀では防具を貫けません。だったら……
[セルモン] やめとけ、そいつに火ぃ付けようったって無理だぜ。その薪には油が塗ってねぇからすぐに消えちまう……
[特別行動隊兵士] っ──くそっ!
[モラン] ──
彼女の攻撃は兵士の腕に火傷を負わせただけだった。彼女の目に、怒りと苦痛の混ざった表情の兵士が軍刀を振りかぶる姿が映った。
軍刀が彼女の手を掠めた。持っていた薪は叩き切られて泥に落ち、煙を上げた後、火はゆっくりと消えた。
[セルモン] ハッ……十分だ。そいつはうまく刀を振れなくなってやがる。
[セルモン] 来いよ、アンタの相手はアタシだ。
[セルモン] さて……その刀、いつまで握ってられるだろうな? 無理しなくていいんだぜ。
[特別行動隊兵士] 笑わせるな。攻撃を防ぐ以外、貴様に何ができる?
[モラン] ……セルモン、私のことは置いていってください。
[モラン] 聴こえませんか? 数人がこちらへ来る足音がします。
[セルモン] ……
[セルモン] ……ああ。
[ダブリン兵士] ……ターラー人か?
[セルモン] アタシらか? そうだ。
[セルモン] だがアタシのこの服は死んだ人から勝手に貰ったもんだ、アタシはアンタらの仲間じゃねぇ……
[ダブリン兵士] 行け、ターラー人。安全な場所へ早く。
[リード] ……私は、あの人と敵対するなんて言った覚えはない。
[リード] あの人が犯した過ちを、私が代わりに正したいだけ。
[「将校」] 君は戦争を前にして、道徳などを追い求めるのか?
[「将校」] なら臆病者と偽善者を演じていればいい。ヒロック郡の時のように脅迫され、ペニンシュラ郡の時のように裏切られるがいい。
白刃が夜風を切り裂く。金属のぶつかる鋭い音と将校の責め立てる声が、一体となってリードを突き刺す。
しかし彼女はそれを聞いてはいなかった。彼女の耳には、風の音に混じる、より耳障りな泣き叫ぶ声が聞こえていた。
この奪い合いの中で、無防備なターラー人たちが血を流し、何人も倒れているのを彼女は知っていた。
彼女は、泣き叫ぶ一人一人の名を暗誦することができた。数時間前には彼らの声が故郷の民謡を歌うのを聴いていた。
[リード] ……あの人にはただ、この泣き声が聞こえないだけ。
[リード] キミは、自分たちが救おうとしているターラー人とは誰なのかを、自らに問いかけたことはある?
[チェン] ……火?
[チェン] キミたち……リードのアーツに巻き込まれないよう気を付けろ!
[ターラーの流民] えっ?
[チェン] ……彼女は今、かなり熱くなっている。
[チェン] だがこの炎はまるで、彼女自身のものではないかのようだ。
[アルモニ] ドラコの炎は、とっても綺麗でしょ?
[フィッシャー] ……これも予想の範囲内です、アルモニさん。
[アルモニ] でもここにもう一人、炎のパフォーマンスに魂を奪われた可哀想な人がいるわ。
[バグパイプ] ……
[アルモニ] 私もあなたとお知り合いになりたいところだけど、その前にあなたは自分のお友達のことをもっとよく知るべきだったわね。
[アルモニ] でも、これだけのヴィクトリア人の部隊を頑張って相手してくれたことには感謝するわ。彼のアーツがここまで弱まれば、後続の追撃の援護には不十分だもの。
[アルモニ] ……まるでヒロック郡の時みたい。あなたたちが勇敢であればあるほど、私は同情しちゃうわ。
[アルモニ] ここでの戦闘はもうおしまいよ。行くといいわ、ダブリンはあなたたちに刃を向けないから……なんなら護送してあげたって構わないわ。
[バグパイプ] ……必要ない。
[ヴェン] か、彼女は何を言ってるんだ? バグパイプさんの知り合い? 戦うつもりじゃ……ないんだよね?
[バグパイプ] うん……行こう。
[バグパイプ] リードの所に。
[フィッシャー] ……随分と彼女に良くしてあげるのですね。
[アルモニ] もしそばにあのターラー人がいなければ、もちろん口封じを選択していたわ。
[アルモニ] だけどあの軍人さんが、私たちのドラコに、ダブリン以外に居場所がないって気付かせてくれればそれはそれでラッキーでしょ。
[フィッシャー] ……今、貴方がたの武装部隊はこちらへ集中しているようですね。
[アルモニ] ええ。あの可哀想な子は私たちに追われて、北西へと逃げたわ。
[フィッシャー] フッ、あちらはウェリントン公爵領の中心部です。
[アルモニ] あそこに入れば、彼女の行動すべてはダブリンの支配下に置かれることになる。
[アルモニ] そして当面の急務は……知り過ぎた人たちのお掃除をすることになるわね
[アルモニ] あなたが生きて持ち帰れる情報なんて、あなたの死そのものが語る情報と大差ないのよ。
[モラン] セルモン、もう少しゆっくり歩いてください……私たちは今どこにいるのですか?
[セルモン] 多分テントから森の中へ二百メートルくらい走った所だな。ハッ、あの兵士はアタシらがやったし、今はもう誰も追って来てねぇぜ。
[セルモン] 痛ッ……安全な場所に着いたら、傷口の手当てをするか。それから他の奴らを呼んで、アンタを迎えに来てもらう。
[セルモン] そもそもヴェンみてぇに戦いに向いてねぇ奴は、戦場で時間を無駄にするべきじゃねぇ。アタシみたいに戦える奴が行くべきなのさ。
[セルモン] まったく……アンタの方があいつよりずっと戦える。
[モラン] ……セルモン、後ろから大きな音が聞こえます。何が起きているのでしょうか?
[モラン] 私には……光が微かに見えるだけです。
[セルモン] ハッ、よく見えねぇのはマジもったいねぇぜ。あれはきっとリードがアーツで起こした火だ。
[モラン] 壮大な眺めですか?
[セルモン] ああ。
[セルモン] ま、アタシはあいつの実力をとっくに知ってたけどな。
[セルモン] しかし……荒野の夜は、こんなに寒かったのか……?
……もしアンタが火を灯してくれれば、少しは温かくて明るくなるだろうか?
アンタがなぜダブリンに失望し、彼らがなぜアンタに失望してるのかは知らねぇ。だけど、ターラー人たちは生きたいと思ってるし、生きるべきだ。そんなのは決まりきった道理だ、嘘のはずがねぇ。
アンタが去る前に、アタシらがダブリンの元へ向かうことについてアンタときっちり話し合わなくちゃならねぇ。アンタはダブリンの行く先を知ってる、そうだろ?
モラン、先へ進むぞ。怖がらなくてもいい、その方が安全だ。あの兵士どもが撤退するなら、こんな泥まみれの場所は目指さねぇはずだからな。
それに、もうすぐ夜が明ける頃だ。
彼女たちの歩みが緩やかになった。モランの手も、もうそれほど力強くは引かれていない。
[モラン] セルモン、安全な場所に着いたのですか?
[モラン] 悪い知らせだろうと怖れはしません……教えてください。
彼女たちは前へと進む。風の音、遠くからの爆発音と叫び声の中、モランは必死にセルモンの声を聞き分けようとしていた。
その瞬間までに予兆はあったはずだ。セルモンはそこで足を止め、何か言うべきだった。あるいはせめて、ターラー人の運命に対して軽蔑の笑い声を上げるべきだった。
しかしモランが感じ取れたのは、足を一歩踏み出した瞬間、自分を前へと引くその手が、不意に垂れ落ちたことだけ。
その場にひざまずいた彼女は、自分が触れているものが、粘り気のある血なのか、湿った泥なのかわからなかった。
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