aklib_story_シラクザーノ_IS-2_誉れある者_戦闘前

ページ名:aklib_story_シラクザーノ_IS-2_誉れある者_戦闘前

このページでは、ストーリー上のネタバレを扱っています。

各ストーリー情報を検索で探せるように作成したページなので、理解した上でご利用ください。

著作権者からの削除要請があった場合、このページは速やかに削除されます。

シラクザーノ_IS-2_誉れある者_戦闘前

ラップランドがテキサスを訪ねてきた。そして、あの爆発が起きたあと、誰もがそれぞれの決断を迫られることとなる。


[ソラ] ――テキサス……

[ソラ] サルヴァトーレ・テキサス……あなたにどう向き合うべきなの? あなたを信じるべきなのかしら?

[ソラ] あなたはシラクーザ人で……骨の髄から暴力と野心に染まっているとみんなは言うわ。あなたとそのファミリーが、この地を……クルビアを平らげてしまうに違いない、と……

[ソラ] それでも、あなたはこんなにも優雅で上品で……私に見せるその顔こそが、本当のあなたなのかしら?

[ソラ] だけど私は、あなたが拳を振るう姿も見たわ。あなたの指の間から血が流れ、殴られた相手は悪態の一つもつけなくなっていた……

[ソラ] サルヴァトーレ……どちらが本当のあなたなの?

[ソラ] いつかはあなたも、その二つの顔は相容れないと気付く日が来るのかしら? あるいはいつか、あなたの後ろに続く血痕があなた自身へと追いつく日が来るのかしら?

[ソラ] その時が来たら、あなたはどうするの?

[ソラ] たとえそうなったとしても……私のそばにいてくれる?

[ベルナルド] 素晴らしい演技だったよ、ソラ君。

[ベルナルド] 君にはまた驚かされてしまったな。

[ソラ] 実は、この劇団のベンさんという方のお陰なんです。あの人に指導していただかなければ、こんなに早く調整することはできませんでしたから。

[ベルナルド] ベン……?

[ベルナルド] このミラノ劇場にそんな名前のスタッフは居なかったと思うが。

[ソラ] えっ?

[ソラ] オペラにお詳しくて、指導もしっかりしてくださったので、劇団の偉い人だとばかり思ってました。

[ベルナルド] ……覚えにないな。だが、オペラを嗜む人間は大勢いるものだし、恐らくはその一人だろう。

[ベルナルド] それより、君の履歴書を見た時に気になったことがあるんだが、答えてもらっても構わんかね?

[ソラ] はい、もちろん。

[ベルナルド] 君の龍門でのキャリアはいわゆるアイドル路線だろう。

[ベルナルド] 我々と龍門の協同ビジネスは近年ますます盛んになってきているが……それぞれの背景の違いから、ショービジネスとしての両者は競争状態になりつつもある。

[ベルナルド] そうした状況下でMSRから送られてきたオーディション映像は、君がオペラの実力をも秘めていることを証明した。

[ベルナルド] そしてそれは、龍門以外にも活躍の場を広げようとする君の志を示してもいる……

[ベルナルド] 君はなぜ、そこまで努力するのだね?

[ソラ] ……理由は、色々あるんです。

[ソラ] でも、最初はそこまで複雑な考えなんてなくて……ただ、ある人に追いつきたい一心でした。

[ベルナルド] ほう?

[ソラ] ふふっ、まるでこの台本に書かれてるようなお話なんですけどね。

[ソラ] あの人が時々、空を見たり、扉の外を見たり、誰もいない通りを見たりする時……

[ソラ] その目はなんだか、いつかあの人があたしたちのそばから……龍門から離れていってしまいそうに思わせるんです。

[ソラ] ――「その時が来たら、あなたはどうするの?」

[テキサス] ……

[ラップランド] そうせかせかしないでよ。ボクたちがシラクーザで再会するなんて奇跡的だと思わない?

[テキサス] 今は取り込み中だ。

[ラップランド] 奇遇だね、ボクもさ。

[ラップランド] ひょっとして、あの人を守るのがキミのお仕事?

[ベッローネの用心棒] お前、何を……

[ベッローネの用心棒] ひっ……!

[ラップランド] 空気読めない人だねえ。キミもそう思うでしょ? テキサス。

[テキサス] こちらは任せて、お前たちは対象の保護に回れ。

[ベッローネの用心棒] は、はい!

[ラップランド] それで、ミルフィーユはいるの? いらないの?

[テキサス] ……一つもらおうか。

[ラップランド] アハハッ、そう来なくちゃ!

[ラップランド] テキサス――ああ、シラクーザではチェリーニアって呼んだほうがいいのかな?

[テキサス] やめろ。

[ラップランド] わかったよ。正直ボクもテキサスのほうが呼び慣れてるしね。とはいえ、慣れって怖いと思わない?

[ラップランド] 龍門でのんびり暮らして、ロドスでたまに会ったりして、挙げ句一緒に任務に出ることだってあるし……

[ラップランド] ボクの剣はもう錆びついちゃいそうだよ。

[ラップランド] だから馴染み深いこの雨には、やっぱり元気が出てくるね。

[テキサス] 剣が錆びるのはその雨に晒されてこそだろう。

[ラップランド] だとしても、シラクーザの雨は血を洗い流すためのものなんだよ。

[ラップランド] それで錆びる心配なんかするのは、これ見よがしに剣をぶら下げておきながらそれを使う気がまるでない――キミみたいな人間くらいのものさ。

[テキサス] ……

[テキサス] なぜここにいる?

[ラップランド] キミがいるからに決まってるでしょ?

[ラップランド] ねえ、テキサス。シラクーザに戻るのはいつぶりだっけ?

[テキサス] もうじき十年ほどになるはずだ。

[ラップランド] 正解は七年と五ヶ月だよ。

[ラップランド] テキサスファミリーの気高き末裔は、もう七年以上シラクーザの地に足を踏み入れてこなかったのさ。

[ラップランド] ボクは今でも覚えてるんだ。キミが人質としてシラクーザから送られてきて、しばらくサルッツォの屋敷で過ごしていた時のこと……

[ラップランド] 短い間だったけど、一緒に楽しく暮らした時間は忘れられないね。

[テキサス] あれを「暮らし」と呼べるのなら、確かにそうかもな。

[ラップランド] クルビア人でありながら、シラクーザ中のマフィアたちから認められていたキミが――

[ラップランド] 最後にはあんな目に遭うなんて、本当に心が痛んだよ。

[ラップランド] まあボクとしては、今度はここに残って色々見てみたほうがいいと思うけど、どうだい?

[テキサス] 事が終われば帰る。

[ラップランド] フフッ、「帰る」ね。

[ラップランド] そういえばずっと気になってたんだけど……

[ラップランド] キミはテキサスを裏切って、自分からはぐれ狼になったんだよね?

[ラップランド] テキサスがクルビアに残したすべてを捨てておきながら、どうして龍門では今も「テキサス」を名乗っているのかな?

[テキサス] ……

[テキサス] お前には関係のないことだ。

[テキサス] ――ラップランド。

[テキサス] 私はシラクーザに留まるつもりなどない。

[テキサス] 待ち人のいる龍門へ帰る。

[ラップランド] ……

[ラップランド] ふうん。だったら、手伝ってあげるよ。

[テキサス] 手伝いなどいらない。

[ラップランド] まさか一人で行動するつもり?

[ラップランド] 龍門で見つけたお仲間は? それに、他人を頼ることくらいロドスで学んできたんじゃないの?

[テキサス] シラクーザは観光向きの場所ではないからな。

[テキサス] ロドスがここでの支部設立を検討していたとしたら、再考を勧めたいと思うくらいだ。

[テキサス] 何よりお前は――お前だけは信用できない。

[ラップランド] ああ、信用ね。

[ラップランド] でも、キミもボクの家族のことくらい知ってるでしょ?

[テキサス] サルッツォファミリーか。

[ラップランド] そう! 不用意な賭けはしないサルッツォだよ。

[ラップランド] ボクを信用する必要なんてないけど、サルッツォの力は必要になるんじゃない?

[ラップランド] それとも、本気でおとなしくベッローネの飼い犬なんかになるつもりなの?

[テキサス] ……

突然、大きな爆発音がそう遠くない場所から聞こえてきた。その火はカラチをやすやすと包み込んでいく。

[テキサス] 車に爆弾が……!?

[ラップランド] へえ? 随分古典的だね。

[ベッローネの用心棒] か、カラチ部長!

[ベッローネの用心棒] パーティー会場が襲撃された! 付近の人員は応援に来てくれ!

[テキサス] チッ!

[ラップランド] 二ヶ所で一度に事を起こすなんて、大胆だね!

[ラップランド] こんな真似するのは誰だと思う?

[テキサス] 出てこい。

[テキサス] ……やはりか。

どうすれば龍門に戻れるのか?

この街へと足を踏み入れて以来、テキサスはずっとそればかり考えていた。

ザーロとの約束通りなら、当然ながらベッローネの指示に従うのが一番簡単な方法だろう。

しかし、この時すでに、テキサスは勘付いていた。

――この都市で起きていることは、そう簡単ではないことに。

[テキサス] 誰の差し金だ?

[殺し屋] 答える義理はない。

[テキサス] ……

だが、彼女は心配などしていない。

シラクーザを知る彼女には、こうした事態に終わりなどないこともわかっていた。

その代わりにふと、彼女は自分でも予想だにしなかったような虚しさを感じた。

それは戦いの中で背を預けられる者のない虚しさ。

そして、戦いを終えたあとに怪我はないかを聞いてくれる者、あるいは無理やりパーティーに引っ張っていこうとする者のない虚しさだ。

彼女にとって当たり前になっていたそれが、ここにはない。

龍門をほんの少し離れただけで、その龍門でのすべてがひどく懐かしく感じることに、彼女は気付いた。

「退け。」

「私の家路を邪魔するな。」

[ラップランド] でもね、テキサス。

[ラップランド] 帰りたいと願えば願うほど、繋がりを断ち切りたいと思えば思うほど……

[ラップランド] キミはただ深く、深く泥沼へ沈んでいくだけなのさ。

[ラップランド] 全身が泥にまみれていると気付いた時――キミはどんな顔をするのかな?

[洗車工] また来たのか、裁判官さん。

[ラヴィニア] ダンブラウンさん、よかった。あなたが居てくれてラッキーだわ。

[洗車工] あんたの車、先週洗ったばっかりだろ。

[ラヴィニア] 仕方ないのよ。人に恨まれる仕事をしてるしね。

[洗車工] ま、安心しな。俺がピカピカにしてやるからさ。

[洗車工] その間は適当にぶらついてきたらどうだ?

[ラヴィニア] ううん、大丈夫。ここで待ってるわ。

[洗車工] ……

[ラヴィニア] ……

[洗車工] 裁判官ってのは人気者だと聞いてたんだがなあ。

[洗車工] 高級車に乗ったり、テレビに出たりして……市長ですら敬うような仕事だって。

[洗車工] なんたって、ミズ・シチリアの意志を体現してるわけだしさ。

[洗車工] ラヴィニアさんみたいに、毎日車にペンキをぶちまけられる裁判官なんて珍しいんじゃねえのか?

[ラヴィニア] そうかもね。

[ラヴィニア] でも私は、高級車に乗ったりテレビに出たりするよりも、このお店で会員カードを作れたらそっちのほうが嬉しいわ。

[洗車工] 悪いが、うちみたいな小さい店じゃそんな上等なサービスやってないよ。

[ラヴィニア] ……そういえば、前よりも顔色が良くなったわね。あのマフィアはもうちょっかい出してきてないの?

[洗車工] おう。あんたのお陰でな。

[洗車工] 昨日街で奴らに出くわした時なんざ、向こうが勝手に逃げてったくらいだよ。

[洗車工] しかし、シラクーザにあんたみたく公正な裁判官がいるとはな。

[ラヴィニア] 公正、ね……あの人たちはただ私の後ろについてる人を怖がってるだけよ。

[洗車工] だってあんた、ベッローネの後ろ盾を受けてたって、ベッローネのマフィアもきちんと裁くだろ。

[洗車工] ミズ・シチリアこそがシラクーザの公正そのものだってことは確かだが……あのお方の意志を代弁する裁判官の中に、本気で公正さを守ろうとしてる奴なんてどんだけいるかわかったもんじゃねえ。

[洗車工] だけどあんたは、俺からすりゃ公正の化身みたいなもんさ。

[ラヴィニア] あんまり素直には喜べないわね。

[ラヴィニア] そういえば、前に眠れないって言ってたけど、お医者さんには診てもらったの?

[洗車工] ああ。身体のほうはとくに問題ないってさ。

[洗車工] 医者が言うには精神的な問題らしいぜ。

[ラヴィニア] えっ、あなたも何か悩みがあるってこと?

[洗車工] ……悩みってほどじゃないんだけどな。

[洗車工] 実を言うと、この仕事は暇つぶしみたいなもんでさ。

[洗車工] 俺は別に金持ちってほどじゃないが、そこまで金が必要なわけでもないんだよ。

[洗車工] ただ、何して過ごせばいいかがさっぱりわからねえんだ。

[洗車工] ラヴィニアさん、あんたは普段どんなふうに過ごしてるんだい?

[ラヴィニア] ……

[ラヴィニア] はい、もしもし。

[ラヴィニア] えっ!? カラチ部長が……!?

[ラヴィニア] わかりました、すぐ向かいます。

[ラヴィニア] ごめんなさい、ダンブラウンさん。仕事が入っちゃったから、この話はまたにしましょ。

[ラヴィニア] さっきの質問だけ答えていくけど――

[ラヴィニア] 私は暇な時、よくオペラを観に行くの。あなたも気が向いた時劇場に行ってみるのはどうかしら?

ダンブラウンは店先へ出て――

尊敬する裁判官が、雨の中車を飛ばして去って行くのを見送った。

「あの人はいつも忙しそうだな。」――そんなふうに思いながら、彼は水滴のついた手袋をズボンで適当に拭いた。

だが、実際のところ、彼女の為すことはすべて、無意味なものではないだろうか。

彼女は希望を抱いているからこそ、幾度も失望し続けているのではないだろうか。

以前の日々は、ここまで複雑なものではなかった。ダンブラウンは店の外に広がる雨の帳を見て、ふと何年も前のある午後を思い出した。

[洗車工] もうしばらく雨が降っててくれたらいいな。そうすりゃ、朝からゴミ掃除なんかしないで済む。

[レオントゥッツォ] 伏せろ!

[ルビオ] ひっ――!

[カポネ] ただのお坊ちゃんだと思って見くびってたが……

[レオントゥッツォ] ……向こうはやり手だな。下がっていろ、ルビオ。

[レオントゥッツォ] 奴らの狙いは俺だ!

[ルビオ] わ、わかりました!

[ルビオ] うわあっ――!?

[レオントゥッツォ] ッ、そっちもか!

[レオントゥッツォ] どけ!

[カポネ] チッ、やりやがる。

[ガンビーノ] なっ、あいつペンギン急便の――

[テキサス] ん?

[テキサス] 伏せろ。

[ルビオ] ひゃっ、はい!

[カポネ] そろそろ死んだか? ガンビーノ。

[ガンビーノ] 俺がこんなんで死ぬタマかよ。しかし、こんなところで本命に会うとはな……

[カポネ] 無駄話はやめろっての。

[カポネ] 任務は失敗だな。今のうちにずらかるぞ。

[テキサス] あの二人は確か……

[レオントゥッツォ] げほっ、ごほっ……

[レオントゥッツォ] あいつら……退いたのか?

[テキサス] ……大丈夫か。

[レオントゥッツォ] 平、気だ……ッ……

[テキサス] 怪我をしているな。失血するから動くなよ。

[テキサス] 応援は呼んでおいた。じきに到着するだろう。

[レオントゥッツォ] 平気だと言っただろ……それより、なぜ……

[テキサス] 今日のパーティーを知っていた人間はどれくらいいる?

[レオントゥッツォ] ……あんたが言っているのは……そういうことか。

[レオントゥッツォ] 確かに、あれだけの規模で組織的に動いていたとなると、計画的なものだろうな。

[レオントゥッツォ] だが、今の俺は公的な立場で行動している。居場所を知ろうと思えばそれ自体は難しくないはずだ……

[レオントゥッツォ] とにかく、あんたが間に合ってくれてよかった。

[テキサス] カラチは死んだ。

[レオントゥッツォ] っ、何だと!?

[ウォラック] *クルビアスラング*! 今なんつった!?

[ルビオ] カラチが……死んだ……?

[テキサス] 車に爆弾が仕掛けられていて、カラチが通りかかった瞬間に起爆したんだ。相当の威力だった。

[テキサス] カラチとそのそばにいた護衛三名は即死だ。

[テキサス] ……現場を見るに、病院に運ぶまでもないような状況だった。

[テキサス] すまない。

[レオントゥッツォ] ……

[レオントゥッツォ] 俺たちを襲った連中とカラチを殺した犯人は間違いなく同じ組織の人間だろうな。奴らの目的は何なんだ……?

[レオントゥッツォ] ……なぜここへ? それに、裁判所の車が次々来てるみたいだが――

[ラヴィニア] ……もっと早く言ってくれるべきでしょう。ベッローネが彼女を招いていたことを。

[ラヴィニア] チェリーニア・テキサス。あなたをカラチ部長殺害事件の第一発見者並びに容疑者として……

[ラヴィニア] 拘束させてもらいます。

[ラヴィニア] これに対するいかなる抵抗も、法律を軽んじたものと見なされ、相応の罰を受けることになると思ってください。

テキサスは抵抗しなかった。彼女は裁判官の視線から、その意図を汲み取ったのだ。

[ラヴィニア] それと……

[ラヴィニア] 政府関係者各位、及び各ファミリーの構成員の皆さん。ウォルシーニにとってカラチ部長がどれほどの重要人物であるかは言うまでもないことです。

[ラヴィニア] 皆さんが襲撃を受けた件については、部長の事件と併せて調査いたします。

[ラヴィニア] 己の名誉に懸けて、必ず犯人を見つけ出し、厳格な処罰を下して見せますので!

[レオントゥッツォ] あんた、本気なのか?

[ラヴィニア] ええ、もちろん。

[レオントゥッツォ] ……わかったよ。

一連の出来事に、レオントゥッツォは疲れを感じた。

そして、それを感じ取った瞬間、突然視界がぐらりと揺れた。

[ラヴィニア] レオン!

降り続ける雨は、当分止みそうになかった。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧