aklib_story_翠玉の夢_DV-1_トリマウンツ街道_戦闘後

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翠玉の夢_DV-1_トリマウンツ街道_戦闘後

ドクターたちの危機を救ったサリアによって、襲撃してきたパワードスーツは遠隔操作された無人機だったと発覚した。その頃、都市の外では開拓者たちが交渉を試みるも、返ってきたのはエネルギー課主任フェルディナンドの強硬な返事だった。


[奇妙なパワードスーツ] ――

[Mechanist] ……信じがたいな。

[Mechanist] ジャミングシステムは作動させてあるというのに、まだ追ってくるぞ……これは、クロージャが開発した最新ドローンでも、こちらの位置を検出できないほどの代物なんだが。

[Mechanist] あのパワードスーツは、一体どんなセンサーを搭載しているんだ?

[ドクター選択肢1] 動きを止めることはできないか?

[Mechanist] あまり目立つことはしたくないんだが……仕方がないか。

[Mechanist] しっかり掴まっていろ、ドクター。

[Mechanist] 出力、10パーセントを指定。ロックオン――

[Mechanist] 命中。

[奇妙なパワードスーツ] ――

[Mechanist] ......

[Mechanist] 右腕装甲の破損を目視した。

[Mechanist] だが、減速しないな。当たった瞬間も、止まる気配すらなかった。

[Mechanist] 中にいるのは何者だ? 痛みを感じないのか?

[奇妙なパワードスーツ] ――

[奇妙なパワードスーツ] ――

[Mechanist] 左側上腕部及び――

[Mechanist] 右側脛部の破損を確認。

[Mechanist] ダメージを受けてもまったくの無反応、か。

[Mechanist] 奴を止めるには、動力部のコア――リアクターを停止するしかないようだが……

[Mechanist] そもそも、それ自体がおかしな話だ。

[Mechanist] どんなに訓練された兵士でも、ここまでタフなはずはないしな。

[???] その考えは正しい。

[???] 命あるものである限り、神経がもたらす反射行動を完全に制御することは不可能に等しいからな。

[奇妙なパワードスーツ] ――

手刀がパワードスーツの中心を貫く。機械の破片が火花と共に飛び散る様は、まるで別の生命体の血しぶきのようだった。

かと思えば、その手はすぐに引き抜かれる。

それと同時に引き出されたスーツの残骸は、彼女の五本の指を覆う純白の装甲と共に粉となって流れ落ち、それを構成するカルシウム結晶が地面へと降り積もった。

パワードスーツが地面へと倒れ込む。そのエネルギーの火はすでに消え、胴体の中心にはきれいな穴が空いていた。

[Mechanist] ……素手でリアクターを貫いたのか?

[Mechanist] 凄まじい力だな。その上、私の自衛用キャノンより遙かに静かだ。

[Mechanist] 幸いにも、我々は「かったるいアレコレ及び源石製品管理局」に爆破犯として連行されずに済んだようだぞ、ドクター。

[ドクター選択肢1] これ以上ロドスに前科を増やすのは御免だからな。

[ドクター選択肢2] クルビアの留置場にはもうご厄介になりたくない。

[ドクター選択肢1] ありがとう、サリア。

[サリア] 礼は不要だ。

[サリア] ライン生命の問題にロドスを巻き込んだ以上――

[サリア] 私には、お前たちに危害が及ばないようにする義務がある。

[ホルハイヤ] ……フェルディナンドの予想が的中したわね。

[ホルハイヤ] ロドスの人たちはもうサリアと合流してるわ。

[クルビア傭兵] 引き続き、追跡しましょうか?

[ホルハイヤ] あなた、もし自分がさっきのパワードスーツに入ってたら、生き延びられたと思う?

[クルビア傭兵] ……

[ホルハイヤ] そんなに緊張しないで。

[ホルハイヤ] もしもの話だから。

[クルビア傭兵] ですが、サリアがどれほどの実力者だろうと、向こうはたったの三人です。

[クルビア傭兵] 我々はこれだけ人数がいますし、秘密兵器だって……

[ホルハイヤ] 誰が相手だろうと、見くびってはダメ。

[ホルハイヤ] それに……ライン生命とこんなに長く付き合ってるのに、まだわからないの? 貧弱そうなインテリほど、相手取れば案外手強かったりするのよ。

[クルビア傭兵] そ、それはあの技師と、顔の見えない学者のことですか? まさか奴らのほうが警備課主任より手強い相手だと仰せで……?

[ホルハイヤ] ありえない話じゃないわ。ロドスは……人材豊富だから。

[ホルハイヤ] さてと、行きましょうか。さっきの「もしも」は面白そうだし、ほかにも試してみたいアイデアが色々とあるもの。

[フェルディナンド] ……

[フェルディナンド] 大佐殿、こんばんは。

[「大佐」] ……クルーニー。

[「大佐」] 基地で起きている件について、説明してもらおうか。

[フェルディナンド] ほんの些細なトラブルですよ……ご存知の通り、我々がどんなに手厚い待遇を与えようと、開拓者たちを満足させるのは難しいものなのです。

[フェルディナンド] 向上心は彼らの長所でもあり、クルビアを発展させ続ける基礎となる力ではありますが……このように、時折問題を起こすこともありまして。

[「大佐」] 問題があるのなら、解決しろ。

[「大佐」] 私が見たいのは成果であって、拉致事件のニュースなどではないのでね。

[「大佐」] クルビアのテクノロジー企業は、君たちの会社だけではないということをくれぐれも忘れるなよ。

[フェルディナンド] ……かしこまりました。

[フェルディナンド] ですが、どうかご安心ください。

[フェルディナンド] ライン生命の製品は決してあなたを失望させはいたしません。

[開拓隊の隊員] これ以上やりたくないって奴らが何人も出てきたぜ。

[開拓隊の隊員] そいつらは、お前のやり方じゃ上手くいかないし、誰もまともに相手しちゃくれないと言ってる。俺たちの声は届かないし、いくら頑張っても無駄だ、ってな。

[サニー] ……

[開拓隊の隊員] それに、ライン生命が何を企んでようが構わないとも言ってたよ。

[開拓隊の隊員] なあ……俺たち、早くここでの仕事を終わらせて給料をもらって、次の場所に行くべきなんじゃないのか?

[開拓隊の隊員] 行方不明になっちまった連中は……ツイてなかっただけさ。考えてもみろよ。荒野の奥のほうへ行く開拓隊は毎年、こっちよりたくさん人が死んでるっていうじゃないか。

[サニー] ……やめてくれ。

[サニー] それより、もう少し待ってもらえるよう皆に伝えてほしい。俺が仲間たちを連れ戻してみせるから。

[開拓隊の隊員] 何か良い考えでも?

[サニー] ちょっと出てくる。

[開拓隊の隊員] そ、そんなの危険じゃないか……?

[開拓隊の隊員] 保安局が狙撃手を派遣してたらどうするんだ? お前が出てくるのを待ってるかもしれないんだぞ。

[サニー] ……そりゃいいな。

[開拓隊の隊員] ど、どういう意味だそりゃ? お前、気を張りすぎて頭が変になってるんじゃないか?

[サニー] 保安局の人間が来てるとすれば、俺の古い知り合いかもしれない。あいつなら射撃の腕は確かだし、最悪、事が行くところまで行ったとしても、苦しまないようにやってくれるだろうさ。

[開拓隊の隊員] サニー……

[サニー] ウビカ博士、それにモル先生も――

[サニー] ついてきてくれないか。

[フィリオプシス] ……

[エレナ] 何なの、そのまともぶった態度。どうせ私たちに断る権利なんかないでしょ。

[サニー] ……申し訳ないが、どうかもうしばらく付き合ってほしい。

[サニー] 実際にあんたたちの状況を見れば、外の連中も気が変わって、俺たちの要求を真剣に考えるかもしれない。

[ライン生命警備課職員] 誰か出てきました!

[ライン生命警備課職員] ドローン、射撃準備――

[メアリー] いいえ、止めて。

[ライン生命警備課職員] 保安官……?

[メアリー] ……

[メアリー] 人質を傷つけるわけにはいかないわ。

[メアリー] 確か……サイレンス先生だったわね。こっちへ来て。

[サイレンス] 何かあったんですか?

[メアリー] 望遠鏡を貸すわ。見て、あそこ。サ……開拓者の後ろにいる二人はあなたの同僚じゃない?

[開拓隊の隊員] リーダー! つ、通信が来たぞ!

[サニー] ……貸してくれ。

[メアリー] ……

[サニー] 本当にお前がいるとはな。

[メアリー] それはこっちのセリフよ。

[サニー] 今は……保安官をしてるのか? お祝いを言いそびれてたな。

[サニー] にしても、わざわざこんな場所に長く留まってるとは思わなかったよ……開拓地はいつだって問題だらけだろうに。

[メアリー] ……私だって、あんたがここまで落ちぶれるとは思わなかったわ。

[メアリー] あの頃受けた法律の授業を忘れたの?

[メアリー] それに……私が保安局に入った日、あんたが私になんて言ったか、もう覚えてないわけ?

[サニー] ……

[メアリー] 私は覚えてるわよ。「やったな! 俺たち、これからも相棒だぜ。子供の頃のごっこ遊びが現実になるんだ。一緒にクルビアの秩序を守って、どんな犯罪でも裁いてやろう――」

[メアリー] ハッ。……皮肉な話よね。今じゃ裁かれるべき人間はあんたのほうなんだから。

[サニー] メアリー……

[メアリー] で、あんたのお友達が持ってるのは何? 自作の武器?

[メアリー] 何にせよ、その見るに堪えないおもちゃを捨てて投降しなさい。

[メアリー] サニー。あんたは自分からそんなふうに成り下がったけど、まだできることは残ってる。これが最後の分かれ目よ。

[メアリー] その人たちに罪はない。今すぐ二人を解放しなさい。

[サニー] ……できない。今はまだな。

[メアリー] バカ言わないで。自分で自分の首を絞めてるのがわからないの?

[メアリー] クルビアでは、犯罪者も開拓隊に入れば監獄送りを免れるけど……

[メアリー] 開拓地で再び法を犯したら、どんな罪に問われるかくらいよく知ってるでしょう?

[サニー] ……

[メアリー] 答えなさいよ、弁護士先生!

[サニー] そんなふうに呼ぶのはやめてくれ、メアリー……

[メアリー] ……あんた、私を後悔させたいみたいね。

[メアリー] お望み通り、後悔し始めたわよ。うちにあんたが押し入ってきたあの日、それを保安局へ連行せずに許してしまったことをね。

[サニー] ……あの時の俺は本当にバカだったんだ。

[サニー] ごめん……これまでずっと、申し訳なく思ってきた。

[サニー] でも、今回は理由あってのことなんだ。頼むから話を聞いてくれないか……

[開拓隊の隊員] ……リーダー!

[サニー] どうした?

[開拓隊の隊員] あ、あの医者が……

[サニー] ……モル先生が?

[フィリオプシス] ……

[フィリオプシス] 設定中……エラー発生……修正を行います……電源プラン……

[エレナ] いけない……! ジョイス……

[サニー] ウビカ博士、何が起きてるんだ?

[エレナ] ……あなたにもわかるように言うと、発作を起こしてるの。

[開拓隊の隊員] なんだって!? こ、鉱石病の発作か?

[開拓隊の隊員] 急いで何とかしないと! 俺が支えておくから……彼女、薬は持ってるか? あっ、でも俺、注射なんか打てないぞ……!

[フィリオプシス] うっ……

[開拓隊の隊員] すごく顔色が悪い……どうしたら……!

[開拓隊の隊員] そ……そうだ、ライン生命が配給してきた緊急医療用バングル! 確かこれなら鉱石病に効くって言ってたよな?

[開拓隊の隊員] 先生につけてやろう……

[エレナ] ……

[エレナ] 緊急用なんでしょ? 本当にあげていいの……?

[エレナ] そんなことして、もしこのあと急に発作を起こしたら、キミ自身は助からないかもしれないんだよ?

[開拓隊の隊員] だけど、先生は俺たちにずっと良くしてくれてたんだ!

[開拓隊の隊員] この人に何か起きるのはいやなんだよ……!

[エレナ] 私たちを誘拐したのはキミたちなのに……

[サニー] それでも、これ以上恩知らずな真似はしたくないんだ。

[サニー] ……身勝手なことを言って申し訳ない。

[サイレンス] ……まだ向こうとの通信は続いていますか?

[サイレンス] であれば、開拓者たちと話すことを許可してください、保安官。

[メアリー] ……

[サイレンス] 今発作を起こしているリーベリは、私の同僚で……親友でもあるんです。

[サイレンス] 何より、私は彼女の主治医ですから。

[サイレンス] 開拓者たちに彼女の状況を聞きたいんです。この反応からして、向こうもまるで無関心というわけではないようですし。

[メアリー] ……好きにしなさい。

[メアリー] ただし、あまり時間はあげられないわよ。

[メアリー] さっき上から指示があったの。開拓者たちが非協力的な姿勢を続けるようであれば、10分後に実験基地全体の通信を遮断し……そして開拓者居住区への電力供給を止めるように、と。

[グレイ] で、電力供給を……!?

[グレイ] この辺りは昼と夜の温度差が激しいですし……夜中ともなれば耐えきれません!

[グレイ] それに、開拓隊には重篤な鉱石病患者もたくさんいるんです……!

[グレイ] 彼らは、医療機器がなければ生きられないんですよ!

[メアリー] ……わかってる。

[メアリー] だからこそ、これが警告になり得るのよ。

[メアリー] 彼らには、ライン生命と保安局が本気だということを理解してもらうわ。

[メアリー] どんな抗議も要求も、法に背くものであってはいけない……一度でも犯罪を犯してしまえば、誰も彼らの言葉には耳を貸さないのだから。

[グレイ] ですが……開拓者たちのリーダーはあなたのご友人なのでは?

[メアリー] ……友人?

[メアリー] 違うわね。彼が道を踏み外したその時から、話すことなんて何もないもの。

[フィリオプシス] ……

[サニー] 具合はどうだ?

[エレナ] 血液の結晶密度は今も下がってきてるけど、眼球の運動指数がまだ正常値に入ってないね。

[サニー] その……運動指数っていうのは?

[???] 彼女の場合、鉱石病の病巣が脳にあるから――

[???] 体調に変化があると、それが神経系に影響を与えて、彼女を深い睡眠状態に陥らせたり、場合によっては、てんかんを誘発させたりする。そこで、その数値を参照データにしてるんだ。

[サニー] ん……? 誰の声だ?

[エレナ] ……通信機、繋ぎっぱなしだったみたいだよ。

[サイレンス] リーダーさん、初めまして。

[サイレンス] 私はサイレンス。ジョイス・モルの主治医。

[サニー] ……サイレンス先生、か。

[サイレンス] まずはお礼を言わせて。

[サイレンス] ジョイスの状態をすぐに安定させられたのは、あなたやほかの開拓者たちのおかげ。

[サニー] 誘拐犯に向かって礼を言ってくれるんだな……

[サイレンス] あなたたちを尊重する見返りとして、私のことも信じてほしい。私たちは、本気で力になりたいと思ってるんだ。

[サイレンス] よく聞いて。あと5分したら、基地への通信と、あなたたちの居住区への電力供給が止められてしまう――

[開拓隊の隊員] リーダー! で、電気が急に……!

[サニー] ……

[サイレンス] 予定より早く始めたみたい。

[サニー] 仕方ないさ。教えてくれたことに感謝する。

[サイレンス] ううん。それで、メアリーさんから聞いたけど、あなたたちはライン生命の上層部と話がしたいのでしょう。

[サイレンス] 理由を教えてくれる?

[サニー] ……

[サニー] 連中に、この基地で行っている実験を止めてほしいんだ。

[サイレンス] ……それって……

[サニー] あんたは親切な医者だ。モル先生と同じでな。だが、こんな大がかりなプロジェクトを止める権限なんて持ってないだろ?

[サニー] 何とかして、総括に伝えてもらえないか? この実験は、本当に危険だってことを。

[サイレンス] 説得の根拠になりそうな証拠はある?

[サニー] 仮にそれがあったとして、あんたは俺を……行き場のない開拓者の言うことを本当に信じてくれるのか?

[ライン生命警備課職員] 保安官、準備が整いました。いつでも通信を遮断できます。

[メアリー] ……サイレンス先生が話し終わるのを待ちなさい。

[ライン生命警備課職員] ですが、すぐに通信を切るようにと主任が――

[メアリー] 私は保安官よ。おたくの主任の「ご意見」が何だっていうの?

[メアリー] フェルディナンドに伝えなさい。救助活動は私の仕事であって、彼の指図を受ける筋合いなんてないと!

[ライン生命警備課職員] ですが、主任は保安局長と話し合いの上で、この対応を共同立案されたそうで……

[メアリー] ……!

[サイレンス] 主任って……フェルディナンドのこと?

[サイレンス] まさか警備課がエネルギー課の言いなりになってるなんてね。

[ライン生命警備課職員] うっ……

[サイレンス] ――フェルディナンドが構造課も自分の手の内にあると思ってるのなら、私は今すぐライン生命を辞めてもいい。

[フィリオプシス] ……

[エレナ] ジョイス……ジョイス!

[サニー] ……眠ったのか……?

[エレナ] というより、完全に意識を失ってる……!

[エレナ] 急いで治療を受けさせないと……このままじゃ、すぐにも脳死状態になっちゃうよ……!

[サニー] ……

[サイレンス] ――今からそっちに行く。

[サイレンス] あなたの懸念は理解してるから安心して。武器は持ち込まない。

[メアリー] っ、バカな真似はやめなさい!

[サイレンス] やめません。私は行かなきゃいけないんです。

[サイレンス] ――サニーさん。私は保安局も、警備課の人もついてこさせないと約束する。

[ライン生命警備課職員] サイレンス研究員。あなたの行動は、主任に……パルヴィス主任にご報告することになりますよ。

[サイレンス] 構わない。ロドスのオペレーターとして、私は――

[グレイ] あの、僕も……!

[サイレンス] ――同僚のエンジニアと共に、359号基地へ向かう。

[サイレンス] そして、基地内の鉱石病患者に無償で医療サービスを提供する。

[サイレンス] これは友人のためだけでなく、あなたたちのためでもある。

[サイレンス] ライン生命の選択なんて知らない。どうでもいい。

[サイレンス] 私が知っているのは、感染者を救うことこそ、ロドスの一貫した行動規範だということだけだから。

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