aklib_story_塵影に交わる残響_LE-ST-2_春の祭典

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塵影に交わる残響_LE-ST-2_春の祭典

穏やかなチェロの音色に包まれて、エーベンホルツは長い間ずっと埃を被っていた過去を思い出した。

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[心配性な貴族] 陛下の血筋に連なる者は……もうこれしか残っていないのですか？

[自分勝手な術師] あの双子は動きが早くて手段も残酷で、これが限界だったのよ。

[心配性な貴族] ですがやはり、陛下が残された旋律をこのように軽々しく――

[自分勝手な術師] ならばどうしろっていうの？

[心配性な貴族] もう少し慎重を期すべきかと……

[自分勝手な術師] 慎重？ 我々の仲間が毎日のように殺されているというのに、まだそんなことを言っているの？ これが最後のチャンスなのよ！

[自分勝手な術師] 陛下の血と旋律を合わせれば、お力のすべては再現できずとも、せめて……

私は……一体何歳だったのだ？ 二歳か？ 三歳か？

私は呆然と辺りを見渡していた。そこは荒れ果てた建物に囲まれた場所だった。

私を連れてきた者から、父と母はすでに私刑によって亡くなったと告げられた。その時の私は、私刑とは何か、死とは何かをまだ理解できなかった。

彼は、今後はこの場所が私の家になると言った。さらに、私は偉大な計画の一部となり、運が良ければリターニアの次の支配者になるだろうと。

わからない。何を言っているのか全くわからない。

ただぼんやりと、私の部屋――毎朝、陽光が差し込むあの部屋にはもう戻れないのだろうということだけは理解した。

[心配性な貴族] 申し上げたでしょう。人を「塵界の音」の器にするだなんて、そんなことが成功するはずがない……

[自分勝手な術師] 無理だと知っていたと？ もう遅いのよ！ 計画を実行する前に、お前は反対の意思を示したの？ 器が死んだ今になって、何を無責任なことを言い出すの？ 手遅れよ！

[心配性な貴族] 違う、私は……

[自分勝手な術師] 言っておくわよ。これは無意味なものではなく、成功のために必要な代償よ。

[自分勝手な術師] この中の一人でも生き残れば、我々はこんな場所で賊のようにコソコソする必要はなくなるの！

[自分勝手な術師] ヴィクトリア、ウルサス、カジミエーシュ……我々の計画に興味を抱いている者はいくらでもいる！ 成功さえすれば、そいつらの軍隊を借りて、あの双子に復讐を果たせるのよ！

ある日、ここに来てからずっと私たちの面倒を見てくれていた女性が姿を消した。

彼女がいなくなってから、私たちとは別の場所に住んでいて、食事を届けてくれる人たちが喧嘩するようになった。

その人たちが何について言い争っているのかはわからない。ただ、よく歌を歌ってくれていたあのお姉さんが、もう戻ってこないことは理解した。

あれは確か、こんな歌だった。

澄み渡る空は青を湛え

そよ風はたおやかに歌う

川の水面は絶えず姿を変えて

我が心は希望に満ちる――

歌には続きがあるようだったが、彼女が歌ってくれたことはない。

[自分勝手な術師] 今回はどう！？ 聞いてるの！？ 今回はどうだったのよ！

[心配性な貴族] 死にました……

[自分勝手な術師] 死んだから何？ 進歩はあったでしょう！

[自分勝手な術師] 次は手術室をもっと遠ざけて、防音材を取り付ければ……必ず成功するはずよ！

時は流れ、冬が終わり、そしてまた暖かい季節がやってきた。

最初の頃、誰かがいなくなるたび、あの人たちは大喧嘩していた。

その後、彼らは徐々に喧嘩をしなくなったが、私たちの食事はだんだんと酷いものになっていった。幸い食べる人も減っていたため、まだ腹を満たすことはできた。

人はふとした瞬間に消えてしまう。多分そういうものなのだろう。

彼らが持っていた物も同じだ。

お婆さんの杖、お兄さんのオルゴール、それからおじさんが肌身離さず持っていたアーツユニットと源石のダイス……

だが残るものもある。たとえば、あのお姉さんが好きだった歌だ。

ある子がその歌を覚え、よく口ずさんでいた。

[心配性な貴族] 私たちは――一体何をしているんだ！？

[心配性な貴族] 陛下の血統は私たちの手で守られたというのに、結局は……私たちの手により死んでゆく……

[自分勝手な術師] しっかりして、これは必要な代償よ！ ふさわしい力を陛下の血統に継承させるため、避けられぬ犠牲よ！

[自分勝手な術師] 「塵界の音」についての研究も以前より進んでいるわ。まもなく成功するはずよ！

[心配性な貴族] しかし死んでしまった者たちは……

[心配性な貴族] やはり、もうこんな狂った実験はやめましょう……残った数人の素性を隠して密かに教育すれば、もしかしたら陛下のように――

[自分勝手な術師] 何をバカなことを言っているの！ 「音」は絶対に必要よ！

それからまた一年が過ぎた。あるいは二年だったか……私にはもうわからなくなっていた。

残ったのは私とあの子だけだった。

あの人たちが部屋に来るたび、私は恐怖で震えていた。

そんな時、あの子はいつも大丈夫だと私を慰め、連中から私を庇っていた。

あの人たちが去ると、彼は歌を歌ってくれる。

「♪〜我が心は希望に満ちる。」

[自分勝手な術師] お前たちはもう長い間ここにいるわよね……たとえ子供だろうと、自分がどういう立場かわかっているはずよ。

[自分勝手な術師] お前たちは陛下が残した唯一の血族よ、私もあまり酷い扱いはしたくないわ。次はどちらにするか、自分たちで決めて。

[心配性な貴族] 今回私たちの技術に大きな進歩がありました……成功する……かもしれません。ですから、今回実験を受ける人は……とってもすごい術師になるかもしれませんよ。

私たちはそこまで愚かではない。

貴族の格好をしたその人は、前にも何度かそう言っていた。しかし部屋から連れ去られた人たちは、誰一人戻ってこなかった。

私は足を震わせながら、そばにいる子をこっそりと見た。彼の唇も青ざめていた。

私は消えたくないし、その子にも消えてほしくなかった。だが……

彼は私の視線に気付くと、こちらを向いて、震えながらも口角を上げた。

「僕が行くよ。」

その言葉を聴いた途端、耐え切れなくなった両足から力が抜け、私は地面にくずおれた。

私は、空っぽの部屋で二ヶ月間ほど一人きりで過ごした。

そして、ある雨の夜、あの子が部屋に運ばれてきた。両目は閉じ、唇も一文字に結ばれていたが、彼は生きていた。

奇跡が本当に起こったのだと私は思った。しかし数日後、その子は再び部屋から運び出され、そして、他の人と同様に姿を消した。

運び出される時、彼はいつものようにあの歌を歌っていた。

「♪〜我が心は希望に満ちる。」

それから数日が過ぎ、ついに私の番になった。

私を連れ出した二人についていくと、これまで見たことのない部屋がたくさんあり、中には様々な装置や器具が置かれていた。

私たちはある小さな部屋に入った。中は一面真っ白だった。

高塔の術師の服を着た人が私をベッドに寝かせた。彼女は白いマスクと手袋をしており、とても奇怪に見えた。

やがて彼女は私にも形の違うマスクを被せた。そして、私の意識が途切れた。

歓声の中で目を覚ました。

目覚めてすぐに、頭の中でマグマが沸騰するような痛みを覚えた。眼球が焼かれるように熱かった。

激痛は……どれほど続いたのだろうか？ 数日？ 数週間？ それとも数ヶ月？

いずれにせよ、時間の経過と共に痛みは徐々に治まり、最終的にはたまに激痛が走る程度で、すぐに元に戻る軽い頭痛になった。

他の人と同じように運び出されるのを待ったが、そうされることはなかった。

彼らはむしろ私の機嫌を取るようになり、食事の質を上げ、庭での自由な行動を認めた。

さらには授業を受けさせ、読み書き、そしてアーツの扱い方を教えてくれた。

彼らは例のおじさんのアーツユニットとサイコロを私に渡して、これらがかつて陛下のコレクションであったことを告げ、大切にするよう念を押した。

それ以来、私がアーツの才を示すたびに、過剰な褒め言葉が掛けられるようになった。

だが当然、そうした日々も長くは続かなかった。

[心配性な貴族] この子は……ここまでなのでは？

[自分勝手な術師] 現状から見れば、たとえ彼を限界まで追い詰めても、せいぜい「女帝の声」一人を相手にできる程度……

[自分勝手な術師] ならば、前のあの子のように「塵界の音」のエネルギーの流れを調整してみて……

[心配性な貴族] もうやめましょう。

[自分勝手な術師] 何を恐れているの、また改善すればきっと――

[心配性な貴族] いけません！！

[自分勝手な術師] 私に盾つく気！？

[心配性な貴族] あれほど長かった「塵界の音」も、今となってはほんの数小節しか奏でることができません。陛下の血に連なる十五人も、もはやたったの一人です！

[心配性な貴族] この子を育てて取引材料にすれば、我々が他国へ亡命をした際に、まだちょっとした官職に就けるかもしれません。そしてなにより陛下の血脈をこの先も残すことができるのです。

[心配性な貴族] 彼もあの子のように壊してしまったら、私たちはもう自害して陛下に詫びるほかありません！！

[自分勝手な術師] ……

翌日、彼らは姿を消した。

自害などするはずもない。彼らがよく口にしていた、「女帝の声」がやってきたのだ。

私は空っぽの部屋に座ったまま、外の断末魔を聞きながら、心の中ではむしろ清々しさすら感じていた。

連中は「陛下の血脈」とやらが大事だったのではないか？

今彼らが最も恐れていた事態が起きようとしている。呪われた血筋がまもなく途絶えるのだ。

華やかな装いをした人が入ってきた。

これが「女帝の声」なのだろう。

その人は私を見つめて、攻撃をしようとも、武器を下ろそうともしなかった。ためらっているように思えた。

何をためらっているのだろうか？

私はアーツユニットを握ると彼に向けて振りかざした。源石のダイスが周囲を回り始めた。

案の定、彼は予測もつかないスピードで突進してきて、持っていた金管楽器で私の頭を強打した。

その一撃を境目に、私の短い人生は二分されることとなった。

ウルティカ伯爵は、自分がこの手枷付きの椅子に座るに至った経緯を忘れていた。時折起きる頭痛の発作だけが、彼の頭の中にはまだ巫王がこの世に残した最後の旋律が存在することを告げている。

伯爵代理は嫌悪感を含んだ口調で、それは「名を口にしてはならない人物」の遺物であり、もうその身体とは切り離せないのだと告げた。

だが彼は全く知らなかった。自分がどうやってそれと一つになったのかを。

そして今、すべてを思い出した。

彼はどうすべきだろうか？

私に何ができるのだろうか？