aklib_story_塵影に交わる残響_LE-7_浄夜_戦闘前

ページ名:aklib_story_塵影に交わる残響_LE-7_浄夜_戦闘前

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塵影に交わる残響_LE-7_浄夜_戦闘前

一行はコンサートホールの中で、ゲルトルーデが仕掛けたアーツ拡散装置を発見した。そこで彼女は姿を現し、エーベンホルツの説得に失敗するやいなや、攻撃を仕掛けてくるのだった。


[エーベンホルツ] いない?

[ウルズラ] 旦那様はしばらく前に出かけたよ。

[ハイビスカス] 出かけた?

[ウルズラ] 中毒になった感染者を治療してもらうために、区外の病院に交渉しに行ったみたいだよ……

[ウルズラ] あぁ、旦那様、お帰り。病院はどうだったんだい――

[ツェルニー] 何とか二つの大きい病院を説得し、契約にこぎつけましたが、他の病院は……ダメでした。

[ハイビスカス] でもロドスは病院と協定を結んでいます!

[ツェルニー] あなたもいたのですか。

[ツェルニー] 無駄です。ロドスと病院との協定は、鉱石病が引き起こす症状に限られます。中毒症状の感染者を受け入れなくてはならない理由は彼らにはありません。

[ウルズラ] だけど、二つの病院を説得できたなら、足りるんじゃないのかい?

[ツェルニー] フッ、足りるでしょう、足りないはずがない! 私の著作権すべてを担保にしたのです。彼らの背後にいる財団は笑いが止まらないことでしょうね!

[ハイビスカス] まさか――著作権をその財団に譲渡したんですか!?

[ツェルニー] そうです。これまでの著作権だけでなく、明日のコンサートの録音の版権も彼らに売り渡しました。

[ツェルニー] これでまたゼロからのスタートです……ゴホッ、ゴホッ。

[ツェルニー] ゴホッ……ゴホッ!

[ウルズラ] 旦那様、旦那様!?

[ハイビスカス] 目が覚めましたか?

[ツェルニー] うぅ……うむ。

[ハイビスカス] ツェルニーさん、外出時に何も防護措置を取らなかったんですね?

[ツェルニー] あのオリジムシが放つ臭気対策ということですか? 一秒でも早く契約をしたかったので、そこまで考えが至りませんでした。

[ハイビスカス] 今日のような無謀な行動は、今後絶対に控えてください。

[ツェルニー] 「今後」? つまり、私にはまだ余命があると?

[ハイビスカス] ……私がいますから。

[ツェルニー] はぁ、身体を壊してみてようやく、お医者さんのことをありがたいと感じますね。

[ツェルニー] 感謝します、ハイビスカスさん。

[ハイビスカス] 当然のことをしたまでですよ。

[ツェルニー] それよりエーベンホルツさん、どうして何も話さないのですか? まさかアフターグロー区があまりに危険だから、辞退したいと?

[ツェルニー] 言っておきますが、ここまで来たからには、コンサートは何が何でも成功させます。逃げようなどとは考えないことです。

[エーベンホルツ] 逃げようなどとは考えないこと……

[エーベンホルツ] 私は……

[エーベンホルツ] (小声)今の彼は耐えられるのか?

[ハイビスカス] (小声)少し待ってみましょう……

[ツェルニー] コンサートを辞退したいわけではなさそうですね?

[エーベンホルツ] ああ、辞退したいわけではない……

[ツェルニー] エーベンホルツさん、初めて会った時から気付いていましたが、あなたは緊張すると他人の言葉を繰り返す癖がありますね。

[ツェルニー] 何か話があるなら言ってください。私はもうこんな状態なのです、これ以上に酷いものはないでしょう。

[ツェルニー] ゴホッ――ゴホゴホゴホッ!!

[ハイビスカス] ツェルニーさん、水、お水を飲んでください!

[ツェルニー] ゴホッ、ゴホゴホッ、ゲルトルーデめ――クソッ!

[ツェルニー] あなたもです。このような計画に加担するなんて、何を考えているのですか? 見込みがあると思っていたのに、結局あなたが音楽で表現したかったのはそんなものなんですか? 陰謀なんてものを?

[エーベンホルツ] それは違う――

[ツェルニー] どう違うというのです? 最初の時点であの狂った女の言うことにおとなしく同意したのではありませんか?

[エーベンホルツ] ツェルニー、貴殿は確かこう言ったな。心の底からの憎しみであっても、適切な技法で表現すれば、それも純粋な音楽であると。

[ツェルニー] 言いましたよ、だから? それが何だと言うのです?

[エーベンホルツ] ……正直、あの時の自分の考えは馬鹿げていたと今では思う。

[エーベンホルツ] だが私が求めるのは、自由に他ならない。

[ツェルニー] ――自由、自由への渇望、そうですね?

[エーベンホルツ] そうだ。

[ツェルニー] それを音楽で表現するには、あなたはまだまだです!

[エーベンホルツ] それは深く感じている。でなければ貴殿の所へは来ていない。

[ツェルニー] ……フンッ。

[ツェルニー] 行きましょう。

[ハイビスカス] 行く? どこへ?

[ツェルニー] 決まっているでしょう、コンサートホールです。

[ツェルニー] 先日訪れた時に、ゲルトルーデは私を上手くホールの休憩室から遠ざけました。今思うと、彼女は中で何かをしていたのでしょう。

[ハイビスカス] でもあなたの身体は……

[ツェルニー] エーベンホルツさんとあの女への怒りで頭に血が昇って卒倒するよりは、あの者たちが一体何をしたのか見に行く方がましです。

[ハイビスカス] エーベンホルツさん、ゲルトルーデさんは休憩室のどこに細工をしたか、あなたに言っていましたか?

[エーベンホルツ] いいや――

[ツェルニー] 聞く必要などありません。

[ハイビスカス] わかるんですか?

[ツェルニー] 至る所に細工がされています……

[ツェルニー] あそこのスピーカー、明らかに分解された痕跡があります。あちらのレコードプレーヤーもです、ネジがちゃんと絞められていません――チッ、しまい忘れたドライバーが放置されてますよ。

[ツェルニー] さすがは貴族の仕事、笑いたくなるほどお粗末ですね。

[ツェルニー] ハイビスカスさん、あのレコードプレーヤーをこちらに持ってきてもらえますか。トーンアーム以外にも何か改造されていないか見てみましょう。

[ツェルニー] ……

[ツェルニー] 見てください。

[エーベンホルツ] レコードプレーヤーの中にピックアップが取り付けられている? これでは回路間の干渉を引き起こすだけじゃ……

[ツェルニー] すでにレコード針が取り外されています。今やこれはただの拡声器にすぎません。

[ツェルニー] あのスピーカーもそうです。入力回路はすべて取り外され、拡声器になっていますね……休憩室にこんなにたくさんの拡声器を仕掛けて、一体何をするつもりなのでしょう?

[エーベンホルツ] それも言ってはいなかった。

[ツェルニー] それでは試してみましょう。ステージで何か吹いてもらえますか。答えを知るには、それが一番手っ取り早い方法です。

[ハイビスカス] 何も異常はなさそうですね?

[ツェルニー] 私も特に何も感じませんね。

[ツェルニー] エーベンホルツさんに伝えてきてもらえますか、少しだけアーツを使用してみてください……眠気を覚ます程度の、微弱なレベルに留めてくださいと。

[ツェルニー] !!

[ツェルニー] ゴホッ、ゴホゴホッ、ゴホッ――

[エーベンホルツ] ツェルニー!

[ツェルニー] ゴホッ、ゴホッ……

[ツェルニー] 心配ありません……ただ、少し動悸が……

[ツェルニー] エーベンホルツさん、ここでもう一度先ほどのアーツを放ってみてください。くれぐれも音量に注意して。

[ハイビスカス] なんだか音が……反響?

[ツェルニー] 外からの音です。

[ハイビスカス] でもこれはエーベンホルツさんが吹いたフルートの音ですよね?

ツェルニーは口を開け、何も言わなかった。

彼はすでに答えがわかっているようだ。

だが、ハイビスカスが彼の顔に見たのは、興奮でも怒りでもなく、恐怖の色だった。

純粋な恐怖だった。

[ツェルニー] ……

[ツェルニー] ゲルトルーデはこの休憩室を――いえ、アフターグローホール全体を一つの巨大な拡声器兼アーツ増幅装置にしたんです。

[ツェルニー] 音楽アーツが検出されなければ、拡声器はオフ状態に保たれます。

[ツェルニー] ですが、一度誰かがステージ上で音楽アーツを放てば、増幅装置が起動します……アーツのエネルギーは指数関数的に増幅し、音楽と共にアフターグローホールの外まで広がる……

[ツェルニー] 「塵界の音」の漏出と共鳴も……例外ではありません。

[ハイビスカス] !?

[エーベンホルツ] (うつろな眼差し)

[ハイビスカス] つまり、音が届くエリアの源石が強制的に活性化して、このヴィセハイムに住むあらゆる人がほぼ例外なく鉱石病に感染する……

[ハイビスカス] そしてすでに感染している人々はさらに病状が進行し、彼らが死ぬと遺体は急速に崩壊して、そこから大量の活性源石粒子が発生する……

[ハイビスカス] それによってこの周囲は完全にパンデミック地帯となり、ヴィセハイムは外界との繋がりを完全に遮断される――

[???] お話し中のところ申し訳ありませんが、私からも意見を述べさせていただけるかしら。

[???] これほどまでに麗しい夜に、なぜヴィセハイム全域に睡眠を妨げるようなアーツを放っていらっしゃいますの? 私は普段から不眠症ですのよ。

[ハイビスカス] すみません、今はとても大切な用事の最中で――

[ツェルニー] ゲルトルーデ!?

[ゲルトルーデ] ごきげんよう、ツェルニー。

[ゲルトルーデ] こちらのレディは、ロドスのオペレーターのミス・ハイビスカスでいらっしゃいますわね? お目に掛かれて光栄ですわ。

[ゲルトルーデ] そちらのショックを受けられている方は、私の邸宅にいらして、しばらくお休みになってはいかがです? そうすればまた明日から頑張れるでしょう?

[エーベンホルツ] ゲ――ゲルトルーデ、お前よくも――

[ゲルトルーデ] よくも――何ですの? 「よくも自分を騙してヴィセハイムを壊滅に追い込む大量殺人事件の犯人に仕立て上げようとしたな」とでもおっしゃりたいの?

[ゲルトルーデ] 違いますでしょう。

[ゲルトルーデ] あなたが本当にお怒りになっているのは、私に弄ばれて、命まで失いかけたにも関わらず、自分がそれに全く気付けなかったこと、そうでしょう?

[ゲルトルーデ] せめて貴族らしい気概を見せてごらんなさいな、ウルティカ伯爵。どうぞ? 何か言ったらどうかしら。

[エーベンホルツ] ……

[ハイビスカス] エーベンホルツさん、彼女の挑発に乗らないでください。

[ハイビスカス] 今訊きたいのは一つだけ。あなたはここへ何をしに来たんですか?

[ゲルトルーデ] もちろん、あなた方が騒々しい音を立てたせいで目が覚めてしまったからですわ、他に何かありまして?

[ハイビスカス] つまり、先ほど拡散されたアーツの音があなたの耳にも届き、自分の細工がバレたことに気付いたという認識で構いませんね?

[ゲルトルーデ] 満点ですわ。

[ゲルトルーデ] まったく残念ですわね。あと一日引き延ばせれば、私の計画は大成功に終わりましたのに。

[ハイビスカス] この場合、あなたが取るべき最善の行動はさっさと逃げることじゃないですか? まさか私たちを倒せば、このまま計画を進められるなどと思っていませんよね?

[ハイビスカス] エーベンホルツさんはもうあなたに協力しません。コンサートを利用してどんな陰謀を企んでいようと、それが実現することはもうありません!

[ゲルトルーデ] そうかしら? 私はそうは思いませんわ。

[ゲルトルーデ] エーベンホルツとクライデがいる限り、私の計画はまだ失敗してはいませんわ。

[ゲルトルーデ] あなた方を片付ければ、再びウルティカ伯爵と交渉ができますわ。彼は貴族の掛け引きをよくわかっていますもの、思い直させるのも無理な話ではありませんわよ。

[ゲルトルーデ] そして、これが一番重要ですわね――あなた方では私の相手をするには力不足ですの。

[ゲルトルーデ] もしあなた方全員がウルティカ伯爵並みの力を備えていらっしゃるとすれば、私もあまり無理はしませんわ。ですがそちらのお三方は……フフッ、失礼。

[ハイビスカス] ……させませんよ。

[ゲルトルーデ] では、ウルティカ伯爵、お互いに一歩譲るといたしましょう。

[エーベンホルツ] お互いに一歩譲る?

[ゲルトルーデ] 増幅器は取り外しますので、あなたは引き続き私に協力をしてください。そうすれば、損失はクライデの命だけで済みますわ……どうせ彼には何日も残されていませんもの。

[エーベンホルツ] 論外だ。

[ゲルトルーデ] 本当に残念ですわ、ウルティカ伯爵。追い詰められたせいで最も不適切な道を選択なさりましたわね。

[ゲルトルーデ] もしそれを心から願っているならまだしも、残念ながら――

[エーベンホルツ] 黙れ――

[ゲルトルーデ] 一生後悔することになりますわよ。

[エーベンホルツ] 黙れと言っている!!

[ゲルトルーデ] こうなってしまった以上、戦うほかに道はなさそうですわね。

[ゲルトルーデ] 私が勝てば、アフターグロー区の守護者を気取っている方々には、おとなしく黙っていただき、ウルティカ伯爵との交渉を続けさせていただきますわ。

[ゲルトルーデ] あなた方が勝ったのなら、私は潔く口を閉じましょう。負けは負けです。

[ゲルトルーデ] アーツユニットを構えなさい、ウルティカ伯爵。それとも感染者のお二人に先陣を切らせる気ですの?

[ハイビスカス] 言いましたよね、そんな挑発は無駄です。

[エーベンホルツ] ハイビスカス、邪魔はしないでくれ、今日は必ず――

[ハイビスカス] 安い挑発に乗らずによく考えてください。ここがどこで、何が仕掛けられているか!

[ハイビスカス] 音楽アーツをまったく使わない保証ができますか? でなければ、感染が拡大するより前に、ヴィセハイムの住民たち全員を狂わせてしまいます!

[ゲルトルーデ] あらあら、頭の回転がお早いこと、ミス・ハイビスカス。

[ゲルトルーデ] 仕方ありませんわね……策を見破られたからには、外へ出て決着をつけましょうか。

[ゲルトルーデ] 先に言っておきますけど、逃げれば勝ちとは思わないことですわ。私個人としては無関係の方に手荒な真似はしたくありませんけど、部下たちがそうとは限りませんもの。

[エーベンホルツ] ほう、大口を叩いていたが、ぞろぞろと大勢の保険を連れてきているんだな。ずいぶんと素晴らしい「自信」をお持ちのようだ。

[ゲルトルーデ] ようやくいつもの皮肉が聞けて、感動で涙が出てきそうですわ。

[ゲルトルーデ] 調子は良さそうですわね、ウルティカ伯爵?

[エーベンホルツ] 当然だ、ミズ・ストロッロ。

[ゲルトルーデ] では外へ出ましょう、心ゆくまでお相手いたしますわ。

[ゲルトルーデ] ウルティカでは騎士ごっこに付き合ってくれる人がいなくて、寂しい思いをしていらっしゃったのでしょう?

[エーベンホルツ] 他に相手がいるなら、私だってお前のようなおばさんと遊びたくはないな。

[エーベンホルツ] なにせ爵位争奪戦で兄に負けた後、彼が死ぬのを待ってその地位に就いたのだからな。きっと彼に喧嘩で勝ったことがないのだろう。

[ゲルトルーデ] よろしくてよ、ますますあなたが憎らしくなってきましたわ。

[エーベンホルツ] お互い様だ。

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