aklib_story_塵影に交わる残響_LE-3_魔弾の射手_戦闘前

ページ名:aklib_story_塵影に交わる残響_LE-3_魔弾の射手_戦闘前

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塵影に交わる残響_LE-3_魔弾の射手_戦闘前

エーベンホルツはクライデと共に、感染者が立ち入ることのできないクリフィーパティオ区へ行き、新しいチェロを購入した。そして再びツェルニーに練習の成果を見てもらうのだった。


[エーベンホルツ] どれどれ……間違いない、ここだ。

[クライデ] すごく豪華ですね、本当に楽器屋さんなんですか?

[エーベンホルツ] 当然だ、ここはヴィセハイム随一の楽器店だからな。そうでなければ連れて来るものか。

[クライデ] でも僕はクリフィーパティオ区へ入る申請をしていませんが……

[エーベンホルツ] 役人どもはとてつもなく仕事が遅い。君の申請書を見る頃には、コンサートはとっくに終わっているぞ。

[エーベンホルツ] それに、バレたところでせいぜい罰金を課せられるだけだ。大事はない。

[クライデ] 感染者がアフターグロー区を離れることに協力した者への処罰は、感染者本人に対するものよりも厳しいと聞きました……

[エーベンホルツ] 大丈夫だ、何も恐れることはない。

[エーベンホルツ] 背筋を伸ばせ、ビクビクするな。店にバレる方が面倒だ――

[経験が浅い店員] いらっしゃいませ。楽器をお探しですか、それとも……

[エーベンホルツ] 当然だ、チェロを買いに来た。

[経験が浅い店員] かしこまりました。

[経験が浅い店員] こちらのお連れの方は?

[エーベンホルツ] 彼か? 彼は私の……

[経験が浅い店員] 失礼ではございますが、身なりの整っていない方の入店は、お断りさせていただいております。

[クライデ] あっ、そ、その僕は外で待ってますね……

[経験が浅い店員] どうやら従者の方でもないようですね? それに何を怯えているのですか? 怪しいですね、もしかしてあなた――

[エーベンホルツ] 口を閉じたまえ。自分が誰を疑っているかわかっているのか? 身なりが整っていないだの怪しいだの……貴族をそのように形容するということは、ここでの仕事を続けたくないようだな?

[エーベンホルツ] 彼は事情があり、このように装わざるを得ないだけだ。華美ではないが質実で他者に不快感を与える衣装ではない。なぜ彼の入店を断る?

[経験が浅い店員] 先程の無礼をお許しください。ですがこちらの方の身なりは、私どもの格調に全くそぐわ……

[エーベンホルツ] 格調?

[エーベンホルツ] 私のこの――いとこは、予期せぬ災難に見舞われたばかりで、大切なチェロもそれによって壊れてしまった。

[エーベンホルツ] 彼を慰めるため、新しいチェロを買ってやろうと思ってわざわざ足を運んだのだ。一店員に、格調が足らぬと妄言を吐かれる謂れはない。

[経験が浅い店員] ご事情に関しては気の毒に思います。ですが当店の規則ですので。

[経験が浅い店員] 申し訳ございませんが、お連れ様の入店は承りかねます。

[エーベンホルツ] いいだろう!

エーベンホルツは自分の着ていたマントを脱ぐと、それをクライデに羽織らせた。

[エーベンホルツ] 彼は今、私と同様の身なりだ。これで入れるか? それとも、このマントすらも身なりの整っていないことになるというのか?

[エーベンホルツ] であれば、私がこのマントを再び身につけたら、私も入店できなくなるのか?

[経験が浅い店員] それは……

[経験が浅い店員] て……店長に聞いて参ります。

[エーベンホルツ] 人を外見ではかる無礼者めが!

[クライデ] このマント、お返ししますね……

[クライデ] ありがとうございます。

[エーベンホルツ] 気にするな。

[エーベンホルツ] チェロを買うと約束したのは私だし、連れてきたのも私だからな。

[エーベンホルツ] たとえあいつと殴り合いになろうと、私は君をこの店に入れなければならない。

[経験が浅い店員] ……先ほどは大変申し訳ございませんでした。お二人には心からの謝罪をさせていただきます。

[経験が浅い店員] お探しの楽器に関しては当店の店長がご案内をさせていただきます……

[ハイビスカス] こんにちは、今お時間ありますか?

[優しい感染者] ハイビスカスじゃないの。

[優しい感染者] 時間ならあるわよ。

[ハイビスカス] あなたの病状についてですが……

[クライデ] ふぅ……

[クライデ] さっきの店員さんが保安官に通報したりしないかと、ヒヤヒヤしました……

[エーベンホルツ] ありえないぞ。彼は君が感染者だとは知らない。君のみすぼらしい格好を見て、ただの平民だと思っただけ――

[エーベンホルツ] おっと、大事なことを忘れていたな。

[クライデ] 大事なこと?

[エーベンホルツ] 衣装だ。

[エーベンホルツ] 略服では舞台に立てないだろう、フォーマルを用意せねば。

[エーベンホルツ] 行くぞ。ヴィセハイムで一番の仕立屋を探して――

[クライデ] ダメです。採寸の時に、源石結晶が見られてしまいます……

[エーベンホルツ] ふむ、それもそうだな。

[エーベンホルツ] では――アフターグロー区で一番良い仕立屋を探そう、どうだ?

[クライデ] 澄み渡る空は青を湛え……♪

[エーベンホルツ] わかったわかった、もういい。

[クライデ] このチェロも、衣装も、本当にありがとうございます!

[エーベンホルツ] チェロはともかく、衣装はまだ受け取ってないだろう。着てみないことにはわからないのだから、そんな急いで礼を言う必要はない。

[クライデ] 明日の午後にはわかりますよ! きっとぴったりです!

[クライデ] ありがとうございます、エーベンホルツさん!

[エーベンホルツ] やれやれ、楽器屋を出てから、歌を口ずさむか頭を下げるかのどっちかだな。何度礼を言うつもりだ?

[クライデ] はい、はい、そうですね。

[クライデ] 川の水面は絶えず姿を変えて……♪

[エーベンホルツ] その曲……

[クライデ] どうされました?

[エーベンホルツ] 聴いたことがあるようなないような……いいや、おそらく私の勘違いだ。

[エーベンホルツ] そういえば、チェロを学んでいたくせに、どうして楽器を持っていないんだ? 壊れてしまったのか?

[クライデ] チェロを教えてくれた先生がプレゼントしてくれたんですが、すぐに壊されてしまったんです。今でもまだ家に置いてありますが、多分……ここを去る時には、弓しか持って行けないでしょうね。

[エーベンホルツ] 弓? 弓だけ持っていて、何の役に立つ?

[クライデ] 弓を見れば、先生のことを思い出せるんです。

[クライデ] 何もなくなったら、先生のことも忘れてしまうんじゃないかと不安なんです。

[エーベンホルツ] 忘れる? だが今もちゃんと覚えているではないか?

[クライデ] 実はもう忘れかけていて……

[クライデ] 先生はロングヘアのサンクタの女性でした。服装は素朴な感じで、口元にはいつも笑みを浮かべていました……

[クライデ] 前はもっとたくさんの特徴を覚えてて、目を閉じてもまるで先生がそこに立っているかのように思い出せましたが……今はダメなんです。

[クライデ] 僕はなるべく出会った人を覚えていたいんです……

[クライデ] だから忘れないように、記念品をもらうようにしています。

[エーベンホルツ] ……記念品。

[エーベンホルツ] じゃあ今回は? ツェルニーを忘れないように、何を記念品にするつもりだ?

[クライデ] うーん、サインをもらいます。

[エーベンホルツ] ではロドスのハイビスカスは?

[クライデ] ハイビスカスさんなら……ロドスのマークが入った空の薬瓶とか?

[エーベンホルツ] プッ、随分と適当なのだな。

[クライデ] 思い出せればいいんですよ。

[エーベンホルツ] では私は? このチェロか?

[クライデ] それは……やはり別の物にしましょう。

[クライデ] 先生がくれたチェロはすぐに壊れてしまいましたし、もしこれもそうなったら……

[エーベンホルツ] それもそうだな。

[クライデ] コインはどうでしょう? 穴をあけて小さなネックレスにすれば、壊れませんし。

[エーベンホルツ] どうして私のは金なのだ!

[クライデ] え、ダメですか? じゃあ変えましょうか……

[エーベンホルツ] いや、いい……それも悪くないかもな。

[エーベンホルツ] これから帰って練習するか?

[クライデ] いえ……まずはツェルニーさんのお宅へ向かいましょう。

[エーベンホルツ] え?

[エーベンホルツ] やめておこう、彼は私を見ると機嫌を損ねる。毎度のことだ。

[クライデ] ただの誤解ですよ、すぐに解けますって。

[エーベンホルツ] 君は初めて彼に出会った時からずっと、私と彼には誤解があると言うが――

[エーベンホルツ] もし本当に誤解があったとしても、もう解けることはないだろう。やはりやめておこう。

[クライデ] 昨日、ツェルニーさんは認めてくれたじゃないですか。

[クライデ] 誤解はちょっとずつ解けていくものですよ。

[エーベンホルツ] ……

[クライデ] 行きましょう。ツェルニーさんの所であなたが買ってくれたチェロを試奏してみたいですし。

[クライデ] こんなに素晴らしいチェロなんですから、わかってくれる聞き手がいなければ、宝の持ち腐れですよ。

[ハイビスカス] こんにちは、今お時間ありますか?

[ためらう感染者] ハイビスカスか? 悪いが、今は暇じゃないんだ……

[ハイビスカス] いくつか質問にお答えいただくだけで構いません。

[ハイビスカス] もし答えたくないものがあれば、答えなくても大丈夫ですよ。

[ためらう感染者] 血は抜かないか?

[ハイビスカス] あなたの許可がなければしません。

[ためらう感染者] わかった。

[ツェルニー] 私としてはあまり認めたくないですが、このチェロは、昨日の今日でアフターグロー区で手に入れられるような代物ではありません。

[ツェルニー] クリフィーパティオ区へ行きましたね。

[クライデ] はい。

[ツェルニー] 随分と大胆なことをしますね。

[クライデ] 実は……僕を店に入れるため、エーベンホルツさんは楽器屋さんの店員と口論もしました。

[ツェルニー] 口論に? クライデさんの格好だけでもクリフィーパティオ区では充分に目を引くというのに、まだ足りないと言うのですか?

[エーベンホルツ] その店員は「身なりが整っていないと入店させられない」と言ったんだ。だがクライデの服のどこが問題だというんだ? どうせ平民の格好に対する言いがかりに過ぎん!

[ツェルニー] 貴族のあなたが、平民の味方をするのですね。

[エーベンホルツ] 私はクライデの味方をしているんだ!

[エーベンホルツ] クライデの演奏レベルはあの店の楽器にふさわしい。貴族だろうと平民だろうと関係ない。

[エーベンホルツ] クライデを店に入れもせず、見た目だけの貴族たちに一級品を売るなど、最高級の木材を薪にして燃やすようなものだ。

[ツェルニー] (うなずく)

[ツェルニー] いやはや、まさかあなたの口からそのような言葉を聞くとは。

[ツェルニー] クライデさん、新しいチェロに慣れておきなさい。

[ツェルニー] 私がエーベンホルツさんの伴奏をします。彼に単独で練習をさせ、癖が直せるかどうか見てみましょう。

[エーベンホルツ] 私の癖を直す……それは、やはり――

[クライデ] わかりました、ツェルニーさん!

[クライデ] (小声)ほら、誤解はちょっとずつ解けていくものですよ。

[クライデ] (小声)ツェルニーさんの態度はもう変わり始めています、あとはあなた次第です。

[ハイビスカス] こんにちは――

[横暴な感染者] 魔族か?

[横暴な感染者] さっさと消えろ、痛い目を見たことをもう忘れたのか?

[ハイビスカス] ……ごめんなさい、お邪魔しました。

[横暴な感染者] ――待て。

[ハイビスカス] まだ何か?

[横暴な感染者] どうせまたあの事務所に戻って隠れるつもりだろ?

[ハイビスカス] 私は――

[喫茶店の店長] 少しやり過ぎではありませんか?

[横暴な感染者] しゃしゃってくんな。てめぇ、何様だ――

[喫茶店の店長] あなたはうちでツケになっているコーヒー代がかなりあったはずですが? 私は何様だと思いますか?

[横暴な感染者] うっ、ビーグラー店長だったか……悪い、気付かなかったよ……

[ハイビスカス] ありがとうございます。

[ビーグラー] 礼には及びません。

[ビーグラー] アフターグロー区は感染者居住区ですからね。活気はありますが、話が通じない人もたくさんいます。気を付けた方がいいですよ。

[ハイビスカス] ご忠告ありがとうございます。

[ビーグラー] これは名刺です。うちの喫茶店の電話番号が書いてありますから、喉が渇いたらお電話ください。うちのデリバリーサービスはとても速いですよ。

[ハイビスカス] あはは……

[ビーグラー] ところで、ロドスの事務所はこれまでずっとアンダンテさんが管理されてましたよね? あなたは最近異動されてきた方ですか?

[ハイビスカス] いえ、実はここの異常現象の調査に来たんです。

[ハイビスカス] そうだ、ビーグラーさん、あなたの病状は――

[ビーグラー] 異常現象? 全く知りませんでした。どんな現象ですか?

[ハイビスカス] 実はですね……

[ゲルトルーデ] 状況はどうなっておりますの?

[軽薄な貴族] ラハマンの工作は成功しました。

[軽薄な貴族] ウルティカ伯爵はおおむね期待通りに行動しています。ラハマンを妨げるような反応は見せましたが、恐らく無意識にやったもので、何も影響はありません。

[ゲルトルーデ] ええ、全く問題ありませんわ。そもそもラハマン一人でロドスの人間をアフターグロー区から追い出せるなんて、最初から期待していませんし。

[軽薄な貴族] ツェルニーは、鼻持ちならない評論家連中をコンサートに招こうとして、以前の人脈をフル活用し、自分の著作権も利用しているようですよ。

[軽薄な貴族] それに、以前彼が軽蔑していた貴族の曲集に、渋々ながら推薦文を書いてやったという情報も……

[ゲルトルーデ] 彼としては、ここまで来れば、もう後戻りはできませんわね。

[ゲルトルーデ] 数日前に来たあのサンクタは? 確か彼女は都市へ入る際、着想を得るためにラテラーノからリターニアへやってきた――そう申告をしていましたわね?

[軽薄な貴族] 記録によると、彼女はすでに視察を終えて、今日の早い時間にヴィセハイムを発ち、次の目的地へと向かいました。

[ゲルトルーデ] それなら、彼女についてはもう注意を払う必要はありませんわ。

[ゲルトルーデ] 行きましょう。アフターグローホールへ向かいますわよ。

[軽薄な貴族] しかし、ツェルニーとの約束の時間は夜ですよ。

[ゲルトルーデ] 準備すべきことがたくさんありますのよ。

[ゲルトルーデ] それに万が一、ツェルニーが気まぐれを起こしてホールに来たりしたら、手配した者だけでは止められませんもの。そうなってしまったら面倒ですわ。

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