aklib_story_遺塵の道を_WD-8_大雪来たれり_戦闘後

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遺塵の道を_WD-8_大雪来たれり_戦闘後

ケルシーはどうにか近衛兵に手傷を負わせたが、彼女もダメージを受けた。対話の末に、近衛兵は一旦ケルシーの主張を認めて去る。ケルシーの怪我は浅くなかったが、カズデルからの手紙を見た彼女は次に向かう目的地を決めるのだった。


[「皇帝の利刃」] スゥー……!

[「皇帝の利刃」] この技……! 貴様の肉体強度は、その判断反応とまったくリンクしていない。貴様は一体何なんだ?

[Mon3tr] (甲高い声)

[ケルシー] 待て、Mon3tr!

[Mon3tr] (悲鳴)

[「皇帝の利刃」] ……化け物、貴様は私に屈辱を与えた。これは当然の報いだ。

[「皇帝の利刃」] フン!

[Mon3tr] ——

[ケルシー] Mon3tr、態勢を整えろ。奴にもう力は残っていない。

[「皇帝の利刃」] スゥー……フゥー……スゥー……フゥー……

[ケルシー] 傷が深いな、近衛兵。

[「皇帝の利刃」] お互いにな、逆徒よ。お前が自分に打った注射……その薬は激痛をもたらすはずだ。

[「皇帝の利刃」] まったく奇妙だ。貴様はまるで戦士の影だな……最も優秀な戦士が備えるすべての素質を有するにもかかわらず、戦うには外の力――一匹の化け物に頼らなければならないとは。

[ケルシー] ……戦闘の痕跡はまだ覆い隠すことができる。だが、お前が汚染させた土地は元には戻らない。これ以上の勝手な行動は慎むべきだ、近衛兵。

[「皇帝の利刃」] ……逆徒よ、貴様は恐れているな。そうだ、もし貴様が本当に近衛兵の秘密を熟知しているなら、恐れて然るべきなのだ。

[ケルシー] 「一近衛兵は一ウルサスである」、この言葉を知らないとは言わせないぞ。大仰な比喩表現だが、実際に示しているのは、ある単純な事実だ。

[ケルシー] 再度指摘してやろう。近衛兵、お前の顔を覆うマスクに亀裂が入り始めているぞ。現実の次元が、お前の体内にある悪魔に干渉している。儀式が施した檻に亀裂が生じているのだ。

[ケルシー] これ以上長引けばお前の手に負えなくなるだろう。それとも、皇帝の近衛兵が伯爵の荘園で恐ろしい破滅をもたらして、本当にヴィクトリアが黙っていると思うか?

[「皇帝の利刃」] ……

[ケルシー] 責務を果たせ近衛兵。「一近衛兵は一ウルサスである」、ウルサスこそがお前たちの存在理由であり、その存続こそがお前たちの存在意義だ。私が教えるまでもないと思うがな。

[「皇帝の利刃」] ……バカな! 逆徒に「責務」などと言われる筋合いはない!

[ケルシー] お前が今忠誠を誓っているのは、現在のウルサスか、それとも偉大なる幻影か、どちらなのだ?

[「皇帝の利刃」] ……

[ケルシー] 答えろ、近衛兵。お前の職位を汚すな。

[ケルシー] ――現ウルサス皇帝は、パインバレーの事件にどのような対処をしたのだ?

[ケルシー] まさか、あの反乱の種や騒動の原因はすべて現ウルサス皇帝の意図したものだと言うつもりではないだろうな。

[「皇帝の利刃」] すべて貴様から始まったものだ!

[Mon3tr] (咆哮)

[ケルシー] ――せいぜい自分を欺くがいい。若き皇帝はあそこで何が起きたのかさえ知らない……それが事実だ。

[ケルシー] お前たちは、皇帝はそれらを知る必要がないと考えている。

[「皇帝の利刃」] ……

[ケルシー] お前は――お前たちは過ぎ去った時代を求めている。

[ケルシー] それが正しいかどうかは私の判断するところではない。だが一人の大公が政治的対立で命を落とすことは、新たな反乱の萌芽となる。

[「皇帝の利刃」] それこそ貴様が判断することではない。

[ケルシー] 私は大公の死がもたらす数々の結果を予想することができる。ある者は怒りから、公正さを求めて彼の死を望んだ。またある者は証拠を抹消し、関係を断ち切りたいがために彼の死を求めた。

[ケルシー] その一方で、彼が生きることを望む者もいた。彼が引き続き責務を果たすことを期待する者、あるいは彼を生き証人として、第三師兵団と関わりのあるあらゆる勢力に圧力をかけようと画策する者。

[ケルシー] 連中にとっては大公の生死などどうでもいい。一触即発の対立をどう処理するかが、最も重要だったのだ。

[「皇帝の利刃」] もしやお前が言いたいのは……

[ケルシー] 本来触れることのできない大公その人を、平凡なウルサスの刺客に個人的な怨恨から――処理させることだけが、駄獣が野草の種を飲み込むように罪をなかったことにする方法だ。

[「皇帝の利刃」] ……どうやら、お前には先見の明があるようだな。我々のために、一介の平民が困難な問題を解決してくれたというのか?

[ケルシー] ウルサスのさらなる内部抗争の激化を回避するために出した、最善の選択だ。

[「皇帝の利刃」] (異様な声)詭弁を弄するな!

[Mon3tr] (雄たけび)

[「皇帝の利刃」] 逆徒め! 貴様の世迷言はウルサスに対する侮辱だ!

[「皇帝の利刃」] たとえ貴様が言ったように、その行為がウルサスに利益をもたらすものであろうと、その決定は貴様によって為されるべきではない!

[ケルシー] ――己を制御しろ、近衛兵。

[「皇帝の利刃」] 貴様の言葉は嘘の匂いがする――貴様は図々しくもウルサスのために行動していると言うのか?

[ケルシー] (汚染が広がっている。あの装置に封じられている悪魔の破片だけでも、この荘園を滅ぼすのには十分だ。)

[ケルシー] ――落陽の谷はすでに恐怖の地と成り果てた!

[ケルシー] (Mon3tr……もし近衛兵が私の命を奪うことに固執するなら……先に奴を始末しろ。その方が私を守るより効果がある。)

[ケルシー] たとえ帝国の栄光がこの先絶えることがなくとも、あの漆黒に染められた土地はもはやウルサスのものではない! この大地のものですらないんだ!

[ケルシー] まさかお前は、同じ轍を踏むつもりなのか!? お前の軽挙が帝国を想定外の戦争に巻き込むんだぞ!

[ケルシー] お前は、先帝の掲げた壮大なる夢物語にのぼせ上がっただけの、ただのウルサス人にすぎない!

[「皇帝の利刃」] ……スゥー……!

沸き上がった殺気が一瞬にして実体へと収縮する。

地を揺るがすほどの感情をぶちまけた後、近衛兵のマスクの裂け目からは、淡く黒い何かが不吉に光り、流れ出る。

[「皇帝の利刃」] ……フゥー……

[ケルシー] Mon3tr、止まれ!

[Mon3tr] (不満げに鳴く)

[「皇帝の利刃」] ……どうした? このチャンスを見逃すのか、唯一のチャンスを。

[ケルシー] お前のやり口はわかっている。もしMon3trに攻撃させれば、その漆黒の棘が私の胸を貫くだろう。

[「皇帝の利刃」] スゥー……どうやら探りは無意味なようだな。貴様は近衛兵のことを熟知している……しかしウルサス人とは。つい先程まで私を人外扱いしていたのに、今になって人だと認めるのか?

[ケルシー] ……もしお前に、いくらか人として認めるところがあるとしても、それはお前が今実行している意志とは関係ない。

[ケルシー] だが、お前が悪魔たちに立ち向かう瞬間、お前は人間の頼れる防壁の一つだ。お前が人として生まれてきた誇りを奪うことは、誰にもできない。

[ケルシー] 少なくとも、結末が破滅しかないその幻にお前が騙されるまでは。

[「皇帝の利刃」] スゥー……

[「皇帝の利刃」] ……貴様の言う通りだ。私は確かに多くのことを見誤った……

[「皇帝の利刃」] それらは「知る」ことによって強大になる。それらに立ち向かうために、それらに関する一切の知識の伝承を抑制することが、あらゆる国家の不文律となった。

[「皇帝の利刃」] 貴様はサーミの雪祭司ではないし、サルゴンの永久の軍隊とも関係ない……それ以外でテラの大地の外の景色を見られる人間は、各国の特権階級における頂点の一握りのみ……貴様は一体何者だ?

[ケルシー] 責務を果たす者だ。

[「皇帝の利刃」] 貴様の責務とは何だ?

[ケルシー] お前の中ではすでに答えが出ているはずだ。私がしてきたことは、お前ほど多くない。

[「皇帝の利刃」] ……フン。

[「皇帝の利刃」] 認めなくてはならんようだな……近衛兵の秘密を知っている部外者は初めて見た。

[「皇帝の利刃」] それに、私と対等に渡り合う奇妙な生物も初めて見た……しかし、貴様の犯した罪、そして握っている秘密は、依然として貴様に数々の罪科を負わせている。

[Mon3tr] (挑発するような甲高い声)

[「皇帝の利刃」] スゥー……事態はすでに私の予想を超え始めている……特に貴様が抱えている謎は恐るべきものだ。私はこの件に対してもっと慎重に対応する必要が出てきた。

[「皇帝の利刃」] 今回は、貴様の戯言を信用したことにしておけ、「ウルサス人」。だが、覚えておくがいい、皇帝の利刃は常に貴様を見ているぞ。

[「皇帝の利刃」] ……ぐっ。

[ケルシー] ……互いに時間がないようだ。伯爵にお前の存在を気付かれれば、未だに内政の落ち着かないウルサスは、新たな災渦の中へと陥ることになるだろう。

[ケルシー] たとえ誰もそれを望んでいなくともな。

[「皇帝の利刃」] ……思い上がるな。私はただ、一人の反逆者の処理にこれほどまで時間がかかるとは思っていなかっただけだ。

[「皇帝の利刃」] フゥー……

[「皇帝の利刃」] 逆徒よ……貴様には慎重に対応すべきかもしれないな。

[ケルシー] お前の責務はワーニャ大公を見守ることだった。だが、今のお前に残された唯一の仕事は、大公の「不慮」の死亡原因を探ることだ。

[ケルシー] 私は彼の死を安らかなものにしてやった。そして今、私はウルサスの国土を離れて遠くにいる。本当に私が……ウルサスの権益を侵したと言えるのか?

[ケルシー] 私の生死のために、どれほどの犠牲を払うのが妥当か――近衛兵なら合理的な判断が可能だと私は信じている。

[「皇帝の利刃」] 貴様――

[「皇帝の利刃」] ――うぐっ!

[ケルシー] それにお前は、今すぐウルサスに戻らなければならない。

[ケルシー] 傷はお前にとって取るに足らないものだろうが、Mon3trに破壊されたパイプは窒息をもたらし――悪魔の影響下で死ぬことになる。それがたとえ死骸の欠片だとしても。

[「皇帝の利刃」] ……

[ケルシー] 急げ。そうすればお前は無事にウルサスへ帰れるかもしれない。

[「皇帝の利刃」] ターゲットに心配されるとは……確かに得難い経験だ。

[「皇帝の利刃」] しかも、一人の逆徒に……通常のウルサス軍人よりもはるかに私のことを知る者に……

[ケルシー] 私もこのように、帝国の利刃と膝を交えて話し合った経験はない。

[「皇帝の利刃」] ――貴様はどれほどの歳月を生きている? 貴様の正体は何だ?

[ケルシー] ただの大公お抱えの医師だ。

[「皇帝の利刃」] ……

[ケルシー] あの時……私が車に乗って館を去る前に、お前は私を殺しておくべきだったな。

[「皇帝の利刃」] 今でも遅くないかもしれないぞ。

[ケルシー] 健闘を祈ろう。

[「皇帝の利刃」] ――ハッ!

[「皇帝の利刃」] 貴様はウルサスのために尽くすべきだったのだ、逆徒よ。帝国は貴様の能力を遺憾なく発揮できる場となったはずだ。貴様は己に無上の栄誉を与えるだろう国を裏切った!

[ケルシー] その言葉通りなら、私は非常に残念に思うべきだな。

[「皇帝の利刃」] スゥー……

[ケルシー] お前は、あの頃の栄華を極めたウルサスを心から愛している。

[ケルシー] であれば、お前は照りつける日差しの陰で腐敗した部分も見えていたはずだ。

[ケルシー] 新しい世代のウルサス人は忘れつつあるが、徐々に酷くなっていく現状に、ウルサスの老人たちは過去を……あの壮大な幻影の日々を懐かしんでいる。

[ケルシー] しかしあれは、本当にウルサスにとって利益のみで、害はなかったのだろうか? 戦争がもたらした利益を消費し尽くしたとき、我々は本当にウルサスに課せられた数多の難題を解決できていたか?

[ケルシー] 栄光では民の腹を満たせない。

[「皇帝の利刃」] 私に忠告をしているのか?

[ケルシー] 独り言だと思ってくれていい。私はもうウルサスに属していない。

[「皇帝の利刃」] ……もうウルサスに属していない、か。

[「皇帝の利刃」] 大公は、お抱えの医師の処置で死に、処置の意図は公爵の苦しみを和らげることだった……そういうことだな。

[ケルシー] お前がヴィクトリアの領土を無事に離れられることを願っている。

[「皇帝の利刃」] ……残念だ。

[「皇帝の利刃」] 我々の守っているものを理解すれば、貴様はウルサスをより強くする力になれるというのに……

[「皇帝の利刃」] さらばだ。また次の機会まで――

[「皇帝の利刃」] 我々は再び会うことになるはずだ。

[ケルシー] ……

[ケルシー] …………

[ケルシー] ……Mon3tr、戻ってこい。彼はもう去った。

[ケルシー] これらの痕跡を……処理しなければ……うっ。

[ハイディ] ケルシー!

[ケルシー] なぜここへ来た、ハイディ。

[ハイディ] 怪我をしたんですか!? ひどい怪我……救急箱を持ってきました。これを――ど、どうやって使うの……?

[ケルシー] ……自分でやる。

[ハイディ] ケルシー、一体何があったんですか?

[ケルシー] 皇帝の利刃。この名をトムソンに伝えてくれればいい。今はまだ君が深く関わる必要はない。

[ハイディ] わ、わかりました。けど、それはウルサス人ですか? ウルサス人がここに?

[ケルシー] 彼らはウルサスの影のようなものだ。

[ケルシー] そしてその広大な影が一体どこに差すのか……それは、帝国の太陽のみぞ知る。

[ケルシー] 運良く影を退けたとしても無意味だ。どう足掻こうが我々の足元の道にまとわりつく。それにより建物が揺れ動くことは少しもない。

[ケルシー] ……これもウルサスだ、ハイディ。これもウルサスの一部だ。帝国の冬には、黒い雪が降る。

[ハイディ] ……

[ケルシー] しかし我々は、まず荘園内のほかの者たちの目に覆いをかける必要がある。

[ケルシー] 最悪の事態は免れた。奴は本当に「ウルサス」をこの土地に振りまいたわけではない……だがその痕跡は、簡単にはごまかせないだろう。

[ケルシー] Mon3tr。

[Mon3tr] (気が進まなそうに低くうなる)

[ハイディ] きゃ――!?

[ハイディ] こ、これはケルシーの……?

[ケルシー] できるだけ早く野獣を二匹探して殺し、ここまで運んでくるんだ。

[Mon3tr] (低くうなる)

[ケルシー] それから……ハイディ、すぐにトムソンに連絡を取ってくれ。真相を隠すためには、彼らの助けが必要だ。

[ハイディ] ど、どうすれば?

[ケルシー] 偽証、誘導、必要ならば賄賂も。恐らくトムソンよりもうまく騎馬警官に対応できる者はいない。

[ハイディ] はい、わかりました――あの、雪をつかんで何をしてるんですか?

[ケルシー] 体温を下げている。

[ケルシー] 私はただ、二匹の野獣の争いに巻き込まれ、運よく逃れた。

[ケルシー] 野獣を庭園に侵入させた守衛は、きっと重い罰を受けるだろうが、背に腹は変えられない。

[ハイディ] でも、でもあなたも早く治療を……ひどい怪我です――

[ケルシー] 大丈夫、我々はすでに最悪の事態を免れた。

[ケルシー] もし奴が、自分の命と引き換えに事を成そうとしたなら……ここにいる誰もが無事では済まなかっただろう。

[ケルシー] ……それとすぐにトランスポーターの手配を頼む。サーミへ行けるトランスポーターだ。

[ハイディ] サーミ? あそこは貧しい土地です……時間がかかります。

[ケルシー] 時間はある。彼女が生きてさえいれば、私は返事を受け取ることができる……受け取れればいいのだが。

[ハイディ] ケルシー! 傷口がまた……

[ケルシー] ……はぁ、手紙が血で汚れてしまったな……

[ケルシー] ……

[ヴィンセント伯爵] 外が騒がしいですね……何かあったのでしょうか?

[明るい女性貴族] 何をおっしゃいます伯爵、話をそらさないでください。お次は伯爵がどうやって公爵の家来の狩人に勝ったのかを伺いたいですわ!

[ヴィンセント伯爵] フッ……公爵の機嫌を損ねるような真似はするまいと思っていたのですが、とっさに闘争心に火がついてしまいましてね。思わず全力を出してしまったのですよ。

[ヴィンセント伯爵] なぜならあの狩人は私に「サヴラとザラックは雇うべきではない」などと言ってきたのです。

[ヴィンセント伯爵] そのうえ彼は、公爵から頂戴した自分の邸宅には、美しいリーベリのメイドと勇猛なフォルテしかいないと自慢げに言ったのです。

[ヴィンセント伯爵] その言葉で私は、昔庭園で働いていた老庭師を思い出したのです。私が物心ついた頃から、彼はここで働いていました。彼はザラックでしたが、だからといって何の不都合もありませんでした。

[明るい女性貴族] まぁ、伯爵の寛容さには感服いたしますわ。

[ヴィンセント伯爵] 最後に、私があの羽獣を射抜き、公爵の狩人は腕を誇示するチャンスを逃したのです。

[風流人ぶる男] あなたは私たちの鑑です!

[ヴィンセント伯爵] しかし、公爵の顔をいくらかでも立てて差し上げるべきでした。

[ほろ酔いな商人] 公爵はそんなあなたを評価しているんですよ。だったらあなたは、できる限りご自分の勇ましさを示すべきです!

[ヴィンセント伯爵] ハハッ、おっしゃる通りかもしれませんな。しかし――

[ヴィンセント伯爵] 弓と羽獣は狩人にこそお似合いだ。私は自分が何者か、はっきりとわかっていますよ。

[ケルシー] ……

親愛なるケルシー士爵

先日、あなたの予想通り、サルカズ衆王庭の重臣たちがテレジア殿下に謁見しました。 古き血族はテレシス将軍に対して多大な敬意を払いましたが、バンシーの主は最年少の継承者を遣わしただけでした。

……テレシス将軍および軍事委員会は、カズデルの台頭がいかなる国家勢力にも干渉されないように取り計らっています。 数十もの移動都市を建設するのに十分な建築資材が将軍の監督の下、カズデルに届けられました……

以下がここ一ヶ月に起こったすべての報告内容になります。

.........

......

ケルシー。

[ケルシー] (これはテレジアの筆跡……)

ケルシー。

本当に驚いたわ。 バンシーが派遣した継承人が、まさか男性だったなんて。

バンシーの血が、彼の若さを永く保っているのでしょうね。 彼はまだ若く、青年に見えたわ。 でも少し口を開くだけで、彼は技を繰り出すことができるの…… 彼は天性の呪術の達人だわ。

彼から、王庭の変化が窺えたわ。 サルカズはまさに新たな段階に向かっている…… そんなふうに感じるの。

ケルシー。

テレシスはずっと委員会で夜通し働いているわ。 彼らの決定は、外界からの圧力を受けて徐々に軌道を外れていって、私の話に耳を貸さなくなり始めた……

多くの人が心配しているの。 もし諸外国がカズデルの再集結に気付いたら、彼らは躊躇なく私たちを地図から消し去るんじゃないかって。

ケルシー。

あなたが大地全体へ目を向けていることは知ってるわ。

けど、それでも私はあなたに戻ってきてほしい。

将来訪れるであろうどんな変化をも受け入れるためにも、私たちは準備をしなければならない。 私たちがそれを成し遂げるためにはあなたが必要なの。

レム・ビリトンの探索チームから新たな報告が届いたわ。 あなたの説明と合致する遺跡の手がかりが見つかったのよ。 でもまだ断片的で、きっと大変な作業になると思う。 全てを掘り起こすには恐らくかなりの時間が必要になる。でも――

――ケルシー、あなたは…… 「ロドス・アイランド」が何を意味するか知ってる?

[ケルシー] ……こんなに早いとは。

[ケルシー] ……

[エリオット] あなたはどこへ行くんですか?

[ケルシー] ……ウルサスだ。

[ケルシー] チェルノボーグに行く。

[エリオット] ……聞いたことがない都市です。

[エリオット] そこへ行って何をするんですか?

[リリア] 一緒にサーミへは行かないんですか?

[ケルシー] そうだ。私はリュドミラをシラクーザに連れて行く。

[ケルシー] それからヴィクトリアへ行く。

[ケルシー] これが君の願いではないのか?

[リリア] 私は……

[リリア] ……

[リリア] あなたが生きることも私の願いです、ケルシー所長。

[ケルシー] ……

[ハイディ] ケルシー?

[ケルシー] ……

[ケルシー] ハイディ……君は、君のお父上とともに、引き続きヴィクトリアで我々の為すべきことをしてほしい。

[ケルシー] 我々の唯一の目的は、栄光を謳うこれらの都市が、公爵たちの内乱によって沈むのを避けることだ。どんな手を使ってでも……

[ハイディ] ……ケルシー?

[ハイディ] も……もうここを発たれるのですか?

[ケルシー] 遅かれ早かれこうなる運命だ、ハイディ。

[ケルシー] 伯爵に疑われてしまう。さぁ、パーティーに戻ろう。

[ヴィンセント伯爵] なんてことだ! 何があったんですか? どうしてそんなにひどい怪我を!?

[ヴィンセント伯爵] 早く医者を呼びなさい!

[ハイディ] (リチャードおじさま……)

[風流人ぶる男] ……あそこにいるのは!? 巨大な野獣が二匹も! まさかあなたは野獣に襲われたのですか!?

[明るい女性貴族] まぁ! 数年前の天災で、たくさんの凶悪な野獣たちが感染したと聞きましたけど……

[ケルシー] ……大丈夫です、皆さん。ただのかすり傷ですから。ハイディさんが手当てをしてくれました。

[ハイディ] (本当に大丈夫ですか? これはただの……)

[ヴィンセント伯爵] 話さない方がいい、傷に障っては大変だ……まさか私のパーティーでこんなことが起こるとは! 守衛は何をしていたんだ!?

[ヴィンセント伯爵] ケルシー修道士、あなたは早くお休みになってください。誰か! 一体何があったのか、庭園を見てきなさい!

[風流人ぶる男] 私が行きましょう。伯爵、私の剣術の腕はあなたもご存知かと。

[ヴィンセント伯爵] おぉ、リチャードさん。しかしあなたは客人で……わかりました。あなたの勇ましさを見せていただけますか?

[ヴィンセント伯爵] さぁ、ケルシー修道士。私の医者にその怪我を診させてください。すぐに参りますから。

[ケルシー] 申し訳ありません、伯爵、パーティーの興を削いでしまいました。

[ヴィンセント伯爵] 何をおっしゃいます! ケルシー修道士……これは私の失態です。荘園に刺客の侵入を許してしまうとは――

[ケルシー] 伯爵、どうかこの件を深く追求なさらないでください。

[ヴィンセント伯爵] ええ……わかりました。あなたは少しも動揺していないのですね。

[ヴィンセント伯爵] しかしせめて、賊が何者だったのか教えていただけませんかな? ここまで大胆な真似をする輩が――

[ケルシー] ……

[ヴィンセント伯爵] ……わかりました。厳重な警戒を易々とすり抜ける殺し屋ならば、確かに凡庸な一貴族が知るべきではないかもしれません。

[ヴィンセント伯爵] ケルシー修道士、お願いしたいことが。

[ケルシー] どうぞ。

[ヴィンセント伯爵] 私の親友のトムソンを、この陰謀から守っていただけませんか?

[ヴィンセント伯爵] 彼は偉人というほどではありませんし、すべての国を守ることなどできません。しかし、我々のヴィクトリアを守ることはできます。

[ヴィンセント伯爵] 彼は私のような貴族には手の届かないことを、成し遂げられる。ならば、私がすべきは、彼が自由に動けるようにすることです。

[ケルシー] 何一つご説明差し上げていないというのに、それでも我々を守っていただいたこと、感謝します。

[ヴィンセント伯爵] ハハッ。私にそれを知る必要がありますかな? 私はただ、自分の役割を演じていれば良いのですよ……狩られるのを待つ、よく肥えた羽獣の役をね。

[ヴィンセント伯爵] わかっていますよ……学生時代からずっと、トムソンはそういう男でしたから。

[ヴィンセント伯爵] ……ケルシー修道士。

[ヴィンセント伯爵] 心より感謝いたします。

[ケルシー] あなたを騙した者に感謝などする必要はありません。

[ヴィンセント伯爵] 私の家族と民衆が平和な日々を過ごせるならば――私は大地の全てから騙されようと嘲笑われようと、一向に構いません。

[ヴィンセント伯爵] あなたも私も、よく承知している。

[ヴィンセント伯爵] もう行かれるのですか? 傷もまだ塞がっていないというのに。

[ケルシー] ええ。幸い、ただのかすり傷です。

[ケルシー] 伯爵、「あの二匹の野獣」が残した痕跡は……

[ヴィンセント伯爵] ええ、心得ておりますとも。

[ハイディ] ケルシー……

[ヴィンセント伯爵] さて、別れのシーンは若者に任せるとしましょう。

[ヴィンセント伯爵] 私は戻ります。皆、野獣のことでかなりショックを受けているようですから。

[ヴィンセント伯爵] ……どうかお元気で、ケルシー修道士。

[ケルシー] 伯爵の言う通りだ。準備ができているかどうかにかかわらず、若者は未来を担わなくてはならない。

[ハイディ] おじさまは本当は――

[ケルシー] ヴィクトリアの最も辺鄙な土地をただ守るだけだとしても、平和そのものが嘘をつくことはない。

[ケルシー] 故郷を守る――それは、何世代もにわたってヴィクトリア人が尊ぶべきとした真理だ。

[ハイディ] ……

[ケルシー] そして君のお父上はそれを実現しようとしている。だが――

[ケルシー] 大雪がやってきた。

[ケルシー] 君は準備ができたか?

[ケルシー] ――君に準備ができるか?

[ハイディ] ……

[ハイディ] はい。

[ケルシー] ……お父上に尋ねるといい。彼は、どうやって私を見つければいいかを知っている。

[ケルシー] いつの日か、私たちはまた別の場所で会うかもしれないな。

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