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OP:OD_OD-1_外勤記録_戦闘前
レンジャー他数名のロドスオペレーターの外勤任務に不慮の事故が発生。帰還用の乗り物がなくなってしまったため、四人のオペレーターはサルゴンの砂漠を徒歩で渡りきることを強いられた。
[シュヴァルツ] ただ今戻りました。
[レンジャー] 何も問題はなかったかのう?
[シュヴァルツ] 前方30キロ圏内に注意すべきターゲットはありません。今のところこのエリアは安全と言えます。
[レンジャー] そうか。地図を見てみるとしよう。
[レンジャー] ふむ……
[レンジャー] 方角は合っておる。このまま北へ進めば、地元民がトランヒルと呼ぶ場所が見えてくるじゃろう。
[レンジャー] そのふもとなら足休めができるじゃろう。それから西へ二日ほど進めば、フェコンに着く。
[シュヴァルツ] フェコンが我々の目的地ですか?
[レンジャー] 最終目的地ではないが、ちょうどいい中継地点なんじゃ。フェコンにはクルビアのキャラバンがあって、それに付いていけばツインリバーに着く。あそこにはロドスの事務所があるんじゃ。
[レンジャー] 事務所に着けば、何らかの移動手段が得られるからのう。残りは楽ちんじゃ。
[フランカ] よかったー! やーっと徒歩での旅が終わるのね。靴がすり減ってなくなるところだったわ。
[リスカム] たくさん外を歩けば身体にも良いし、フランカのダイエットにも役立つよ。
[フランカ] あなたね!
[シュヴァルツ] 通信機の調子はどうですか? 信号ノードにつながりましたか?
[リスカム] 相変わらずダメです。この調子だと、フェコンに着くまでロドス本艦と直接連絡を取ることは難しそうです。
[リスカム] 高出力の発信機が手に入れば話は別ですけど……
[フランカ] 夢みたいなこと言わないの。この近くには他の移動都市もないし、そんなの見つかるわけないでしょ。
[レンジャー] そうじゃ。だから出発前に十分な食料と水を持たせたんじゃ。フェコンに着くまでは補給が難しいからのう。
[レンジャー] 儂の記憶じゃとこの近くには小さな集落があったはずじゃ。しかし随分と昔の話じゃからのう。今でもあるとは言い切れん。
[リスカム] レンジャーさんは、このエリアにお詳しいんですか?
[レンジャー] ハハハッ……昔の話じゃよ。実はもうずっとこの辺りの荒野には来てないんじゃ。
[リスカム] その地図は、レンジャーさんがご自身で?
[レンジャー] そうじゃ。いわゆる「レンジャー」は皆、自分で描いた地図を持っておるものじゃ。じゃがまさかこの地図がまだ役に立つとはのう。ここらの地形が天災で変わり果てておらぬのは幸いじゃった。
[リスカム] 今回もレンジャーさんにお手数をおかけしてしまって、本当に申し訳ないです。
[レンジャー] 気にせぬことじゃ。おぬしら若者の面倒を見るのも儂の仕事じゃからな。
[レンジャー] それに、今の状況は儂にも責任がある。もし事前に、あのような事態に備えた予備プランも用意しておったなら、こうはならなかったはずじゃ。
[リスカム] あのような事態……商人が言っていた、正体不明の傭兵が倉庫を襲撃して、しかも偶然にもわたしたちの移動手段を奪って行ったという話ですか?
[リスカム] そんなの、信じろと言われても無理があります!
[フランカ] きっとあの商人がコッソリあたしたちの車を持ち出して売りさばいたのよ。それで適当に苦し紛れの言い訳をでっち上げたんだわ。
[リスカム] 珍しくフランカに同意。
[フランカ] 「珍しく」は余計じゃない?
[リスカム] BSWなら、あんな簡単に商人の言葉を信じたりはしなかったと思います。
[レンジャー] じゃが今はロドスのオペレーターとして動いとる。儂はできるだけ地元の者と衝突したくないんじゃよ。
[レンジャー] 薬は無事送り届けて、向こうも報酬をごまかしたりしてはおらん。むやみに疑ったりもできないじゃろうて。
[シュヴァルツ] それでも精錬源石錐を携帯したまま荒野を歩くとは、危険にもほどがあります。
[レンジャー] あやつらの説明はほころびだらけじゃが、元よりヴイーヴルの現地傭兵が素直に話すことなどは期待してはならん。次回からは、儂ももっと気を付けねばならぬのう。
[レンジャー] じゃが帰ってから車を失ったと報告することを思うと、今から気が重いのう。
[リスカム] はぁ……ヴイーヴルはそういう「場所」ですからね。
[レンジャー] とは言え……
[レンジャー] たとえ地図やアーツがなくとも、儂ならなんとか方向はわかる。しかしそうやって進めば、あまりにも時間を食い過ぎる。儂らは人数が多いからのう、水と食料が持たんじゃろうな。
[シュヴァルツ] サルゴンの荒野で、道具に頼らず方向がおわかりになるんですか? 一体どうやって……?
[レンジャー] 機会があれば教えてやるわい。ただの老いぼれの経験じゃよ。
[フランカ] なんて言うか……
[フランカ] さすがはあの「赤き峡谷の遊侠」って感じよね。
[レンジャー] ハハハハッ、ずいぶん古い呼び名を知っておるのう。
[レンジャー] そんなもの、ただの誇張された二つ名じゃよ。
[フランカ] つまりあの話って本当なの? 一日のうちにジェンキンス七兄弟全員を逮捕して、一人で錆鎚の強盗組織を止めたとかいう……
[リスカム] 一本の矢でターゲットを十体も射抜いたり、空中から放った矢でラテラーノ人の連射銃の弾を撃ち落として見せたって話も……
[レンジャー] ほうほう、なかなかに面白いのう。あの話は今ではそうなっておるのか。
[リスカム] BSWにいたサルゴンの人たちも時々「レンジャー」組織の話をしていましたが、ほとんどがこういう内容でした。
[フランカ] どれもこれも、小説のテーマにはピッタリよね。
[リスカム] シュヴァルツさんも、何か聞いたことはありませんか?
[シュヴァルツ] ……ええと……
[シュヴァルツ] 以前クルビアで、各地を渡り歩いていた傭兵から話を聞いたことがあります。
[シュヴァルツ] 「血染めの谷の曲刀」とか、「首長の災い」とか、そういったお話です。
[レンジャー] ……
[レンジャー] うーむ、それはちと……誇張しすぎじゃ。
[レンジャー] 「レンジャー」は皆が想像しておるような組織とは違うんじゃ。
[レンジャー] どのような噂を耳にしたかは知らぬが、広く伝わっておる噂のほとんどが真実とは異なるものじゃ。
[レンジャー] レンジャーは決して戦闘組織ではないんじゃ。儂に言わせれば、荒野で団結したサバイバーたちといったところかのう。
[レンジャー] 初めは不穏な時代に苦しむ一般人が、ほんの何人か集まっただけの集団じゃった。戦乱の中立ち上がり、悪党に襲われた村を保護しておったんじゃ。
[レンジャー] 皆訓練された戦士などではなく、避けられぬ戦争や略奪の中で誕生した抗う者たちなんじゃ。
[レンジャー] 彼らは理不尽に対して怒り、残酷な運命に屈することを拒絶しておった。
[レンジャー] その後、参加者が増えていき、民兵の集団から地域性のある組織へと徐々に変化を遂げたんじゃ。そして荒野の各地で様々な集落に医療や防衛の技術を提供していった。
[リスカム] BSWの外勤記録の中で、読んだことがあります。サルゴンの地域では、正式な軍隊以外に、レンジャーと名乗る集団も荒野の悪党や村を襲う傭兵を掃討していた、と。
[レンジャー] 確かにそういったこともあったかのう。
[レンジャー] あの頃は、レンジャーの中に確かに……何人か豪傑がおった。そして確かに悪人を捕まえたりもしておったのう。おぬしが言ったことは事実じゃが、それが普段の姿というわけではない。
[レンジャー] レンジャーたちは、ほとんどの時間を町の人々のために井戸を修理したり、野獣から守ったり、薬を集めたりに費やしておった。あくまで些事を片付ける便利屋にすぎぬのじゃ。
[レンジャー] それに、当時はまだ、この地域はサルゴンの領土に併合されておらんかったから、守る者もおらんかったのでな……
[フランカ] でもレンジャーさんも、きっと当時の「豪傑」のうちの一人だったんでしょ?
[レンジャー] ハハハッ、今も昔も儂はただの斥候じゃよ。豪傑などではないわ。
[シュヴァルツ] ……ただの斥候とは思えない実力ですよ……
[シュヴァルツ] レンジャーという組織は、最終的には消えてしまったのですよね?
[レンジャー] それについては話すと長くなるわい………
[レンジャー] あれから色々なことが起きたからのう…戦争が終わり、サルゴンの首長たちは各々が欲する土地を手にした。
[レンジャー] だが彼らの立場からは、服従を拒絶する組織を容認できなかったんじゃ。
[レンジャー] 当然、首長の態度以外にもレンジャーの解散には多くの原因があったがのう。じゃがそれはもうずっと昔のことじゃ。細かい事情は老いぼれの頭からはすっかり抜け落ちてしまったわい。
[フランカ] つまり……あたしたちが聞いてたような大げさな話は、実はどれも作り話ってこと?
[レンジャー] 真実とは往々にして味気ないものじゃ。大げさに描かれた伝説も、語り継がれるうちにどれほどの装飾が施されたものかわからぬ。
[レンジャー] 当事者が生きているうちですら、先ほどのあり様じゃ。
[レンジャー] 結局、興味を引くために話を盛るのが人の性じゃ。そして、それを聞いた者がさらに尾ひれをつけて、より大げさにしていく。
[レンジャー] さてさて、老いぼれのつまらない話はこのへんにしておこうかの。そろそろ出発の準備をするぞい。
[フランカ] そういえば、みんなどことなく身構えてるけど、もしかしてあたしたちってもうサルゴンに入ってる?
[リスカム] 昨日の夜の時点でもうサルゴン領に入ってるよ……しっかり気を引き締めておかないと、何かあってもフォローしないよ。
[フランカ] ムカつくわね。
[レンジャー] 儂らは今、サルゴンのバイエル首長が管轄するエリアにおる。副首都まではまだまだかなりの距離じゃがな。
[レンジャー] ここからは……
[レンジャー] 待て! 動いてはならぬ!
[シュヴァルツ] ……聞こえましたか?
[レンジャー] 皆、動くでないぞ。何かが接近中じゃ。
[リスカム&フランカ] !!
[シュヴァルツ] ……音が近い……
[レンジャー] 足元じゃ! 散れ!
[リスカム] フランカ! 避けて!
[醜い変異生物] グオォォォォ!!!
[シュヴァルツ] !
[シュヴァルツ] あれは一体……なんという生物ですか?
[リスカム] あれは……サンドビースト?
[フランカ] サンドビーストって、こんなんだったっけ?
[リスカム] 一匹、二匹……いや、多すぎる!
[レンジャー] 距離を取れ! 迎撃じゃ!
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