aklib_story_吾れ先導者たらん_GA-1_灯台下暗し_戦闘前

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吾れ先導者たらん_GA-1_灯台下暗し_戦闘前

セシリアの光輪が執行人見習いエゼルの前で明滅し、暗くなった――しかしこれほどまで幼いサンクタが、堕天することなどあるのだろうか?


[スキウース] ねぇ、ユカタン……ラテラーノ人の食生活っておかしいと思わない……?

[ユカタン] イェラグと比べると、確かに甘めの味付けに偏ってるね。

[ユカタン] だけどウースも甘党だろう?

[スキウース] それにしたってどれもこれも甘いのは無理よ!

[スキウース] はぁ、イェラグが恋しくなってきたわ。

[スキウース] これも全部ラタトスのせいよ。「一族の地位を再確立するために、どんなチャンスにでもすがりつけ」とか何とか偉そうに……そのくせ自分は来ないなんて。

[ユカタン] お義姉様がウースを信頼している証拠さ。あんな事があっても二人が協力して頑張っているからこそ、今のブラウンテイル家があるんだ。

[スキウース] またそうやって我関せずって言い方して。ユカタン、あなた本当は裏方のポジションを楽しんでるんじゃないの。

[ユカタン] 僕は輝いてるウースを見ていられるだけで満足だ。

[スキウース] ……もうっ、あなたの口まで甘口になっちゃったわけ?

[ユカタン] ハハ……それよりウース、このサミットは思っていた以上に価値があるのかもしれない。

[ユカタン] 招待に応じる国なんてほとんどないと思っていたけど、この規模を見るに、ラテラーノの影響力を過小評価していたと言わざるを得ない。

[スキウース] それはそうかもしれないけど……話をそらさないでよね!

[短気なリターニア人] (リターニア語)まあっ、どこを見ているのかしら。

[スキウース] (リターニア語)そっちがぶつかってきたんでしょ。

[短気なリターニア人] あらあら、拙いリターニア語ですこと。あなたはどちらの田舎からいらっしゃったのかしら。

[スキウース] イェラグよ。どこが田舎なのよ。

[短気なリターニア人] イェラグ?

[短気なリターニア人] イェラグ……ってどこですの?

[朗らかなレガトゥス] シャロン夫人、イェラグと言いますと、ヴィクトリア、クルビア、カジミエーシュの緩衝地帯に位置する雪国でございます。

[短気なリターニア人] あんな雪山の中に国がありましたの? ふん、それこそ田舎ではありませんこと!?

[短気なリターニア人] 片田舎の小国の使者風情が、わたくしのような公爵夫人に楯突く気ですの?

[スキウース] ……ご夫人、改めて申し上げますが、イェラグは「田舎」などではありません。イェラグという国を知らないのは、おそらくあなたの見識が狭いからでしょう。

[スキウース] それともう一つ……ご夫人の方からぶつかってきたのは明らかですので、謝罪を要求いたします。

[短気なリターニア人] まぁ……!

[朗らかなレガトゥス] シャロン夫人、ここは大聖堂ですので……

[オレン] シャロン夫人、恐れながら申し上げます。あなたが今おられるのはラテラーノであって、リターニアにあるご自身の領地ではありません。

[短気なリターニア人] あなたは誰ですの?

[オレン] ラテラーノのレガトゥスです。

[短気なリターニア人] レガトゥスがどういうおつもりかしら? ここが大聖堂だから何ですの? ラテラーノはそこの田舎者の味方だとでもおっしゃりたいの?

[オレン] ラテラーノは規則の味方です。ですので、シャロン夫人はスキウース夫人に謝罪すべきと考えております。

[スキウース] あたしの名前を知ってるの?

[オレン] 各国の使者の名を把握しているのは、レガトゥスとして当然のことでしょう?

[短気なリターニア人] へぇ? それなら、わたくしが誰かもわかっているのでしょうね。

[オレン] もちろんです、リターニアのフランシス公爵夫人であられるシャロン様ですね。

[オレン] ですがもう一度申し上げます。ここはラテラーノなのです、夫人。

[オレン] ラテラーノにおいては、何卒戒律と規則を尊重していただくようお願い申し上げます。あなたがリターニアでどれほどの特権を有していようと、ラテラーノでは効力を発揮しません。

[短気なリターニア人] これがラテラーノ流のおもてなしですの?

[オレン] いえ、あなたが「ラテラーノの客人」でいてくだされば、我々は当然誠意を尽くしておもてなしいたしますが……

[ヴェルリヴ] ――オレン、あなたはいつからラテラーノの代表者になったの?

[オレン] ラテラーノの使者である俺に、まさかその資格がないとでも?

[ヴェルリヴ] ええ、ないわ。ここ大聖堂ではね。

[ヴェルリヴ] シャロン夫人、大変失礼いたしました。どうか寛大な心でお許しください。

[短気なリターニア人] フン、枢機卿が今さらしゃしゃり出てきて穏便に済まそうなんて、対応が遅すぎませんこと?

[ヴェルリヴ] 公爵夫人、どうかご理解のほどよろしくお願いいたします。失礼を働いたレガトゥスには、当然相応の処罰を与えます。後ほどご宿泊先にて、教皇庁の誠意をご確認いただけるかと。

[ヴェルリヴ] スキウース夫人もどうかご容赦ください。些細な誤解によるものとは言え、我々の至らなさが原因です。もし寛大にも私の謝意を受け入れてくださるなら、後ほど別室で改めてお詫びいたします。

スキウースがユカタンを見ると、ユカタンは小さくうなずいた。

[短気なリターニア人] フンッ、これだからラテラーノ人は……まぁよろしいですわ。

[ヴェルリヴ] ありがとうございます。アレッソ、マルティナ、こちらの御三方を誠心誠意もてなすように。

[ヴェルリヴ] オレン、あなたは私と来なさい。

[オレン] 処罰だろ。へいへい……

[エゼル] はい。こちらのステファン区の故人は、遺言に類するものや遺言の事前登録情報を一切残してません。後ほど公証人役場に戻って二次確認フローを提出します。

[エゼル] 今ですか? ステファン区中央病院ですが……いえ、僕は何ともありませんよ。転んで怪我をしてしまった女の子がいたので、検査に連れてきたんですが……

[エゼル] いえ、交通事故を起こしたわけでは……

[エゼル] はい、両親は近くにいませんでしたし、その子もまだ意識を失ったままなので家庭情報は未確認です。目を覚ましたら保護者の元へと送り届けようと思います。

[エゼル] そうだ、しばらく目を覚ましそうにない場合、公証人役場の権限を行使することも視野に……

[エゼル] ……え? これを実践研修任務の一環としていい? ……わかりました、完了後追加の任務書類を提出します。

[エゼル] ……あっ、お待たせしてすみません。連絡は終わりました。

[おしゃべりな看護師] お気になさらず! 簡単な検査は終えましたが、外傷も頭部の異常も確認されませんでした。気を失ったのは、頭部への衝撃が原因ではなさそうです。

[おしゃべりな看護師] ただ、微熱がありましたので元々病気だった可能性があります。気を失った原因についてはさらなる検査が必要ですが、大きな問題はなさそうです。

[おしゃべりな看護師] あ、病室は2127号室になります。検査結果が出るまでそちらでお待ちいただいて構いませんよ。

[おしゃべりな看護師] あの子は妹さんですか? 勤務中とお見受けしますが、どうして執行人が勤務中に妹さんを連れているんですか? このステファン区で執行人に会うことなんてめったにないんですよ!

[エゼル] ……いえ、妹じゃありません。

[おしゃべりな看護師] ならどうして執行人がわざわざ病院まで? まさか任務対象? そんな……執行人ってそんなに冷酷なんですか? あんな小さな子供にまで律令の執行をするの? あの子は一体何をしたんですか?

[エゼル] ……僕はただ、偶然あの子が倒れるのを見かけただけです。もちろん任務対象でもありません。おそらく近所の子供だと思いますが……

[おしゃべりな看護師] そうなんですか? ならきっと越してきたばかりですね。

[おしゃべりな看護師] ステファン区の病院はここだけなので、病気の子はみんなここに集まるんですよね……繁忙期の小児科診察室を見せたかったなぁ。ほんっと忙しくて大変なんですから!

[おしゃべりな看護師] あ、でも実は私、幸いなことに来週療養部に異動するんです。当院の療養部はご存じですか? すっごく有名なんですよ!

[おしゃべりな看護師] 去年の療養部の車椅子早撃ち大会の優勝者がもうすごくって! 見たことない速さの銃さばきで、もしかして銃騎士なんじゃないかって疑うほどで……それにしてはまだちょっと若かったですが……

[おしゃべりな看護師] なんでそんな難しい顔してるんですか? とにかくうちの療養部は有名なんですよ。大聖堂の人たちだってここで療養してるんですから!

[エゼル] ……先ほど、あの子は越してきたばかりとおっしゃいましたが、それはどうしてですか?

[おしゃべりな看護師] ああいけない、私っていつも言葉足らずなんですよ。ええと、初めて見る子なのでそう思ったんです。あなたの妹さんじゃないなら、あんな小さな子がほかの区から来るなんて考えられませんから。

[おしゃべりな看護師] もちろん偶然一回も見てないだけって可能性もありますけど、あんなどう見ても病気がちな子を私が見逃してるなんて考えづらいですよ!

[おしゃべりな看護師] あ、さっき小児科診察室の話をしましたよね? 実は先週……

[厳格な看護師] エリザ、また患者のご家族とおしゃべりしちゃって。検査センターへ結果を取りに行くよう先生が言ってるわよ。

[おしゃべりな看護師] はーい――

[エゼル] ……

[真面目な医者] ……本当に検査結果を取り違えてないんだね?

[おしゃべりな看護師] はい、何か問題でもありましたか?

[真面目な医者] こんな不思議な血液サンプルの分析結果は初めて見たんだ。

[真面目な医者] ……コピーはとったから、原本を院長室へ届けてくれるかな。私のメモも一緒に頼む。

[真面目な医者] 私は療養部へ行ってくるよ。

[市民?] ……チッ、あの看護師、院長室の方へ向かったぞ。パティア、どうする?

[パティア] ……何人か妨害に行かせて。ちょっと時間稼ぎができればそれでいいから、騒ぎにならないように気をつけて。

[パティア] あの医者は?

[市民?] おそらく療養部へ向かった。セシリアのところへは行ってない。

[パティア] そう、ならいいわ。まだあの執行人にバレずに済みそうね。

[パティア] 残りの人はあたしと一緒に来て。さっさと執行人を引き剥がして、病院の人が来る前にセシリアを連れ去るわよ。

[パティア] ただし、セシリアに手荒な真似はしないようにね。いい?

[パティア] あの子はあたしたちの仲間なんだから。

[パティア] くれぐれも嫌われちゃわないようにしないと。

ねえママ、パパに会うだけなのに、どうしていつもこんなに遠くまで来ないといけないの? もう真っ暗だよ……

それはね……パパはラテラーノに来られないからよ。私たちとは一緒に住めないの。

どうして?

パパは私たちとは違うからよ。

じゃあずっとパパと一緒にいられないの?

……パパもそれを望んでないの。いつかあなたもわかるわ……

どうして……パパはわたしが嫌いなの? わたしがいい子じゃないから?\nもしわたしがいい子にしてたら、パパはずっとわたしたちのそばにいてくれる?

……セシリア、パパはそばにいられなくても、ずっとあなたを愛してるのよ。信じてあげて。

[セシリア] ううっ……うーん……

[セシリア] ママ……

[エゼル] 目が覚めたんだね!

[セシリア] お兄さん、誰……ここはどこ……

[エゼル] ここは病院だよ。君が急に倒れちゃって、すぐにご両親が見つからなかったから、僕が病院まで連れてきたんだ。

[セシリア] びょういん……ここが病院なの?

[セシリア] でも……お、お兄さんが着てる制服、ママが言ってた……

[セシリア] ……

[エゼル] ママはなんて?

[エゼル] (そういえば、あの時この子に避けられていたような……)

[エゼル] えーっと、僕は悪い人なんかじゃないよ。ちゃんとママのところまで連れて行ってあげるから心配しないで。

[セシリア] ママを探してくれるの? ママはね、マントみたいな服を着た人に連れて行かれちゃったの!

[エゼル] (……まさか誘拐事件!? だからこの子はあの場所に一人で?)

[エゼル] ……ひとまず落ち着いて。僕は公証人役場の執行人なんだ。探すのを手伝ってあげるから、ママが連れて行かれた時のことを教えてくれるかな?

[セシリア] ……公証人役場……

[エゼル] うん。僕は公証人役場のエゼル。ほら、名札を見て。

[セシリア] ……

[セシリア] 本当にママを探してくれるの?

[エゼル] もちろん。お名前を教えてくれるかな?

[セシリア] ……セシリア。

[セシリア] ……ううっ……

[エゼル] なっ……!? 光輪が……どうして……

[エゼル] (どういうことだ……どれだけ気分が優れなくても、光輪がここまで暗くなることはないはず……)

[エゼル] (唯一考えられる可能性は……)

[エゼル] (……でもこの歳なら守護銃はまだ持ってないだろうし、そんなことあり得るはずが……)

[セシリア] ……うーん……

[エゼル] (いや、それよりも……)

[エゼル] セシリア、苦しくないかい? 君の光輪が……

[セシリア] ……たまにこうなるの……ママは病気だって言ってた……ちょっと我慢すればよくなるよ……

[エゼル] ……

エゼルはあることに気付いた。

セシリアは今、体調不良の苦しみと母親が見つからない焦燥感の渦中にいるはずだ。

しかしエゼルには、セシリアからそんな苦しみや焦りは伝わってこなかった。

セシリアが……サンクタであるのは間違いないだろう。

ならば何故?

[エゼル] セシリア、君は一体……

[生真面目な看護師] こんにちは、この子のご家族の方ですか?

[エゼル] ええ、そんなところです。

[生真面目な看護師] この子の状況は少し特殊でして、先生があなたと二人でお話をしたいそうです。案内いたしますね。

[エゼル] ……

[エゼル] ……先ほど強い風が吹いていたので、この子が風邪をひいてしまわないように窓を閉めておいてもいいでしょうか。

[生真面目な看護師] 風? ええ、ご自由にどうぞ。

[エゼル] よし。じゃあセシリアはゆっくり休んでて。すぐ戻ってくるから。

[親切な看護師] セシリアちゃん、大丈夫よ。私たちが一緒にいるからね。

[エゼル] ……

[エゼル] 屋上で話すんですか?

[エゼル] セシリアの状況が特殊だと言ってましたけど、詳しくはどんな状況なんですか?

[生真面目な看護師] ええ、具体的なことは……診断結果が出ないことにはなんとも。先生がまもなくいらっしゃいますので、先生にご確認ください。

[エゼル] ……セシリアの状況はすでに公証人役場に報告済みです。僕の同僚がここへ向かってるところですよ。

[生真面目な看護師] ……えっ!?

[エゼル] あなたは何者ですか。

[生真面目な看護師] ……私は看護師ですよ。どうしたんですか急に。先生がすぐに来ますから、もう少しだけお待ちください。

[エゼル] ただの看護師が「公証人役場」と聞いて驚いたりしますか?

[生真面目な看護師] チッ……カマをかけやがったな。ここでしばらく時間を潰してくれればそれでよかったってのに、わざわざ面倒事に首を突っ込むとはな。

[生真面目な看護師] パティアからはセシリアに手荒な真似はするなとは言われてるが……お前にもそうしろとは言われてないんだぜ。

[エゼル] 「パティア」、ですか?

[生真面目な看護師] ……忘れた方が身のためだ。

[生真面目な看護師] みんな出てこい。この公証人役場のあんちゃんを休ませてやるとしよう。

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