aklib_story_孤島激震_MB-ST-2_正しさの代償

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孤島激震_MB-ST-2_正しさの代償

全ての物語が語り終えられた。そしてミュルジスが真の目的を明らかにし、ある取引を提案するがサイレンスに拒絶される。最後に、ミュルジスは忠告を残して去り、一行はロドスへの帰路に就いた。


[ミュルジス] フェルディナンド……エネルギー課の主任ね。

[サイレンス] ……そう。

[ミュルジス] でも、それよりあたしがもっと気になるのは――

[ミュルジス] どうして、サリアさんが、そこに、いたの!?

[サイレンス] それは、私があなたに聞こうと思っていた質問。どうしてサリアがあそこにいたの、ミュルジス主任?

[ミュルジス] ……その質問は一体どういう意味?

[サイレンス] サリアが今回の事件におけるあなたの切り札……いいえ、正確には切り札「だった」……違う?

[ミュルジス] あら、どうしてそう思うのかしら?

[サイレンス] バーで呼び出し人があなただと知ってから、私はずっと今回の事件におけるあなたの立ち位置について考えていた。最初はハイドブラザーズと深い関係があると思ってた。でも考えが変わった。

[サイレンス] あなたはハイドブラザーズやエネルギー課とは無関係であると、話を聞いた今は思ってる。だけどもし、あなたが事情を知る傍観者だとしたら、私を探し出す行為は、いささかやり過ぎに思える。

[サイレンス] だから、差し当たり私の下した判断は、あなたはこの事件における私の「競争相手」。目的は最初に聞いたとおり、アンソニーの身柄の確保。

[サイレンス] あなたも、アンソニーを通して何かをしようと企んでいる。

[サイレンス] そしてこの事件で私が最も不可解に思ったのが、サリアの出現。

[サイレンス] 彼女はすでにライン生命との関係を切っている。今の彼女の唯一の身分は、ロドスのオペレーター。

[サイレンス] 彼女がこの件に関わる理由は何もないはず。

[ミュルジス] でも、それを言うならあたしの方こそ、彼女があなたの切り札だと考えたっておかしくないでしょ?

[ミュルジス] 彼女があそこで現れたなんて、あたしは本当に知らなかったわよ。

[サイレンス] あなたは確か最初にこう言っていた――

[ミュルジス] あたしが知ってるのは最初と最後だけ。つまり――

[ミュルジス] ――マンスフィールド監獄に収容されていた、サイモン家唯一の生存者、アンソニー・サイモンに対し、ハイドブラザーズが前々から準備していた暗殺計画を実行に移したことが事件の発端。

[ミュルジス] そして――

[ミュルジス] ――アンソニーさんを含む数名の収監者が、マンスフィールド監獄から逃げ出し、あなたたち二人と合流した後、クルビアを離れた。それが事件の結末。

[ミュルジス] その間に何が起きたのかは、残念ながら知らないのよね。もともと知る機会はあったはずなんだけど、今はもうなくなっちゃったわ。

[サイレンス] 仮にあなたが私の「競争相手」だったとしたら、おそらくこの件について知っているだけでなく協力者もいるはず。そしてその協力者が監獄内で起きたことをあなたに教えてくれるはず。

[サイレンス] でもあなたは知らなかった。総合的に判断して、この一連の出来事をあなたは本当に関知していなかったと私は思っている。

[サイレンス] そしてサリアの突然の出現を考えれば……

[サイレンス] 得られる結論はただ一つ、それは――

[サイレンス] 彼女はもともとあなたの協力者だった。でも彼女はあなたとの合意に背いた。

[ミュルジス] そうだとしても、あなたたちの出現は予想外だったはずよ。どうして彼女はアンソニーさんをあなたに預けたのかしら?

[ミュルジス] たとえあなたたちがロドスという組織でつながっていたとしても、もしこの事件があなたの言う通りであれば、彼女の立場はあなたと完全に対立している……そうでしょ?

[サイレンス] ……いいえ。確かについさっきまではずっと不思議に思った。カフカでは彼女の相手にはならない。理論上は、サリアこそが最終的な勝者となるはず。

[サイレンス] そして私たちの間には……何の利害関係もない。彼女がアンソニーを私に預ける理由は何もない。

[サイレンス] でも今わかった。

[ミュルジス] ……アハッ、なるほど。あたしを欺くためだったのね。

[サイレンス] そう。

[サイレンス] そしてここからはただの私の推測。

[サイレンス] サリアがアンソニーを支配――いえ、この言葉は使いたくない……

[サイレンス] 救出にしよう。サリアがアンソニーを救出したならば、彼女が最終的な勝者だと言えた。しかし彼女にとって、アンソニーの行き場として最善なのは、あなたの手中ではなかった……

[サイレンス] なぜなら、それはあなたの力を強めることになるから。だからサリアは、彼を誰にも渡さず自分でコントロールしようとするはず。

[サイレンス] 具体的に何をしてたか知らないし、知りたくもないけど、彼女はハイドブラザーズがただで済ますはずがないとわかっていたはず。そして自分が裏切るつもりだったあなたも、ね。

[ミュルジス] だから彼女は、最後に姿を現す瞬間まで、この事件の表舞台から完全に身を隠していたってわけね。

[ミュルジス] 彼女が、あたしやハイドブラザーズを恐れるとは思えないけど……でもまあ、余計なことはすべきじゃないしね。あたしが彼女の立場だったとしても、きっと同じ選択をするわ。

[ミュルジス] それに彼女はクルビアでほかの用事があったはず……まあいいわ、あれは今回の件とは関係ないしね。

[サイレンス] ……とにかく、私たちの出現は彼女にとっても想定外だったはず。アンソニーを預けたのは、おそらくカフカから私たちのおおよその事情を聞いて下した判断だと思う。

[ミュルジス] ……ほんとお見事な推理ね、サイレンスさん。

[ミュルジス] 完璧に正解よ。アンソニーさんに関する情報をサリアさんに伝えたのはあたし。

[ミュルジス] ジェッセルトンはその後、偽の看守であることがバレて収監されたはずだから、あたしも彼に関する情報は受け取っていない……

[ミュルジス] 確かにサリアさんに一杯食わされたわ……ま、あたしも最初から、彼女がそのままおとなしくアンソニーさんを渡してくれるとは思っていなかったけどね。

[サイレンス] ……じゃあどうして彼女に協力を求めたの?

[ミュルジス] それはもちろん――

[ミュルジス] ほかに方法がなかったからよ。

[ミュルジス] 社内にそこそこ信用できて、さらにここまでのことをやれそうな人なんていないもの。

[ミュルジス] もしほかに頼りになる人がいれば、彼女に面倒かけようだなんて思わないわよ。

[ミュルジス] あたしは生態課の主任だけど、本当は全然力がないんだから。

[ミュルジス] 今だって、サリアさんに奪われたアンソニーさんをどうにか取り戻せないか必死に考えてる。あたしみたいに惨めな主任はほかにいないわよ。

[サイレンス] ……つまり、私を訪ねたのはアンソニーを引き渡してもらうため?

[ミュルジス] もし「そうだ」って言ったら、引き渡してくれる?

[サイレンス] アンソニーはもうここを離れてロドスに向かっている。たとえ私がいいと言っても意味がない。

[ミュルジス] まあ、そうよね……確かに最初はそのつもりだったけど、今は少し考えが変わったわ。

[ミュルジス] あたしの予想が正しければ、ロドスはこの件と何の関わりもない。あなたと一緒に来た人たちは、ただ護衛としてあなたに雇われて、クルビアへ器材の買い付けに来ただけ……そうでしょ?

[サイレンス] ……そう、これは私の独断による個人的な行動。私は……一緒に来てくれた人たちを騙した。

[ミュルジス] あなたは本当に嘘が苦手みたいね、サイレンスさん。

[ミュルジス] とにかく、大体のことは理解したわ。

[ミュルジス] 利害が一致したのね。あなたの目的は、アンソニーさんにロドスの一員になってもらうこと。少なくとも一時的に会社で保護してもらう――これがあなたの導き出した最善の方法。

[ミュルジス] そしてサリアさんはアンソニーさんという足がかりを、他の誰にも渡したくなかった。でも彼女にとっては……まぁ、アンソニーさんが彼女のあの性格に付き合ってくれるかはともかくとして――

[ミュルジス] 仮に付き合ってくれたとしても、サリアさんにとって、おそらく彼の存在は面倒にしかならないわ。

[ミュルジス] だから彼女はアンソニーさんをあなたたちに委ね、ロドスに加入させることを選んだ……確かに素晴らしい選択ね。

[ミュルジス] というよりも彼女にとっては、アンソニーさんの脱獄が成功すれば――あたしとフェルディナンドの思惑通りに事が運ばなければ、それで十分だったのかもしれないわね。

[ミュルジス] そしてアンソニーさんが脱獄後に何をしようが、彼女にはさほど重要なことではなかった。改めて考えればそちらの可能性の方が大きい。

[メイヤー] そうなの?

[ミュルジス] ええ、彼女が誰かを本気で気に掛けるなんて想像つかないもの。実は彼女があたしの協力に応じた時点でおかしいと思ってたわ。

[メイヤー] でもどうしてロドスに加入するのが一番いいことなの? ロドスには面倒が及ばない?

[ミュルジス] 脱獄の件は大事にはならないわよ。詳しく調べればハイドブラザーズの関与が浮かび上がるのは間違いないから、連中は必死になってこの件を覆い隠そうとしてくれる。

[ミュルジス] そしてロドス側は、ライン生命とはパートナー関係にあるものの、この件が表沙汰にならない限り、いくらでも言い逃れできる。

[ミュルジス] つまり、アンソニーさんがロドスの一員になれば、ひとまずは安心というわけ。

[ミュルジス] サリアさんがロドスと一体どんな協力関係を築いているかは、あたしもわからないけど、この会社についてなら少しは知ってる。

[ミュルジス] もしあたしがロドスのリーダーなら、アンソニーさんを拒みはしないわ。

[メイヤー] うぅ、なんだか頭がクラクラしてきたよ……

[ミュルジス] 簡単に言うと、サリアさんはあたしが取ってきてほしいと頼んだものを奪い去った。

[ミュルジス] でも彼女はそれを自分のものにはせずに、ある警備の厳重なお店へ売り飛ばしたのよ。

[メイヤー] あぁ、それならわかりやすい……それで?

[サイレンス] それであなたは、今そのお店で働いてる私に、自分が欲しいものを売り渡すよう、お店のオーナーに交渉してもらいたいってこと?

[ミュルジス] ピンポーン。

[ミュルジス] もし、サリアさんが自分の手でアンソニーさんを守ることを選択してた場合、当分の間は手出しできなかったわ……

[ミュルジス] でも彼女がロドスに渡すことを選んだ以上、まだ望みはあるわ。

[ミュルジス] 安心して、もちろんあなた一人に全てをさせるつもりはないわ。

[ミュルジス] 元警備課主任のサリアがロドスと協力関係を築けたというのなら、この生態課主任のミュルジスにだってできるわよ。

[ミュルジス] あなたは、あたしとロドスの接点になってもらうだけで構わない。その見返りとして、あなたにはライン生命に戻る機会をあげるわ。

[ミュルジス] 「炎魔」事件を挽回する大きなチャンスになるわよ。

[サイレンス] ……

[メイヤー] ……ねえ、なんか悪い相談をしてるみたいに聞こえるんだけど。

[ミュルジス] 誤解しないでメイヤーさん、これは取引よ。

[ミュルジス] この大地には、綺麗なだけのことなんてほとんどないのよ。

[ミュルジス] ロドスがサリアさんに価値を見出したからこそ、彼女のことを守っているように。

[ミュルジス] サリアさんが、あなたたちならば間違いなくアンソニーさんをロドスまで送り届けてくれると思ったからこそ、彼を預ける選択をしたように。

[ミュルジス] もし最終的にロドスがアンソニーさんを受け入れたとしたら、単に彼の経歴を聞いて、そんな彼を助けたいと思ったからではないとあたしは思うわ。

[ミュルジス] どんなに醜いものでも綺麗な大義名分で覆ってしまえば、ある程度は隠すことはできるわ。だけど、それがもともと綺麗なものだとは言えないでしょ?

[ミュルジス] たとえばね……あたしは社内での力が弱い。でもその上であたしに協力することが「正しい」とあなたに思わせるために、統括のことを素晴らしいリーダーであると美化することもできたのよ。

[ミュルジス] もしあたしがそうしておけば、あなたも悪いことをしてるとは思わなかったはず。

[ミュルジス] 実は、むしろこっちの方があたしの得意分野なのよ。

[ミュルジス] でも、あたしが敢えてそうしなかった理由は、この話し合いでサイレンスさんのことを尊重したからよ。

[ミュルジス] 尊重したからこそ、あたしはフェアに接し、むしろそちらに有利に運ぶよう、アンソニーさんの交換を提案しているの……この点についてどうお考えかしら? サイレンスさん。

[メイヤー] サイレンス、どうする?

[サイレンス] ……

[サイレンス] 私は……

[サイレンス] 断る。

[ミュルジス] あら、どうして? あたしが出した条件は十分手厚いと思うけど?

[サイレンス] ミュルジス主任……あなたは最初からここまで、私がアンソニーをどうするつもりか訊かなかったけど――

[サイレンス] もしかしたら無意識のうちに、私もあなたやサリアと同じように、アンソニーという「足がかり」を欲してると思ってない?

[ミュルジス] まさか違うの?

[ミュルジス] あたしは彼を、エネルギー課を抑制する手段として使うつもりよ。サリアさんがどうするつもりかはよくわからないけど、きっと彼女なりの用途があるはず。

[ミュルジス] そしてあなた……

[ミュルジス] あなたは実験の失敗により、ライン生命を去らざるを得なくなった研究員。あなたはこの足がかりを利用して、ライン生命に何かしらの要求をしたい――

[ミュルジス] そうじゃないの?

[サイレンス] ……私はこの「足がかり」を使う気は全くない、ミュルジス主任。

[サイレンス] もしもサリアが現れず、何か別の方法でアンソニーが脱出できて、私たちに合流したとしても、私は彼にロドス加入を勧めたと思う。

[サイレンス] でもそれは決して、ロドスを通じてアンソニーという「足がかり」を管理したいからではない。

[サイレンス] 今日の会話の中で、あなたは何度もこの「足がかり」という言葉を口にした。でも私はこの言い方が好きじゃない。

[サイレンス] 私から見ればアンソニーは「足がかり」なんていうモノじゃない。生きている一人の人間。

[サイレンス] 家族全員が一夜にして収監され、自らも檻の中で苦しい生活を余儀なくされた可哀想な人だよ。

[サイレンス] もし、もっと彼に良い行き場があるのなら、私はそこを薦めるし、彼がそこに行けるよう全力を尽くして協力する。

[サイレンス] 将来の交渉材料のため、彼をそばに置いておこうなんて思わない。

[サイレンス] 私はこれが正しいと思ってる。

[ミュルジス] どうやら、交渉決裂みたいね。

[サイレンス] ……残念ながら。

[サイレンス] もしほかに用がないなら、私たちはもう行くよ。

[ミュルジス] ねえ……まさか、これほどたくさんの話を聞いておきながら、そう簡単にここを去れると思ってるのかしら? サイレンス研究員。

[サイレンス] 思ってない。

[サイレンス] だから食事の間に、少し準備をしておいた。

[ミュルジス] え?

[サイレンス] アンソニー!

[アンソニー] ……はい。

[ミュルジス] あ……あなたとっくにクルビアを去ってたんじゃないの!?

[サイレンス] それはただのフェイク。アンソニーは私たちが泊まっているホテルにまだ残っていた。万が一のためにさっき呼んでおいたの。

[サイレンス] ロドスの護衛役がそうしておいた方がいいって提案してくれたの。まさか本当に使うことになったとは。

[サイレンス] アンソニーが欲しかったでしょ?

[サイレンス] 今が彼を手に入れる唯一の機会だよ、ミュルジス主任。

[ミュルジス] ……アンソニーさん、一杯どうかしら?

[アンソニー] もし別の機会だったら、是非貴方と一杯やりたかったのですがね、ミス・ミュルジス。

[ミュルジス] それは残念ね。なら本題に入るしかなさそうだわ。

[ミュルジス] それじゃアンソニーさん、あたしと一緒に行く気はないかしら?

[アンソニー] その前に、貴方は私を倒す必要がありますが。

[アンソニー] 貴方たちの会話を陰から少し聞いていましたが、私自身は貴方の考え方を悪いと思いません。

[アンソニー] 私も、世の中は人々が目にしているほどに魅力的ではないと思っていました。

[アンソニー] しかし今こうして見てみると、この大地には本当に美しい物事も、確かに存在するのですよ。

[ミュルジス] はぁ……どうやらあたしは悪者扱いされちゃってるみたいね。

[サイレンス] いいえ、言ったはずだよ、ミュルジス主任。

[サイレンス] 私はあなたを悪者だとは思ってない。

[サイレンス] あなたの立場を考えると、あなたのしたことは正しいと思う。それに私に対しても充分な善意を差し出してくれた。

[サイレンス] でも、残念なことに、私はあなたの考えを認めることができない。ただそれだけ。

[ミュルジス] ……

[ミュルジス] なんだか新しい敵を一人増やしちゃったように感じるわ……

[サイレンス] さっきエネルギー課を抑制するって言ってたけど、ライン生命内部で一体何が起こってるの?

[ミュルジス] あたしとの取引を断ったんだもの、もちろんそんなことをあなたには教えられないわ。

[ミュルジス] でも、もしあなたがこれで手を引くつもりがないというのなら……いつかは知ることになるでしょうね。

[サイレンス] 私は……

[ミュルジス] とにかく、今回はあたしの負け。

[ミュルジス] アンソニーさんみたいなたくましい男性を、分身だけで倒す自信なんてないもの。

[サイレンス] !?

[メイヤー] 分身!?

[ミュルジス] そうよ、これはあたしの分身。結構リアルでしょ?

[ミュルジス] 消える前に、一つ忠告しといてあげるわ、サイレンス研究員。

[ミュルジス] アンソニーさんを助けたことは正しいと思ってるかもしれないけど――

[ミュルジス] でも事実はそう単純じゃないわ。

[ミュルジス] サイモン社とハイドブラザーズの競争下において、サイモン社が純粋な被害者だという理屈はバカげているわ。

[ミュルジス] 両者はいずれも、相手を始末する計画を早くから準備していた……ただスミスさんが一足遅かっただけよ。

[サイレンス] ……

[ミュルジス] つまり、もしスミスさんがハイドブラザーズに先駆けて手を下していれば、一家そろってバンカーヒルシティの牢屋に入ってたのはサイモン家ではなく、ハイドブラザーズの一家だったってことよ。

[ミュルジス] そうするとアンソニーさんは、本当にただの被害者なのかしらね?

[サイレンス] でも……

[ミュルジス] あなたはどう思う? アンソニーさん。

[アンソニー] 否定はできません。

[ミュルジス] けれど、この大地に「もし」はない、それはわかってるわ。

[ミュルジス] サイレンス研究員、あたしがこういう話をしてるのは、今から言うことを理解してほしいからよ――

[ミュルジス] もしあなたが正しいことをしたいというなら、まず何が正しいかを知る必要がある。そして、正しいことをするには代償を支払わなければならないってことも。

[サイレンス] ……忠告をありがとう。

[ミュルジス] どういたしまして。それじゃあね。

[メイヤー] わっ! 水になった!?

[ミュルジス] そうそう、アンソニーさんの件はこれで手を引くわ、もう余計なことはしないから。

[サイレンス] 水を通して話せるなんて……

[ミュルジス] それにあなたたちのために色々と誤魔化しといてあげるかもよ? 感謝してよね。

[ミュルジス] あたしを悪者扱いしないっていうなら、またお話をする機会があるかもしれないわよね。

[ミュルジス] それからアンソニーさん、ロドスで素晴らしい新生活ができるといいわね。

[アンソニー] ……お心遣い感謝します、ミス・ミュルジス。

[アンソニー] では、ミス・サイレンス。今度こそ、私たちも出発しましょうか?

[サイレンス] うん。

[サイレンス] メイヤー、ちょっと支えてくれるかな。

[メイヤー] えっ、どうしたの?

[サイレンス] 足の力が抜けちゃって……

[メイヤー] いいよ。

[サイレンス] ……フゥ。

[サイレンス] さすがは主任レベルの人物……最後の方はなんか、プレッシャーで言葉が出ないところだった。

[アンソニー] 私の見る限り、見事な啖呵でしたよ、ミス・サイレンス。

[メイヤー] うん、私もそう思う。すっごくカッコよかった。

[サイレンス] ありがとう。

[アンソニー] しかし気になります。ロドスとは一体どのような場所なのですか?

[サイレンス] ここからロドスまではまだ随分と道のりがあるから、途中でゆっくりと説明してあげるよ。

[アンソニー] そうですか、それはいい。この旅が楽しみになってきましたよ。

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