aklib_story_孤島激震_MB-ST-1_招待

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孤島激震_MB-ST-1_招待

物語の外では、ミュルジスがメイヤーを自身の研究チームに誘う。そして物語の中では、アンソニーがロビンを脱獄チームに誘った。


[メイヤー] それから先は、ロビンの話になるんだけど……

[ミュルジス] 次の話に進む前に、ちょっといいかしら、メイヤーさん。

[メイヤー] うん?

[ミュルジス] 先にほかの質問をメイヤーさんにしておきたいなと思って。

[メイヤー] なに? 私はサイレンスほど今回の計画のこと理解してないよ。

[ミュルジス] いいのよ、これはあなたも知ってることだから。

[ミュルジス] 「炎魔」事件についてどう思う?

[ミュルジス] あたしが知る限り、あなたもこのプロジェクトの参加者よね?

[メイヤー] 知らないよ。

[メイヤー] 私たちエンジニア課は、基本的に設備の提供と設置時の専門的意見の提示を担当してるだけだから。実験自体に積極的に関与することはないかな。

[メイヤー] 私が知ってるのは事件の結果だけ。当時協力関係を築いたばかりのロドスにイフリータを連れてきたのはサイレンスだよ。

[メイヤー] それとサリアは、一人で全責任を引き受けてライン生命を去った。

[メイヤー] もしこの事件について知りたいのなら、尋ねる人を間違ってるよ。

[ミュルジス] いえ、別に知ろうとは思ってないわ。この類の事件は、ライン生命内部では珍しくもなんともないもの。

[メイヤー] ん? じゃあどうして私にそんな質問したの?

[ミュルジス] サイレンスさんとサリアさんが、あなたの目にそれぞれどんな人に見えているのか知りたいから。

[メイヤー] うーん、サイレンスはすごく真面目な人かな。正直言って、私は研究者とは彼女みたいな人であるべきだと思ってる。

[ミュルジス] 確かにね。彼女はとても聡明だし、観察力も鋭い。しかも、これまでにも多くのプロジェクトを成功させた経験があるわ。

[ミュルジス] 噂では、構造課のあの主任は自分の後任者にはサイレンスさんを、と考えていたみたいよ。

[メイヤー] わぁ! じゃあサイレンスが構造課の次の主任に? すごいや!

[ミュルジス] そうよ、あたしも思わず彼女に媚を売りたくなっちゃうわ。ライン生命を離れてなければね。

[メイヤー] サリアに関してだけど、実は私あんまり彼女と親しくないんだ。

[メイヤー] ほら、警備課ってほかの課とは違うでしょ? ロドスでもほとんど会わないし、そんなに話したことないよ。

[メイヤー] でも、私が「炎魔」事件の時にサリアから受けた一番強い印象は、彼女がすごく保守的ってことだね。

[メイヤー] 彼女はプロジェクト全体を中止させ、さらに責任をとって辞めた。実験が制御不能になるなんて、ライン生命の内部ではよくあることなのにね。

[メイヤー] 同僚の間でも「炎魔」事件にはよからぬ内幕があるなんて噂されてるけど、私はそんなに詳しくないんだよね。

[メイヤー] なんにせよ、イフリータはロドスで相変わらず元気いっぱいにしてるよ。多分そんな大したことじゃないでしょ。

[ミュルジス] え? そのイフリータっていう実験体は、今ロドスで普通に暮らしているの?

[メイヤー] うん、毎日エネルギー全開。

[ミュルジス] へぇ、あたしはてっきりもう……ロドスっていう会社は相当な実力があるようね。

[ミュルジス] でも、教えといてあげるわ。サリアさんがライン生命を去った理由は「炎魔」事件だけじゃない……あれは一連の大きな出来事の一つにすぎないわ。

[ミュルジス] 決定的なきっかけには、なったのかもしれないけどね。

[ミュルジス] 彼女が去った最大の理由は、実は統括との不仲が原因よ。

[メイヤー] え? 統括と?

[ミュルジス] そうよ。もともとサリアさんと統括の関係は、別に悪くはなかったんだけど。

[ミュルジス] でも、サリアさんは確かにあなたの言うように保守的よ。あらゆる研究は、すべて制御可能な範囲で行われるべきだと思っている。

[ミュルジス] でも統括はそうは思っていない。でなきゃライン生命なんて企業は存在してないわ。

[ミュルジス] なんて言えばいいかしら……例えばね。

[ミュルジス] 仮にここに一本の線があったとしましょうか。サリアさんが越えてはならないと見なしている線ね。

[ミュルジス] ライン生命は、これまでずっとその線を越えることはなかった……せいぜいその線にあとちょっとで触れる程度。だからサリアさんはずっと何も言わなかった。

[ミュルジス] でも「炎魔」を含む一連の事件は、誰かがその線を越えようとしている、もしくはすでに越えたということを意味していた。

[ミュルジス] サリアさんが耐えられなかったのはこれなの。

[ミュルジス] でもさっきも言ったけど、統括はこの線には無関心なのよ。

[メイヤー] どうして?

[ミュルジス] メイヤーさん、教えてほしいんだけど、あたしとサイレンスさんが話しているアンソニーさんの件について、その背後で関わってる事情をあなたは気に掛けているかしら?

[メイヤー] うーん……彼のことを聞いて、監獄から出られてよかったなって感じたくらい。

[ミュルジス] ほらね。あなたは純粋で優しい……でも実際はそれに関心はない。あなたが関心を示すのは自分の研究、あなたの「ミーボ」の方よ。

[ミュルジス] でも、確かにミーボは素晴らしい設計ね、ちょっと触ってもいいかしら?

[メイヤー] いいよ、ほら行っといで。

[ミーボ] ――!

[ミュルジス] アハッ、可愛いわね。

[ミュルジス] さっきもあなたは、ずっと隣で自分の企画案を描いてたでしょ。

[メイヤー] うん。新しいアイディアがたくさんできたんだ。ロドスに戻ったらすぐに実践するよ。

[ミュルジス] フフッ、統括も実はあなたみたいな人よ。

[ミュルジス] でも彼女は誰よりも高くを、そして遠くを見ている。彼女の真っすぐな視線は、この頭上に広がる空さえも突き抜けていく。

[ミュルジス] 恐らくこの大地の誰にも想像できない……あたしでさえ、ほんの僅かしか推し量れないような場所を目指している。

[メイヤー] へぇ……スピーチでしか見たことなかったけど、統括もそういう人なんだね。

[ミュルジス] ええ。だから彼女は大概のことに興味がないの。彼女にとっては、自分の研究を妨げるものでなければ、越えてはならない線など存在しないわ。

[ミュルジス] それである時、統括とサリアさんの間に亀裂が生じたのよ。

[メイヤー] でも、どうして私に話すの? こういうのはサイレンスに話すべきことなんじゃない?

[メイヤー] 私が聞いても、こんな情報をどうしたらいいかわからないよ。

[ミュルジス] わかっていないから教えたのよ。

[ミュルジス] あなたは何となく統括と気が合いそうだから、統括がどんな人か理解してもらいたいなと思っただけよ。

[ミュルジス] それに、あたしもあなたとお友達になりたいわ。個人的にはやっぱりあなたみたいな純粋な研究者が好きなのよ。

[ミュルジス] 確かあなたは、自ら進んでロドスに行ったのよね?

[メイヤー] うん、新しい環境に行きたかったからね。

[ミュルジス] どうしてなのか教えてくれる?

[メイヤー] うーん……特に理由はないよ。

[ミュルジス] まぁいいわ。もしあなたがライン生命に戻ってくることがあれば、うちの課に来ない?

[メイヤー] んー、考えとく。

[ミュルジス] 大丈夫、時間はまだたくさんあるから。

[ミュルジス] じゃあ、さっきのお話の続きを聴かせてもらいましょうか。

[ロビン] ……

[???] ……本当に……やるの?

[???] うん、私は……ってみるつもり。

[ロビン] んんっ……

[???] 目が覚めたのね。

[ロビン] ここは……?

[???] ここは私の部屋、監獄の医務室よ。

[ロビン] あなたのことは覚えてる……

[???] こっちも同じよ……私はドゥーマ。

[ロビン] どうして私はここに……?

[ロビン] そうだ、私は戦闘に巻き込まれて――

[アンソニー] 気絶したんですよ、ミス・ロビン。

[ロビン] あなたは……アンソニー!?

[ロビン] どうして私の名前を知ってるの?

[アンソニー] ドゥーマさんが囚人のリストを持っていますからね。

[ロビン] ……

[アンソニー] 貴方も刺客の一人なんでしょう、ミス・ロビン。

[ロビン] !?

[アンソニー] 貴方が武器を所持しているのをドゥーマさんが確認しました。わざわざ武器を持ってCエリアに入る理由はそう多くはないはずです。

[アンソニー] もちろん、違うと仰るなら、反論していただいて構いませんが……

[ロビン] ……

[アンソニー] いずれにせよ、これから私が言うことをよく聞いていただきたい。貴方が殺し屋だという前提でお話ししますが、もし気に障るようなことがあれば、お許しください。

[アンソニー] 私は、貴方を送り込んだ者たちを知っています。その者たちは、私の一族を破滅に導いた元凶、そして私がこの監獄に六年もの間、繋がれることとなった元凶でもあります。

[ロビン] ……!?

[アンソニー] そしてたった今、私は脱獄し彼らに責任を問うことを決めました。

[アンソニー] 貴方の腕はかなりのものだとお見受けしました。もし貴方さえよければ、刺客という仕事を放棄し、私を助けてほしいのです。

[アンソニー] 私の話は以上です。

[ロビン] 私は……

[アンソニー] 返答を急ぐ必要はありません。

[アンソニー] 私の方でも準備に時間がかかります。その間に、貴方もじっくり考えてください。

[アンソニー] 引き続き暗殺を試みてもいいですし、手を引いても構いません。武器はそのままお持ち帰りください。

[アンソニー] ですが、もし私を助ける気になったのであれば、この医務室に来てその旨をドゥーマさんに伝えてください。

[ロビン] ……

[看守] ミスター・アンソニー、あなたの傷の具合を確認するようバートン隊長より命令を受けました。治療の様子はいかがですか?

[アンソニー] ……大した傷ではありません。もう少しだけ待っていただけるよう伝えてもらえますか、すぐに終わります。

[看守] わかりました、問題ありません。

[アンソニー] 私はバートンと話をしてきます。ご覧の通り、これでも看守たちからはそれなりに信用を得ているので、今回の件も大きな問題にならないようにきちんと収めます。

[アンソニー] 貴方は戻ってよく考えてください、ミス・ロビン。

[ミュルジス] フフッ、アンソニーさんって、最初の印象はただの善良な人だったけど、よくよく聞いてみると、一筋縄ではいかないタイプね。

[メイヤー] ん? どうして?

[ミュルジス] あたしたちはロビンさんが殺し屋だっていうことを知ってるけど、彼は証拠が不十分な状態で彼女を誘ったのよ。

[メイヤー] 私は無謀だと思うけどな。

[メイヤー] もしロビンが殺し屋じゃなくて、看守にアンソニーが脱獄するつもりだって告げ口したらどうするの?

[ミュルジス] フフッ、あたしが彼を評価してるのは、まさにそこよ。

[ミュルジス] 考えてもみて。一方は監獄に入って来たばかりで威信のない囚人、片やアンソニーさんは、とっくに監獄内で自らの立場を確立して信望を得ている。

[ミュルジス] この二人の言葉の、どっちに説得力があるかは一目瞭然よね?

[ミュルジス] それに、仮に百歩譲って、バートンと看守たちがロビンさんの言うことを信じたとして、彼らに何ができるかしら?

[ミュルジス] 彼らだって、ただ自分の胸の内に秘めて傍観することしかできないでしょうね。だって、客観的にはアンソニーさんが脱獄する意味なんてないもの。変なことをわめいていると思われるのが関の山よ。

[メイヤー] 言われてみれば、確かにロビンが告げ口しても意味ない気がする。

[ミュルジス] フフッ、あなたがこれを無謀だと思ったのは別に間違ってないわ。彼の方法は「信望」や「影響力」の裏打ちがなければ、単なる冒険でしかないからね。

[ミュルジス] でもあたしが面白いと思ったのは、そこじゃないの。「信望」を得ているような人は、普通こんな手段を使わないのよ。

[メイヤー] えっ、どういうこと?

[ミュルジス] 彼の言葉の裏には、ある種の脅迫があったのはわかるかしら。看守たちからの扱いをアピールしたりしてたでしょ。「お前が告げ口したところで無意味だ」っていうことよ。

[ミュルジス] これって信望がある人の言葉とは思えなくない?

[メイヤー] 確かに、あまり聞こえはよくないね。

[ミュルジス] でしょ? ところでアンソニーさんはどうやってあのバートン隊長を納得させたか聞いてる?

[メイヤー] うん? あ……懲罰房に半月入ることを進んで受け入れたんだよ。

[ミュルジス] 彼の責任ではないことはみんなが知ってたけど、それでも彼は自ら罰を受けてこの件を収めたってことかしら……

[ミュルジス] 彼が罰を受け入れるのを見た、あのバートン隊長のうす気味悪い笑顔が想像できるわね。

[ミュルジス] でもアンソニーさんは耐えた。

[ミュルジス] うん、やっぱり手強い人ね。目的のためなら屈辱も受け入れることができるんだもの。

[メイヤー] 単純にロビンが黙ってくれると信じてた、って可能性もあるんじゃない?

[ミュルジス] うーん……確かにその可能性も否定はしないわ。

[ミュルジス] そういえば、サイレンスさん遅いわね。

[メイヤー] そうだね、私見てくるよ。

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