aklib_story_孤島激震_MB-7_裏切り_戦闘後

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孤島激震_MB-7_裏切り_戦闘後

ロビンによる足止めがあと一歩で成功するところで、塔の仕掛けは起動した。轟音とともに塔が地下に沈んでゆく。暗闇の中、アンソニーとの間で交わされた会話がロビンの心を揺さぶる。


[バートン] チッ、おかしいな、カードキーはどこにいった……?

[バートン] まさか、トイレに行った時流しちまったのか?

[看守A] バートン隊長、どうされましたか?

[バートン] うるさい黙っていろ!

[看守A] は、はっ! 失礼しました!

[看守A] チェッ、なに怒ってんだよ……

[看守B] どうせまた誰かが、隊長の気に障ることをしたんだろう。

[看守A] へっ、そりゃアンソニーに決まってる。

[看守A] どういうことかは知らんが、あいつを殺そうとしてる奴がいる。

[看守A] バートンはいっつも、この監獄の警備体制がどれだけすごいか自慢してるだろ? だからこの件で赤っ恥かいてんだぜ。

[看守B] 私たちだって同じだ。ここの看守なのだから。

[看守A] いやいや、俺はアンソニーの暗殺騒ぎを喜んでいるわけじゃない。あのバートンがイラついてる様子を見るのが気分いいんだよ。

[看守A] ていうかよ……ここ数年、ランドルとバートンの二人が汚いことに手を染めてきたのをたくさん見てきただろ?

[看守A] 賭けてもいいが、この暗殺者たちがどこから来たのか、ランドルは絶対知ってるぜ? 金をもらったから目を瞑ってるだけだ。

[看守B] ……そうかもな。

[ロビン] ぐっ……

[アンソニー] 動かないでください、ロビンさん。

[アンソニー] 私に貴方を殺させないでください。

[ロビン] ……

[カフカ] うぅ、まさかロビンがスパイだったなんて全然気付かなかったよ。

[カフカ] その道の才能があるんじゃないの?

[アンソニー] 待って、その手に持っているのは……

[カフカ] それって……爆弾のスイッチ!?

[アンソニー] カフカさん! 装置を起動してください! 急いで塔を沈降させないと――

[カフカ] うわぁ! 燃えてる!

[アンソニー] 早く!

[カフカ] どのボタンだったか忘れちゃったよ!

[カフカ] それにどれもこれも壊れちゃってそうだし……

[カフカ] あっ、見つけた! きっとこのボタンだ!

[カフカ] お願い、起動して!

[カフカ] 押すよ!

[カフカ] 動いてる感じしないよ、本当に壊れちゃったの!?

[アンソニー] ロビンさん、どうしてこんなことを?

[ロビン] 私は……

[カフカ] 動いた!

[バートン] *クルビアスラング*

[バートン] まあいい、前回最上階に行ったのはいつだったか覚えていないくらいだ。すぐには使わないだろう。

[バートン] 今度ランドル獄長に言って、もう一枚もらえばいい。

[バートン] チッ。

[看守A] バートン隊長……

[バートン] なんだ。

[看守A] どうされたんですか?

[バートン] どうって……あのクズどもの掃除が終わったか見に行くんだ。

[看守A] な……なんだこれ!?

[バートン] どうした、何が起きた!?

[アンソニー] 近くにあるものに掴まって、カフカさん!

[カフカ] アンソニー! ロビンがエレベーターの中に飛ばされそうだよ!

[アンソニー] ……

[アンソニー] 私に掴まってください、ロビンさん!

[ロビン] どうして……

[アンソニー] 今は話をしている場合じゃありません!

[アンソニー] 歯を食いしばって。でないと舌を噛みますよ!

[カフカ] ふぅ……アンソニー、そっちは無事?

[アンソニー] はい。ロビンさんは私が抱えていますが……無事のようです。

[アンソニー] どうやら監獄全体の電力系統が麻痺してしまっているようですね。ここも真っ暗です。

[アンソニー] しかし、我々にとってはチャンスです。

[カフカ] うん。

[カフカ] 塔がそのまま一層、下に突き抜けるのを感じたよ。

[カフカ] 多分カフカたちは今、地下二階辺りじゃないかな? 医務室まではまだちょっと距離があるね。

[アンソニー] はい、看守たちが行動を起こす前に行きましょう。

[アンソニー] ロビンさん、どうしました? どこか怪我でも?

[ロビン] ……

[ロビン] わ……私が無事なのは良いことなの?

[アンソニー] 良いことですとも。

[アンソニー] この件について貴方が気にする必要はありません。

[アンソニー] 「引き続き暗殺を試みてもいい」と言ったのは私ですから。

[アンソニー] 貴方が、自分のしたことは一種の裏切りだと思っているのなら、教えてあげましょう――

[アンソニー] もともと私たちの関係自体、完全に信用し合えるほどには深まっていませんでした。

[カフカ] えっ、カフカも?

[アンソニー] 貴方もです。

[カフカ] えぇー? アンソニー、それはひどいよぉ。

[アンソニー] すみません。ですが、むしろ知り合って数ヶ月の人を完全に信用するのは問題があると言えるでしょう。

[アンソニー] もちろん、私は確かに少し失望しました。でもそれだけです。

[アンソニー] しかしそれでも私は興味があります。貴方が私たちと過ごす間に見せた、あの感情は演技ではないはず……それはわかりますから。

[アンソニー] 私の興味の対象は……ロビンさん、貴方にこのような選択をさせたものです。

[ロビン] ……

[ロビン] 私の父は、優しくて、ビジネスで成功していて、自慢の父だった。

[ロビン] でもある日、父の会社が突然潰れた。

[ロビン] それ以来、父は二度と立ち直ることはなかった。

[ロビン] そして父は変わってしまった。酒に溺れ、怒りっぽくなり、周りの全てを憎み始めた。

[ロビン] 母はそれが原因で家を出た……父は莫大な借金を抱え、そして、肝臓の病気と多くの合併症で入院した。

[ロビン] 母はずっと私に、一緒に暮らそうって言ってくれてた。

[ロビン] でも私は、昔の優しかった父のことがずっと忘れられなくて……

[ロビン] 父のために何かしてあげたかった。だから好きなことを諦めて、色んな仕事をした。でも治療費や薬代はあまりにも高価すぎた……

[ロビン] そんな時、ある人が私に連絡してこう言った。ある人物を始末してくれれば、たくさん報酬を払うって。

[アンソニー] そのある人物というのが、私ですね。

[アンソニー] そういうことでしたか……私は貴方に何も約束してあげることができない。だから貴方は仕方なくこの選択をした。

[ロビン] 違うの。その人はジェッセルトンっていう男で、実はこの監獄で看守に扮してあなたを観察していた……

[ロビン] あなたが私を誘った後、彼は私を訪ねてきて、こう告げた――

[ロビン] 父の会社が潰れたのは、サイモン家が行った最後の反撃によるものだと。

[アンソニー] ……まさかそんなことがあったとは。

[アンソニー] だとしたら……私は貴方を責めるどころか、貴方に謝罪すべき立場ですね。

[ロビン] 違う。謝らなくていい、私が言いたいのはそんなことじゃない――

[ロビン] 違うんだ、アンソニー。

[ロビン] 私もこんなのは間違ってる、こんなのは良くないって思ってた。

[ロビン] でも結局、私はその考えを捨てた……

[ロビン] こうする以外、他に方法がわからなかった……わからなかったの。

[ロビン] もう疲れちゃった……母さんに選択を迫られ、父さんにも選択を迫られ、生活に、ジェッセルトンに、あなたにまで選択を迫られて――

[ロビン] 私はもう選択したくない……それが正しいのか、間違ってるのか、良いことなのか悪いことなのか、考えたくない。もう考えたくないの。

[ロビン] もう疲れたよ、どうしてこんなことになっちゃったの!?

[アンソニー] ですがロビンさん……選択権を他人に譲り渡してはいけません。

[アンソニー] 辛いでしょうが、貴方は自分で考え、選択し、その選択に責任を負わなければなりません。

[アンソニー] でなければ、貴方は自分の運命の手綱をとることはできません。

[アンソニー] これは、私がこの監獄で過ごした六年間で学んだ、最も重要なことです。

[アンソニー] 力は重要です。知恵も重要です。しかし、最も重要なのは勇気――自分の選択に責任を負う勇気です。

[アンソニー] 私も、自分が過ちを犯すのではないかと常に恐れています。でも、だからといって目前の選択から逃げることはできません。

[アンソニー] 私はこれまで、自分に頼れる者がいないのは、頼れるような対象が見つからないからだと思っていました。しかし後で気付きました。そんな対象などそもそも存在しないのです。

[アンソニー] 私たちは自分自身に頼るしかないのです。

[ロビン] ……

[アンソニー] もっと早く貴方の苦しみに気付けなかったことを私は申し訳なく思います、ロビンさん。

[アンソニー] しかし敢えて強く言います。貴方の行為は危うく私の脱獄計画を台無しにするところでした。なので、私は貴方を許すと簡単には言いません。

[アンソニー] ただ……かつて貴方と同じような苦しみを経験した人間として、貴方にはひとまずこのことを忘れていただきたい。

[アンソニー] 貴方はもう一度自分を見つめ直し、自分が一体何をしたいのかを考えなければなりません。

[ロビン] 私が……何をしたいのか……

[アンソニー] ドゥーマさんの部屋はもう目の前です。どうぞゆっくり考えてください。

[ロビン] 待って……私の話なんて信じないかもしれないけど、ジェッセルトンは私から脱獄計画を全て聞いている。あいつはきっとどこかであなたを待っているはずよ。

[アンソニー] わかりました。用心しましょう。

[???] その必要はありませんよ。私はすでに、ここであなたたちを待っていたのですから。

[アンソニー] !?

[ロビン] ドゥーマの部屋から?

[アンソニー] まさか……!

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