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風雪一過_BI-5_狩場_戦闘前
ドクターはヤエルにイェラグの歴史について色々と語ってもらった。 聖猟の最中、エンヤがアークトスと話していると、突然野獣の群れが襲ってくる。エンヤは恐れるどころか自ら弓矢を操ることで、皆を従わせるのだった。
人間の指導者はイェラガンドの前にひざまずき、主に最大の敬意を捧げ、こう問うた。
「ここはもう主なき地ではございません。」
「この地の誰もがあなた様を崇め、敬いましょう。あなた様こそ我らすべての指導者でございます。」
「どうか教えてください。我々の名は何というのでしょう?」
イェラガンドは答えた。
「汝らの名はすでに決めてある。今日より、この土地はイェラグ。そして汝らは、イェラグ人なり。」
──『イェラガンド』2ページ
[アークトス] ……
[アークトス] …………
[エンヤ] アークトス様。
[アークトス] ──! はっ、巫女様、何でしょう?
[エンヤ] そう緊張なさらずとも結構ですのに。アークトス様、身共は決して人食いの猛獣などではありませんよ。
[アークトス] そうは仰いますが、巫女様自らが聖猟にご参加なさるのは初です。ご覧ください。私だけでなく、ここにいる戦士たちが皆、巫女様にいいところをお見せしようと張り切っております!
[エンヤ] ……身共は巫女として、イェラガンドの戦士たちと共に聖猟に参加するのは、当然の義務だと思っております。
[アークトス] 確かにごもっともです!
[エンヤ] それよりも、狩りが始まってから、あなたはずっとうわの空で、何か考え事をされているようです。もし何か尋ねたいことがあれば、遠慮なく仰ってください。
[アークトス] ……ははっ、巫女様の慧眼はごまかせませんな。お恥ずかしい限りです。
[エンヤ] あなたさえよければ、身共を友人と思って接してください。
[エンヤ] そうすれば、身共も同じように接することができます。
[アークトス] 巫女様……
[アークトス] では、そうさせていただきます。失礼がありましたらどうかご容赦ください。
[エンヤ] ええ、どうか友人のように気兼ねなくお話しください。
[アークトス] ……
[アークトス] わかりました、では遠慮なく言わせていただきます。
[アークトス] どうか教えていただきたい。巫女様は、三家の主権奉還について一体どう思われているのですか?
[エンヤ] ……とても率直ですね。
[アークトス] 友人ですから、当然のことです。
[アークトス] 我らペイルロッシュ家は、戦うことにかけてはブラウンテイル家とシルバーアッシュ家に後れを取ることはありません。ですが、謀略となればこの両家の足下にも及びません。
[アークトス] 回りくどいやり方や、秘密をひた隠しにするのは私の性に合いませんから。
[エンヤ] ええ、確かにその通りですね……
[エンヤ] ですが友よ、お許しください。
[エンヤ] あなたのその質問に答える前に、一つ確認しなければならないことがございます。
[アークトス] どうぞ仰ってください。
[エンヤ] アークトス様、あなたは忠勇無双かつ、敬虔なる戦士です。
[エンヤ] あなたが率直で飾らない性格であることを身共は知っています。ですが、あなたが何も考えていないわけではないということも承知の上です。
[エンヤ] 友人同士の間で遠慮すべきではないと仰るからには、身共もそれにならうべきでしょう。
[エンヤ] ──身共は知りたいのです。かねてより、エンシオディス様の開放政策になぜそこまで頑なに反対なさるのでしょう?
[アークトス] ……巫女様、私は無骨な人間です。
[アークトス] いくらエンシオディスの言う開放政策の素晴らしさや魅力を吹聴されようと、私が求めるものはそうした御託でも、耳触りの良い謳い文句でもありません。
[アークトス] 私はただ、奴が何をもたらしたかだけを見ているのです。
[アークトス] そして私が目にしたのは、我々の家になだれ込む信仰なき外国人。発展という口実のもとに行われた、土地や山河の破壊。奴の領地で働いた結果、徐々に信仰心を失っていったイェラグ人──
[エンヤ] ……
[アークトス] ……奴がもたらしたものは確かに便利です。奴はそれにより多くの金を稼ぎ、あちこちに大きな建造物を建てていきました。
[アークトス] ですがもし皆が皆、奴にならい、いわゆる発展のために信仰を忘れてしまえば、この土地はどうなってしまうでしょうか?
[アークトス] イェラガンドがペイルロッシュ家にイェラグの守護を命じた以上、その安全を脅かすことは、誰であろうと、どんな方法を用いたものであろうと見過ごすことはできません!
[エンヤ] ……アークトス様のお考えはわかりました。
[エンヤ] では身共があなたのご質問に答える番です。
[エンヤ] エンシオディス様は、核心となる領地をすべて身共の手に引き渡すことをご提案なさいましたが、身共にとっても突然のことでしたので、やはり驚きました。
[アークトス] やはり巫女様もご存じなかったのですか?
[エンヤ] はい。彼の中にこんな計画があったとはついぞ知りませんでした。
[エンヤ] ですが──
[エンヤ] ……
[エンヤ] エンシオディス様が果たしてどのような考えに基づいて、主権奉還に思い至ったかはわかりません。ですが結果からしてみれば、これが悪い展開であるとも思いません。
[アークトス] つまり……
[エンヤ] 身共は蔓珠院で、日夜人々がイェラガンドに祈っている様子を見てきました。
[エンヤ] その経験から、間違いなく身共がエンシオディス様よりも正しく理解していることが一つございます。それは……イェラグはまだ信仰を失いはしないということです。
[エンヤ] このような決定がなされたからには、今後は多くのことについて、誰かが一人で決めてしまうということはなくなります。
[エンヤ] 予期せぬことは常に起こるものです。違いますか?
[エンヤ] もしエンシオディス様が、事前にそのことに思い至っていないのであれば、それは彼自身の落ち度です。
[アークトス] ……なるほど。今のところまだ問題は山積みですが、その言葉は信じましょう。
[アークトス] ……
[アークトス] 正直に申し上げますと、最後の言葉を聞くまで、私は巫女様とではなく、別の者と向き合っているかのような錯覚に陥っていました。
[アークトス] ただの思い過ごしかもしれませんが。
[エンヤ] ……
[エンヤ] アークトス様がそのように感じられたのであれば、身共は悲しいと言うほかありません。
[エンヤ] ですが、私の姓がシルバーアッシュであることは、決して否定できぬ事実です。
[アークトス] ……
[エンヤ] ただ、巫女になった後に、身共の一切は世俗と切り離されました。そして、身共にとってこの姓が意味を失った原因も、エンシオディス様にあるのです。
[アークトス] 巫女様……
[アークトス] 野獣共がついにしびれを切らしたか……
[アークトス] 皆、狩りの準備を整えよ!
[商人A] 巫女様の肖像画に刺繍、それから彫像なんかも売ってるよ!
[商人A] どれもイェラグ人の信仰の象徴さ。さあさあ買った買った! イェラガンドの祝福を手に入れるまたとないチャンスだ!
[ドクター選択肢1] 人が多いな……
[ドクター選択肢2] ……
[ドクター選択肢3] Sharpの方は順調だろうか。
[ヤエル] えいっ!
[ドクター選択肢1] (名状し難い叫び声を上げる)
[ドクター選択肢2] なんて冷たい手だ!
[ドクター選択肢3] (無意識に反撃する)
[ヤエル] わっ! こっちがビックリしちゃったじゃない……
[ヤエル] 目が覚めた?
[ヤエル] わあ、あなたの手、とっても冷たいのね……
[ヤエル] なにをしているの? こんなところでぼうっとしちゃって。
[ヤエル] あっ、それともそんなに驚かせちゃった?
[ドクター選択肢1] そうでもない。
[ドクター選択肢2] ……
[ドクター選択肢3] 驚いたよ!
[ヤエル] アハハ、全然平気そうじゃないの!
[ヤエル] で、何を見ていたの? そういえば、聖猟は初めてかしら? 早い話が狩りの儀式なのだけど、今回は巫女様も参加するってことで、皆楽しみにしているのよ!
[ドクター選択肢1] 大典の起源はどういうものなんだ?
[ドクター選択肢2] 君はそこまで興味があるようには見えないが。
[ドクター選択肢3] 何かお薦めのレクリエーションはある?
[ヤエル] 数百年前に蔓珠院が古書の中から、イェラガンドが初めて現れた日がこの日であることを発見したからだと言われているわ。それでこの一日をイェラグにおける最大の祭日に定めたのよ。
[ヤエル] そんな大典の日に何をするかというと──
[ヤエル] ご覧の通り、普通の人たちなら、お祭りを楽しむだけでいいのよ。
[ヤエル] でも巫女様にとっては、仕事の日なのよね……聖猟で得た山雪鬼の戦利品を厄払いしないといけないのよ。
[ヤエル] 実際にどうやるかは、もうすぐ見られるわ。
[ヤエル] へぇ……あなた、鋭すぎるって言われない?
[ヤエル] この時期になれば、私も蔓珠院のお仕事をほっぽりだして、お祭りを楽しむことができるけれど……
[ヤエル] 巫女様にはやることがたくさんある上に、私では力になってあげられないから、あまり気乗りしないのよね……
[ヤエル] それに……
[ヤエル] はぁ……やめやめ。お祭りだもの、こんな話はよしましょう。
[ヤエル] あら、私に尋ねて正解ね。
[ヤエル] レクリエーションね……そんなにいくつもあるわけじゃないわ。出店のバリエーションはそこそこだけど、それ以外は結局ほとんどがイェラガンドに関するものだもの。
[ヤエル] でも、もしイェラガンドへの理解を深めたいと思っているなら、このお祭りはいい機会よ。
[ヤエル] 行きましょう、私が案内してあげるわ。
[ヤエル] 毎年この時期になると、学院で教えたり学んだりしてる修道士たちが蔓珠院にやってきて、人々に説法をしたりイェラガンドの歴史を語ったりするのよ。
[ヤエル] ほら、ちょうどそこでもやっているわ。
[修道士] 千年前……先祖たちがイェラガンドの怒りに触れると、イェラガンドはイェラグの守護を放棄し、後に厳しい冬が訪れた。
[修道士] イェラガンドの怒りを鎮めるため、蔓珠院は毎年、最も純粋な魂を持つ少女を選び出した。少女は天道を歩き、主を象徴する鈴を山頂に掛け、自らの魂を主に捧げた。
[修道士] 百人目の少女の祈りで、イェラガンドはようやくイェラグの人々を許し、厳しい冬はついに終わりを告げた。
[修道士] そしてイェラグの最初の巫女もその時に誕生したのだ。
[ヤエル] ああ、あの歴史の話ね……そうだ、蔓珠院の書籍で、別バージョンのお話を見たこともあるわ。
[ドクター選択肢1] 別バージョン?
イェラガンドの怒りを鎮めるため、イェラグは毎年、一人の少女を巫女として選び出した。その少女はカランドの山頂へ行き、そこに座って死ぬまで祈った。
なぜなら伝説では、イェラガンドはかつて、少女の姿で人々の前に現れたとされているためだ。人々は少女の純粋な魂が主のそばに達すれば、主を呼び戻せると信じたのだ。
その儀式が百年近く続くと、報いのない儀式に耐えられなくなる者が現れ始めた。
後に、娘を巫女に選ばれた一族の家長が指揮を執り、蔓珠院に対する反乱が起こった。
それにより、蔓珠院の多くの建物が崩れ去り、太古から保管されていた数多くの文書が破壊された。この影響で蔓珠院に伝わる歴史に大きな空白が生まれた。
だが思いがけないことに、その年の巫女は例年通りカランド山頂へ登り、さらにそこで百年に渡る眠りを経て力を取り戻したイェラガンドを目にする。そして敬虔な祈りを捧げると、主は目覚めた。
主が目覚めた兆しは顕著であり、イェラグの人々はすぐさまそれを感じ取った。蔓珠院に対する反乱もそこで終わりを告げた。
[ドクター選択肢1] より現実的に聞こえる。
[ドクター選択肢2] まるで君自身が見ていたような語り口だ。
[ヤエル] そうでしょう、でも同時に残酷でもあるわ。
[ヤエル] そんなことないわ。書庫で偶然見つけたの。当時を経験した人が書き残したものかもしれないし、単なるデタラメかもしれないわね。
[ヤエル] いずれにせよ、イェラグの雪山は、人を呑み込むのよ。
[ヴァレス] 旦那様! 前方に突然大量の野獣が現れましたわ!
[ヴァレス] どれも異常なほどに攻撃的で、最前列の戦士が攻撃を受けておりますわ!
[アークトス] たかが野獣だ、恐るるに足らん!
[アークトス] お前たちはここに残って巫女様をお守りしろ。いいか、落ち着いて陣形を保つんだ。ヴァレス、お前も残れ。
[アークトス] ほかの奴らは俺に続け。前線の者たちの支援に向かう!
[エンヤ] アークトス様、お待ちください!
[アークトス] 巫女様?
[エンヤ] 身共も皆様と向かいます。
[ヴァレス] ですが、巫女様の安全が……
[アークトス] ヴァレスの言う通り、巫女様の安全が最優先です。どうか安心してここでお待ちください。ペイルロッシュ家の勇士たちが必ずや巫女様をお守りいたします!
[エンヤ] 身共は……
[ラタトス] 待て、アークトス!
[アークトス] ……ラタトス! なぜお前がここに? お前たち両家は、それぞれ両翼で行動するはずだろう?
[ラタトス] シルバーアッシュ家の連中はすでに出発しているが、何かがおかしいんだ。それをあんたに忠告しようと思って来たんだが……遅かったかもしれないね。
[アークトス] どういう意味だ?
[エンヤ] ラタトス様は、前方に現れた獣たちの様子がおかしいと仰りたいのですか?
[ラタトス] ご明察の通りです。
[ラタトス] 具体的な状況はまだわからないが、嫌な予感がする。小芝居を打つだけじゃ飽き足らず、聖猟のような厳かな儀式の最中に、妙な真似をしでかすような奴がいなければいいんだけどね。
[スキウース] ……
[ラタトス] とにかく警戒するに越したことはない。今回の聖猟には……巫女様自ら臨まれている。これまでとはわけが違う。
[エンヤ] ……
[エンヤ] ラタトス様は過敏になりすぎているようにも思われます。
[エンヤ] 身共はすでにこうして勇士たちと共にいるのです。あえて身共を特別扱いし、危険を避ける道理もありません。
[エンヤ] お二方、事態は切迫しております。移動しながら話しましょう。
[アークトス] ……はっ!
[アークトス] 巫女様のお考えは、イェラグの幸福であります! これ以上巫女様の行く道を阻むのは筋違いというもの。ヴァレス、先導しろ。行くぞ!
[ヴァレス] はっ!
[スキウース] ……
[スキウース] (まだ出てこないなんて、なにやってるのよメンヒ……! 巫女様が聖猟に参加するなんて千載一遇のチャンスなのよ! 巫女様の前で野獣を始末できれば、最高の名誉じゃないの!)
[スキウース] (でも万が一……万が一巫女様がケガでもしちゃったら……)
[スキウース] (……まあいいか。ラタトスも本気であたしを罰したりはしないだろうから、最悪あたしが責任を負えばいいわ……)
[スキウース] (絶対にこのチャンスをつかみとるのよ、メンヒ!)
[年長のイェラグ戦士] この野獣たち、全くの恐れ知らずか!?
[年長のイェラグ戦士] 絶対におかしいぞ……
[若いイェラグ戦士] 今回は巫女様も隊にいるもんだから、山の野獣も恐れをなすだろうと思ってましたが。
[若いイェラグ戦士] どうやらそうでもないみたいっすね。巫女様も言うほど大したことねえな……
[年長のイェラグ戦士] 何バカなこと言ってやがるんだ! お前ごときが巫女様を軽々しく語るんじゃねぇ!
[年長のイェラグ戦士] その言葉がアークトス様の耳に入ったらどうなるか、よく考えろ!
[若いイェラグ戦士] はいはい、わかってるっすよ! アークトス様に聞かせられるわけないっしょ。叱られるだけじゃ済まないでしょうし……
[年長のイェラグ戦士] わかってんならいい……待て、後ろだ──
[若いイェラグ戦士] ──!?
[???] 伏せて!
その凛とした声よりもさらに早く届いたのは、風雪を引き裂く銀色の光だった。
冷たく光る野獣の牙が若き戦士の目の前に迫ると同時に、温かく生臭い獣の血がその戦士の顔へと一気に噴き出した。
イェラグの巫女は、弓を引き絞った手をゆっくりと下ろし、喧騒の中を歩いてゆく。そしてブラウンテイルとペイルロッシュがその両翼に付き従う光景は、まさにあらゆる文献に描かれる姿だった。
「彼女は地上におけるイェラガンドの代行者──彼女は山々の頂におけるイェラガンドの無上の権化である。」
少女が若き戦士に歩み寄る。
山の風雪も、彼女の歩みを妨げぬよう息を止めた。
[エンヤ] お怪我はございませんか?
[若いイェラグ戦士] ……み、巫女様……
[エンヤ] まだ危機は去ってはいません。立ち上がりなさい、若き戦士よ。
[エンヤ] イェラガンドの勇士たちよ、武器を掲げるのです! 身共とともにこの野獣たちを駆逐し、イェラガンドが我々にお与えになった試練を乗り越えるのです!
[若いイェラグ戦士] ……
[若いイェラグ戦士] ……はい!
[若いイェラグ戦士] み……巫女様のために!
[イェラグ戦士たち] 巫女様のために!
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