aklib_story_ニアーライト_NL-7_夢の余韻_戦闘前

ページ名:aklib_story_ニアーライト_NL-7_夢の余韻_戦闘前

このページでは、ストーリー上のネタバレを扱っています。

各ストーリー情報を検索で探せるように作成したページなので、理解した上でご利用ください。

著作権者からの削除要請があった場合、このページは速やかに削除されます。

ニアーライト_NL-7_夢の余韻_戦闘前

銀槍のペガサスが都市へと進入した。それは大騒動を引き起こし、合成樹脂騎士とユスティナは、正面からプラチナとぶつかり合う。その頃、ドクターはマルキェヴィッチと再び会っていたのだが……目まぐるしく変わりゆく日々の中、果たして誰もが初心を保てるものだろうか?


「騎士にとっての最後の敵は、この大地そのものである。」

「慎ましく地上に留まっているべきだったはずの都市は、人々の血と汗を餌に、前へと地を這い進み始めた。」

「都市は生活が生んだ怪物である。すべての都市に抵抗せよと人々に遍く呼びかけて、本来彼らのものであるべき、純粋な美しさを取り戻すのだ!」

「草原を在るべき姿に戻し、大空を在るがままにし、人間の精神を再び健全なものとして、栄光を不朽不滅のものとせよ!」

「我こそは、最後の騎士なり!」

[代弁者マルキェヴィッチ] 征戦騎士の目的地はどこなのですか? 監査院でしょうか?

[代弁者マッキー] いや……

[代弁者マッキー] 彼らは、チャンピオンウォールの展示ホールへ、歴代チャンピオンの肖像画がある、表彰の地へ向かった。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……なぜなのでしょう? 彼らはすぐ、政府のほうへ向かうべきなのでは?

[代弁者マッキー] 理事会も、その問題について話し合っているよ……私が思うに、監査会が威厳を取り戻すべく打ってきた最初の一手だろうな。

[代弁者マッキー] そして、次の一手では……軍隊の駐留を常態化しようと試みる可能性もある。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……

[代弁者マッキー] だが、現代のカジミエーシュでは、彼らがその刃を以て脅しを掛けてきたとしても、それで好き勝手に事を運べる場所じゃない……愚かな騎士はまだその事実に気付いていないのだろう。

[代弁者マッキー] 暴力の時代はとっくに過ぎ去ったというのにな。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……そうですね……

[代弁者マッキー] マルキェヴィッチ君。もう一度、零号地へ行ってきてくれないか。感染者収容治療センターに停電が与える影響は大きいだろうしね。

[代弁者マッキー] 何かトラブルになっていないか、見てきてほしいんだ。

[代弁者マルキェヴィッチ] わかりました。

[企業職員] ご報告します、代弁者様。電力系統の復旧作業が……ほぼ完了しました! 現在、再起動の準備をしております!

黒々とした闇の中を、銀光が往く。

騒がしい観衆たちが、華やかに現れたそれを取り囲む。

街灯がちらついてすぐ、ネオンが放つ色彩が、ほんの少しの微睡みにあった都市へと戻ってきた。

広告灯の光の下、銀槍のペガサスはどこか場違いにすら見えた。

しかし、見物に来た通行人も、慌てていた騎士も、興奮する観光客も……

その場にいた誰もが、まるでペガサスが光をもたらしたように錯覚した。

淡々と進む彼らの背後で、都市が次第に活力を取り戻していく。

[「銀槍のペガサス」] ……ご挨拶を申し上げます、マスター・イオレッタ。

[ラッセル] 久しぶりね、ライム。

[ラッセル] 長旅ご苦労様。残念なことに、休んでいる時間はないようなのだけれど……

[「銀槍のペガサス」] 我らには、休みなど必要ありません。カジミエーシュのため、汚れたものを一掃することこそが当面の急務ですから。

[ラッセル] ふふふ……相変わらず、せっかちな人ね。

[ラッセル] ねえ、このパーティーの主役に会いたいとは思わない?

[「銀槍のペガサス」] ……マーガレット・ニアールのことですか?

[「銀槍のペガサス」] 彼女はかつてグランドマスターにいただいたお誘いを断るべきではありませんでした。本来なら、我々の中でも最優秀の一人となりえた逸材……今のように落ちぶれずともよかったはずなのです。

[「銀槍のペガサス」] しかし、彼女は再びカジミエーシュへと戻り、もう一度あの偽りの競技場に立ちました。……追放を受けたことで、マーガレットの心は変わってしまったのではないでしょうか。

[ラッセル] あなたもマーガレットと決闘したことがあるでしょう。彼女がそんな子だと思う?

[「銀槍のペガサス」] ……時間というのは、すべてを変えうるものです。マーガレットは今……

[ラッセル] ――ご覧なさい、ライム。この壁に飾られた、メジャーの歴代チャンピオンたちを。

[ラッセル] 少しずつ崩壊していく時代の中で、頭角を現した騎士たちは……どうして、今もなお輝きを宿せるのでしょうね。

[「銀槍のペガサス」] ……ですが、グランドマスター。一人二人の優秀な騎士が現れただけでは、何の意味もありません。

[「銀槍のペガサス」] 騎士競技は依然、カジミエーシュの禍根であり、我ら騎士への冒涜にすぎないのです。

[「銀槍のペガサス」] 私は大騎士領に戻るたび、悲しみと憤りを感じます。我らが人民たちは畏敬の念というものを失い、気高き品性は一笑に付される時代遅れの概念に成り果ててしまいました。

[ラッセル] ……おそらく、征戦騎士が大騎士領を去ってからそうなってしまったのでしょうね。

[ラッセル] 残念だけれど、時代は若い人たちの物なのよ。私たちが出した答えなど、もはや毒にも薬にもならないの。

[シャイニング] ……ドクターは既に気付いていらしたのですね。

[シャイニング] さすが、の一言です。

[ドクター選択肢1] だが、カジミエーシュの中心で度を超した真似はできない。

[ドクター選択肢2] アーミヤとオペレーターたちの安全が最優先だ。

[ドクター選択肢3] 我々が軽はずみに動くことは誰も望まないだろう。

[シャイニング] そうですね。ニアールさんも元々は、あなたたちを巻き込まないようにメジャー期間中、我々があなたのもとへ戻ることは望まなかったほどですから。

[シャイニング] とは言え、地域の感染者から得た情報が無視できなくなってきたもので……お二人はご存知だとは思いましたが、お知らせに参りました。差し出がましい真似でしたね。

[アーミヤ] ……いえ、シャイニングさんの判断は正しいものです。

[アーミヤ] 感染者が本当に、零号地で非人道的な扱いを受けているのなら……私たちは、自分たちの安全を口実にそれを看過するわけにはいきませんから。

[シャイニング] ……

[アーミヤ] ですが……ドクターが懸念されていることも、一理あります。……カジミエーシュはウルサスや龍門とは違いますし……

[ドクター選択肢1] では、想像してみようか。

[ドクター選択肢1] 施設を破壊し、感染者を救い出してここから逃げ出す。

[ドクター選択肢2] 今すぐ連合会と話をつけて、感染者を全員買い取る。

[ドクター選択肢3] 国民議会にこの件を告発し、監査会に希望を託す。

[アーミヤ] ……暴力では解決できません。

[アーミヤ] その一線を一度でも越えてしまえば、ロドスはあっという間に、カジミエーシュによって沈められてしまうでしょう。

[アーミヤ] 私たちは今、カジミエーシュの中心に身を置いています。おそらくこの国とウルサスとでは、根本的に違うのでしょうが……ここは未だ、騎士の国なんです。

[アーミヤ] 国家内部に抱えた矛盾がどれだけ激化しようと、カジミエーシュは依然として、あの「カジミエーシュ」ですから。

[アーミヤ] ロドスは絶対に、この国を敵に回すようなことはできません。

[アーミヤ] ええと……そ、それはロドスには不可能なのではないですか……?

[アーミヤ] 感染者を全員買い取ったとして、そのあとはどうするんですか? いずれまた新しい感染者が現れますし、キリがありません。

[アーミヤ] しかも、その選択は感染者たちを単なる……商品に変えてしまうばかりです。

[アーミヤ] それでは、何の解決にもなりません。

[アーミヤ] 監査会、ですか……しかし、私たちはまだ零号地の全容を知りませんよね。

[アーミヤ] 監査会と商業連合会は常に争い続けていますし……監査会の感染者への態度も、曖昧なものです。彼らは、初めから黙認しているという可能性すらあると思います。

[アーミヤ] ロドスにできることなど……本当に、あるのでしょうか?

[シャイニング] ……ドクター。

[シャイニング] どうなさるおつもりですか?

[ドクター選択肢1] 彼らの問題を解決する。彼らのやり方でな。

[無冑盟構成員] 向こうだ! 追え!

[グレイナティ] ……チッ!

[グレイナティ] (電力は既に復旧しているか……ソーナも、きっと何とか合流してくれるだろう。)

[無冑盟構成員] すぐ、増援を呼んでおく――

[グレイナティ] ここを曲がれば――わっ!?

[プラチナ] あーあ……零号地で気持ちよくぼんやりしてたのに、急に真っ暗になるんだもんなぁ。無冑盟がついに、歩哨所の電気代を払ってくれなくなったのかと思ったよ……

[プラチナ] でもそこへ来て、まさかの支援要請とはね……

[グレイナティ] ……プラチナ!

[プラチナ] ……なんだ、またオマエか。

[プラチナ] オマエも焔尾騎士も、前回ので懲りてくれてると楽なんだけど。

[グレイナティ] 残念だったな……私は手ひどくやられるほど、抵抗したくなるほうなんだ。

[グレイナティ] ――とにかく、そこを退け!

[プラチナ] まだやられ足りないみたいだね……だったら、きっちり思い知らせてやるしかないか。

[グレイナティ] (っ、間合いを離されたか――だが、この一本さえ防げたら、反撃のチャンスは必ずある!)

[無冑盟構成員] こっちだ! プラチナ様を援護しろ!

[グレイナティ] (しまった――後ろを取られた!)

[無冑盟構成員] ――うっ!

[プラチナ] なっ……

[プラチナ] これは……! 街灯狙いで撃ったのね。

[プラチナ] ……もう、ガラスで顔に傷でもついたらどうしてくれるの……

[グレイナティ] ユスティナ、お前か!

[ユスティナ] うん。早く撤退して、灰毫。

[ユスティナ] 私たちで、何とかして抑えるから。

[グレイナティ] ……了解!

[プラチナ] 逃がすか!

[プラチナ] チッ……邪魔してくれるね。まずは隠れて、位置を確認するか……

[プラチナ] ……!

[プラチナ] 制式軽量クロスボウ? あれの射程はそう長くないはずだけど……

[プラチナ] なるほど、相手は二人いるのか……

[シェブチック] 遠牙。向こうに気付かれたようだ。

[ユスティナ] ……了解、移動する。

[ユスティナ] 本当は狙撃の分野で、彼らに挑むものじゃないけど……今は二対一だから。

[プラチナ] (撃ってこないな……もう動いたのか? 鋭い奴らだ。)

[プラチナ] (こんな面倒ごとになるってわかってたら、救援なんて聞こえないふりしたのにな……)

[プラチナ] (まあ、でも……)

プラチナは目を閉じる。

そして、ずっと昔に両親から言われたことを思い出した。

二人は口を揃えて、セントーレアの鋭い目は、きっと一族に栄光をもたらす……と、そう言っていた。

だが、今の彼女に二人の言った「栄光」などあるのだろうか?

[プラチナ] ――捉えたよ、シェブチック。

[シェブチック] ッ――!?

嵐のように力強い一矢が、シェブチックの頬を掠めた。

あと少しでもずれていたら、頭を持って行かれていただろう。

[シェブチック] ――こんな距離から……反撃、してきたのか!?

[ユスティナ] シェブチック、どうしたの?

[ユスティナ] 止まっちゃダメだよ、移動を続けて!

[プラチナ] スゥ――ふー……

[プラチナ] ……騒がなくたって、オマエの分もあるよ。

[ユスティナ] ――っ!

[ユスティナ] ……特別製の矢! すごい威力……

[ユスティナ] それにしても……こんなに複雑な地形をした都市の中で、私たちの動きを正確に捉えてるっていうの……?

[プラチナ] ……消えた。

[プラチナ] 逃げられた、かな?

[合成樹脂騎士] 俺に……逃げるつもりなど、毛頭ない。

[プラチナ] ……

[合成樹脂騎士] ……プラチナ……貴様、俺の家族をどうした!?

[合成樹脂騎士] あいつらに一体何をした!!

[プラチナ] ……遠距離じゃ敵わないからって、接近戦で挑んできたの?

[プラチナ] 甘いね。

[合成樹脂騎士] う、ぐっ――

[プラチナ] 惨めだねぇ……一人の父親が、無冑盟に刃向かったせいでこうまで落ちぶれるなんてさ。

[合成樹脂騎士] ――ッ、この――!

[プラチナ] 言っとくけど、アンタの奥さんも子供も無事だよ。

[合成樹脂騎士] ――ならば、二人をどこへ隠した!?

[プラチナ] さあ、どこだろうね。もしアンタが無冑盟の言うことを大人しく聞いてくれるなら、先に電話で話させてあげてもいいんだけど。

[合成樹脂騎士] ……お前……

[合成樹脂騎士] まさか、俺にレッドパイン騎士団を裏切れと言うのか?

[プラチナ] ――父親か、騎士か……どっちで居たいかって話だよ。

[プラチナ] そもそも、感染者のためにアンタがそこまでしてやる必要なんてあるの?

[合成樹脂騎士] ……

[ユスティナ] ……動くな。

[ユスティナ] これで終わりだよ、プラチナ……この距離だったら、君がどんなに速くたって避けられない。

[プラチナ] ――選びなよ、シェブチック。

[合成樹脂騎士] ……まったく……

[合成樹脂騎士] どいつもこいつも……騎士への敬意なんて持ち合わせてもいないらしいな……

[プラチナ] だって、騎士競技に参加すればどんな人でも騎士になれるでしょ。伝統ある騎士一族なら、それがもっと簡単になるってだけでさ。

[プラチナ] 騎士なんて……幻想なんだよ。……人を失望させてばかりの、ね。

[合成樹脂騎士] ……チッ!

[プラチナ] ――で? アンタは家族より、自尊心のほうが大事だっていうの?

[合成樹脂騎士] それ以前の問題だ。卑しい殺し屋め……お前の言葉など、信じられるものか!

[合成樹脂騎士] やれ、遠牙!

[ユスティナ] ――

[禿頭マーティン] 道のほうは、すっかり元通りになったようだよ。

[禿頭マーティン] しかし、本当に大変な騒ぎだったね……

[マリア] ……これをやったのって、ソーナたちなのかな?

[マーガレット] ……恐らくな。だが、ほかにも焚き付けた者はいることだろう。

[マーガレット] 彼女たちの心は、怒りと不公平への不満に満ち溢れ、抵抗を望んでいた。そして、その抵抗が……利用されてしまったんだ。

[マーガレット] こうした悲劇は……幾度となく経験してきた。

[ゾフィア] ……マーガレット。彼女たちを助けてあげたいとでも思ってるの?

[マーガレット] ……

[ゾフィア] 感染者のために戦うことと、騎士として戦うこと……この二つは、今のカジミエーシュにおいては相反する選択よ。

[マーガレット] ――感染者を苦しめている不平等というものは、我々の眼前にある無数の苦難の縮図にすぎない。

[マーガレット] 感染者のために、正義を広めてくれる者たちの存在を――その彼らであれば必ず成し遂げられるということを、私は信じている。

[マリア] お姉ちゃん……

[マーガレット] だが、それだけでは救えない。すでに確固たる意志を持つ者たちに頼るばかりでは不十分なんだ。

[ムリナール] ……珍しい客が来たものだ。

[「銀槍のペガサス」] ご無沙汰しております、閣下。

[ムリナール] ……礼はいらない。私は騎士ですらない身だ……自分の立場を忘れないでくれ。

[ムリナール] それからマーガレットを訪ねに来たのであれば、悪いが期待には添えない。

[「銀槍のペガサス」] ……そうですか。何年も大騎士領へは戻っておりませんでしたが、かの英雄の邸宅が、このようなことになっていたとは……

[「銀槍のペガサス」] もしやあの姉妹は、もうこの家に住んではいないのでしょうか?

[ムリナール] ……

[「銀槍のペガサス」] っ、失礼いたしました……ご家庭の問題に口出しをしてしまい、申し訳ございません。

[ムリナール] ……それで。まだ、何か用事があるのか?

[「銀槍のペガサス」] ムリナール閣下――

[ムリナール] ……仰々しい呼び方はよせ。

[「銀槍のペガサス」] ……ほかの者があなたを侮辱しようとも、我々はそのようなことはいたしません。

[「銀槍のペガサス」] 確かに、マーガレットは道を誤り、その妹もいまだ幼さの残る若者ではありますが……ニアール家は、歴史や名声によって尊敬を集めてきたわけではありませんから。

[「銀槍のペガサス」] エリートだと自称するばかり声がでかい商人どもは、この本質を見抜けぬからこそ、騎士たちの様々な行いを理解できないのです。

[「銀槍のペガサス」] 本日は、閣下のご健康を確かめることができて、いくらか安心いたしました。

[ムリナール] ……この有様を見て安心した、と? 社交辞令も大概にしていただきたいものだな、騎士殿。

[ムリナール] 本当に私のことを気にかけてくれているのなら、もう帰ってくれ。

[「銀槍のペガサス」] ムリナール閣下……

[「銀槍のペガサス」] 我々から、あなたに……いいえ、ニアール家に最大の敬意を表することを、どうかお許しください。

[ムリナール] ……英雄の時代は終わった。

[ムリナール] ごく普通のカジミエーシュ人が、「銀槍のペガサス」から丁重な礼を受けるに相応しいと思うのか?

[代弁者マルキェヴィッチ] ……じきに日がのぼります。本当に奇妙な夜でしたね、ドクター様……

[代弁者マルキェヴィッチ] すぐに駆けつけられず、申し訳ありませんでした。連合会のほうにも対処すべきことが常々山ほどございまして……

[ドクター選択肢1] 君は、零号地をどう見ている?

[代弁者マルキェヴィッチ] ……

[代弁者マルキェヴィッチ] そのお言葉に……言外の意味はない、と思ってもよろしいですか?

[代弁者マルキェヴィッチ] 何しろ、貴殿は聡明な方ですので。

[ドクター選択肢1] 遺憾ながら、そう思ってもらっても構わない。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……わかりました。

[代弁者マルキェヴィッチ] 貴殿は……大騎士領のこうした感染者対応を、正しい措置だとお思いになりますか?

[代弁者マルキェヴィッチ] 答えていただかずとも、私たちにもわかっています――これは妥協的な選択だと。

[代弁者マルキェヴィッチ] こうした「妥協」は、完璧で人道的な選択もできず、一方で血生臭く野蛮な選択もしたくないという時、選び取られるものなのです。

[ドクター選択肢1] だが、それは正しいことではないだろう。

[代弁者マルキェヴィッチ] カジミエーシュの歴史書をいくつかお読みになったことがあれば……今日ある我々の社会が、どれほどの「正しくない」行いの上に建てられたものか、お気付きになることと思います。

[代弁者マルキェヴィッチ] 貴殿は理解していらっしゃらないかもしれませんが、ペガサスの国がナイツモラのもたらす混乱によって転覆し、次いで騎士の国が建てられたあと、真っ先に団結し始めたのは従者たちだったのです。

[代弁者マルキェヴィッチ] 始めの頃は騎士たちのために、財産や土地の管理運営を行っていましたがその後、従者たちは再び協力し合って、暴虐な大騎士たちを権力の座から追い落としました。

[代弁者マルキェヴィッチ] しかし、今や従者団から商業連合会へと姿を変えた彼らは、殺し屋組織と競技騎士たちを飼い慣らす立場となりました。その支配を受ける人々は抵抗を続け、権力の束縛から逃れようとしていて――

[代弁者マルキェヴィッチ] ……つまるところ、歴史は繰り返すものなのです、ドクター様。

[代弁者マルキェヴィッチ] たとえば……前の代弁者は卑劣な行為に及んだことで、代償を払うことになりました。その結果、今や私が代弁者となって、苦心しながら前進する役目が回ってきました。

[代弁者マルキェヴィッチ] ――連合会による、感染者への対応は、貴殿の道徳観にも一致する処分でしょうか? 貴殿はあれを、正しいことだとお思いになるでしょうか……?

[代弁者マルキェヴィッチ] どのように知り得たのかはわかりませんが……貴殿は、恐らく既にお気付きなのでしょう。

[代弁者マルキェヴィッチ] そうです。競技場で負傷し、身体に重度の障害が残った者や、手に負えないほど鉱石病が悪化した者に対して、連合会は「人道的な処理」を選択しました。

[代弁者マルキェヴィッチ] これを、正しくないことだとお思いになりますか? 無論、私もこのような行為を否定したいとは思っているのです。

[代弁者マルキェヴィッチ] ですがそれは、永遠にあの病人たちを――感染者たちを養えと言うのと同じことです。あの病には、解決法がないのですから……

[代弁者マルキェヴィッチ] 鉱石病が「治せる」病気になるまでは、我々が平和的に共存することなど不可能なのです。

[ドクター選択肢1] だが、君が「処理」と呼ぶそれは「殺人」そのものだ。相手が生きる意志を持つ者ならばなおさらな。

[代弁者マルキェヴィッチ] 正しくないと考える者が全て排除された結果、今の「正しい」歴史が生まれたのです。幸いにも、私はこの理屈を受け入れることができました。貴殿ほどの方であれば、ご理解いただけるはずです。

[代弁者マルキェヴィッチ] 今の貴殿は、カジミエーシュに挑もうとなさっていますが、私からすれば、それはお勧めできない選択です。

[代弁者マルキェヴィッチ] 我々には確かに、ほかの方法があるのかもしれません。貴殿に何かお考えがあるのなら、私も喜んでお助けしましょう。

[代弁者マルキェヴィッチ] ですが、それは今ではないのです。

[代弁者マルキェヴィッチ] 昨晩の大規模停電の件、実行犯の容疑を掛けられているのは感染者騎士ですよ。

[代弁者マルキェヴィッチ] 仮定の話です。ただの仮定ですが、この停電によって交通事故が起きていたらどうしますか? 家庭用の人工呼吸器に頼っていたご老人の呼吸が、止まってしまっていたら――

[代弁者マルキェヴィッチ] 感染者救済を理由に、こうした悲劇に目を瞑っていいはずがありませんよね。

[代弁者マルキェヴィッチ] もとより、感染者が競技場に立つことを許した以上、誰もがそのリスクに対するストレスを感じています。

[代弁者マルキェヴィッチ] そしてこのストレスというのは、特定の個人や集団から与えられているものではなく、この社会全体が生みだしているものなのです。

[ドクター選択肢1] だからと言って、死にゆく感染者を看過するのか。

[ドクター選択肢2] 君の言うように、ほかの方法があるかもしれないな。

[ドクター選択肢3] ……

[代弁者マルキェヴィッチ] 今この瞬間にも、多くの人々が、病や天災で命を落としています。最初から、我々にはその全員を救うことなどできません。

[代弁者マルキェヴィッチ] 申し訳ありません。

[代弁者マルキェヴィッチ] はい。

[代弁者マルキェヴィッチ] 貴殿であればきっと、何かを成せるのだろうと信じています。

[代弁者マルキェヴィッチ] どうぞ私の言葉を覚えておいてください。この件に関わることを、気まぐれな親切程度の感覚では考えないでほしいのです。

[代弁者マルキェヴィッチ] 零号地の抱える矛盾は、本当に複雑なものですよ。

[代弁者マルキェヴィッチ] 言葉が過ぎたかもしれませんね。申し訳ございません。

[代弁者マルキェヴィッチ] ですが、貴殿に落ち着いてご検討いただければ、我々双方のためになります。

[グラベル] ……ドクター。

[グラベル] あなたに会いたいっていう人がいるんだけど……

[代弁者マルキェヴィッチ] ……では、私はこれで失礼いたします。

[代弁者マルキェヴィッチ] どうか、誤解なさらないでくださいね。出来うる限り、私は貴殿の味方でいたいのです。

[代弁者マルキェヴィッチ] しかしながら、無数の「正しくない」ことや「どうしようもない」ことの中から、最も実現性の高い回答を選び取るのは、非常に困難なことです。

[代弁者マルキェヴィッチ] 貴殿の仰る通りあの大規模停電や、耀騎士そして血騎士の存在が、感染者騎士たちに抗う意志を与えてしまったのかもしれません。

[代弁者マルキェヴィッチ] 可能であるならば収拾がつかなくなる前に、お互い多くの死傷者が出かねない未来を、回避できるよう願っています。

[代弁者マルキェヴィッチ] 「善良な人には良き終わりが訪れる」という言葉がありますが、それも、今では戦って勝ち取らなければならないものです。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧