aklib_story_また会えたね_気楽にいこう

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また会えたね_気楽にいこう

外勤任務にビジューを連れて行くわけにはいかず、シャオヘイたちはビジューの面倒を見てくれる人を探すことにした。自ら進んでその役目を引き受けてくれたのは、数機のロボットたちだった。


ビジューの一日

[ビジュー] ビュウ!

[食堂のおばさん] あれ、食材はどこ行ったんだい?

[食堂のおばさん] 作ったはずの料理もない!

[食堂のおばさん] ま、まさかケーちゃんが入って来たのかい!?

[グム] うわわわ、あの子、どうしてあんな風に色が変わるの!?

[イーサン] へぇ? あんなのどっから見つけてきたんだ? カラフルに色を変えられるなんて、俺みてぇなやつだな。

[イーサン] おーい医療部、そいつにゃ優しくしてやれよ。

[イーサン] いや待て……俺まで検査に協力しろなんて言い出さねぇよな?

[ビジュー] ビュウ!

[遊んでいる子供] あれっ、おもちゃが消えちゃったよ?

[サボっている子供] ほんとだ!? って危ない危ない。あんまり騒ぐとジュナー教官にサボりがバレちゃう……

[落ち着いた子供] まあまあ。捕まった時ははこう言えば納得してもらえるよ――「突然消えた不思議なおもちゃを調査してたらここにたどり着いた。もうすぐロドスの奥底に埋蔵されている秘密が明らかに……」

[キアーベ] おい、マジか?

[キアーベ] おもしれー話だな。

[キアーベ] 俺も混ぜろよ。

[落ち着いた子供] えっ?

[ビジュー] ビュウ!

[エンジニア部オペレーター] ――?

[エンジニア部オペレーター] 何だこいつは? って、おい! 何をする!?

[エンジニア部オペレーター] それはさっき組立てたばかりのパーツだ! お、お前まさか、それを食べようと――!?

[エンジニア部オペレーター] おおっと――ミス・クリスティーンか?

[エンジニア部オペレーター] ふぅ、助かった。後でファントムさんにお礼を言わないと。とっつきにくい人だと思ってたけど、けっこう親切なんだな……

[エンジニア部オペレーター] レディーに敬礼!

[ビジュー] ビュウ……!

[シャオヘイ] 捕まえた!

[シャオバイ] ビジュー、どうしてお利口にしてないの?

[シャオバイ] そんな走り回ってたら、いつかケガしちゃうよ!

[アグン] うわっ、それよりその色はどうしたんだ?

[ビジュー] ビュウ~

[アグン] ……どうやらあれこれたらふく食べてきたみたいだね。

[アグン] シャオヘイ、ビジューはどこで見つけたの?

[シャオヘイ] 捕まえたのは突き当たりのあの部屋だよ。

[シャオヘイ] でもその前に食堂でご飯を盗み食いして、プレイルームでおもちゃを食べちゃったみたい……

[シャオバイ] あー……みんなに謝りに行かなきゃいけないね。

[アグン] そうだね。これからはちゃんと見ておくんだよ。

[シャオバイ] わかった! じゃあ行こっ!

[シャオバイ] ……お兄ちゃん、結局ビジューはすごく貴重なものを食べちゃったわけじゃないし、サボってたオペレーターさんを捕まえるお手伝いもしたってこと?

[シャオバイ] あれ? あの赤くておっかない人、さっきはみんなで何かを掘り当てるとか話してたけど、今は一人で……あ、こっち見た!

[サボっている子供] うううっ、ジュナー教官、ごめんなさい! もう絶対サボったりしません!

[キアーベ] 安心しな兄弟! 俺がみんなの意志を背負って必ずやり遂げてみせるからよ――

[シャオバイ] ……良い人だね。

[アグン] ……

[アグン] ビジュー、やるじゃないか。

[アグン] まぁとにかく、ビジューが食べちゃったものを弁償しなくていい代わりに、ロドスの外勤任務を手伝ってほしいって話だったね。

[シャオバイ] じゃあビジューは連れて行けないのかな?

[アグン] うん、危ないからね……籠をもらったから、とりあえずこの中に入れておこうか。また勝手に何か食べちゃうといけないし。

[アグン] でも入れたまま放っておくのも良くないから、誰かに見ていてもらわないと……

[Thermal-EX] おお、うおおおお!

[Thermal-EX] 今回のアップデートで、超天才クロージャ様が私に多くの新機能を追加してくださいました!

[Thermal-EX] 今にも私の熱意がリミットブレイクし、いっそう輝きを増す予感が致します!

[Castle-3] アップデートによって、我々のストレージ容量は35.7%拡張した模様です。更なるプログラムのダウンロード及びインストールが可能です。

[Lancet-2] 私は今回のアップデートで、戦場での応急処置プロセスをいくつも追加していただきました。さらに一部の言語モジュールも更新されて、皆様をより円滑にサポートできるようになりましたよ。

[Lancet-2] このファイル復元機能もすごいんですよ。何年か前に削除されたドクター様のいびきの録音も復元に成功したのですが、お聞きになりますか? 面白いですよ。

[シャオバイ] わわっ!

[シャオヘイ] 何だあれ?

[アグン] ロボットたちが話してる?

[Thermal-EX] おお、これはこれは、見慣れぬお嬢さまにお兄さま方! 私の完璧なフォルムに見とれていらっしゃるのですね?

[Thermal-EX] 無理もありません! この私の熱いフォルムの誘惑からは、何人たりとも逃れられませんからね!

[Castle-3] 面識のない人物を検知しました。はじめまして、ロドスのサポートをお求めですか?

[Lancet-2] どこか具合の悪いところがありましたら、私がお役に立てると思いますよ。

[シャオバイ] わぁ! 本当に喋ってるよ!

[シャオバイ] こんにちは、私たちここに来たばかりなんだけど、お世話してほしいペットが一匹いるの。手伝ってくれそうな人を知らないかな?

[Castle-3] ペットのお世話ですか?

[Thermal-EX] お任せください! 今回のアップデートには九百五十六冊ものペット飼育ガイドが含まれており、あらゆる動植物の飼育法を網羅しております。このホットなコアでどんな命も温めて見せましょう!

[Lancet-2] もしその子が体調を崩してしまっても、私がお力になります。

[Lancet-2] オペレーターの皆様のお世話をしたこともたくさんありますので、どうかご安心ください。

[シャオバイ] わー! ほんとに? すごいね!

[Thermal-EX] 当然です! すごいではなく超超超すごいのです! クロージャ様により創り出された私が、皆様のあらゆる問題を解決いたします!

[シャオヘイ] (小声)こいつらって……もしかして妖精?

[シャオバイ] ロボットだと思うけど、私たちのところにいるのとは全然違うね。見た目はこんなだけど、ほんとに人と話してるみたい。

[シャオバイ] ロドスってすごいねー。

[シャオバイ] ペットの飼育についても詳しいみたいだし、お願いして大丈夫じゃないかな。お兄ちゃん、シャオヘイ、どう思う?

[シャオヘイ] うーん……いいんじゃない。

[アグン] 他の人を探すのも大変だしね……任せてみようか。

[シャオヘイ] ……ヘイシュ、お前も残れ。

[ヘイシュ] ヘイ~シュ!

[Thermal-EX] うおおおおッ!! なんとも可愛らしい黒団子が私めのボディに飛び乗ってきました!!

[シャオバイ] あはははっ、じゃあよろしくね!

[シャオバイ] あっそうだ、ビジューに金属と生物は絶対に食べさせちゃダメだからね。すっごく危ないんだ!

[シャオバイ] それと、ヘイシュがいる間は、籠から出しても大丈夫だけど……

[シャオバイ] 今はすごく興奮してるみたいだから、もうしばらくは入れておいた方がいいよ。

[Castle-3] 了解しました。ではこちらにあなた方とこの子の名前をご記入ください。任務情報として端末にアップロードしておきますので。

[シャオバイ] わかった……よし! じゃあお願いね!

[ビジュー] ビュウ! ビュウ!

[Castle-3] 落ち着きのない様子から分析するに、この子は外に出て遊びたがっているのではないでしょうか?

[Thermal-EX] ならば私の頼れる背中に乗せてあげてください! 直ちにこの子を乗せて、ロドスの隅々まで巡って参ります!

[ビジュー] ビュウ?

[Lancet-2] もしかして、具合が悪いのではないでしょうか? ずっと籠にしがみついていますし。

[Lancet-2] はぁ、この子も言葉を話してくれたらいいのですが……

[Castle-3] ただいま最新の言語モジュールをチェックしています。

[Lancet-2] 確か以前、言語データをいくつか削除してしまったのですよね。復元してみましょう……

[Lancet-2] *クルビアスラング*、*ヴィクトリアスラング*、*炎国スラング*……!!

[Castle-3] 私の分析によると、それは以前あなたが誤って記録してしまったテラ各地のスラング集かと思われます。エンジニア部がそのためにあなたにプラグインを用意していたことを覚えています。

[Lancet-2] 申し訳ございません……削除しなおしておきました。

[Thermal-EX] このままではいけません、時間は待ってはくれないのですよ。これ以上私のコアに沸き上がる熱意を抑えておくことは不可能です! 直ちにその籠を私の背中に乗せて、出発しましょう!

[Castle-3] 少々お待ちを。『知っておきたいペット飼育のお悩み100選』を参照しますと、「動物は新たな環境に置かれた時に、様々なストレスサインが現れる」とあります。

[Castle-3] さらに、「それはその環境の安全性が不明瞭であるために引き起こされるものである」とのことですので、ビジュー様のために、安全性の保証された環境を構築する必要があります。

[Thermal-EX] なんと! 了解致しました! 周辺環境をスキャン――!

[Thermal-EX] スキャン――スキャン――!

[Thermal-EX] スキャン失敗! 対応する機能がインストールされておりません!

[Castle-3] 私にお任せください。

[Castle-3] ――廊下の安全を確認。

[Castle-3] ビジュー様、どうかご安心を。

[Lancet-2] この子、震えていませんか?

[Castle-3] おそらく、これが「ストレスサイン」でしょう。

[ビジュー] ビュウ!(遊びに行きたい!)

[Lancet-2] なるほど……ちょっと身体検査をさせてくださいね。

[Lancet-2] 他にもストレスサインが現れているかもしれませんから。

[ビジュー] ビュウ!(遊びに行きたい!)

[Lancet-2] データは正常ですね。では、行きましょうか。

[Thermal-EX] うおおおおおおッ! 出撃ッ!

[ビジュー] ビュウ~

[Lancet-2] 籠から出たいのですか?

[Castle-3] まだです。ご主人の皆様が、この子は興奮しているとおっしゃっていましたから、軽率な行動は控えましょう。

[Castle-3] まず初めに、すべての部屋をスキャンし、無害な環境であることを確認せねば。

[ビジュー] チュウ……

[Thermal-EX] 気を落としてはいけませんよ! このうんざりするほど長い待ち時間を利用して、私が周辺のナビゲートをしてさしあげましょう!

[Thermal-EX] 我々は現在ロドスの休憩エリアにいます。時折オペレーター様がこちらの向かい側に露店を開くこともありますので、何か気になる物があれば買うこともできますよ!

[Lancet-2] ビジュー様が必要とするようなものは売っていないのでは?

[ビジュー] チュウ……

[Thermal-EX] ならば作業場はどうです? 私も早くこの子を連れて行ってあげたくてうずうずしております!

[ビジュー] ビュウ! ビュウ!(行きたい! 行きたい!)

[Castle-3] 作業場のスキャン完了――大量の金属を確認。危険ですので、入室を許可できません。

[ビジュー] チュウ……

[Castle-3] 続けて、輸送準備室をスキャンいたします。

[通りすがりのオペレーター] きゃっ、何この子?

[興味ありげなオペレーター] 何でも食べちゃう子だってグムちゃんが言ってたよ! ポテトあるけど、食べる?

[ビジュー] ビュウ~!

[興味ありげなオペレーター] きゃ~かわいい!

[通りすがりのオペレーター] ほらほらおいでー、お姉ちゃんとこにまだまだあるよ!

[Thermal-EX] 申し訳ございません、お二方! この子のご主人より、むやみやたらに物を食べさせては危険だと注意を受けておりますので、どうかご遠慮ください!

[通りすがりのオペレーター] あっ、そうだったんだ。

[興味ありげなオペレーター] ごめんなさい……

[Thermal-EX] 私の体内で燃え滾る熱さはもうオーバーヒート寸前です! 輸送準備室はいかがでしょうか!?

[ビジュー] ビュウ! ビュウ!(行きたい! 行きたい!)

[Castle-3] 輸送準備室のスキャン完了――大量のベルトコンベアを確認。危険ですので、入室を許可できません。

[ビジュー] ビュウ……

[Castle-3] ……スキャン完了――危険ですので、入室を許可できません。

[ビジュー] ビュウ……

[Castle-3] ……スキャン完了――危険ですので、入室を許可できません。

[Castle-3] ビジュー様、あなたの活動を許可できる範囲は、この通路における約5メートル四方の区画だけとなります。範囲外に出るのは大変危険ですので、どうかご遠慮ください。

[Castle-3] また、あなたが平静を取り戻すまでは、安全確保のため、籠から出ることも許可できません。

[ビジュー] ビュウ……

[Lancet-2] どうしてビジュー様はこんなに不機嫌そうなのでしょう。まさか外の環境が怖いのでしょうか?

[ビジュー] ビュウ! ビュウ!(ちがう! ちがう!)

[Castle-3] その言葉に反応して、更に興奮しているように見受けられます。おそらく正解ということでしょう。

[Castle-3] では戻りましょうか。スキャン結果によると、この辺りの部屋はどれも大量の金属と生命体が存在するものばかりで、ビジュー様の食用に適した木材もないため、非常に危険な環境となります。

[Lancet-2] なるほど。では……ビジュー様、ひとまずこの精製木材をお召し上がりください。私が消毒済みですのでどうかご安心を。

[Lancet-2] 『これで安心! ペットの飼い方』によると、二時間半おきの食事が最も適切とのことでしたので、分量もそちらに合わせて調整してあります。

[ビジュー] ビュウ! ビュウ!(足りないよ!)

[Lancet-2] これは緻密な計算によって算出された分量ですからね。次の食事は二時間半後ですよ。

[Lancet-2] また、『ペットに好かれる方法』によると、飼い主たるもの、自身のペットの心理状態及び生理状態をいつも気にかけておく必要があるそうです。

[Lancet-2] 前回の検査からもう一時間が経過しましたので、もう一度検査いたしますね。私たちがお世話する以上、常に健康でいていただかないと。以降の検査は一時間ごとに行わせていただきます。

[ビジュー] ……

[ビジュー] ビュウ!!(きぃー! かじってやる!)

[ビジュー] ビュウ……(でも、シャオバイがダメって言ってた……)

[ビジュー] ビュウ……(うう……)

[Lancet-2] はい、ビジュー様、お腹を見せてください。心音を検査いたしますので……

ビジューの最悪な一日

[Castle-3] 先ほど、この黒団子がビジュー様の籠を開け、ビジュー様が廊下の隅に駆けて行く様子を目撃いたしました。

[Castle-3] 私は腰を曲げてかがめるようには設計されておりませんので、どこへ隠れたのかまでは分かりません。

[Lancet-2] ですが隠れていそうな場所に近づくと、逃げていく物音は聞こえますね……

[Lancet-2] 私たちを避けているのかもしれません。

[Thermal-EX] ビジュー様、申し訳ありません! 私の過剰な熱意があなたの心を傷つけてしまったのですね!

[Thermal-EX] 私は己の熱意を抑える方法を未だに知りません。しかしあなたがお気に召さないというのであれば、私もあなたのために自分をコントロールしてみせますとも!

[Thermal-EX] それこそが私の務めなのですから!

[Castle-3] スキャンした結果、ビジュー様は箱の下部で縮こまって身を潜めているようです。

[Lancet-2] ヘイシュ様もこちらで落ち着いていらっしゃいますし、ビジュー様に危険はないということでしょう。ただ、私たちからは距離を取りたいとお考えなのかと。

[Castle-3] 改めてセルフチェックを行いましたが、ビシュー様との交流プロセスに問題は見当たりませんでした。すべてのステップを、書籍の内容に則って実行しておりましたので。

[Castle-3] 一体どうしてこのような状況になってしまったのか、見当もつきません。

[Lancet-2] ここは、オペレーターの皆様のご協力を仰ぐべきなのかもしれませんね。

[Lancet-2] ですが、確かにどのプロセスにも間違いはありませんでした。ちゃんと書籍を参考にしましたし、普段オペレーターの皆様と話す時も問題はないのに……

[Lancet-2] 一体何が原因なのでしょうか?

[ロックロック] ビジュー? おーい! ビジューはいる?

[ロックロック] あ、Lancet-2! ビジューがここにいるって聞いてさ、任務が完了したから来てみたんだけど、もしかしていない……?

[Thermal-EX] おお! ロックロック様、こんにちは!

[Thermal-EX] 私の燃え滾る熱いコアを味わっていただきたいところですが、今まさにあなたの助けが必要なのです!

[Castle-3] ロックロック様、少し問題が発生してしまいまして。

[Castle-3] 以前ロックロック様がビジュー様と過ごしていた時、アグン様たちはどのようにビジュー様のお世話をなさっていたのでしょうか?

[Lancet-2] ペット飼育ガイドの通りの対応をしたのですが、どうも結果が芳しくなくて……

[ロックロック] あの子たちがどうやってビジューを世話してたか、か……

[シャオバイ] うわぁ、ビジュー、何食べたの?

[ビジュー] ビュウ~!

[アグン] なんというか、その……すごい色になってるね。赤と白の点々まであるし……

[シャオバイ] あはは……そうだね……

[ビジュー] ビュウ~!

[ロックロック] うわっ、今あたしの作ったクシを丸呑みしなかった?

[シャオバイ] あっ、ごめんなさい!

[ロックロック] 大丈夫だよ、まだ木材もあるし、いくらでも作れるから。

[ロックロック] それよりこの子、木なんか食べて平気なの?

[シャオバイ] うん! ビジューは木が大好きなんだよ。おじいちゃんのお家も食べられておっきな穴が空いちゃったんだ!

[ロックロック] ……なんでそんな楽しそうに話すの?

[シャオバイ] えへへ。

[ロックロック] お世話って言うか、ただ食べたそうな物を食べさせてあげてたよ。

[ロックロック] あたしが何か作ろうと思って持ってきた材料だって、結局全部あの子に食べられちゃったからね……

[ビジュー] ビュウ――!

[ロックロック] あれっ、ここにいたんじゃない。

[ロックロック] お腹くすぐっちゃうぞ――

[ロックロック] ん? ずいぶんペタンコだね……

[ロックロック] ほら、残り二つしかないけど、大好きな木材だよー……

[Thermal-EX] まだ食事の時間では――

[Castle-3] ロックロック様、あなたの機器のスキャンがまだ――

[Lancet-2] せめて消毒を――

[ビジュー] ゴクン。

[ビジュー] ビュウ~!

[ロックロック] うん、色が戻ったね。美味しかった?

[ロックロック] ……あれ、ヘイシュもここにいたんだ。

[Castle-3] 十分なスキャンもせずに接近し、食事の時間も守らずに飼料を与えるとは。ロックロック様の行動は書籍の内容に反しています。

[Lancet-2] ですがビジュー様が自分から駆けてきたようですし、何よりすごく楽しそうです。

[Thermal-EX] ロックロック様、大変感謝いたします! 問題が解決できず、すっかり冷めきっていた私のコアを、あなたは再び燃え上がらせてくださいました!

[ロックロック] そんな大げさだよ。まぁこの子はこんな感じでオッケーだからね。

[ロックロック] 好きに走り回らせて、食べたい物を食べさせてあげる構わないし、ヘイシュがいる時には、誰かに抱っこさせても問題ないから。

[ロックロック] もうちょっと気楽にやって大丈夫だからね。

[Lancet-2] つまり、設定の緩和を推奨するという意味でしょうか……? やってみます。

[Lancet-2] ……ビジュー様、こちらの木材ですが、召し上がりますか?

[ビジュー] チュウ~!

[Castle-3] このような給餌プロセスで問題ないのでしょうか?

[ロックロック] うん、大丈夫だよ。ほら、お腹がぺったんこになってるでしょ? こうやってお腹を空かしてたら、ちょこっと食べさせてあげて。満腹になったら、しばらく寝ちゃうと思うよ。

[Castle-3] では、新たな環境へ連れ出すのも問題ないのでしょうか?

[ロックロック] うん、ヘイシュもいるし心配いらないよ。

[Thermal-EX] ならば、他の方が食事を与えるのも気にしなくてよいのですか?

[ロックロック] 金属や生物じゃなければ問題ないよ。

[Lancet-2] 了解いたしました。ロックロック様、ありがとうございます。

[ロックロック] お礼なんていいよ、じゃああたしはもう行くから。

[Castle-3] さようなら、ロックロック様。

[Castle-3] Lancet-2、我々は一部の書籍を削除すべきではないでしょうか。

[Castle-3] もしくは、すべて削除してしまっても良いかもしれません。

[Castle-3] ロックロック様のご意見と書籍の内容は一致しませんが、ビジュー様は彼女のやり方に慣れ親しんでいるようですし。

[Thermal-EX] ええ、まさしくその通りです! 我々は自らの熱く燃えたぎるコアでもって、ビジュー様に寄り添わねばならないのです!

[Lancet-2] では……この一冊、『ペットの飼い方・基礎編』だけはデータベース上の基礎知識として残して、残りは削除してしまいましょう。

[Lancet-2] 一番の役割であるオペレーターの皆様のお世話がおざなりになってしまってもいけませんしね。

[Lancet-2] よろしいですか、ビジュー様?

[ビジュー] ビュウ~!

[Castle-3] では、遊びに行きたい場所はございますか?

[ビジュー] ビュウ~!

[Thermal-EX] どこに遊びに行っても構いませんよ!

[Thermal-EX] Thermal-EXはいつまでも、あなたのそばに熱く寄り添い続けます!

[Lancet-2] さあ、私たちもビジュー様の後ろについていきましょう。

[ビジュー] ビュウ~

[ビジュー] ビュウ~!

[Thermal-EX] うおおおお! あの夕陽をご覧ください!

[Thermal-EX] 私のコアが、エキセントリックな熱さを感じております!

[Thermal-EX] ビジュー様の「疾風迅雷」が如き食べっぷりも実に「痛快無比」、お見事です!

[Castle-3] Thermal-EX、炎国の語彙データベースをインストールしましたね?

[Thermal-EX] いかにも! 最強無敵のドクター様が私のためにインストールしてくださったものです! これらの言葉があれば私の考えをもっとうまく説明できるだろうとのことでした!

[Thermal-EX] そして炎国には、なんとビジュー様を如実に表現する言葉も存在するのです! それは――

[Thermal-EX] 「帆腹飽満」! どうです、的を射ていると思いませんか?

[ビジュー] ビュウ~!

[Castle-3] ......

[Lancet-2] ......

[Castle-3] アグン様がおっしゃっていた通りであれば、もうそろそろ皆様が任務を終えて戻られる頃かと思います。

[Castle-3] ビジュー様が外に出たがっていたのもそのためでしょう。

[Lancet-2] ビジュー様、食堂で召し上がった食事はお気に召しましたか?

[ビジュー] ビュウ!

[Lancet-2] それはなによりです。とは言え、食堂のおばさまは悲しんでいるかもしれませんね……おばさまの作った料理ではなくて、お箸をお召し上がりになりましたから。

[Castle-3] 炎国や極東出身のオペレーターはそれほど多くありませんから、食料になるお箸がたくさん余っていて幸いでした。

[ビジュー] ビュウ~!

[Thermal-EX] ご覧ください、ビジュー様が喜んでおられます!

[Thermal-EX] うおおおおお!

[Thermal-EX] うおおおおおッ!!

[Thermal-EX] なんと! 初めてビジュー様の方から私に近づいてきてくださいました! ビジュー様の愛によって、私のコアはもう、燃え滾る熱さを抑えきれませ――

[Thermal-EX] うおお――燃え……た……ぎ……る!

[Lancet-2] ——

[Lancet-2] ふぅ。急冷モジュールがインストールされていて助かりました。いつもはオペレーターさんの応急的な痛み止めに使っていますが、あなたにも有効なようですね。

[Castle-3] ビジュー様にも言語モジュールをインストールできれば良いのですけどね。

[Lancet-2] 私のプログラムが判断する限り、それは違法行為に当たりますよ。

[Castle-3] いえ、私が言いたいのはつまり、ビジュー様が我々と意思疎通ができたら良い、という話です。

[Castle-3] 言葉の通じない小動物をお世話することは、私のプログラムが算出した想定難易度を遙かに上回っていました。

[Castle-3] 無事遂行することができて何よりです。

[Castle-3] おっと、ビジュー様、ありがとうございます。……私に感情は設定されておりませんが、いま私のコアが歌を歌えという指令を発したようです。あなたのために再生してもよろしいでしょうか?

[Lancet-2] あ、あれ……私の処理速度が急に鈍くなった感じがします……どこかのパーツに問題が起きたのかもしれません。一体どうして……

[Lancet-2] あっ、いま正常に戻りました。不思議ですね。

[ビジュー] ビュウ! ビュウ!

[Lancet-2] 前方の斜面を登れば、本艦へ戻る車列が見えるはずです。私の身体に乗って行きますか?

[Lancet-2] それともご自身で登りますか?

[ビジュー] ビュウ!

[Lancet-2] ご自身で登りたいのですね?

ビジューは木の枝や低木、岩の間を軽快に跳ね回り、目の前の丘の頂上へと駆け上がっていった。

ビジューの身体とロボットたちのボディに、丘からこぼれた暖かな夕陽が降り注ぐ。

[Castle-3] Lancet-2、Thermal-EX、歌は歌えますか?

[Castle-3] 私のプログラムが、以前学んだ曲を呼び出しましたので、再生いたします。

[Castle-3] 「♪お父さんとお母さんは言った 偉い人になれって」

[Castle-3] 「♪おじいちゃんとおばあちゃんは言った 立派になれって」

[Castle-3] 「♪でも僕は絵筆を握ってたいんだ」

[Castle-3] 「♪あの夕陽を描いてみたいんだ」

[Lancet-2] Castle-3、ビジュー様も夕陽を描けるでしょうか?

[Castle-3] 私のプログラムではその問いには回答できません。

[Castle-3] ですが嬉しそうに夕陽の下で駆け回る様子から、ビシュー様が非常に喜んでいることを検知いたしました。

[ビジュー] ビュウ! ビュウ!

[Castle-3] あの喜びようは、好きなことをしているからこそでしょう。

[Castle-3] 「♪そんな将来も悪くはないけど 僕はこの夕陽を愛してるから」

[Thermal-EX] おおっ、あれは……! 本艦へ戻る車列が、まばゆく輝く金色の光を反射していますよ!

[Thermal-EX] さあ、皆で出迎えに参りましょう。お戻りの皆様にも我々の熱エネルギーを受け取っていただかねば!

[Lancet-2] 少々お待ちください。アップデート中の項目がございますので。

[Lancet-2] ――よし、アップデート完了しました。出発しましょう。

[ビジュー] ビュウ!

ビジューが駆け出すと、ロボットたちがその後に続く。荒野に砂埃が舞い上がり、彼らの余韻を残した。

クロージャのロボットモニター端末に、一つのデータログが浮かび上がった。

「気を張り詰めすぎないで。まずは気楽に今を楽しみましょう。」

ビジューの完璧な一日

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