aklib_story_マリアニアール_MN-ST-3_静かなる旅立ち

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マリア・ニアール_MN-ST-3_静かなる旅立ち

事態を収拾し、騎士たちは再び新たなる長い旅路に就く。


[プラチナ] 私。代弁者の件ならもう片付いた――

[???] ……プラチナ。

[プラチナ] ……アンタは誰? 私が連絡したのは取締役のはず……

[???] 問題ない。この端末の認証コードは、そちらに届いているはずだ。

[プラチナ] ラズライトの二人でもないね……でもこのチャンネルを知ってるってことは、つまりアンタは――

[???] 見当がついているなら、それで結構。焦って探る必要はない。

[???] これから言う事は、「無冑盟」内部の会話であり、「取締役たち」とは無関係だ。

[プラチナ] ……わかった。

[???] 一部の征戦騎士が、内密に黄昏の森の辺境を越えた……この行動が商業連合会の監視網をかい潜っていることを鑑みると、恐らくこれには耀騎士が関わっている。

[プラチナ] 征戦騎士……銀槍の……?

[???] そして、この事件はラズライトが担当することになった。これ以上の詮索は不要だ。

[プラチナ] はぁ? あいつら、なんで最近そんなに真面目に働いてるの?

[???] 君の任務は彼らの代わりに、耀騎士を見張ることだ。

[プラチナ] 耀騎士ねぇ……十分厄介なんですけど。

[プラチナ] ――つまり、向こうの事態の方が、もっと厄介だってこと?

[???] それはまだなんとも言えん。耀騎士の帰還により、水面に落ちた石一つが大きな波紋を呼ぶように、多くの事態が引き起こされようとしている……しかし我らは彼女に主眼を置きすぎている。

[???] それと、だ――

[???] 何があろうとも、耀騎士の傍にいるサルカズには手を出すな。

[プラチナ] あの二人のサルカズについて……ずいぶん詳しいみたいだね。

[???] 耀騎士と聴罪師――彼らは同じ「会社」に属している。この事件に裏がある可能性もゼロではない。

[プラチナ] ……

[???] とにかく任務に集中するんだ。この間みたいな失敗は許されない。

[???] 忙しくなるだろう。心しておけ。

[企業職員] あ……また電話……チャルニー様のかな……?

[企業職員] でもチャルニー様、もうずっと帰ってきてないし……

[企業職員] ……

[企業職員] ……もしもし?

[重厚な男の声] 代弁者か。

[企業職員] あ、いえ違います、すみません。

[企業職員] チャルニー様は今――

[重厚な男の声] 私が鳴らしたのは代弁者の番号であり、君が電話に出た。

[重厚な男の声] つまり、君が代弁者だ。

[企業職員] え? ど、どういうことですか? 理解が――

[重厚な男の声] 名前を。

[企業職員] 私の……ですか?

[重厚な男の声] 名前を。

[企業職員] ええと、マルキェヴィッチとお呼びください。以前はスウォマー食品に勤めていたのですが、チャルニー様に声を掛けていただいて……

[重厚な男の声] ……

[企業職員] あ、あの? チャルニー様は今?

[豪快な女の声] こんにちは、マルキェヴィッチさん。

[企業職員] あ、すみません、先程の方は何か勘違いを――

[豪快な女の声] 私はスウォマー食品の代表取締役兼CEOです。あなたなら私の声がわかるでしょう? 代弁者・マルキェヴィッチさん、あなたは今この時点をもって解雇されました。

[企業職員] えっ?

[豪快な女の声] 今からあなたは、スウォマー食品の人間でも、ミェシュコの人間でもありません――あなたは商業連合会を代表する者であることを肝に銘じてください。

[豪快な女の声] 大会が終わった後に、去るか残るかはご自由に決めていただいて構いません。あなたの功績に応じて、手厚い報酬が支払われることでしょう。

[豪快な女の声] ですが今は、あなたには三つの任務が残っています。質疑は認められません。

[豪快な女の声] 一つ、大会のスケジュールを滞りなく進めること。これは、最も重要な役割です。

[豪快な女の声] 二つ、耀騎士、及びそれに関連する事件の世論を我々に有益なように誘導すること。私たちに「損をしたから手を引く」という道はありません。私たちが求めているのは、更なる「利益」です。

[豪快な女の声] 三つ、無冑盟の交渉者が三分後にあなたの現在地に到着します。彼らの行動を監視し、異変に気付いた場合は速やかに商業連合会、及び高層会議に報告してください。

[企業職員] ちょっと待ってください……! 私は、こんな――

[豪快な女の声] まだ何か? 代弁者マルキェヴィッチさん。

[企業職員] わ……私は……

[企業職員] ……

[企業職員] いえ、わ、わかりました……

[豪快な女の声] それは良かったです。では、万事順調に進むようお祈りします。

[代弁者マルキェヴィッチ] ……

[代弁者マルキェヴィッチ] はぁ……夢……これは夢だよな……?

[プラチナ] 事情は全部聞いたよ。チャルニーの権限は今、アンタに移ってるんだよね? えーと、代弁者マルキェヴィッチ、だっけ?

[プラチナ] これからどうすればいい? ひとまず独りで頭を冷やしたいなら、私に休みを出してくれてもいいけど。

[代弁者マルキェヴィッチ] わ、わかりません……どうして私が……

[代弁者マルキェヴィッチ] いや、待ってください……あなたもそうでしょう、プラチナ様? あなたはなぜプラチナの座に推し上げられたのですか? 私はどうしたら――

[プラチナ] ――さぁね。よくわかんないけど、次の人を自分と同じ目に遭わせたかったんじゃない?

[プラチナ] このカジミエーシュじゃ、頭を使ってもしょうがないんだよ。

[代弁者マルキェヴィッチ] でも……見てください今の私を……ちゃんとしたスーツを買うお金さえないのです……

[代弁者マルキェヴィッチ] そうだ……チャルニー様から任務を受けたことがありますよね? あなたなら、無冑盟が何をしようとしているのご存じでは――

[プラチナ] 知らないけど。

[代弁者マルキェヴィッチ] え……?

[プラチナ] 私は、自分が何をやってるのかくらいしか知らないんだ。

[代弁者マルキェヴィッチ] じ、じゃあ、あなたがやっていることというのは?

[プラチナ] え~……普通、今の言葉を掘り下げようとするかなぁ……まったくアンタって奴は……

[プラチナ] ま、いっか。たしかにこの間、ちょっとやらかしちゃって、今は任務に集中しないといけないんだ。

[プラチナ] 五人の「騎士殺し」が、ターゲットを追跡する任務の途中で、全員行方不明になった。

[代弁者マルキェヴィッチ] 無冑盟がしっ、失踪?

[プラチナ] ……本当に詳しく聞く覚悟はできてる?

[代弁者マルキェヴィッチ] ほ……他に選択肢がありませんから。

[プラチナ] そう。

[プラチナ] じゃあ、「レッドパイン騎士団」に気をつけて。あれはただの競技騎士団なんかじゃないよ。無冑盟に対して……公に反抗の意思を見せてる。

[焔尾騎士] ……耀騎士が帰ってきた?

[灰毫騎士] 街の奴らが騒いでた。彼女が突如として現れ、マリアを救ったと。

[焔尾騎士] 救った?

[灰毫騎士] 騎士協会……いや、恐らくはもっと上にいる誰かが、マリアのあの対戦を仕組んだ。観客たちはスリリングなパフォーマンスだとでも思い込んでいるようだが、あれはどう見ても――

[灰毫騎士] 本物の殺意だった。耀騎士の突入がほんの少しでも遅れていたら、マリアは確実に死んでいた。

[焔尾騎士] ……あいつら、もう隠そうともしないのね。

[灰毫騎士] 奴らの人格を買い被り過ぎていたのかもしれない。こんなことは、メジャーが開かれるたびに起きている――奴らはもう、そんな些細なことどうでもいいんだ。

[焔尾騎士] あいつらが気にするかしないかなんて、知ったこっちゃないわよ。残りカスみたいな良心がちょっとでも働いて、上辺だけでも繕ってくれるんじゃないかっていう期待すら、端から持ってないし……

[焔尾騎士] 問題なのは、このカジミエーシュでは誰一人として、今起こっている事態を気にしていないってこと。

[灰毫騎士] 表向きでは、私らは訓練中に怪我を負って、すべてのスケジュールを白紙にしたってことになってる……

[焔尾騎士] ……ヤバいね。

[灰毫騎士] ああ、実に「ヤバい」。

[焔尾騎士] ……ぷっ、あははは! ちょっと、どういうことなの? こんなに順調にいくことなんてある?

[焔尾騎士] あいつらが陰でコソコソやるんじゃなくて、国民議会を利用してたんだったら、それこそおしまいだったかもしれないけど。

[灰毫騎士] お前は……ちょっとうまくいけば、すぐに浮かれる。

[焔尾騎士] ふふん……向こうが我慢できずに先に手を出して来たんだもの……結果、あたしたちが有利になった。浮かれるに決まってるでしょ?

[焔尾騎士] あの二人の仕事が終わったら、あたしたちも本題に入らないと。

[灰毫騎士] ……

[焔尾騎士] 不満そうね? まだ暴れ足りなかったの?

[灰毫騎士] ちっ……あのろくでなし共と戦えば戦うほど、貴族騎士には反吐が出る。一番受け入れがたいのは、自分もかつては奴らの一員だったということだ。

[焔尾騎士] はぁ、ほんと複雑ね。

[灰毫騎士] 奴らの尊厳と信仰には何の価値もない……今の貴族騎士には矜恃が無さ過ぎる!

[焔尾騎士] そんなに感情的になんないの。この話題になるといつもそうなんだから。安心してよ、あいつらはきっと痛い目を見ることになるわ。

[焔尾騎士] でもその前に、あたしたちの今の敵をハッキリさせましょう――

[灰毫騎士] ――無冑盟。

[焔尾騎士] あいつらを白日の下にさらす……そうでしょ?

[マリア] お姉ちゃん、家に帰るのって何年ぶり?

[マリア] お姉ちゃんの部屋はそのままにしてあるよ! ずっと私が掃除しに来てたんだから……あっ、テーブルと椅子は全部売っちゃったけど……

[マリア] で、でも大丈夫! 少なくとも――

[マーガレット] 家がどうなっていようと、マリアたちに会えただけで私は家に帰ってきた実感が湧くさ。

[マリア] ……お姉ちゃん。

[マーガレット] マリア、その装備……

[マリア] あっ! お姉ちゃんの昔の装備を勝手に借りちゃった……へへっ、どう? 結構似合ってるでしょ?

[マーガレット] ああ、似合っている。本当に大きくなったな。

[マリア] うん……身長もお姉ちゃんにだって負けてないよ。

[マーガレット] 頑張ったな本当に。競技場ではちゃんと話す機会がなかったが……本当に恋しかったぞ、マリア。

[マリア] お、お姉ちゃん、急にそんな話されたら何だか恥ずかしいよ……

[マーガレット] でもマリアは、よく一人で今までの戦いを生き抜いてきたな。

[マーガレット] 当時私の決断が、叔父さんとマリアに大きな影響を及ぼすことは、私にもわかっていた……しかしまさかマリアが――

[マリア] お姉ちゃん!

[マリア] お姉ちゃんには、どうしてもやらなきゃいけなくて、どんな困難に直面しても引けないことがあったんでしょ?

[マーガレット] ……ああ。

[マリア] じゃあ、お姉ちゃんは間違ってないよ。

[マリア] それに……私は心構えも実力もまだまだお姉ちゃんには及ばないけど――

[マリア] でも今……私もわかり始めてる。少なくとも、ゾフィアおばさんが言い続けてたあの言葉について考え始めてる。「騎士とは何か」ってことを……

[マリア] 確かに私はまだお姉ちゃんみたいになれてないけど……でも今日までやってこれたのも、みんなの助けがあったからなの!

[マリア] 私にも信念があるとすれば、それはきっとお姉ちゃんが導いてくれたものなんだ! 私もニアール家の一員だから!

[マリア] でも、でもお姉ちゃん、今回は六年前みたいに急にいなくなっちゃダメだよ……?

[マリア] これからは私がお姉ちゃんのそばにいるから。これから私たちがどうなろうと……私は、お姉ちゃんを信じてるから。

[マーガレット] マリア……ふっ、本当に大きくなったな。

[マリア] ……あっ、えっ、わ、私急に何言い出しちゃってるんだろ……

[マリア] えっと、それより早く上の階に行こう――

[ムリナール] ……マーガレット。

[マリア] あ、叔父さん……あの、これは――

[ムリナール] お前は黙っていろ。

[ムリナール] マーガレット……何をしに戻ってきた?

[ムリナール] お前がここに現れることが何を意味しているかわかってるのか?

[マーガレット] ……

[ムリナール] たしかにお前はあの試合でマリアを救った……しかし、何のためにカジミエーシュに戻ってきた?

[ムリナール] 父上が――お前の祖父がお前を「送り出す」ために、どれほどの代償を払ったか知っているのか?

[ムリナール] まさか、素知らぬ顔でこんなところに現れるなんて……ここには協会や企業の目が届かないとでも思っているのか?

[マーガレット] ……騎士競技にも参加するつもりだ。

[ムリナール] 不可能だ。

[マーガレット] 私はあるべき騎士の栄光を取り戻す。

[ムリナール] 栄光など全く意味のないものだ。

[マーガレット] いや、意味はある。ただそれは、世間から認められることを必要としていないだけだ。

[ムリナール] カジミエーシュは変わった。人々も変わったのだよ。

[マーガレット] ――しかしまだ私がいる。私たちがここにいる。

[ムリナール] ……

[ムリナール] 図に乗るなよ……マーガレット。

[ムリナール] カジミエーシュを離れれば、少しはお前も大人しくなると思っていたのだが……その結果がこれか? これがお前の答えなのか?

[ムリナール] 私は時間を無駄にしたくない。

[マーガレット] 叔父さん……

[ムリナール] もういい。

[ムリナール] お前とこうして話していても、書類の山は減りはしない。私の仕事の邪魔をしないでくれ……

[ムリナール] 面倒なことになる前に、カジミエーシュを去れ。もう別の居場所があるのなら、ここへは戻ってくるな。

[マリア] 叔父さん! そんな言い方はないでしょ!

[マーガレット] いいんだ、マリア。

[マリア] お姉ちゃん……

[マーガレット] ムリナール叔父さん……叔父さんの選択は理解できる。私は今でも昔のように叔父さんを尊敬しているんだ。

[マーガレット] だから私も、叔父さんからの理解を得たい。

[ムリナール] ――理解?

[ムリナール] 私の見ているもの、そしてやっていることが、何ひとつとしてお前にはわかっていない……にもかかわらず、そんな非現実的な考えを抱いているのか?

[マーガレット] 私はかつて、幸いにも希望の一片を垣間見ることができた。そして戦争が落とす影も、直接味わってきた。

[マーガレット] その結果、私は自らの信仰を持ち続けることを選び、そのためなら喜んで戦うと決意した。

[ムリナール] お前の……耀騎士の勝利や貢献などで、このカジミエーシュは何も変わらない。

[マーガレット] 当然、承知している。

[ムリナール] だとしてもか……

[マーガレット] だとしてもだ。

[ムリナール] ……

[ムリナール] ……剣を抜け、マーガレット。

[マリア] お、叔父さん!?

[ムリナール] もしお前が頑として考えを変えないのであれば、「諦める」ということを改めて教えてやるしかない。私の剣に倒れる方が、無冑盟の影の刃で死ぬよりはましだろう。

[マーガレット] ……叔父さんがそう望むのであれば。

[セノミー] 「奴ら競技騎士は金のためなら喜んで言いなりになるゴミじゃ!」

[セノミー] 「もしニアール家の末娘にまで何かあったら、ワシは征戦騎士の名を捨ててでも、国民議会に直接殴り込んでテーブルをひっくり返してやるわい!」

[セノミー] ――大旦那様がそう言ってたわ。

[???] ねえセノミー……そんな張り切って物真似をする必要はあるの?

[セノミー] その、でも大旦那様がそっくりそのまま伝えろってあたしに念を押してきたので。

[???] そんなに何もかも聞く必要はないわよ。

[セノミー] あと、もし大騎士長のあなたが同意しないようなら、杖をつきながらでも、自分が耀騎士を迎えに行くと言っていました。

[???] ......

[セノミー] それと、もしあなたがため息をついて頭を抱えながら答えを濁すようなら――

[???] はいはい……彼がどれだけおかんむりなのかはわかったわ。少しばかりの功績を笠に着て、毎日監査院で騒ぎ立ててるようだし、現役の頃と何も変わってないわねぇ。

[???] 忘れないでほしいわ、彼がまだ罪を抱えている身だということを。

[セノミー] ですが、商業連合会の腐敗に侵された国民議会には、大旦那様に罪を言い渡す資格はありません。彼らは国民や法律の代表なんかじゃなくて、彼ら自身とその背後にいるビジネスマンの傀儡です。

[???] ……そう教えられたのかしら?

[セノミー] いいえ、自分の考えです。

[???] はぁ……

[???] おつかいはそれだけ?

[セノミー] あっ、もう一つ。

[???] ……なにかしら?

[セノミー] ロドスの人が到着したみたいです。

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