スピード・レーサー(映画)

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登録日:2023/01/03 Tue 21:56:40
更新日:2024/06/28 Fri 13:37:00NEW!
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「マトリックス」の監督が描く革新のスピード世界




1~7の数字もしくはsmallなどで指定してください。




『スピード・レーサー(Speed Racer)』とは、2008年に公開されたアメリカのカーアクション映画である。
配給はワーナー・ブラザース映画。本国では2008年5月9日、日本では同年7月5日に公開された。



概要

かつて日本でタツノコプロが制作した、知る人ぞ知る名作カーアクションアニメ『マッハGoGoGo』。
英語圏では『Speed Racer』のタイトルで翻訳された同作を元に、『マトリックス』シリーズで知られるラリー&アンディ・ウォシャウスキー兄弟*1が脚本・監督を手掛け、独自の解釈を取り入れて実写化したのがこの映画である。


……しかし、その作風は斬新を通り越してとにかく奇抜
『マッハGoGoGo』は制作当時のカーレース事情を反映し、本格的なカー・アクション・アニメとして制作された作品だったが、当時の形態でのモータースポーツがほとんど見られなくなった現代の事情に合わせてか、世界観が大きくアレンジされている。


劇中で中心になるのはクローズドサーキットで行われるレーシングリーグで、登場するレースカーもほとんどが所謂ル・マンプロトタイプなどを想起させるシングルシーター車。
それだけでなく、舞台を近未来に設定し、コースもジャンプスポットや360°縦回転セクションなど、およそ現代のサーキットではありえない要素だらけの奇抜で非現実的なもの。
出場するマシンも現代のものとは構造が大きく異なり、現実のレースシーンではまず考えられないアクロバティックな“狂動”を見せる。


当然、これほどの非現実的な世界観を表現するために、制作には3DCGがふんだんに取り入れられ……どころか劇中のほとんどのシーンはキャスト以外CG。
作品の肝たるカーレースシーンもコクピット周りだけを制作した可動ユニットにキャストを乗せ、クルマを操縦する「演技」をしたものにCGによるマシンの挙動を重ね合わせて表現されており、キャスト達もそんな撮影風景を「まるでレースゲームをプレイしているようだった」と語っている。
また、視覚効果にもCGによるエフェクトがふんだんに用いられており、爆発などの閃光だけでなく、マシンや生身でのスタントシーンなどにももはや画面がうるさいレベルで盛り込まれている。
総じて実写でありながらその表現は非常にアニメ的・ゲーム的であり、こうした独特極まる作風から「実写化って何だっけ…」という評価がそこかしこで囁かれた。ある種後の『ピーターラビット』や『ソニック・ザ・ムービー』などの先駆けである


こんな奇抜としか言いようがない作風が大衆ウケする訳もなく、興行成績は正直あまり良いとは言えず、第29回ゴールデンラズベリー賞では最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞にノミネートされてしまった。
しかし、これだけ好き放題やっていながら、一見微塵も感じられないように思える原作へのリスペクトは実はこれでもかと込められている。
というのも、ウォシャウスキー兄弟にとって『マッハGoGoGo』は初めて観た日本のアニメだったそうで、それ故に同作に対して並々ならぬ思い入れがあったのだ。


陰謀渦巻くレース界に愛する家族と一致団結して挑む主人公の姿や、それを通して描かれる家族愛、そして「悪の栄えた試しなし」というお決まりの決め台詞に代表される分かりやすい勧善懲悪といった作品の根幹は原作のそれを受け継いでいる。
その他にも、リアリティの軛から解き放たれたマシン達が魅せるダイナミックな動きは進化した映像技術によってふんだんに表現され、そしてマッハ号お馴染みの秘密装置ももちろん健在。
有名なジャンプ・ジャッキ使用時のSEも原作のそれであり、それ以外にも原作の小ネタを随所で拾っていたりと、派手なエフェクトの裏で非常に細やかに作られている事が分かる。
何よりもエンドロールで流れる主題歌「GO, SPEED RACER GO」は原作の日本語版及び英語版オープニングテーマをリミックスしたものであり、タイトルも英語版の原作主題歌そのままである。


原作とはあまりに違うようでいて、しかし見てみると「ああ、確かにこれは『マッハGoGoGo』だ」と感じられる不思議な作品となっており、メジャーな評価こそ得られなかったものの、コアなファンも確かに存在している。
原作を知っている方もそうでない方も、是非とも一度は手に取ってみて欲しい一作である。
予告編映像がYouTubeなどに上がっているため、まずはそこから本作に触れてほしい。


商品展開としてマテルやタカラトミーといった大手玩具メーカーとコラボレーションしており、ホットウィールを代表に劇中に登場したマシンが多数立体化・玩具化された。
また、アクティビジョンが手がけたテレビゲームもWii・DS向けに発売された。
こちらは本作の後の出来事が描かれ、印象的なコースやカーアクションを再現している他に、登場キャラクターも一瞬登場したかどうかの端役から作中ではマシンに乗らなかった人物まで非常に幅広く網羅されており、丁寧に作られているため機会があれば手に取ってみてほしい。


日本でもプロモーションの一環としてヨコハマタイヤとのコラボが実施され、主人公の乗るマシンは同社のADVANを履いている。



あらすじ

レーシングチームの家系であるレーサー家に生まれたスピード・レーサーは、まさしくレースをするために生まれてきた男だった。
物心ついた頃から彼の頭にはカーレースしかなく、放課後最大の楽しみは凄腕レーサーである兄・レックスのサーキット練習に連れて行ってもらうこと。
……しかしある日、大好きだった兄は父と喧嘩別れした末にラリー・レースで事故死してしまう。


そんな過去を乗り越えて成長したスピードは、兄をも超えるかと期待を寄せる新人ドライバーとしてワールド・レーシング・リーグ(以下「WRL」)の舞台で活躍していた。
そんなある日、スピードは大企業ローヤルトンの社長から熱烈なスカウトを受ける。
スピードは魅力的な提案に大いに悩むが、スポンサー企業を「悪魔」と呼んで嫌う父の存在や自分がレースをする理由を振り返った彼は、そのスカウトを断る事を決めた。


すると、温厚だったローヤルトン氏の態度は豹変。
彼はスピードに告げた──「お前はこれから、表彰台はおろか完走すら出来なくなる」と。


WRLは華々しい舞台の裏で、参画企業による陰謀が渦巻く闇に満ちた世界だったのだ。
腐敗しきったリーグの実態に打ちのめされ、自分自身のみならず家族の名誉までも汚されたスピード。
大好きなカーレースを、そして何より愛する家族を守るため、スピードはかつて兄を奪った悪名高きラリークロスに挑む。



登場人物

オリジナルキャスト / 日本語吹替版キャストの順で記載。

レーサー・モータース/レーサー家

レーサー家が中心となって活動しているレーシングチーム。
父の意向により設立以来スポンサー無しでの活動を貫いており、その一方でマシンも世界にも通じるスペックの物を一からハンドメイドで作り上げる何かと凄まじいチームである。資金面とかどうなってるんだ……


一家総じて腕っぷしも強く、コース上のみならずリアルファイトでも負けなしを誇る最強家族。
プロの暗殺集団による襲撃すらもいとも容易く撃退してのけるほどの超ハイスペック一家である。


スピード・レーサー

演:エミール・ハーシュ / 声:赤西仁(KAT-TUN*2
主人公。原作通りとはいえどんな名前だ
幼い頃は車とレースしか頭になく、担任からも苦言を呈される超問題児だったが、現在はレースに対する情熱こそ相変わらずながら、常に家族や仲間を気遣う好青年に成長した。


地元リーグで頭角を表し、夢の舞台であるWRLへの切符を手にすることになる。
それとほぼ同じくして大企業ローヤルトンからスカウトを受け、充実したトレーニング設備を初め完璧に整えられた環境に興味を引かれながらも、家族と共にいたい気持ちから辞退。
しかし、自らの思惑に応じない彼を疎んだローヤルトンの手により、徐々に追い詰められてゆく。
自分や家族があれほどまでに恋焦がれたレースの世界が腐敗しきっていたという現実に絶望しかけるも、レーサーXの提案と叱咤を受けて立ち上がる決意を固める。


使用マシンは以下の2台。

  • マッハ5

白い車体に赤いMマークとゼッケン⑤が映えるストリートカー。
お馴染みマッハ号と言えばこの車。
ほぼ原作そのままの2座オープンカーだが、リア周りを中心に若干デザインが変更されている。


元々は兄・レックスの愛車だったが、彼の家出の折にキーを譲られスピードの車になった。
基本的には普段使い用でトリクシーとのデートにもこの車を使用している。
しかし中盤のクロスカントリー参戦にあたっては家に黙って出走する(+レースマシンのマッハ6が直前のレースで大破し喪失していた)ために本車を持ち出し、
その際に予想される過酷なレースやライバルからの妨害に対抗するため監査局の協力で原作お馴染みの「秘密装置」を搭載され、ステアリングに配された7つのボタンにより使い分ける。
なお、秘密装置の多くは原作と同じ機構だが、一部が異なる他、ボタンとギミックの対応も異なっている。


  • A:ジャンプ・ジャッキ
    • 車体底部から「足」を伸ばして地面を蹴り、車体を大きくジャンプさせる。
      これによって咄嗟に障害物などの危険を回避したり、攻撃に転用したりと様々に使える。
      機構は単純だが汎用性が高く、また、前後4本それぞれを任意に動かす事も可能。
      劇中ではごく一般的な装備のようで、マッハ号に限らず、劇中に登場するほとんどのマシンに搭載されている。
  • B:防弾ポリマーディフレクター
    • 防弾キャノピーを展開し、ドライバーを保護する。キャノピーは透明なため、視界を妨げない。
      改造前にも同じ見た目のキャノピーを展開して雨を凌いでいる様子が描かれているが、恐らく元々のキャノピーを防弾仕様に換装したものと思われる。
  • C:タイヤシールド
    • ホイールを覆う金属製の「傘」を展開、タイヤを狙う攻撃から身を守る。
      コントロールスティックとセットで運用され、展開範囲を任意で調整可能。運転席からどうやってタイヤへの攻撃を見切っているのだろう?
  • D:Hexodyne緊急スペアタイヤ
    • タイヤ破損時に備えて、ホイールからバルーン状に膨らませて使う緊急用タイヤの展開装置。
      4本全てのホイールに対応しており、マシンを降りる事なく即座にレースへ復帰出来る。
  • E:カッター
    • 車体前方に一対の電動丸ノコを突き出す。
      曰く「なんでも切断する」とのことで、車体側面まで可動するアームを活かし、格闘戦にも柔軟に対応出来る。
  • F:タイヤ・クランポン・グリップ
    • タイヤに無数のスパイクを生やし、急斜面などに対応出来るようにする。
      これを使えばほぼ垂直に切り立った崖すら駆け上がる事も可能。
  • G:ホーミング
    • 原作でいうギズモ号。車内に格納されている小型無人偵察機を射出する。
      劇中では改造後のブリーフィングで説明されたのみで、偵察はトリクシーらのヘリで間に合っていたためか、使用されなかった。

  • マッハ6

WRLやサーキットでの公認レースに参戦するためのレーシングカー。
三又状のを思わせる白い車体に真っ赤なMマークは変わらないが、マッハ5をレースマシンとしてよりダイナミックに再解釈したようなデザインになっており、トヨタGT-Oneなど往年のル・マンプロトタイプを想起させるシングルシーター車となっている。
流麗かつマッシブなそのスタイリングは一見の価値あり。


中盤のレースにてローヤルトンの策略に嵌められて大破してしまうが、最終グランプリへの参戦が急遽決まると共に一家総出で再建造。
外観は全く同じながら「特盛りチューンナップ」を果たしており、さながら「マッハ6・改」といったところ。


レギュレーションに沿って作られた純然たるレースカーであるため、秘密装置は「ジャンプ・ジャッキ」のみ。
同装備はこの車両に限らずWRLに参戦するほとんどのマシンに採用されており、ライバルからのアタックをかわしたり、逆に空中から3次元的な攻撃を繰り出したりとスピードに限らず様々なドライバーが活用している。


レックス・レーサー

演:スコット・ポーター / 声:小西克幸
レーサー家の長男にして、スピードも今なお憧れる伝説的レーサー。
天才的なドライビングテクニックを持ち、かつて地元サンダーヘッド・レースウェイで彼が叩き出したコースレコードは未だ破られていない、


そんな彼だったが、ある日レースの方針を巡って父と対立した末に家出して強豪チームへ移籍。
それ以降、積極的にライバル車を破壊しにいく荒々しいレーススタイルを見せるようになり、世間からも「世界で最も汚いドライバー」等と散々に非難される。
その果てに出走した過酷なラリートライアルで、テレビ越しにその活躍を見ていた家族の前で後に「カーサ・クリストの悲劇」と呼ばれる事になる壮絶な大事故に巻き込まれ、帰らぬ人となった。


そのは多くの疑惑を呼び込むことになり、また彼の移籍先となったチームの裏に暗黒街のボスが関わっていた事も発覚。
スピードの活躍する今なお「レースを冒涜した」「最も勇敢なレーサー」と世間における彼の評価は真っ二つに割れている。


この出来事は一家全員の心に深いトラウマを残しており、特に父はレースそのものに強い警戒心を示すようになってしまった。
しかし、スピードはその顛末に違和感を抱いており、兄の死の真相を突き止めたいという思いが彼の原動力にもなっている。


  • マッハ4

かつてレックスが駆ったレーシングカー。
他のマッハ・シリーズとは対照的な真っ赤なボディに白いMマークが特徴。
マッハ5と6の中間のようなデザインをしており、ロケットが3つ連なったようなシルエットを持つ。
また、T-180独特の特徴である「ホイールの上から覆い被さるように位置するサスペンション」のデザインが後輩マシンに当たるマッハ6と比べると洗練されておらず、比較的直線的なエクステリアと合わせて一世代前のマシンという印象を強めている。


クロスカントリーの際に持ち主と運命を共にしており現存していないが、かつて幼き日のスピードが乗せて貰っていたり、
序盤に登場するサンダーヘッドでのレースではスピードの記憶に映るコースレコードの“ゴースト”として弟と一騎討ちを繰り広げたりと、特に「スピードの大切な記憶」として登場するマシンである。


パパ・レーサー

演:ジョン・グッドマン / 声:内海賢二
優秀なレースマシン設計者であり、一家の、そしてチームの大黒柱。これも原作通りとはいえ、どんな名前だ
実は元レスリング・チャンピオンであり、その腕っ節は今なお衰えていない。


息子をスカウトしに来たローヤルトンに「威圧された気がする」「大金を持つ者は、他の人々が従うルールを無視しようとする」と警戒感を顕にしつつも、
あくまで決断するのはスピード自身であるとし彼の意見を尊重する姿勢を見せるなど、家族を守りたいという心を持ちつつ、それを押し付ける真似はしない良き父親である。


だが、かつてレックスの命を奪った曰く付きのレースであるカーサ・クリストに関してだけは例外で、レーサーXとディテクター警部からの参加要請にはスピードの話を聞くまでもなく断固拒否。
その後、スピードが無断で出走していた事に怒り一家総出で連れ帰らせようとするが、スピードの固い意思とママの提案に折れ、サポートスタッフとして協力する事を決意。
その際、テレビ中継で見た走りからマッハ号を改造した事・それによりマシンのバランスが狂っていた事を看破し、スパーキーと共に一晩でセッティングしてみせた。


家を出て行く事を決めたレックスを勘当同然に追い払ってしまったため、彼の顛末を自身の責任と感じ、深く後悔していた。
そのため、スピードが兄の辿った道を追うかのように家を出ようとした時は、同じ轍は踏むまいとその決断を受け入れる。


ママ・レーサー

演:スーザン・サランドン / 声:藤田淑子
一家を支えるお袋さん。当然この名前も原作通りです。
厳しくどっしり構える父親とは対照的に、子供達の意思を尊重し、優しく寄り添い応援する良き母親である。
度々無茶をする息子&夫にはヒヤリとさせられる事もあるが、それでも彼らの選択を受け止めて優しく見守ってくれる。


料理……特にパンケーキは彼女の十八番で、その味はローヤルトンを唸らせ、その場で「レシピを買い取りたい」とまで言わしめた。


トリクシー

演:クリスティーナ・リッチ / 声:上戸彩
スピードの幼馴染みで、本作のヒロイン。
小学校時代のスピードは周囲から変人奇人扱いされるのもやむなしな少年だったのだが、そんな彼に何故か想いを寄せており、また彼の家族の活躍にも「イカしてる!」と感激。
その想いは今も変わらず、スピードとマッハ号でデートする様子も度々ある……のだが、毎度毎度トランクに忍び込んでは良いムードを台無しにしてくるスプライトルが悩みの種。


中盤のクロスカントリーでは、当初は参加を考えるスピードに反対していたがその固い決意を尊重、家族には「スキーに行く」とウソをついてこっそり出走するアイデアを持ちかける。
その後も度々奇想天外なアイディアを考案しては窮地を乗り切ってみせている。
もちろん自らも同行し、ヘリを操縦して情報を集めチームをサポートする。


ラリーレイド中にテジョが策略に嵌りレースできない状態に陥ってしまい、代わりに自らハンドルを握ることを決める。
本人曰くその腕前は「そこらのドライバーよりは上」とのことで、実際に序盤こそマシンの扱いに難儀していたものの、慣れてからはスネーク達に追いつく走りを見せている。
また、彼女も幼い頃から喧嘩の腕は相当で、銃を持ったギャングにすら臆することなく立ち向かう度胸も持ち合わせている。


本編の後WRLに参戦したらしく、公式ゲームでは専用マシンが与えられている。


スパーキー

演:キック・ガリー / 声:松山タカシ
チーム専属のメカニックマン。
新聞を声に出しながら読む癖があるのだが、無意識なのかレーサー家にとって面白くないニュースだろうとお構い無しに読み上げてしまうため、家族に叱られる事も多々あるなどどこか抜けた所がある。
レースでは専らスピードのアドバイザーを務めており、マッハ6のモニタリングやライバル達の動向などを彼に伝えサポートする。


彼もまたレーサー・モータースの一員ゆえ肉弾戦もお手の物……なんてことはなく、リアルファイトに関しては劇中最弱クラス。
いや、周囲が強すぎるだけなのだが……。


スプライトル・レーサー

演:ポーリー・リット / 声:田中真弓
レーサー家の三男坊。
幼き日のスピードそのままといったやんちゃな悪ガキで、度々イタズラをしては父に叱られている。


劇中ではもっぱらチムチムとコンビを組んでフリーダムな日常を送っており、マッハ5のトランクに忍び込んでスピードの邪魔をする事も多い問題児。
しかしクロスカントリーなど、度々意外なファインプレーを発揮する事もある。


チムチム

レーサー家で飼っているチンパンジー
特にスプライトルとは大の仲良しで、しょっちゅうつるんでは自由奔放にイタズラを働いている。
本作をクソ映画(物理)にしてしまった犯人。


トリクシー同様にレーサーではない……以前にまず人ですらないのだが、何故かゲーム版では彼にもマシンが与えられている。
チンパンジーでもWRLレーサーになれるのか……。



WRL関係者

アーノルド・ローヤルトン

演:ロジャー・アラム / 声:玄田哲章
WRLトップに君臨するチームのスポンサー、ローヤルトン・インダストリーズの社長。
お茶目さと家族愛を語る好々爺といった佇まいで、一代にしてゼロから大企業を造り上げたそのカリスマ性は本物。


頭角を表し始めたスピードに注目し、翌朝早々に自家用ジェットでレーサー宅に押しかけ、ちゃっかり朝食をご馳走になりつつも、ママ・レーサーお手製のパンケーキを絶賛。
レシピを買い取りたいという申し出に「無料で教える」と答えた彼女に「それはいけない」と制して自ら契約用の書類を弁護士に用意させるなど、他人からの好意であってもビジネスはビジネスとしてしっかり筋を通す人間である。


もちろんレーサー家を訪れたのはスピードをスカウトする為であり、彼ら一家の「絆」を尊重する姿勢を見せつつ自社も「うちの家族」と評し、その充実した設備や技術、トレーニング環境を余すところなく披露。
あくまでも「彼の力になりたい」という善意の申し出として提案する。

「世間知らずのバカめ──今のたわ言は忘れて、教えてやろう」


スピード達にとって思い出のレースである第43回GP。
その舞台裏で渦巻いていた利益を巡るやり取りをローヤルトンは説明し、「利益こそが重要な“記録”だ」と語り、車や選手ではなく金にこそレースの意義があると持論を展開した。
そして……


「バーンズは勝つと知っていたんだ。勝負は決まっていた」


グランプリの1週間前に主要チームが会合を開かれ、そこでオーナー達が集まり、順位を決めるのだという。
すなわち、文字通りの出来レース。
彼ら大企業達にとっても、レースは単なる競技ではない。
それは、お互いの利権や将来を賭けたビジネスの場なのだ。


この通り、彼の本性は金の亡者と呼ぶべき汚れきったもの。
レースに対しても、その瞳は選手個人ではなくその結果得られる利益しか見ておらず、故に平気で勝敗を賭けた取引や八百長も取り仕切る本作の黒幕である。


その本性を目の当たりにしたスピードは、スポンサーを「悪魔」と評したパパが正しかったと確信。
改めて契約を断るが、これでスピードが思い通りにならないと悟ったローヤルトンは彼やレーサー・モータース対し、徹底的な妨害工作を始めるのだった。


ディテクター警部

演:ベンノ・フユルマン / 声:桐本琢也(現・桐本拓哉)
企業監査を担っている刑事で、パパ・レーサーとはレックスの事故の件で面識がある。
ローヤルトン社の不正レース疑惑について調査し続けていたが尻尾を掴むことができずにおり、その件でレーサーXと協力関係を結んでいる。


そんな折にテジョがローヤルトンの不正を暴く証拠を握っているという情報を得たために、レーサーXを通じて彼をスカウト。
また同様にフジ・ヘレキシコンでのレースを経てローヤルトンの本性と闇に冒されきった舞台裏を知ったスピードにも話を持ちかける。


クランチャー・ブロック

演:ジョン・ベンフィールド / 声:たてかべ和也
ローヤルトンやそのライバル企業・武者モータースらと協力関係にあるギャング一味のボス。
テジョを配下に収めており、彼の妹ハルコをダシに言う事を聞かせている。
自分の支配から逃れようとテジョが命令を無視し始めたために制裁しようとするも、その現場をレーサーXに襲われたため、やむなく手放す。
もちろんそのまま放っておくはずもなく、買収したドライバーをけしかけて彼を潰そうと暗躍する。
……しかし、その流れでレーサー家にも喧嘩を売ったのが「ウンの付き」だった。


ベン・バーンズ

演:リチャード・ラウンドトゥリー / 声:森功至
かつてWRLで伝説的な活躍を残した名ドライバーで、現在はレース中継の解説者を務めている。
「目を閉じて走り優勝した」とすら言われるほどで、スピードやレックスはおろか、パパをも虜にした大スター。
彼が接戦を演じ、逆転勝利を果たした第43回グランプリは誰もが知る名レースで、それを収録したビデオはスピードとパパの大切な思い出である。

ローヤルトンが語るところによれば、このレースすらもそれぞれのドライバーを抱える企業の思惑により操作された結果であり、バーンズは走る前から結果を知っていたという。
そもそも、グランプリは毎回開催前にスポンサー企業間で会合が開かれ、各チームの順位はそこで決められるのだという。
決勝レースは「既に決まっているシナリオをなぞる」だけの、文字通りの出来レースであったのだ。


スピードはフジでのクラッシュを喫した後に彼に直接事の真相を問いただしたが──バーンズは「変な話だろ?」とおどけてこそみせたが、ハッキリ否定する事もしなかった。

ちなみに日本語吹き替えを担当した森功至氏は、原作の『マッハGoGoGo』で主人公・三船剛を演じていた。



WRLドライバー

レーサーX

演:マシュー・フォックス / 声:小杉十郎太
常に覆面を被っている正体不明のレーサー。
レース界では「死のクラッシャー」として有名であり、その二つ名の通りライバル車を積極的に破壊するラフファイト・スタイルがヒール的な人気を獲得している。
その一方で本人は常に冷静沈着であり、またゴーグルの奥には確かな情熱が秘められている。


基本的に表情を変える事がほとんどないクールガイだが、アタックを仕掛けてきた敵にカウンターを叩き込んで沈めた際にはしてやったりと言うかのように笑ってみせたりと、無感情というわけではない。


ヒール役としてレースファンのヘイトを集める一方、テジョを救出したりスピードも出走するレースでは彼を邪魔するドライバーばかりを攻撃して援護に回ったりと不可解な行動が目立つ。

その正体はスピードの推察通り……そして「仮面キャラ」のお約束通り、レックス・レーサーその人。
弟とほぼ同じ経緯で腐敗しきったレース界の「闇」に直面したらしく、その闇に立ち向かう事を決意。
しかし、素顔のままでは無関係な家族をも巻き込んでしまうため、ラリークロスで壮絶なクラッシュ劇を仕込んで公には「レックスは死んだ」という事にしておき、さらに整形手術で顔も変えてその正体を悟られないようにしていたのだった。


この通り劇中では一貫して善人側であり、彼の行動は全てレース界に潜む悪を白日の下に晒すためのもの。


後にスピードに直接正体を問いただされるのだが、彼はその素顔……かつて弟が愛したものとは異なる顔を晒す事によって返答した。
その正体は家族にさえ……いや、家族だからこそ明かす訳にいかないのだ。


  • シューティングスター

マッハ号に並んで原作で馴染み深い流星号。
黄色いボディにゼッケン⑨、ノーズに向かって走る矢印のような黒いラインといった特徴はそのままだが、外観はやや強くアレンジされており、全体的なシルエットは残しつつ曲線主体の流麗なロードスターに改められた。


マッハ5同様に主に公道で使用しており、非合法な活動にも身を投じるために機関銃を内蔵している……が、ラリー参戦にあたって外したのか、レース中に使用する描写はない。
ラリー参戦車両を中心に殺意全開の秘密兵器は劇中多々登場するが、何気に銃器を内蔵しているのはこの車だけだったりする。


  • オーギュリー

レース用車両。
黄色をベースに黒いラインがX字に走るカラーリングはロードカー同様。
エイやサメを思わせる独特なフェイス部やウイングがなく、ジェットノズルが大きく露出したリアビューなど、レーシングカーとしてはなかなか個性的なシルエットを持つ。ジェットスターを黄色く塗ってコクピットと車輪を付けた感じ」と言えばだいたいあってる
ドライバーの方針もあって次々とライバル車を破壊して回るパワフルかつ荒々しい走りを見せるが、何故かスピードのいる車群に居合わせては彼の邪魔をするマシンを潰して回ったりと不可解な動きも見せる。


テジョ・トゴカーン

演:Rain(ピ) / 声:小野大輔
韓国の企業「トゴカーン・モータース」社長の御曹司で、配下チームに所属するドライバー。
ブロック率いるギャングによって妹を狙われており、圧力に逆らえず八百長に嫌々ながら応じていた。


上の指示に従って走る事に内心嫌気が差しており、逆らおうとしてブロックに制裁されかけたところをレーサーXに救出される。
レーサーXは彼の行動を「ブロックの手先という立場から逃れ、自分の走りを取り戻そうとした」のだと捉え、「一緒に正義の鉄槌を下そう」と呼び掛けるも、当のテジョは正義を語る彼を鼻で笑った。


……しかし、フジで直前のレーサーXの予言が当たる格好でクラッシュ劇に巻き込まれ、それを切っ掛けに彼と組む事を決意。
トゴカーン社を勝たせて買収の危機から救わせる事を条件に、彼が握るブロック一味による八百長の証拠、ひいては黒幕のローヤルトンに繋がる手がかりを捜査局に手渡す事を提案。
Xがスカウトしてきたスピードと共にカーサ・クリストへ出走する。

勝利を経てもレーサーX側の協力の条件である「証拠」を彼が出す事はなかった。
彼は父ミスター・トゴカーン(演:伊川東吾 / 声:小林清志)の意向に従い、トゴカーン社を安泰させるために戦っていたに過ぎなかったのだ。


これだけならただのクズだが、スピードがグランプリ優勝を果たした後、テジョがローヤルトンの不正を告発し、アーノルド逮捕の立役者となった事がエピローグ代わりの新聞の一面で語られた。


しかし、それは「スピードの不屈の走りを見て心を入れ替えた」のか、単に「ローヤルトンを切った方が利になる」と考えただけだったのか?
真意は謎のままである。


ハルコ・トゴカーン

演:ユー・ナン、声 / 林真里花
テジョの妹。トゴカーンは韓国系なのになぜ日系の名前なのかは禁句。
ブロック一味に付け狙われており、テジョは彼女を守るために一味に従っていた。

ラリー優勝後、一人勝ち逃げする形で仲間を裏切ったテジョの蛮行を憂い、トゴカーン家に渡されるも、テジョが辞退したグランプリへの招待状をレーサー家に託す。


スネーク・オイラー

演:クリスチャン・オリバー / 声:檀臣幸
WRLドライバーの一人で、スピードとは劇中序盤の地元リーグから邪魔され続けてきた因縁ある相手。
ラフファイトや多少の汚い手段も厭わず、金と女を好む典型的な小物。
運転技術の方も少々荒っぽいようで、スピードには「コーナーが苦手だ」と評されている。


そんな彼も上からの指示に従って走り続ける事には内心ウンザリしており、カーサ・クリストでやっと巡ってきたチャンスすらもスピード達の参戦により目論見が崩れ、フラストレーションを溜め込んでいた。
ブロック達にスピードを潰すよう指示された事もあって特にスピードを目の上のたんこぶと見なし、確実に潰すべく策を講じる……。


ジャック“キャノンボール”・テイラー

演:ラルフ・ハーフォース / 声:押切英希
ローヤルトン・インダストリーズに所属するドライバー。
グランプリを制覇すること2回、WRLに優勝すること5回という輝かしい功績を挙げ、将来の殿堂入りを約束された地位にある不動のトップレーサーである。


彼もまたスピードの才覚を認めており、彼に「勝ちたいならローヤルトンと組むといい」と勧める。
しかし、その瞳はどこか怪しげな光を放っており……?


  • GRX

ローヤルトンが誇る最新マシンで、最終グランプリ直前に新型がロールアウトされた本作のラスボス
紫のカラーに金の装飾というローヤルトンのコーポレートカラーと、風になびく黄金のマントを思わせる特徴的なリアウイングを身に纏った姿はまさしく「社を背負って立つ」王者のマシンである。
常勝チームの最新鋭機だけあってその性能も折り紙付き、ドライバーのセンスも加わって相応の実力をもってグランプリに招待されたはずの並み居る強豪をも寄せ付けない走りを見せ、招かれざる客であるマッハ6と対峙する。


しかし、そのマシンにはある「禁断の秘密」が隠されていた……。



用語

  • WRL

ワールド・レーシング・リーグ。
本作におけるレース界の頂点に位置する世界選手権で、後述する「T-180」と呼ばれる車両を用いて争われる。
20世紀初頭、レース黄金期と称される時代に活躍し、近代的自動車産業を生み出したとも言われる5人のレーサーが設立した世界初のレーシング・リーグ。


リーグの成績優秀者か、クロスカントリー・ラリー「クルーシブル」の優勝チーム代表者など、ごく限られた者だけが招かれる最終グランプリが最高峰の舞台となる。
グランプリ勝者にはミルクが贈られ、これをビクトリーレーンで飲む伝統がある*3


輝かしい歴史を誇る伝統ある大会である反面、その人気・影響力は現実におけるF1以上と言え、ここで好成績を収める事はドライバーやチームだけでなくスポンサーにまで多大な影響をもたらす。
そのため、レース成績によって恩恵を受ける各企業がそれぞれの経済が上手く回るよう“取り為し”合い、思惑に従わない者あれば談合総出で潰しにかかりリタイアに追い込むという八百長カルテルと言うべき腐敗しきった実態をその影に持っている。
この闇にまみれた内情は今に始まった話ではなく、『スピード・レーサー』の世界においてはモータースポーツという文化そのものが八百長と共にあり続けたというドス黒い歴史を持っており、誰もが沸いたレース史に残る名勝負の数々もそのほとんどは裏で行われた八百長の結果に過ぎない。


  • T-180

WRL公認レースに出走する車両は「T-180」と呼ばれる規格に沿って作られており、最大の特徴として前後両方のタイヤが最大で右90°、左90°の合計180°まで独立可動する機構を備えている*4
これにより、マシンがどの向きであってもコースを捉えて走行する事が可能で、まるでフィギュアスケートのように自由自在な走りを実現している。


劇中ではこれを活かしてマシンをコマのように振り回して他車に体当たりを仕掛ける、秘密装置「ジャンプ・ジャッキ」と組み合わせて空中戦を仕掛けるといったダイナミックな肉弾戦が繰り広げられており、
レースカーによる格闘戦は「カー・フー*5と呼ばれている……そうなのだが、劇中ではこの用語は登場せず主にゲーム版などで用いられる。


かなり激しいレース展開を想定して設計されているため、安全装備も完備。
代表的な安全装備として、マシンが操縦不能に陥ると特殊な泡でドライバーをカプセル状に包み込み、衝撃から保護しつつ車外に放り出す脱出装備が存在しており、劇中で頻発するクラッシュシーンでは必ず脱出カプセルも描写されている。
なお、この脱出機構はペナルティ裁定にも用いられているようで、失格処分が下されたドライバーは即座にこの装備によりマシンを降ろされる。


  • スピア・フック(スピアー・フック)

秘密装置の一つ。
車体底部からクロー・アームを伸ばし、至近距離を走るライバル車のフロア部を「握り潰す」、妨害のみに特化した装備である。
一見地味ながら、フロア付近には機器類や電装系といった重要な系統が走っている事が多い点から、一発で致命的なダメージを与えうる極悪装備。


構造上一度ターゲットを捉えたが最後、相手をリタイアに追い込むまでダメージを与え続けられる事・フロアの下で用いられる故に外からは使用を悟られづらい事などから「卑劣で最低な攻撃手段」という評価が劇中における一般的な見解で、
使用が発覚すればもれなくファンや関係者から大バッシングを受け、信用を失い干される運命が待っている。
当然、レギュレーション上でもこうした攻撃用装置の搭載は禁止されているのだが、ヒットさえすればほぼ確実にライバルを消せる凶悪な性能と、何より「バレにくい」という特徴から使用が横行しているのが実情である。





以下、ネタバレ注意





登場レースとその結末

サンダーヘッド・レースウェイ

レーサー家の地元にあるコースで、彼らはレースウィーク外にも練習に使用している他、日々の鬱憤晴らしにここを走りに来る事も。


路面は穴あきの鉄板を繋ぎ合わせて作られており、この構造は今では少し古いらしい。
大きな特徴は、飛距離40mを誇る超巨大ジャンプ・スポットと二股に分かれたコースが∞の字を幾つも重ねるように交差するS字セクション。


  • レックス

「車はな──ただの鉄じゃない 生き物なんだ」
「『彼女』が何を欲しているかよく聞くんだ」


スピードの思い出、あるいは過去に彼がコースレコードを残したレースの回想として登場。
「妨害しようにも速すぎて手が出せない」程の圧倒的な走りを見せた彼は、その練習途中でスピードに「早く走るコツ」を伝授した。
やがて、そのアドバイスは窮地に陥ったスピードを救う事になる……。


  • スピード

この時点で既に地元の星、期待の新人として世間の注目を集めていた。
他を寄せ付けない走りを見せるスピードだが、しかし彼の目はただ一つの“影”を追っていた。
それはかつてレックスが遺したこのサーキットのコースレコード。幼い頃から彼の走りを見て育ったスピード。兄の死を乗り越えた今なお、その走りを今目の前に再現する事は容易だった。


最終コーナーを越え、1台と“影”は最終ストレートへ。
時代の進んだスピードの愛車・マッハ6がフィニッシュ寸前で兄の赤いマシンを追い抜く──かに見えたその刹那、スピードはアクセルから足を離した。
2位以下を全く引き寄せない完全勝利ながらも、コースレコードには「REX RACER」の名前が輝き続けていたのだった。


  • スネーク

レース中盤、スピードにアタックをかけるもジャンプ・ジャッキで躱され、オーバーテイクの勢いでラインが膨らんでいたところにカウンターされる格好でテールをぶつけられスピン、操縦不能に陥りリタイア。
あっけなく返り討ちに遭ってしまうのだった。


  • レーサーX

スピードが活躍したレースをテレビ越しに観戦していた。
「いいレーサーになるわ」
「ナンバー1になるさ……奴らに潰されなければ」


そう語る彼の背後には、黄色いオープンカーが飾られていた。



フジ・ヘレキシコン

「フジ」とついてはいるが、どう見ても日本の富士山ではない。
熱帯に浮かぶ島々を繋ぐように作られたサーキットはループとジャンプが連続する曲がりくねったコースが特徴。
比較的新しいコースなのか、路面に施された波を想起させるペイントも印象的。


  • テジョ

アイオダインの妨害をいなし、逆にジャッキの「足」を巧みに使って文字通りコース外へ「蹴落として」返り討ちにするなど、確かなドライビングテクニックをもって活躍する。


……が、コースの目玉の一つである巨大360°ループに差し掛かったところで前方のマシンが突如不自然にスピン。
咄嗟にかわすがそれによって体勢を崩してしまい、操縦不能に陥ったところに突っ込んで来た後続マシンに対応出来ず正面衝突。
脱出装置により命は助かったものの、レーサーXの予言が的中する格好になってしまった。


  • スピード

直前のローヤルトンからのスカウトを断った事で彼に目をつけられ、多数の妨害を受ける事になる。
しかしそれも意に介さず、トップを走るグレイ・ゴーストへ迫るも、ドッグファイトを演じていた隙に接近された3位のマシンに密着され……何かを仕掛けられた。
「離れろ!」「ダメだ!動けない!」
お互いの車両をロックされたままジャンプ台に突入した2台は、着地し損ねて横転、揃ってクラッシュ。
スピードもテジョの後を追う形となってしまった……。
テジョとスピードのクラッシュ劇を見てほくそ笑んでいたのは、ブロックとローヤルトン。全ては彼らの思惑通りであった。


悲劇はそれだけではない。
レース後、パパ・レーサーにはありもしない設計盗用の疑惑をかけられ、スピードにも違反装置使用の疑いがかけられた──使われたのはスピードの側だというのに。
しかし、嫌疑がデタラメでも世間の信用を失墜させるには十分だった。


  • レーサーX

「レーサーXが走った後には──車の残骸と混沌カオスがあるのみ」
「だがファンは大喜び」
「また事故が起きそうだ」
直前にブロック達による制裁を受けかけていたテジョを救出して協力を呼びかけたが、彼とは馬が合わず決裂。
このレースで何が起きるか知っていた為に彼には忠告だけを残し、スピードも同様に狙われている事を悟ると彼の援護に回る。


……しかし、レーサーXとは付き合いのなかったスピードは彼の真意を汲み取れず独走。
その結果は上記の通りである。
無惨に転がっていくマッハ6の残骸を横目に、彼はただ通り過ぎる事しか出来なかった……。



カーサ・クリスト・ラリー

正式名称「カーサ・クリスト・クラシック5000」
レース史において2番目に古い歴史を持つという、3台までのチームで2大陸間・5000kmを股にかけ競う過酷なクロスカントリー・ラリーレイド。


WRL公認レースではあるが、サーキットを使用しない事もあってか出走制限が緩いようで、参加チームも使用マシンも多岐に渡る。
中にはならず者も混じっており……というより出走チームのほとんどは真面目に走る気など更々なく、マシンに殺意全開の秘密兵器を仕込んでライバルを直接潰そうと目論んでいる。
そんな背景もあってか、死亡事故が後を絶たない悪名高いレースイベントであり、それ故に死の試練クルーシブルのあだ名で呼ばれる事も。


Day1

このレースにテジョやスピードが出走する事を知ったローヤルトンとブロックは手を組み、それぞれ他の参加チームを懐柔し、チーム・トゴカーンを潰すよう指示していた。

  • チーム・トゴカーン(スピード、テジョ、X)

ブロックにより用意された数々の刺客に邪魔され、なかなか思うようなレース運びとはいかず、スピードも「奴らルールブック読んでるのか?」と愚痴った。
それでも、徐々に連携プレーを発揮して試練を退けてゆくが……トップを捉えるには至らなかった。


スピードはこのレースで、Xとやけに息が合うのを感じていた。
やがて、ある疑念が彼の中で浮かぶ事になる……。


  • チーム・ハイドラ=セル(スネークとその手下)

彼らもトゴカーンを潰すようブロック達に命令されていた。
本来ならばこのレースは彼が勝つ筋書きになっていたらしく、8年間指示通りに走らされた末にやっと好きに走らせて貰えると思っていたその矢先に、また上からの指示が下った事で怒り心頭。
特にサンダーヘッドで因縁のあるスピードを目の敵にし、「俺の走りを見てろ」と闘志を燃やす。


邪魔なマシンはトゴカーンでなくても潰しながら快走。
多数のチームがスピード達を足止めした事も手伝って、圧倒的大差で1日目のゴールへと到着した。


Day2

  • チーム・トゴカーン

前日のゴール後、焦るテジョがチームメイトに当たってしまったりスピードが参戦している事を知ったレーサー家が彼を連れ戻そうと休憩地のホテルへ詰めかけたりと一悶着あったが、レーサー一家もチームへ合流し、トリクシーと共にレースをサポートする事に。
その晩忍者部隊の夜襲を受けるが、レーサー家はその腕っ節で難なく撃退*6。Xも描写こそなかったが無事だった。
……しかし、残るテジョはXからの警告を聞きそびれたのもあってモロに被害を受けてしまい、仕込まれた薬物によりレースに参加出来なくなってしまう。


そんな事態に、トリクシーがある奇策を提案する。
それはトリクシー自らトゴカーンのマシンに乗り、テジョには回復するまではハルコのフリをしてもらって妨害の目を欺き、雪山直前にある休憩所で交代するというものだった。
レースの心得こそあるとはいえ、ぶっつけ本番な上にテジョのヘルメットはトリクシーに合わないらしく、難しい峠道も相まって苦戦。
しかし徐々にペースを掴んでいくと、トップを走るスネーク達に追いつき、スピードとXの活躍により手下どもを蹴散らしてスネークも後退させる事に成功する。


しかし、予定していた雪山での合流に招かれざる客が乱入。ハルコ(テジョ)の乗るプライベート機にブロック達が潜入していたのだ。
乱闘の末彼らを撃退するも、その隙にスネークには追い抜かれてしまう。
猛追するスピード達だったが──その先はかつてレックスが命を落とした「氷の洞窟」。
スピードは拭えぬ恐怖を振り払い、意を決してアタックを仕掛けるが……。


  • スネーク

岩山で手下達を壊滅させられ、自身もトップの座を引きずり下ろされてしまったが、スピード達に邪魔が入った隙に逆転。
だが氷の洞窟で再び詰められてしまうも、ここで彼はとっておきの秘密兵器「オイル散布装置」を使用。
スピードをオイル・トラップに嵌め、洞窟出口の急カーブを曲がりきれなくなった彼は崖下へ転落した。
してやったりと笑うスネークだったが……


しばらくして、何とスピードはスパイクタイヤを使い崖を「よじ登って」復活
焦るスネークは再びオイルを撒くが、洞窟と違い見晴らしのいい路上で同じ手が通用するはずもなかった。
とうとうトップに回られてしまった事で半狂乱に陥ったスネークは、なんと懐から拳銃を取り出し乱射。
しかし、防弾キャノピーを展開したスピードにはまるで効果がなく、撃つ事に夢中になっているところを叩き落とされ、あえなくリタイアとなってしまうのだった。



グランプリ

専用の特設サーキットであるグランプリ・コロシアムで行われる、WRL最終戦。
招待状により集められた実績あるドライバーしか参戦を許されない、特別なレースである。
サーキットにも舗装技術・サーキット設計・視覚効果のいずれも最新鋭の技術が使われ、マシンを愛する者なら誰もが憧れる夢の舞台。


  • スピード&レーサー・モータース

テジョに裏切られた事で自棄になっていたスピード。
Xからのアドバイスや父との対話を経て、かつてレックスがそうしたように家を出る決意を固めるが、そんな矢先にハルコがテジョの辞退したグランプリへの招待状を持ってくる。
「ラリー優勝チームからであれば、招待状さえあればグランプリへ参加可能」というWRL規則を利用し「父と兄の笑いを止めてほしい」という彼女の頼みも受け、一家は急遽参戦を決定するが、マシンがない。


「スパーキー! ローヤルトンは何時間でマシンを作ると言った?」
「36時間です」
32時間で作るぞ」


一家総出で、マッハ6を再度組み上げる事を決める。
一夜漬けの突貫作業ではあったが、「特盛りチューン」も果たし、生まれ変わったマッハ6を引っさげて一同はグランプリ・コロシアムへ向かう……。


  • ジャック&ローヤルトン

レース開始直前に急遽参戦してきたスピードを警戒するローヤルトンが、GRXにスピア・フックを搭載する事を決める。
ジャックは「ガキ相手に必要ない」と反対するが、「念の為だ」とローヤルトンに押されて了承。


そして始まったレースでは、優勝候補の肩書きに恥じぬ圧倒的な走りを見せる。
一方でライバル車をスピードの走るレーンへ突き落とすなど危険なドライブも辞さない構えを取り、スピードを寄せ付けないよう立ち回る。


しかし、彼や出走するドライバー全員の妨害もまるで意に介さないスピードの圧倒的な走りによって、とうとう背後まで迫られてしまう。
直接対決となった2台はお互いに激しく車体をぶつけ合うが、ドライビングテクニックも、カー・フーの腕もスピードが一枚上手だった。
とうとうGRXが宙を舞い、スピードのアタックをモロに喰らったジャックはトップの座を奪われてしまう。


勝負あったか──誰もがそう思ったその時!
ジャックが雄叫びを挙げながらマッハ6へ無茶な突撃を敢行、マシンが並んだ瞬間、すかさずコクピット脇のスイッチへ手を伸ばす。
そう、後に引けない彼は禁断の装置、スピア・フックを作動させたのだ。



そして……

優位に立ちかけるも、一転して窮地に陥ってしまったスピード。
必死に打開しようと試みるも、アームによって車体をがっちり掴まれている以上、どうする事も出来ない。
ジャックの成すがままにされ、もはや打つ手なしかと思ったその時、あるものがスピードの目に止まり、彼は咄嗟にジャンプ・ジャッキを作動させた。


それは中継用にコース各所に配置されたカメラ。
スピードはマシンの底面、スピア・フックを使用されているその現場を映しだそうと考えたのだ。


果たしてその策は成功し、ジャックには失格処分が下されて脱出装置により強制退場、GRXのスピア・フックも外された。
解説を務めていたバーンズはその光景を見て、「恥を知れ」と吐き捨てる。
その言葉は一部始終の犯人であり、全てを見ていたローヤルトンに向かって放たれたかのようだった……。


ローヤルトンの策略から辛うじて逃れたスピードであったが、マッハ6もバッテリーを中心に致命的なダメージを負い、機能停止してしまっていた。


「待て待て待て待て!止まらないでくれ!」


焦るスピードは、スパーキーに再始動の手段を聞こうとして──いや、そうではないはずだ。
かつての兄の言葉を思い出したスピードは、愛車に直接問いかける。


「……君を……どうすればいい?」


果たして、マッハ6はスピードの呼びかけに答えてくれた。
後端部のジェット・ノズルに、鬼火のような青い炎が再び灯る。


そこからの彼は、もはや誰にも止める事は出来なかった。
停止していた間に続々と抜かれてしまったライバル達を、再び最後尾から追い上げる。
フィニッシュの直前、最後に立ちはだかるグレイ達のマシンをも一息に蹴散らしたその時──爆散するマシンの奥に、チェッカー模様が現れた。


フィニッシュラインを超えたマッハ6は、既に満身創痍だった。
どうにか止まったその直後、燃え尽きたかのようにパワーダウンする。
しかしその直後、観衆がその白いマシンへと殺到する。
たった1人と1台の走りが、世界を変えた瞬間であった。



「項目が荒らされてる!」
「どうする?」
(落ち着け…項目の声を聞くんだ)
「冥殿を…待ってくれ」


「手はある?」
「編集ページは追記・修正に繋がってる」
「動かすには…カーソルを左上に」
「気付くかしら?」
「……」
「スパーキーは?」
「…………」



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  • 珍しい「原作を再現しすぎてかえってウケなかった作品」だよね。 -- 名無しさん (2023-01-03 23:40:01)
  • 映画とパンフレットしか見てない身からするとカーフーは作中用語というより製作陣が使ってた用語ってイメージあるわ -- 名無しさん (2023-01-04 01:53:43)
  • 作品愛を感じる良い項目だ俺もこの映画大好きだ -- 名無しさん (2023-01-04 02:23:33)
  • レーサーXはレックス・レーサーのアナグラムよね -- 名無しさん (2023-01-04 02:25:30)
  • 作成乙です。作品への愛情が伝わってくる良記事でした -- 名無しさん (2023-01-04 09:21:10)
  • オススメな映画聞かれたたら必ず紹介するぐらい好き -- 名無しさん (2023-01-04 12:50:07)
  • マッハGOGOGOは海外で人気のようで90年代始めに税関で漫画家だと言ったら「スピードレーサー作ってるのか?」と聞かれたという話が。 -- 名無しさん (2023-01-04 12:53:36)
  • 90年代当時Tシャツなんかもインポートで日本に入ってきてたね -- 名無しさん (2023-01-05 02:04:38)
  • 多分真田広之のマシンのホットウィールが、浮世絵風の印刷が細かくて感心したな -- 名無しさん (2023-01-05 20:24:48)
  • ↑たぶんですがそのマシン、ゲームによればマシン名は「セップク」、ドライバーは「カッコイー・テッポーダマ」というらしい。いや名前よ。 -- 名無しさん (2023-01-07 12:20:50)

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*1 当時。後に2人は性別適合手術を受けている。
*2 公開当時はメンバーだったが、後に脱退。
*3 元ネタは世界3大レースの一つ「インディ500」。
*4 参考までに、現実のF1マシンの舵角は最大でも7°程度と言われている。もちろん操舵に使うのは前輪のみで後輪は可動しない。
*5 車(カー)+カンフー。
*6 パパ曰く「これでは忍者ではなく『何じゃ?』だな。最近のはなっとらん」。

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