登録日:2011/07/03(日) 06:47:32
更新日:2023/08/07 Mon 13:52:21NEW!
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藤子・f・不二雄 ボノム 寝取られ 底ぬけさん 宗教 環境 遺伝子 おでん 黒い藤子f先生 短編 お人好し
藤子・F・不二雄の短編の1つ。
◆あらすじ
お金をたかられても、残業を押し付けられても、暴力をふるわれたって決して怒ることがない男、仁吉。
ある日、仁吉の態度を見かねた新入社員がおでんの屋台に飲みに誘い本音を聞き出そうとする。
◆登場人物
- 仁吉
他人から利用されてばかりいるがそれでも絶対に怒らない、底抜けのお人好し。
- 新入り
仁吉の人の良さにつけ込んで利用する人が許せない。
短気なため仁吉の態度が理解出来ない。
- おでん屋の主人
仁吉には何か強い信念のようなものを持っていると感じた。
- 街娼の女
恰幅が良く厚化粧な娼婦。
仁吉の態度が気にくわなかったために恋人のチンピラにボコボコにさせた。
初出時には「パン助」表記であったが、表現があまりにもアレだったせいか、書籍収録時に変更された。
- チンピラ
キ、キ、キ、キ、キキキキ、キンキンキンキンチョウ……。
……と、緊張するとまともに喋れなくなってしまう。
〇鷹利
仁吉から毎週金を借りておきながら、他人には高利子で金を貸していた。
以下ネタバレ注意。
チンピラに暴力をふるわれボロボロになる仁吉。
そこへ警察が現れ、焦る街娼とチンピラ。
すると仁吉は「その人達は階段から落ちた自分を介抱してくれただけ」と二人を庇う。
更に、一緒に飲みませんかとおでん屋に誘う。
新入りが言うには仁吉は以前にも殴られたことがあるらしい。
昼休みに屋上で休憩していると突然女性社員が抱きついて来る。
「あなた逃げてっ!!」
何がなんだかわからない仁吉。
そこへ学生が現れ、仁吉をバットで殴る。
「よくも人の女房を……」
当然見に覚えがない仁吉はめんくらう。
新入りはこの事件の真相を話し出す。
仕事をやめることになった女性社員を呼び止める一人の男性社員。
「やめるのかい?」
「あんたとのことばれちゃったもん」
「亭主のやつどなりこんできたから仁吉さんを代役にたてといたわ」
「なんというやさしい心づかい……」
「落ち着いたら連絡するわ」
「忘れないでね~」
「ひでぇ」
「しどいわ!」
「ヒ、ヒ、ヒ、ヒ」
余りにも酷い真相に街娼達も絶句する。
しかしそれでも仁吉は腹がたたないという。
「いやだもう! おれみたいな短気な者には理解を絶するよもう」
「バ、バババババババ」
「バカみたい」
「違うね。なんか持ってるね、この人は。わしゃそうにらんだね」
すると仁吉が突然ワハハハハハと笑い出す。
酔っ払っているのだろうか、テンションが上がって来た仁吉。
「えらい!! おじさん、わしの心の中を見抜いたのはあんただけだ」
そして自らの信念、いや一種の哲学とも言える考えを語り出す。
「諸君!! 諸君は自分があやつり人形にすぎないと自覚したことがあるか」
人間の行動とは何か。
人それぞれの性格が外界と反応しておこる現象である。
性格を決定するものは何か。
それは環境と遺伝子である。
「ラッキョとオデンがどうしたって?」
「だんな英語はなしにしようよ*1」
人間はもって生まれた遺伝子とその後に与えられる環境に操られる人形にすぎない。
人形に責任を問うことなど出来ないのだ。
「はやい話が君だ」と街娼を指差す。
娼婦をやらざるを得なかった『貧しさ』が悪いのだ、と。
もし好きでやっているのならそれはそれでかまわない。その場合は遺伝子が悪いのだ。
ならば親の責任なのだろうか?
いや違う。親もまたその親から遺伝子を受け継いでいるのだ。
「誰を責めるのもまちがってる」
「すべてを許すのです」
「底ぬけに許すのです」
「それだけが世界平和への道なのです」
ならば、と新入り達は仁吉を怒らせようとビールや水を浴びせる。
びしょ濡れになった仁吉だが、自分のことよりも写真の心配をしだす。
写真に写っているのは仁吉、心の支えでもある美人な妻、そして……。
「あれーっ、この男……」
「そう、あたしを殴った学生」
例の事件の後、慰謝料をよこせと家にやってきたらしい。
「ま、まさか払わなかったでしょうね」
「暮らしも楽じゃなさそうで気の毒だったから月払いでなんとか……」
「つきあってみるとかわいいやつでね。いまじゃわが子のような気がしてるんだ」
新入り達は感動して泣き出してしまう。
「ほ、本物だよ! このしとは!!」
「シューマニズムってんだなこれが。わしのにらんだとおりだなぁ」
「ほんとにもう……キリストの再来じゃないかしら」
「わしも時々そう思うんだよ。ウン冗談でなく」
「仁吉さん!! ぼくを導いてくださいっ」
「あたいたちもお願い」
「わしも」
「仁吉教を全世界にひろめよう」
「南無大慈大悲の仁吉如来」
ラッキョーオーデン
ラッキョーオーデン
ラッキョーオーデン
ラッキョーオーデン ハハハハ
酔いの醒めぬまま千鳥足で帰宅する仁吉。
寝室に入るとそこには心の支えである美しい妻。
と、
息子のように可愛がっている例の学生。
…………………………
………………………………………
忘れ物のカバンを届けに家にやってきた新入り。
すると何故か玄関前で座っている仁吉。
「シー……」
「いまね……いま新しい遺伝子が生命をうけるところなの」
この項目が作成・追記・修正されたのも環境と遺伝子の結果なのでしょう。
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▷ コメント欄
- 文章だけじゃよくわからないんだな -- 名無しさん (2013-10-19 11:12:41)
- 仁吉さんの遺伝子がある意味神の領域に入っている。 -- 名無しさん (2013-10-21 09:37:13)
- つかゴム付けろよ…… -- 名無しさん (2013-10-21 10:22:09)
- 結局この人はお人好しなんじゃなく怒るべきところで怒ることのできないだめな人だったというわけだ -- 名無しさん (2013-10-21 13:06:14)
- ボトムと煩悩・無をかけてるのかな?狂気の悟りだ -- 名無しさん (2014-02-13 18:10:52)
- ↑2 ダメな人ってのは違うだろう 最後の行動も本人の論理どおりだ こうなりたいかは別として -- 名無しさん (2014-12-31 21:59:03)
- ↑なりたか無いよ・・・むしろぶっ殺せるほどの気概がある人のほうがまだすっきりする -- 名無しさん (2015-01-11 11:18:38)
- この人は「許している」のではなく「やり過ごしている」だけにしか見えない。「底抜け」つまり底が抜けているせいで現実を受け入れないから、聖人面かまして他人を人形と見下すことしかできない器量ゼロのダメ男。屁理屈が正しいなら自分もその人形の1つにすぎないのに、周りにノセられ菩薩ポーズかましているのが憐れみすら感じる。 -- 名無しさん (2015-03-02 23:35:34)
- 某basaraの松永氏がみたらどう思うんだろうか?。 …少なくとも「怒」の感覚が抜け落ちたサイコパスにしか見えんのだがな -- 名無しさん (2015-05-30 05:17:52)
- 補足すると、フランス語で「ボノム」(Bon Homme)は「善人」の意味。 -- 名無しさん (2015-08-24 09:21:37)
- ラストで「覚醒」してたらカギ爪の男みたいになってたかもしれない -- 名無しさん (2015-08-24 17:56:24)
- これだとキリストの再来というより、マリアの旦那のヨセフだな。神様に嫁を取られて一方的に子供の世話までさせられた人 -- 名無しさん (2018-04-25 16:49:38)
- NTRで脳が破壊された人 -- 名無しさん (2020-11-12 05:13:12)
- 単純に狂ってるだけなのかも -- 名無しさん (2021-06-09 02:13:38)
- ダメな人とか怒れない人ってのは多分違うな。そうなるには前提として普通の人間同様に怒りとか悲しみとかのネガティブな感情を持ってることが必須だけど、作中の仁吉はそういう描写が一切ない。本気で「どうせみんな人形なんだからいちいち怒ったりしねぇよ。好きにしろよ」って考えてる。超人か狂人かはわからんけど。 -- 名無しさん (2021-12-15 13:09:19)
- 普通なら美点となる「寛容性」をとことん突き詰めたらこんなにもグロテスクな人間が、という黒い藤子節の利いたひねくれた短編。いっそ全人類がこうなってたらそれは理想郷と呼べるかもしれないけど。 -- 名無しさん (2022-01-27 01:34:01)
- ラストシーンの主人公の寂しげな顔を見る限りとても悟ってるようには見えない、上で言われてるようにただのヘタレな気がする -- 名無しさん (2022-08-18 21:06:52)
- 底抜け→no bottom のもじりだと思ってた。 -- 名無しさん (2022-09-14 15:19:35)
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