間引き(漫画)

ページ名:間引き_漫画_

登録日:2012/01/15(日) 20:53:59
更新日:2023/08/07 Mon 13:52:24NEW!
所要時間:約 8 分で読めます



タグ一覧
藤子・f・不二雄 間引き 人口爆発 人口抑制 食糧危機 短編 黒い藤子f先生 bbsは絶望主義者の集い 日本終了のお知らせ 犠牲になったのだ コインロッカー コインロッカーベイビー 怒り新党 sf短編



藤子・F・不二雄の短編漫画の一つ。1974年発表。
マツコ&有吉の怒り新党にて、「コロリころげた木の根っ子」「自分会議」とともに「新・3大 藤子・F・不二雄らしからぬ異色な物語」の一つとして紹介されたこともあり、知名度はそれなりに高い。



◆あらすじ
1980年、人口爆発により地球の総人口はまもなく45億を超えようとしていた。
世界的に慢性的な食糧不足となり、日本でも配給制度が復活。


そんな中、コインロッカーに赤子が放置されるといういわゆるコインロッカーベイビーが多発し社会問題となっていた。
それは主人公が管理するロッカーも例外ではなく、一日平均約十件、多い日には18件に上ることもあった。
そんな彼に一人の記者が取材にやってきて……



◆登場人物


  • 管理人

コインロッカーを管理する初老の男性。
毎日のように起こる事件によりもはや死体を見ても特に心を動かされるということもなくなった。年齢の割には大喰らい。


  • 木地角三

朝目新聞社 週刊朝目編集部員。
コインロッカーベイビーについて新たな面から見た1つの仮説を立てているようだが……。


  • 保険セールスの女

加入者が亡くなった場合平均寿命から死亡年齢を差し引き、今後摂取されるはずだったカロリーの1/3分の食券が遺族に支払われる「カロリー保険」を管理人に勧めたが断られた。
なお、彼女の話によると金銭価値も近年不穏当になっている模様。


  • 管理人の妻

昔は情の深い女性だったようだが、今は弁当を作るのを面倒くさがったりと冷たい面が目立つ。



以下ネタバレ注意。


















木地は既存の説も絡めて自らの仮説を管理人に説明する。


「どの科の動物にも特有の全個体数には上限がある」という説がある。


実際現代の生物は平均増殖率がほぼゼロとなっているものばかり。


それぞれの種は内部、または周囲に総数を調節する機構が組み込まれているというのだ。


例えばアリゾナ州のシカは天敵であるピューマやコヨーテを人間が狩り尽くしてしまったことで爆発的に繁殖。
餌を食い尽くしてしまい絶滅した。


しかし人間はどうだろうか?
生物界の異端児とも言える存在にそのような機構が備わっているのだろうか?


実は人間は誕生以来百万年近くは人口増加率は0.001%程度であった。
疫病や戦争が調節機構として働いていたのだ。


ところが人間達は自らその機構を捨ててしまった。
新薬の発見、農業の改良、生命尊重の思想……。
現在の増殖率は2%にまで膨れ上がってしまった。


この先人類はどうなっていくのか?後半へ続く!



……と、ここまで話を聞いた所で管理人は笑い飛ばす。


人口抑制のためにコインロッカーが使われているというのならいくらなんでも大して効果があるとは思えない、大海をコップで乾すようなものだと。


ところが木地の話はまだ終わらない。


「コインロッカーでの事件はあくまでも氷山の一角にすぎない……」


そうして説明を再開しようとしたその瞬間、学生達が赤子をロッカーに放置しようとしていた。


取り押さえられ、警察に連れていかれる学生達だったが、「自分のものを自分が捨てて何が悪い」と一切反省する様子もなかった。


これこそが木地の仮説の根幹にある「人間を動かしている巨大な力」だという。


あの子を見てどう思います? 母性愛がまったく失われていることを感じませんか?
あの子だけじゃない。近ごろの一般的な社会現象から感じませんか?
異性愛 肉親愛 隣人愛 友情……
あらゆる愛情が、最近急速に、消滅しつつあることを感じませんか?


実にあっさりと血を見るのが今日この頃です。
長年絶対視されていた道徳の基盤がひっくり返りつつある!「生命の無差別的絶対尊重」という……


そう思ってみれば、この「愛」なんてものは種の存続のための機能のひとつにすぎないんだね。
だから、これがじゃまになれば取っぱらってしまえということですよ。


自然の摂理というか大いなる宇宙意志が介入してきたんですよ。


今後ますます激しくなるでしょうな、憎み合い殺し合い……
効率の良い「間引き」が行われて……


適当な人口まで減った時、人類は再び愛をとりもどせるかもしれません。



おじゃましました。



取材を終えて帰る木地を見送り、すっかり暗くなった管理室でただ一人空しく立ち尽くす管理人……。


その時、管理人の肩に手が。
振り返るとそこにいたのは優しく微笑む妻の姿だった。


11時すぎたわよ。点検してしめるんでしょ。夜食をもってきたわ。


管理人はあまりの嬉しさにその場に泣き崩れ、夢中で夜食のおにぎりを食べるのであった。










ウ~ッ ウ~ッ




突然サイレンの音が響き渡る。


世界総人口が45億を超えたのだ。


その瞬間、管理人の手からおにぎりが落ちた。
そして管理人自身も……。




ごめんね。青酸カリいれといたの。


今日あなたをカロリー保険にいれたのよ。


だっておなかがすいてしようがなかったんだもの。



妻は動かなくなった管理人を引きずっていく。


うまくロッカーにはいるといいけど……


  • 管理人の妻

空腹で仕方ないあまり、夫を毒殺しカロリー保険で食費を賄おうとした。
犯行時の表情は終始呆けており、長年連れ添ったはずの夫に対しての詫びも「ごめんね」の一言だけだった。
しかし、『保険加入直後に、夫が死ぬという不自然な状況』『青酸カリの入手経路や隠蔽についてはまるで無頓着』『間引きが深層心理で働くといっても殺人は殺人(先ほどのロッカー騒動でも明らか)』『死体をロッカーで処理する場当たり的犯行』を見るに、彼女の末路は想像に難くない。





45億マイナス1……



プラス1

プラス1

プラス1

…………









項目の数が増加するほど、一つの項目が追記・修正される機会も減るのかもしれません。


[#include(name=テンプレ2)]

この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600,53)

[#include(name=テンプレ3)]


シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧