登録日:2020/06/20 (土) 18:51:19
更新日:2024/05/20 Mon 10:46:42NEW!
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漫画 月刊コミックゼロサム 転生 魔法 現代ファンタジー 久米田夏穂 生まれ変わりファンタジー
言葉が通じる相手がいたら
記憶を共有する相手がいたら
…俺は孤独じゃなくなると思ってたのに
なんだこれは
『ボクラノキセキ』は、久米田夏穂による漫画作品。
当初はコミックゼロサムの増刊版で連載されていたが、そちらの休刊に伴い月刊コミックゼロサムに移籍。
現在も連載中で、2023年3月現在で27巻が発売中。
【概要】
魔法がある世界で生き、戦争で命を落とした前世を持つ高校生たち――いわゆる転生者が織りなす群像劇。
普通の学生たちが突如『互いを殺し合った』過去を思い出したために起こる混乱、かつての未練や恨み、恋慕の念に翻弄されるなか、
それでも今の現実を大事に生きようとする主人公・皆見晴澄を中心に愛憎渦巻く様々な人間関係を描く。
魔法を『現代にとっての異物』と自覚する大半の作中キャラの意向もあり、それらを使ったバトルは各所に組み込まれるもののやや控えめ。
どちらかというとメインとなるのは上記の人間ドラマに見られる個々の葛藤や克己、二転三転する過去の謎を追うサスペンスチックな展開のほうと思われる。
【あらすじ】
男子高校生である皆見晴澄には、別世界で王女として生き、同盟国による突然の襲撃で命を落とした前世の記憶がある。
誰しも転生するのが普通と勘違いし、また前世を否定したくなかったためにそれを隠さなかった晴澄は痛い奴扱いされ、中学までは遠巻きにされていた。
理解者となる友人・上岡と知り合うことで『今』を生きる決意を持ち始め、高校では前世を隠し友人にも恵まれた……が、入学して間もなく事件が起きる。何者かが前世の業である『魔法』を使い、上岡を負傷させたのだ。
肝心の犯人には逃げられ、しかもこの事件に連鎖するかのごとく、晴澄の彼女である春湖を始め多くのクラスメイトまでもが次々と前世の記憶を思い出し、事態はさらに拡大してしまう。
結果として判明したのは、あの日ベロニカの城で命を落とした者の多くが今のクラスメイトとして転生している事実だった。
かつての敵への恨みとともに、容易に人を傷つけてしまう『魔法』という力までも身に宿してしまったクラスメイト。
彼らの暴走を食い止めるため、また自分の日常を二度も壊されないために、晴澄は犯人捜しと平行して混乱を収束するすべを探っていくことになる。
――誰よりも自分こそが、前世の恨みを強く抱えていることを自覚しながら。
【前世における各勢力】
■ゼレストリア
晴澄の前世である王女ベロニカが属した国。
大国アルダラスに対抗するため隣国モースヴィーグと同盟を組んでおり、その一環としてベロニカはモースヴィーグの第三王子ユージンと結婚した。
前世パートの主な舞台となるラインツベルグ城(城主は王女ベロニカ)もこの国に属する。城内には王女ベロニカ、近衛騎士3名、騎士見習い7名(元々いた正規騎士たちが戦争に駆り出されたため、その穴を埋めるために士官学校卒業前の若い見習いたちが配属された)、一般兵16名、使用人15名に加え、教会から派遣された司教1名と神官6名が暮らしていた。ユージンとベロニカの結婚後は新たに王子ユージン、近衛騎士6名、使用人11名がモースヴィーグから移り住み、総勢67名の大所帯となる。
■モースヴィーグ
ゼレストリアとの同盟国……であったはずが、突如としてベロニカの城に軍を差し向け、無差別攻撃を行ったとされる。
戦争を仕掛けてきたのはモースヴィーグ本国から新たに派遣された騎士たちであり、ユージンの配下としてベロニカの城に居た者たち(晴澄の現クラスメイトの一部)はその理由を知らない様子。
■教会
神たる精霊との関わり方を模索し、魔法を習得するための契約を司る機関。神官は祭儀の実践の他に、医師・薬師としての役割や戸籍管理なども担っている。業務の一環として王族の教育を行うこともあり、幼少期のベロニカも教会のお世話になった。
ただし、いかなる時も中立を貫き、どこの国にも与しないという立場は決して崩さない。モースヴィーグがラインツベルグ城を襲撃した際も、教会内の最高機関である教皇庁はどちらの国にも荷担しない方針を示し、神官たちに撤退を促した。とはいえ個々の行動を完全に縛ることは出来ず、御堂の前世であるジャレッド始め数名はゼレストリアに助勢すべく動いている。
【主要登場人物】
○皆見晴澄
主人公。別世界で王女ベロニカとして生きた前世を持ち、その記憶を保ったまま日本人として育つ。
中学まで上岡以外の友人がいなかったせいで人付き合いでは前世の価値観が強く出てしまい、高校に入った当初は親しくなりたい相手にグイグイ迫るフランクさと、たいていの事は「いーよいーよ」で済ませるユルさが混じったキャラで友達に接していた。
しかし前世が前世だけあり、根本にあるのは自然に他人を従えるカリスマや冷徹な思考を備えた人格。また話術で相手の感情や思考を誘導さえしてみせる。
クラスメイトの転生が明らかになってからは、混乱を収めようと動きつつも、前世の敵に再び襲われる危険性を考慮して大半の相手には「前世が誰か思い出せない」と嘘をついている。
「前世の行いや罪を今に持ち越すな」と何かにつけ同じ転生者に説いてはいるが、それは自らに言い聞かせている面もある。
むしろ臣下を皆殺しにされた立場として、他の誰よりも責任と憎しみを抱えこんだままであり、いつかそれが爆発するのを恐れているほど。
懸命に今の日常を守ろうとするのも、かつて城を落とされたことへの代償行為と指摘されており、前世への執着はやはり強い。
使える魔法は、王女としての固有のもの(あらゆる魔法を反射する攻防一体の魔法)を除くと極めて初歩のものらしい。
○高尾春湖
晴澄のクラスメイトにして彼女。前世はベロニカの専属護衛騎士リダ・ラザラサーレ。
自然と両思いとなり晴澄が告白して付き合いだした……という矢先に前世を思い出し、晴澄への接し方が護衛じみたものとなったことで晴澄を凹ませる。
晴澄に一歩引いてしまうようになった原因は他にもあり、前世における『ある人物』に遠慮しているからでもあるのだが……。
やや無表情ながら、ふとしたときに可愛い仕草を見せる。ただしやるときはやるタイプであり、前世を思い出してからは金属バットを袋に入れて常時携帯し、いざというときに魔法とともにそれをぶん回す覚悟も万全。
前世であるリダは、ゼレストリアでも名門と呼ばれる三貴族の一つ、ラザラサーレ家の出身。堅物な性格ゆえに振り回されがちながらも、ベロニカとは強い信頼で結ばれていた。かつては剣技・魔法の実力ともに相当な強さを誇っていたが、転生してからは春湖としての筋力の無さに悩む。
○広木悠
晴澄のクラスメイト。耳が隠れるように伸ばした茶髪ロングが特徴的な女子。男勝りでハキハキとした性格。カラオケでの騒動の際、ベロニカの生まれ変わりだと嘘をついたため、晴澄や春湖から疑いの目を向けられた。
その後、ゼレストリア三名家の一つベルバニア家の末子で、ベロニカに仕える騎士見習いの一人バルト・ベルバニア(男)の生まれ変わりだと明かす。バルト時代は誠実かつ生真面目な他者への思いやりにあふれた好青年で、周囲からの人望も厚いという騎士の鏡のような人物だった。また庶出の異母兄であるグレン・シュライバー(ベロニカの恋人だったと言われている)と非常に仲が良かった。しかし転生後は魔法を思い出せず、腕力も無いために戦いから引っ込められる現状を悔しがっている。
実のところ、見方によっては裏ヒロインとも言える重要人物。
○瀬々稜
晴澄のクラスメイト。飄々としたマイペースな性格で、深刻な場面でもおバカな力の抜けるような言動が多い。
家庭の事情で一人暮らしをする傍ら、おじの経営するさびれたカラオケ店でバイトをしている。そのため家もバイト先もクラスメイトたちにたまり場として利用されることに。これはたまたま序盤から晴澄の前世を知っていたせいでもあるのだが、単行本の巻末おまけ漫画でその辺を冗談交じりに弄られている。
前世持ちではあるらしいが、自分が誰だったのかはっきり掴めていない。瀬々自身も「思い出さない方が幸せなら思い出せないままで良い」と考えていたため、前世を思い出すことには消極的だった。しかし、些細な出来事がきっかけとなって、前世の記憶が蘇ってしまい……。
○御堂龍司
晴澄のクラスメイト。広木、元井とは中学からの友人。野球部所属。
前世は神官ジャレッド・フロリオ。当時も現在と同じく人当たりのいい朗らかな性格だった。ベロニカと比較的親しくしていたこともあり、現世で真っ先に晴澄がベロニカだと気づいた後は晴澄の味方となる。
○元井隼人
晴澄のクラスメイト。御堂と同じく野球部に所属。短髪に刈ったスポーツマン的な容姿で、見た目そのまんま真っ直ぐな性格。
前世はモースヴィーグの騎士カルヴィン・プランタードだが、あまり前世にこだわるそぶりは見せない。広木に中学の頃から惚れており、前世を思い出してなお、かつて争った側の人間である広木への好意を示し続けている。
作中ではほとんど「モト」としか呼ばれないせいで、フルネームを忘れる読者が多数。
○西園百花
晴澄のクラスメイト。悠や春湖と仲良し。
前世は神官リリー・エクルストン。御堂が同じ神官ジャレッドの生まれ変わりだと知り、心から再会を喜びあった。かつての同僚という近しさからか、その後もよく御堂と一緒に行動している。愛くるしい容姿をしているが、小柄な体格のせいかクラスメイトからは子供扱いされること多数。こんなに可愛いのに。
リリーだった頃と変わらず心優しく裏表のない性格で、その明るさは多くの人の心を和ませており、曲者揃いの元神官たちの中で一種の清涼剤的存在。また転生ものの王道ともいえる「前世から続く恋心」をとある人物に抱き続けている。ぶっちゃけ一番ヒロインっぽい。
後に魔法が使えなくなっていることが判明する。
○七浦晃
晴澄のクラスメイト。サッカー部所属。
前世はゼレストリアの騎士見習いコットン・オルヴェ。士官学校時代からの友人だったグレン達とは親しい仲。元々コットンは没落する一方の実家を再興するため戦争で武勲をあげることを望んでいたが、意に反してベロニカの部下となる。しかしモースヴィーグの騎士アシュレイとの対話を通して、彼なりに王女の騎士として指針を持つことになった。
初期は同盟を裏切ったモースヴィーグに強い怒りを見せており、相手が友人でも容赦なく殴りつける程だったが、その後なぜかゼレストリアに敵対するかのように怪しい素振りを見せ始める。その背後には七浦を脅す「誰か」がいるようなのだが……?
前世を思い出す前からクラスメイトの槙に淡い好意を寄せているが、槙からは全く意識されていなかった。
かわいそうとか言うんじゃない。
○大友辰也
晴澄のクラスメイト。前世は神官カルロ・ヴェールバルド。養父であるモストン司教の庇護の元、ラケドニア修道院で幼いベロニカと共に兄妹のように育つ。城内では(表向きは)司教に次ぐNo.2の地位にあった。
謹厳な性格で教会の教えに忠実だった前世に引っ張られたのか、今世でも混乱するクラスメイトを一喝し、神官としてかなり強引にまとめ上げようとする。冷静で頼りになる委員長タイプではあるのだが、偉そうな態度や融通のきかなさのせいでクラスメイトから反感を買うことも多い。また行動方針の違いから晴澄と衝突することも多く、前世と変わってしまった関係性は少なからず晴澄の悩みの種となる。
○手島野尚
晴澄のクラスメイト。長めの髪のあちこちにヘアピンをつけ、おしゃれメガネをかけたイケメン。クラスではかなりモテる方。
前世はモースヴィーグの騎士ヴィンス・エヴァレット。家同士のつながりで幼い頃からユージンに仕えており、王子に最も近しい部下だったとみなされている。
比較的、前世は前世として今と区別して考えており、ユージンに対し複雑な思いを抱えていることも加わって、序盤で晴澄の前世に気づいた後も味方寄りの振る舞いを続けている。特に偉ぶっているわけではないものの陰キャからするとそうは映らないらしく、同じモースヴィーグ騎士の前世を持つ矢沼からは一方的に嫌われていた。これがある騒動の一因になるのだが……。
○仁科瑞樹
晴澄のクラスメイト。思慮深く洞察力に長けた、黒縁メガネがトレードマークの男子生徒。ちなみにメガネをとるとかなりの美少年である。
前世はモースヴィーグの騎士アシュレイ・ギーバルシュ。かつて陰謀に巻き込まれた自分と家族の命を救ってくれたユージンを信奉している。
基本的には物腰柔らかだが、ユージンに関する事には冷静さを失いがち。前世の追及にはクラスメイトの中でも特に積極的な態度をとっている。
物語が進むにつれ、彼の抱える秘密が少しずつ明らかになっていくのだが……。
そのバックグラウンドや内に秘めた目的から、本作の影の主人公とも言える人物である。
○上岡沙耶
晴澄の中学時代からの唯一の友人。
晴澄の噂も気にせず友人となり、彼が実際に魔法を使えることを知っても変わらず親しくしてくれた恩人。
第一話(一巻冒頭の第零話を含めれば二話)の最後に、謎の人物による魔法攻撃を受け負傷する。
無事回復するも、前世関連の争いに彼女が巻き込まれることを恐れた晴澄の提案で、学校ではやや距離を置かれることに。
○???
上岡を魔法で撃った犯人。
床に残った魔法の痕が『神官にしか使えない魔法によるもの』だと大友に看破されたため、神官の誰かだと予想されている。
犯人候補として転生している元神官5人(そのうち御堂と西園は同時刻に広木らと一緒に魔法を目撃していたため除外)、あるいはまだ姿を現していない神官リュカ・エルランジェの名が挙げられているが、詳細不明。
【作中用語】
◇転生
ベロニカの生きた時代で信じられていた、死した者が別の肉体で生まれ変わる概念。
転生出来るのは『魔法で死んだ者』のみとされ、貴族などには来世を願って魔法でとどめをさす風習があった(逆に犯罪者は刃物などで処刑された)。
前世の記憶を引き継ぐことは不可能であるため、あくまで「そう信じられていた概念」に過ぎなかったが、晴澄たちの時代で記憶どころか前世で契約した魔法すら引き継ぐ転生が発生した。
この事態がなぜ起こったか、そして『前世で同じ城で死んだ人間のみが、現代で同じ学校のクラスメイトとして転生した』理由については不明。
晴澄は小さい頃から自然と思い出していったクチだが、ほとんどの人間は最期の記憶――戦場の情景が突然フラッシュバックしつつの覚醒となったため、パニックを起こす者も。
作中序盤、転生を自覚したクラスメイト全員が集まって各自の前世を明かし合った(晴澄はリスクを考え思い出せないフリをした)のだが、厄介なことに、この時点で既に前世を偽って報告している人物が紛れている。
また、転生に際して各人の記憶がところどころ欠落しているらしいことも後に判明する。特に城の襲撃時に関しての欠落がひどいため、謎が解明されたと思いきや新たな謎が生まれたりと相当ややこしいことになっていく。
それに加えて、物語が進むにつれこの間まで普通だったクラスメイトが遅れて前世を思い出す……などという事件が起こり、混乱に拍車をかけていく。
◇魔法
ベロニカの生きた世界において、精霊と契約することで使用できた異能。
晴澄の世界でも使用できることから、前世が神官の者たちは現代にも精霊がいる証だと主張している。
魔法ごとに特定の呪文と供物(髪の毛や皮膚、血液など)を精霊に捧げる必要があるため、手のひらを上に向けた指ぱっちん状態の親指と中指で供物を持ち、手を使用対象に向けて魔法が発動される。
また魔法により程度は異なるが、使用には体力も消耗する。転生者のいくらかは現世の体の貧弱さに悩まされることに……。
習得できる魔法は血筋(家系)によるものと職業(身分)によるものの二系統がある。
王族や高位貴族の家系出身の者が持つ固有魔法、あるいは騎士(特に部隊長クラス)の使う攻撃魔法は尋常ではない威力を秘める。例として、モースヴィーグの名門貴族の生まれで近衛隊長だった矢沼は、魔法で地面を抉りつつ木々を数本吹っ飛ばしてみせる。
一方、平民の使用人たちは基本的に魔法は使えない。
作中では総じて『体外になにがしかの現象を発生させる』ようなものが多く、いわゆる身体強化やら飛行やらの魔法は登場していない。
区分として攻撃(光弾やら極太ビームをぶっ放す)、防御(魔法のシールドを生じる)、補助(目くらましの閃光や照明弾を生じる)など。
また、神官職のみに許された対外秘の魔法として回復魔法が存在するが、これはベロニカですら知らなかった。
追記・修正お願いします。
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