中島春雄

ページ名:中島春雄

登録日:2019/05/29 (水) 21:58:55
更新日:2024/04/05 Fri 13:51:29NEW!
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中島春雄(1929~2017)は、日本の元俳優。


そして…


"ミスター・ゴジラ"である。


●目次


■プロフィール

出身地:山形県酒田市
身長:168cm
特技:水泳・素潜り


■来歴


実家は肉屋を営んでおり、5人兄弟の3男として生まれる。14歳から16歳までの間、海軍に所属していた。


18歳の時、広告を見て「東宝俳優学校」に応募して俳優養成所の門をたたき、東宝などの映画撮影所に出入りするように。
そして20歳、あの黒澤明による監督作品『野良犬』でデビューを飾った…と思いきや、
中島の出演シーンは編集によりすべてカットされてしまうという憂き目に遭った。


21歳、俳優学校からの誘いで東宝に入社し大部屋俳優となる。
「大部屋俳優」というのはクレジットに名前の出ない…つまり端役や斬られ役といったモブを演じる俳優たちの通称である。


24歳の時に出演した『太平洋の嵐』では吹替え(今でいうスタントマン)で全身火達磨となってファイヤースタントを担当。
この時期にはこういった仕事を多く担っていたという。


そんなこんなで大役に恵まれずにいた中島だったが、25歳の時ついに転機が訪れた。
東宝が贈りだす日本初の特撮怪獣映画『G作品』登場する怪獣の着ぐるみに入る役として指名されたのだ。
中島は後に「何故自分だったのか本当のところはよく分からなくて、『太平洋の鷲』で火だるまになった航空兵のスタントの演技が良かったからとも言われてるけどね」と語っている。*1


撮影前の着ぐるみのテスターには中島ともう1人の俳優が挑戦。
先に挑んだもう1人は3mほどでセットにつまずき転んでしまったのとは対照的に、
中島は海軍上がりだったこともあり、その肉体を遺憾なく発揮して10mも歩いてみせたという。


こうして未知の大怪獣を演じることになった中島だが、その道のりは険しかった。
100kgを越す重さの着ぐるみ、温度は60度越え、視界も狭い。
そして何より、「ようやく射止めた主役なのに、顔が映らない」という事実…。


それでも中島は音を上げることはなかった。特技監督・円谷英二のアドバイスを受けながら、
自分でも動物園に通っては象や熊といった猛獣の動きを取り入れ、大怪獣に命を吹き込もうとし続けた。
また、プールを使用した撮影では、特技の水泳や素潜りが大いに役立った。



そして中島が体当たりで主役に挑んだ水爆大怪獣映画―『ゴジラ』は、評論家による「ゲテモノ映画」という下馬評を覆し、見事に大成功を収める。



この大ヒットで「怪獣映画」という新たな娯楽が日本に根付き、
ゴジラに後続作品が作られていっただけでなく『ウルトラQ』で家庭のテレビでも怪獣が観られるようになり始めた。
それらに登場する怪獣は、中島演ずるゴジラのように役者が入って演じるものが大半を占めていた。



中島はこうして「着ぐるみ役者」…今でいう「スーツアクター」の草分け的人物となったのである。



円谷とは互いに「春坊」「親父さん」と呼び合うほど親交を深めており、
『ウルトラQ』の時に「新しいTVをやるから手伝ってくれ」と声をかけられ、怪獣ゴメスを演じた。
以後も『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に登場する怪獣も円谷のオファーにより担当している。
ちなみにその中には、ゴジラそっくりなやつの姿も…。


中島演ずるゴジラも、時に激しく立ち回り、またある時はコミカルな仕草を披露し、観客を魅了してきた。
撮影時には、ゴジラの敵役である怪獣を演じる役者を指導することもあった。



50歳まではゴジラを演るつもりでいる中島だったが、そんな折、悲しい報せが届いた。


――円谷英二の死である――。


自分を見出してくれた人物の死はやはり辛いものであったようで「ゴジラもおしまいか」と思ったと語っている。*2


中島自身も東宝の俳優制度の廃止により契約解除となり、以後はボーリング場に勤務することとなる。
その後、スタッフの願いで受けた1972年の『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』のゴジラ役を最後に、着ぐるみ俳優を引退した。


以後はゴジラ関係の取材やイベントへの出演を中心に活動していた。
海外でも中島は広く知られており、"ミスター・ゴジラ"の愛称で親しまれていた。



そして2017年8月7日。



――ゴジラ俳優・中島春雄はこの世を去った。享年88。



■主な出演作

映画

ゴジラ役での出演
ゴジラ
ゴジラの逆襲
キングコング対ゴジラ
モスラ対ゴジラ
三大怪獣 地球最大の決戦
怪獣大戦争
ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘
怪獣島の決戦 ゴジラの息子 ※一部のみ
怪獣総進撃
ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃
ゴジラ対ヘドラ
地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン


その他の役での出演(※はスーツアクター担当)
太平洋の鷲(攻撃機航空兵)
さらばラバウル(ラバウルの兵)
七人の侍(斥候)
獣人雪男(捜索隊員)
空の大怪獣ラドン(※ラドン、※メガヌロンのいちばん先頭の脚、防衛隊幹部)
地球防衛軍(※モゲラ、※ミステリアン幹部、防衛隊幹部、戦車から飛び出す自衛隊員)
大怪獣バラン(※バラン、掃海艇「うらなみ」副長)
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(※ガイラ)
キングコングの逆襲(※キングコング、野次馬)
ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣(※ゲゾラ、※ガニメ、水中スタント)


テレビ

(※はスーツアクター担当)
ウルトラQ
第1話「ゴメスを倒せ!」(※ゴメス)
第8話「甘い蜜の恐怖」(茨城県警機動隊隊長)
第18話「虹の卵」(※パゴス)
ウルトラマン
第3話「科特隊出撃せよ」(※ネロンガ
第9話「電光石火作戦」(※ガボラ)
第10話「謎の恐竜基地」(※ジラース
第25話「怪彗星ツイフォン」(※親父風の男)
第33話「禁じられた言葉」(※ケムール人二代目、警官隊隊長)
第38話「宇宙船救助命令」(※キーラ
太陽のあいつ
第2話「怪獣をぶっとばせ」(田辺、※ガイラ)
ウルトラセブン
第17話「地底GO!GO!GO!」(※ユートム


■ゴジラを演じた人々

中島だけでなく、彼らもまた怪獣王に命を吹き込んだ者たちである。


手塚勝巳
元プロ野球選手という経歴を持ち、大部屋俳優でもトップの存在だったという人物。
『ゴジラ』から『地球最大の決戦』まで中島と並びゴジラを演じた。
『ゴジラの逆襲』では、ゴジラの敵役であるアンギラスを演じている。


大仲清治
関田裕
『ゴジラの息子』におけるゴジラの着ぐるみはミニラとの対比のため大きめに造られており、
中島には合わなかったので長身である大仲が選ばれた。
しかし撮影の合間に行っていた野球の最中に指をケガしてしまい、その後関田が代役を勤めた。
なお、中島も一部の過去の着ぐるみを使いまわしたシーンではゴジラ役を担当している。


高木真二
図師勲
河合徹
それぞれ『ゴジラ対メガロ』『ゴジラ対メカゴジラ』『メカゴジラの逆襲』でゴジラを演じた。
後者2名は近い時期のウルトラシリーズなどのTV作品でも怪獣などのスーツアクターを担当していた。


薩摩剣八郎
1971年の『ゴジラ対ヘドラ』でヘドラ、1972年の『ゴジラ対ガイガン』でガイガン役を担当(当時は「中山剣吾」名義)。
中島演ずるゴジラと戦う怪獣を2度も演じた。
そして1984年の『ゴジラ』では、自身の劇団の役者をゴジラ役に推挙するがその役者に断られたため、他に方法もなく初めてゴジラ役を演じ、以後『ゴジラVSデストロイア』まで演じ続けた。特にバーニングゴジラの過酷な撮影は伝説。
また、ゴジラに影響を受け作られたという北朝鮮の映画『プルガサリ 伝説の大怪獣』でも主役の怪獣プルガサリを演じている。


喜多川2tom
主にスーパー戦隊シリーズなどの東映特撮でスーツアクターとして活躍。
1998年の『モスラ3 キングギドラ来襲』でのキングギドラ役が評価され、
ゴジラ2000 ミレニアム』から『ゴジラ FINAL WARS』までゴジラ役を演じてきた。


吉田瑞穂
ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』にてゴジラ役を担当。
当時放送されていた缶コーヒーのTVCMにてフィーチャーされており、それが印象に残っている人もいるかもしれない。
ゴジラ以外の怪獣映画では『ガメラ2 レギオン襲来』の巨大レギオンや、平成モスラのデスギドラやダガーラを演じている。


野村萬斎
狂言師でありながら『陰陽師』を筆頭に俳優としても活躍。
シン・ゴジラ』のゴジラ(第4形態)の動きを担当した。
なお本作のゴジラは着ぐるみではなくモーションキャプチャーで読み込んだ萬斎氏の動きにCG合成する形で表現されており、
画像検索すると演者の萬斎氏がセンサー付きの全身タイツとゴジラのマスクをつけているというややシュールな画が見られる。
また、「掌を上に向けた」特徴的なあのポーズは萬斎氏の発案によるもので、珠を持つ龍や仏像から着想を得たとのこと。
テレビ番組に出演した際にゴジラ模様のネクタイで現れ自ら進んで劇中の動きをやってみせるなど、ゴジラを演じたことはいい思い出になっている様子。


ちなみに彼がゴジラ役であることは公開まで伏せられており、
エンドクレジットに名前が出た際「あれ、出てたっけ?」と思っていたらゴジラ役で驚いた…という人が多かったとかなんとか。


T・J・ストーム
声優、スタントマン、ダンサー、格闘家、とマルチに活躍するアメリカの俳優。
GODZILLA ゴジラ』及び続編の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でゴジラのモーションアクターを担当している。


アンディ・サーキス
『猿の惑星』シリーズなどでモーションアクターとして活躍する俳優。
『GODZILLA ゴジラ』の一部シーンでモーションキャプチャーを担当した。
ちなみに、サーキス氏は2005年公開の『キング・コング』にてコングのモーションアクターを担当しているため、着ぐるみとCGという違いこそあれど、中島に次いで世界で2人目となる、ゴジラとキングコングの両方を演じた俳優となった。



かつて、ある1人の男が命を吹き込んだ怪獣は日本のみならず、
世界にもその名を轟かす怪獣王キング・オブ・モンスターとなった。
その男はもうこの世にはいない。しかし、きっと遥か空の果てから怪獣の王と
それに命を宿そうとする人々の活躍を見守ってくれていることだろう。


"親父さん"と一緒に――。




追記・修正は
1.すり足でゆっくり歩く
2.両腕をパカパカ動かす
3.「シェー」のポーズをする
これを順番通りにやってからお願いします。


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  • 作成乙。新造された初代ゴジラのスーツ、見てもらいたかったな…… -- 名無しさん (2019-05-29 23:42:59)
  • ウルトラマンや仮面ライダーもそうだけど、シリーズ初期に中身を務めた人達は「顔が出ない」ことに対して随分葛藤があったみたいだね。今でもそうかも。 -- 名無しさん (2019-05-30 10:24:46)
  • (すり足で歩く音) -- 名無しさん (2019-05-30 17:10:49)
  • BOSSとゴジラのコラボCM『顔の映らない主役』がカッコいいので見るべし -- 名無しさん (2019-05-30 21:03:40)
  • 凄いよなあ、この人いなかったら以後の怪獣特撮は全然別の形になってたんだろうなあ -- 名無しさん (2019-05-31 09:31:50)
  • ↑4初代ウルトラマンのスーアクをやってた古谷敏さんもそれで何度も降板を考えたけど、子供たちがウルトラマンのことで盛り上がってるのを知って前向きに取り組めたんだとか。 -- 名無しさん (2019-05-31 09:47:40)
  • 「モスラ対ゴジラ」のゴジラが地中から登場するシーン、元々は土から出てそのままのっしのっしと歩き出す場面だったのに、地中から現れた直後に体を震わせて土を落とすアドリブ入れて、見てたスタッフが「この人マジでゴジラなんだな・・・」と驚いた、っていうインタビューが印象に残ってる。 -- 名無しさん (2019-06-01 09:07:50)
  • アニゴジの主人公、ハルオという名前なのはこの人から取ったと俺は勝手に思っている。 -- 名無しさん (2019-06-06 08:26:48)
  • KOMのエンドロールでまさかの追悼演出 -- 名無しさん (2019-06-06 11:08:29)
  • アンディ・サーキスはあくまで数ショットの演技指導を担当しただけなので本来の演者T・J・ストーム氏に変更。本家ウィキペディアでも間違って記載されてるんだよなコレ。 -- 名無しさん (2020-04-18 18:04:27)
  • 中島さんはキンゴジ辺りで「顔でないっつっても主役だもんな。うんうん」と何だかんだ納得していたご様子。撮影の合間ではゴジラの中で立ったままぐーすか寝れるくらいまでスーツになれたというし。タフなお方だったんだろう -- 名無しさん (2020-07-15 20:16:39)

#comment

*1 「俺とゴジラ」第四回前編(https://godzilla.store/shop/secure/moviedetail04-01.aspx)より
*2 「俺とゴジラ」第四回後編(https://godzilla.store/shop/secure/moviedetail04-02.aspx)より

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