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青い羽根と歌
リターニアの辺境の村で、重体の子供がまた一人、ナイチンゲールとニアールの助けにより生きる希望を繋いだ。しかし治療者であるナイチンゲール自身の体は、もはや極限状態に達していた。
p.m. 4:37 天気/晴天
リターニア北東部のとある村
[衰弱した子供] ゴホッ、ゴホゴホッ……
[焦っている母] どんどんひどくなってきてるみたい、どうすれば……ルカ……!
[衰弱した子供] 母さん、痛い……痛いよ……脚が、脚が燃えてるみたい……
[無力な父] しっ! 大きな声を出すなルカ、我慢するんだ……隣のトーマスに聞こえてしまうだろ。
[無力な父] お前は強い男だ。耐えられないほど痛いなら、枕でも噛んでいろ。
[焦っている母] 枕はもう、噛みすぎて中綿までボロボロよ! 汗も止まらないし、熱も引かない……や、やっぱりマルコス先生に診てもらいましょうよ!
[無力な父] ダメだ。それはできない。
[無力な父] ほら、この子の脚を見ろ……この真っ黒い固まりを。
[焦っている母] こ、これは鉱――
[無力な父] しっ! 今その言葉を口にするな。ルカに聞こえてしまう。
[無力な父] ついこないだ、ヤニックんとこのベン――あの子の手にもコイツができた。それであの子は奴らに連れて行かれたんだ。お前も知ってるだろ? あの子は二度と家に帰らなかった。
[焦っている母] ううっ……ルカ……私のルカは絶対あんな奴らに連れて行かせたりしないわ。
[無力な父] ああ、だから今はこうするしか、こうして……やり過ごすしかないんだ。
[衰弱した子供] お母さん……お母さん……
[無力な父] 枕がボロボロなら、父さんの手を噛んで食いしばるんだ。ルカ、もう少しの辛抱だ……お前は強い子だ。今によくなるさ。
[無力な父] 奇跡は……必ず奇跡は起こるはずだ。
[無力な父] そう信じるしかない。
[???] ごめんください。
[焦っている母] 誰か来たわ! こんな時に訪ねて来るなんて、まさか奴らがルカを連れて行こうと……?
[無力な父] 怖がるな。俺が見てくる。お前はルカを抱いて、部屋の奥に隠れていろ。
[ニアール] こんにちは。
[無力な父] クランタ? その格好は騎士ですか? 俺たちが住んでいるような小さな村じゃ、あまり見かけませんが。
[ニアール] ああ、驚かせてしまい申し訳ありません。私たちは通りすがりの医療団です。実は、水が欲しいと思っていたところ、ちょうどこちらのお宅が目に入って。
[無力な父] あ……そうでしたか。我々のような見ず知らずの者から受け取った水が怖くないのなら、水の一杯くらいたやすい御用ですが……
[無力な父] どうぞ。飲んだらすぐに出て行ってください。いっそのことコップごと持っていって構いません。
[ナイチンゲール] ……
[ニアール] どうした、リズ? この水は安全だと思うぞ。
[ナイチンゲール] 感じるのです……声なき苦痛が……この近くに。
[シャイニング] そうですね。微弱ではありますが、はっきりと感じます。
[シャイニング] 誰かが助けを求めています。
[ニアール] 二人がそう言うのであれば――
[ニアール] ご主人……つかぬ事を伺いますが、あなたの家に鉱石病の患者は?
[無力な父] 鉱石病!? よ、よくもそんなことを!
[ナイチンゲール] 患者さんは、かなりの痛みに耐えているのでしょう? ですがまだ希望はあります。
[ナイチンゲール] 私ならば……治療できます。
[無力な父] ……その角……その形! そっちの奴もだ! お前ら魔族だな!?
[ニアール] ご主人、どうか落ち着いてください。先程言ったとおり我々は医者です。もし本当に鉱石病の患者がいるなら、その病状を緩和することができます。治療費も見返りも必要ありません。
[無力な父] 言ったはずだ――病人はいない、治療なんて必要ない!
[無力な父] 早く立ち去れ、嘘つきのクランタめ! お前ら魔族もだ! 俺の家に近づくな!
[ニアール] 彼の意志は固かった。よほど私たちに家族の治療をさせたくなかったのだろう。
[シャイニング] よくあることです。
[シャイニング] 医者と病人の間には信頼関係がなくてはなりません。しかし、今の彼は私たちを信頼できない状態なのでしょう。
[ニアール] それにかなり緊張しているようにも見えた。もしかしたら私たちの格好が、彼に警戒心を抱かせたのかもしれないな。
[シャイニング] いつも人に好かれるはずのニアールさんでさえ拒絶されたのです。私とリズさんは言うまでもありません。サルカズの印象は、どこへ行っても良いものではありませんから。
[ニアール] 今まで他所でやってきたように、彼を説得してみても良いかもしれない。
[シャイニング] 私たちが憲兵隊に遭遇しなければの話ですが。
[ニアール] そうだな。憲兵隊を「説得」するのは、病人の家族を説得するよりもよっぽど難しい。
[シャイニング] 目下、そのような「説得」の場面はなるべく避けたいところです。
[ニアール] ああ、ここ最近はリズの体調も優れない。今は危険を冒すべきじゃないな。
[ニアール] しかし残念だ。あの家にいる病人は、このままにしておけば病状は悪化する一方だろう。
[ナイチンゲール] ……辛いです。
[ニアール] リズ、どこか悪いのか?
[ナイチンゲール] 私が感じたあの苦しみ……あのお家の子供だと思います……とても辛そうで……小さな部屋に閉じ込められ、病気の痛みを耐え忍んでいるように感じました……
[ニアール] 部屋でじっと苦しみに耐えているのかもしれないな。痛いと叫ぶことすら我慢して……
[ニアール] まさか彼らは感染者を虐待しているのか?
[ナイチンゲール] いえ、違うと思います。あの父親が……鉱石病の話をする時、顔に憎しみの色は見えませんでした。
[ナイチンゲール] 他の場所では、鉱石病と聞けば、みなさん決まって憎しみを顕にしますから。
[ニアール] では、あの態度は病人を守るため……ということか。
[ニアール] リターニアでは感染者を家から連行し、集団隔離生活をさせていると聞いた事がある。
[ニアール] もし本当に彼の子供が病気なら、憲兵隊に連れて行かれないよう、必死にその事実を隠すだろうな。それが親子の情だ。
[ナイチンゲール] ですが、その情が今も少しずつあの子の命を奪っています。
[ナイチンゲール] 愛という名の檻に囚われ、希望を失い、生きる力をどんどん枯らしていく……
[ナイチンゲール] うっ……
[ニアール] リズ!
[シャイニング] ……もう考えるのはやめておきましょう。悲しみは、あなたの体に負荷をかけます。
[シャイニング] 今日は随分と先を急ぎました。あなたが疲弊しているのはひと目でわかります。休息が必要です。
[ニアール] 肩を貸そう。テントが設営できるまで、あと少しの辛抱だ。
[シャイニング] ――できました。火をおこして、食事にしましょう。
[シャイニング] 空が暗くなってきました。リターニアの憲兵隊の進軍は迅速です。明日にはここへ到着するかもしれません。面倒を避けるため、彼らが来る前にはここを離れた方がいいでしょう。
[ニアール] そうだな。憲兵との遭遇は避けよう。
[ニアール] リズ、ここに寝かせるぞ。焚き火で暖まってくれ。
[ナイチンゲール] ありがとうございます。
[シャイニング] 私が見張っていますから、休んでください。
[シャイニング] 憲兵隊です。やはりやって来ましたね。
[ニアール] シャイニング……起きていたのか? まだいくらも寝ていないだろうに。
[シャイニング] 十分です。すぐにここを離れましょう。リズさん、歩けますか?
[ナイチンゲール] ええ、大丈夫です。
[ナイチンゲール] うっ……
[シャイニング] 顔色が良くないですね。昨晩はあまり寝られませんでしたか?
[ナイチンゲール] だ……大丈夫です。少し目眩がしただけです。
[ニアール] 憲兵隊が昨日の家へ向かっていく……シャイニング、私たちは本当にこのまま立ち去っていいのか?
[シャイニング] ……低木の裏なら身を隠すことができます。
[シャイニング] ここに隠れていれば、彼らからは見えないでしょう。
[シャイニング] ニアールさん、リズさんを支えていてください。もしも状況が悪化したなら、臨機応変に対応しましょう。
[リターニア憲兵] ライスさん! ドアを開けなさい。
[無力な父] え、ええっと……
[リターニア憲兵] ライスさん!
[緊張する隣人] 憲兵さん、言った通りでしょう! この家はおかしいんですよ!
[緊張する隣人] ついこの間、この家の末っ子――ルカという名の男の子が、近所の田んぼで遊んで帰ってきてから、突然倒れたんです。
[緊張する隣人] それ以降、ずっと家の門を閉め切ったまんまで、呼んでも誰も出てきやしないんですよ。
[無力な父] ル、ルカをつきっきりで看病していたので――
[緊張する隣人] そんな話が信じられるか! あんなに丈夫な子が、起き上がれなくなるなんて、一体何の病気だって言うんだ?
[緊張する隣人] それに、ただの軽い病気だってんなら、どうしてマルコス先生に診せに行かない?
[リターニア憲兵] 話を聞く限り、やはりどうも変ですね。
[緊張する隣人] そうでしょう、憲兵さん! 私は、村の皆の安全を考えて言ってるんです!
[緊張する隣人] ここは……この美しく静かな村は、鉱石病の前にはひとたまりもありません!
[リターニア憲兵] ええ。だからこそ感染者はすべて、隔離エリアに集めなくてはならないのです。
[緊張する隣人] そうさ! ライスの旦那、聞こえたろ。隔離エリアに連れて行ってもらうだけさ。そこでルカは、より良いケアを受けられる。家でこそこそ看病するよりよっぽど良いだろ?
[無力な父] いや、ですが……
[リターニア憲兵] ですが何だと言うんです、ライスさん? 家の中を確認するまでは絶対に帰りませんよ。さあ、ドアを開けてください!
[活発な子供] そうだよ、お父さん。早くドアを開けてよ。
[活発な子供] もうお腹ペコペコだよ、パンが食べたいな。一枚じゃ足りないな、今なら一気に五、六枚は食べられるよ。
[緊張する隣人] え――ええっ!?
[活発な子供] あっ、トーマスおじさんごめんなさい、ぶつかっちゃった。急いで家に帰ってご飯を食べなきゃって思って。でないと母さんに怒られちゃう。
[無力な父] ルカ、やっと帰ってきたか。朝早くから一目散に飛び出して、随分長いこと遊んだじゃないか。
[無力な父] 憲兵さん、これが息子のルカです。悪意があって扉を開けなかったわけではないんです。汚い部屋ですし、肝心の息子も家にいない状況ではなんとも気まずくて……本当にすみません。
[リターニア憲兵] この活発そうな子がルカくん? 彼は本当に病気なんですか?
[無力な父] ゴホゴホッ……軽い風邪ですよ。この年頃の子供なら、遊び疲れて体調を崩すことくらい誰にでもあるでしょう?
[リターニア憲兵] 確かにそうですね。私は数多くの感染者を見てきましたが、こんなにピンピンしている患者は見たことがありません。マルコス先生、どう思われますか?
[年配の医者] ん……お? 検査ですかな? では少し診させていただこう。
[年配の医者] どれどれ、頑丈そうな腕じゃ。汗をかいてすべすべじゃな。
[年配の医者] それから脚は……
[無力な父] コホンッ。
[年配の医者] うむ。泥だらけじゃがなんとも力強い脚じゃ。目一杯遊んできたようじゃな。
[緊張する隣人] ……
[無力な父] マルコス先生、ご面倒をおかけしました。
[年配の医者] いやいや……さあ! 憲兵殿、早朝から忙しく働いたおかげでワシの腹もペコペコです。目もかすんで、もうよく見えませんわい。
[年配の医者] この子を家に帰してパンを食べさせてあげましょう。
[年配の医者] 心配しなさんな、もしこの子がまた病気になれば、ワシがきっちり検査をして、異常があれば必ずお伝えしますでな。
[無力な父] ふう、危なかった……
[無力な父] ルカ――もう一度ちゃんと見せるんだ。
[無力な父] 本当に……良くなったのか? 走り回れて、食欲もあって……
[無力な父] 見たところ随分良くなったようだ。鉱石は……まだ残っているが、随分小さくなった。周辺の腫れや赤みも引いている。マルコス先生が一目で発見できなかったのも無理はないな。
[無力な父] こ、これは奇跡なのか?
[活発な子供] お父さん、奇跡じゃないよ。小さな羽獣さんが治してくれたんだ!
[無力な父] ……羽獣?
[活発な子供] とっても、とーってもキレイな羽獣さんだよ! 羽がね、あの真っ青な湖の水よりも青いんだ! あんなにキレイな羽獣は今まで見たことがないよ!
[活発な子供] 昨日の夜、窓から飛んで入ってきて、僕の枕元にとまったんだ。
[活発な子供] 羽獣は真っ白な光に包まれてたんだ。その光は明るくて、とっても暖かくて……
[活発な子供] それからその羽獣が僕に寄り添ってきたんだ。そしたらすぐに痛みが引いたんだよ。
[無力な父] 羽獣――しかも光る羽獣だって?
[活発な子供] うん! ホントにホントの話だよ!
[無力な父] かわいそうに。病気で朦朧として、幻覚でも見たんだな。
[活発な子供] そんなんじゃないってば! あと歌も歌ってたよ。ちゃんとこの耳で聞いたんだ。あの青い羽獣さんは僕に歌ってくれたんだよ。
[無力な父] よしよし……わかった、わかった……
[無力な父] ありがとう、奇跡の青い羽獣よ。現実だろうと幻だろうと――まあ当然幻だろうが――とにかく、うちのルカに美しい夢を見せてくれてありがとう!
[シャイニング] ……
[シャイニング] 行きましょう。
[ナイチンゲール] ……怒っていますか?
[シャイニング] 何に対して怒るというのですか? 闇夜に紛れて、病人の元へ飛んでいった小鳥のことですか?
[ナイチンゲール] あの、あれは……
[シャイニング] ああ、しかもその鳥は光るのだとか。
[ニアール] ゴ、ゴホン!
[ニアール] すまないシャイニング。昨日の夜、眠れないリズを見かねて……
[ナイチンゲール] シャイニングさん、私がニアールさんに頼んで、あの子のところに連れて行っていただいたんです
[ナイチンゲール] でなければ……眠れませんでしたから。ずっと頭の中があの子の苦痛に呻く声で溢れていたんです。
[ナイチンゲール] もし私の脚が……もしも私の脚に力が入れば、一人でも行っていたでしょう。
[ナイチンゲール] ですから、ニアールさんを責めないでください。
[シャイニング] 謝る必要はありません。私たちは医者です。あなたたちはやるべきことをしたまでです。
[ニアール] それにしても、まさか憲兵隊が本当に今日訪ねてくるとはな……あの子供と家族は今後どうなるのだろうな。
[シャイニング] もしかしたら平穏に暮らしていけるかもしれません。あるいは、近い内に引っ越しを余儀なくされることも考えられます。
[シャイニング] 医者は一時の苦痛を和らげることはできても、壊れた部分を元通りにすることはできませんから。
[ナイチンゲール] 分かっています、シャイニングさん。ですが私はあの時、そんなことまでは考えませんでした。
[ナイチンゲール] ……あの子は、とても痛がっていましたから。
[ナイチンゲール] あの子のことを思うと、私まで痛みを感じる気がするんです。
[ナイチンゲール] わ……私には、彼の痛みを緩和することしかできません。
[ナイチンゲール] それでも彼を助けたい……病気の痛みを和らげて……あの部屋から出してあげたい。もう一度、走ったり、跳んだりできるようにしてあげたいと思ったんです。
[シャイニング] リズさん、一つだけ質問をします。私の目を見て答えてください。あなたは、「自分はそうしなくてはならない」という考えに囚われているのではないですか?
[ナイチンゲール] そうしなくてはならない……?
[シャイニング] ええ、昔のように。
[ナイチンゲール] 昔のように……昔のようになるのは嫌です。
[ナイチンゲール] あの時は、相手の方から私を訪ねて来ました。それから私は閉じ込められて……どこへも行けず、彼らを治療せざるを得なかったんです。
[シャイニング] ……では今は?
[ナイチンゲール] 今……今は違います。いろんな場所へ行って、私の方から人々を訪ねることができます。
[ナイチンゲール] 私は彼らの苦痛を感じます。そして、これ以上苦しんでほしくないと思うのです。だから彼らを訪ねて――
[ナイチンゲール] 私は手を伸ばし、彼らの苦痛を抱きしめます。そして私の小鳥に、彼らの耳元で歌ってもらうんです。
[ナイチンゲール] ですがまさか、あの子が小鳥を見ることができるとは、思ってもみませんでした。彼は夢の中でとても楽しそうに笑っていました。
[ナイチンゲール] その時、私の意識から……常に私を刺激するあの乱雑な欠片が消えたように感じました。小鳥の踊りもとても軽やかになりました。
[ナイチンゲール] そして私はとても幸せな気分になりました。シャイニングさん……これが嬉しいということなのでしょうか?
[シャイニング] ……わかりました。良い答えが聞けました。
[シャイニング] そうです、リズさん。それが嬉しいという感情なのです。あなたはついにそれを理解したのですね。
[ナイチンゲール] そうなんですか。これが嬉しいということなのですね? それなら私は今も……う……うぅ……
[シャイニング] 辛いのですね。
[ナイチンゲール] はい、シャイニングさん……今はどうやら辛いみたいです。
[ニアール] ど……どうしたんだ、リズ? 立ち上がる力さえないじゃないか。
[シャイニング] 彼女の選択の結果です。
[ニアール] ……昨晩、あの子を治療したからか?
[シャイニング] ええ。彼女の状況は元々良くありません。簡単な治療アーツさえも大きな負担となります。ましてや急性鉱石病の治療など尚更です。彼女の体は今どんどん……限界に近づいています。
[ニアール] それを先に知っていれば……
[シャイニング] 先に知っていれば、彼女を止めましたか?
[ナイチンゲール] ……私が望んだことですから。あの子を治療したかったんです。
[シャイニング] これがリズさんの願いなんです。たとえその結果、自らがボロボロになったとしても。
[ニアール] そうだな……シャイニング。私には彼女を止められない。
[シャイニング] はい。それがあなたたちの選択です。あなたもリズさんと同じく、そこにある苦痛を救うためならば、いつでも自らのすべてを犠牲にすることを選ぶのでしょう。
[シャイニング] 私は……お二人の選択を尊重するべきなのでしょう。
[ナイチンゲール] シャイニングさん……
[シャイニング] ですが私は……リズさんには、より多くの選択肢があってほしいと思います。
[シャイニング] それから、マーガレットさん、あなたにもです。あなたにも、より多くの選択肢があってほしいのです。
[ナイチンゲール] たくさんの選択肢とは、どういう意味ですか?
[シャイニング] ずっと外を見てみたかったのでしょう、リズさん?
[ナイチンゲール] はい。それが私の最大の望みでした。私はこれからもあなたについていきます、シャイニングさん。私たちとニアールさんは、これまでたくさんの場所へ訪れてきました。
[ナイチンゲール] それらはどこも……美しかった。時折、憎しみや苦しみが天と大地を覆うことはありましたが、それでもなお、その下に流れる美しさを私は見ることができました。
[ナイチンゲール] 私は……私の小鳥さんが歌って聴かせてくれた場所だけではなく、よりたくさんの場所を見てみたいです。
[シャイニング] ならば、そうしましょう。
[ニアール] 何かを決断したようだな、シャイニング。
[シャイニング] ニアールさん。前にあの病人が言っていた製薬会社のことを覚えていますか?
[ニアール] それは……ロドスのことか?
[シャイニング] そうです、ロドスです。
[シャイニング] 皆で行動を共にしたこの数年で、私たちはどれくらいの病人を治療できたのでしょうか?
[ナイチンゲール] ……覚えていません。
[シャイニング] 覚えていなくても構いません。リズさん、もっとたくさんの人たちを治療しに行きたいですか?
[ナイチンゲール] はい……行きたいです。
[シャイニング] 分かりました。ではニアールさん、あなたは?
[ニアール] ロドスか……異存はない。
[ニアール] 私はシャイニングの決断を信じたい。もしリズが行きたいというのなら、彼女を連れて行こう。
[ナイチンゲール] 一緒に……行ってくれますか?
[シャイニング] ええ、一緒に。
[シャイニング] 決まりですね。では、早速出発しましょう。
[ナイチンゲール] はい……
[ナイチンゲール] ……行きましょう、ロドスへ。
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